転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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三章が始まりました。原作キャラが結構出てくる予定なので転スラらしくなるんじゃないかと思います。一章はギィ、二章はエルメシアくらいしかまともに出なかったので三章はもうちょっと出番を作りたいです。

高評価や感想を貰うと作者が画面外で喜びの舞を踊りだします。


三章 悪魔騒動編
濡れ衣と母親


「どちらが正義かの問答に、意味などない」

 

「貴様のやっていることは人魔共栄ではなく、ただの支配だ。世界に調停者はあれど、支配者など不要だ」

 

「私も貴様もすでに引く気がないのだ。後はただ争い、相手を殺すだけだ」

 

「そうだろう? リムル・テンペスト…………」

 

「そうだな、アンタが引く気がないんだ。なら、俺も止まれない」

 

「嘘だな。貴様は私を殺したくて今も怒りを抑えている。私の思った通りの魔物だな……やはり貴様は王の器ではない」

 

「アンタが原因を作ったんだろう……」

 

「だからなんだ。配下が死んだ程度で怒りを抱いている貴様に誰が人魔共栄など築きたいと思う?」

 

「死んだ…………程度…………? やっぱり、理解出来ないな…………。ユーハバッハ、俺はオマエを…………絶対に許さない」

 

「…………愚か」

 

       相容れぬ人間と魔物の決別

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 エルメシアとユリウスが約束を交わしてから数日後、エルメシアの体調は問題なく動くことができるレベルまで回復したため、2人は光の帝国を出発しすでにカルテン王国の近くまで向かっていた。

 

「しばらくは砂漠も迷宮も見たくないわぁ」

 

 エルメシアが歩きながら腕を上に伸ばして愚痴る。今はカルテン王国近くの森にいるが、ここまでの旅のほとんどの時間は砂漠か迷宮の中で過ごしており、しばらく見たくない気持ちをユリウスは共感できるところだ。

 

「砂漠はこれからも広がるから対策しないと嫌でも見ることになると思うぞ」

 

「そういうネガティブなことを言わないの。会話の基本よ?」

 

 エルメシアがユリウスに指をビシッ! と指しながら言う。

 

「嫌なことから目を逸らしても現実は変わらないだろ」

 

「間違ってはないけど、ユーリはネガティブすぎるのよ。もう少しポジティブに考えないとやってられないわ」

 

 エルメシアが呆れたように言うが、ユリウスの経験上、ポジティブに考えるよりも最悪を考えて行動するほうがうまくいくことが多いため、よくわからなかった。

 

「そんなもんか?」

 

「そんなもんよ。それに、ここまで砂漠が広がるのはまだまだ先だと思うわよ?」

 

「それはそうだけどな。光の帝国は砂漠化の問題はないに等しいけど他はそうは言ってられないだろ?」

 

 実際、光の帝国は大聖樹によって砂漠化が防がれるため問題ないが

 他の場所に大聖樹はないため、何らかの対策を必要になる。特にカルテン王国は中央諸国の最西端であり、農業が盛んな国だ。砂漠化の被害は計り知れないことになるだろう。

 

「それは長命種の考え方よ」

 

 エルメシアが指摘するがユリウスはいまいちピンとこない様子だった。そんなユリウスを見たエルメシアが見兼ねたように説明する。

 

「ユーリは精神生命体でもう寿命なんてないからわからないでしょうけど。砂漠化がカルテン王国にまで及ぶには千年単位の時間が必要でしょうね。でも人間にとって千年以上先のことなんて知ったこっちゃないのよ」

 

 そう説明されると納得がいく。確かに普通は国の運営に千年以上先のことを考える必要などないし、そもそも、それほどの時間経てばすでに国があるかどうかも怪しくなってくる。人類の進歩だとか先を見据えていたからかそこら辺の考えが抜けてる気がする。

 

「後は恐怖で目を逸らしたいんじゃないかしら」

 

「恐怖?」

 

「一晩で西側の国のほとんどが消滅した上に、砂漠化してそれが徐々に侵食してるなんて悪夢以外の何者でもないわよ」

 

「そうか……そうだな。直接被害を受けていなくても怖いよな…………」

 

 恐怖で現実逃避するのはある意味で当然のことだろう。この世界で人が纏まっているのは魔王という人類の脅威による恐怖が大きい。

 だからこの世界では、たとえ戦争中だとしても国家規模の強さの魔物や魔王が敵国を襲っても助けたりする。そうでもしなければ次は自分の番になってしまうからと考え、国同士が協力するのだ。

 

 それ故に災厄に対する恐怖は前世よりも遥かに大きい。なにせ悪魔も魔王も実在しているのだ。伝承ですら恐れられるような存在が実際にいたらさぞかし怖いことだろう。それこそ、現実逃避してしまう程に。

 

「話してたら、いつの間にか王国が見えてきたわね」

 

 どうやら話している間にカルテン王国が見えてきたようだった。約半年ぶりの王国だ。以前はすぐに引き返してしまったが次の機会があればもう少し滞在していたいものだ。

 

 ユリウスが考え事をしている間に2人は王国の検問所まで来ていた。だが衛兵の様子が少しおかしい。以前はすんなり通れたはずだが、妙に警戒されているような気配がする。なにかあったのだろうか? 

 

 疑問はあれど検問所を通り王国へと入国することは出来た。2人はそのまま冒険者ギルドへと向かう。その途中でエルメシアがユーリにしか聞こえない声でつぶやいた。

 

「少し町の様子が変ねぇ」

 

「衛兵も警戒してる様子だったし、なにかあったんじゃないか?」

 

「そうね…………」

 

 エルメシアはどこか不安な様子で返事をする。あまりこういう空気に慣れていないのだろうか? ユリウスは帝国が戦争の時にこういったピリついた空気だったことを覚えていた。

 

「(こういう空気は民衆の不安や警戒から来るものだ。つまりこうなった原因があるはず…………。それにしても、この状況じゃあ観光というわけにもいかないな……)」

 

 エルメシアが不安がるなか冒険者ギルドについた2人だが、エルメシアが受付嬢に話をつけてユリウスは冒険者ギルドの前に待つことにした。

 

 理由は前回ユリウスは他の冒険者に絡まれたからだ。ただでさえ町の様子が良くないのに、トラブルに自ら突っ込むのはごめんだった。

 

 そうして待つこと10分ほど、そろそろ出てきてもいいはずだがエルメシアが出てくる様子はない。絡まれることを覚悟でユリウスが確認しに行こうとすると、何やら全身鎧姿の兵士達が走って近づいて来る。明らかな異常事態だがユリウスには関係ない話だろうと思っていると兵士達はユリウスを囲み槍を向ける。そしてその中の一人がこう叫ぶ。

 

「手を挙げて、地面に伏せろ!!」

 

 自分の勘違いかとユリウスは思いたかったが、兵士はどう見てもユリウスに向かって警告している。ユリウスは現実逃避を諦めてあくまで冷静に兵士の話を聞くことにする。

 

「なんで俺は槍を向けられてるんだ?」

 

 威圧したりすることも出来るがそれでは話ならないし、なによりユリウスは槍を突き付けられることなどなにもしていない。というかさっき入国したばかりで一体何が出来るというのか? せいぜい出来てスリくらいだろう。

 

 落ち着いて聞いたユリウスだが、兵士達は余計に警戒した様子で警告する。

 

「手を挙げて、地面に伏せろ!!!」

 

「せめて理由を言ってくれ。俺は槍を向けられるようなことはしてない」

 

 できるだけ目立ちたくないユリウスだが、残念ながら冒険者ギルドは人通りの多い場所だ。先程から何事かと人が集まり始めギルドの中からも顔を出すやつもいて完全に目立っている。

 

「最後の警告だ!!! 手を挙げて、地面に伏せろ!!!!」

 

 こちらの言葉を聞く気はないらしい。さらに大きな声で警告してきた。これ以上は武力行使で来てもおかしくない。

 

 正直ここから逃げることも目の前の兵士達を蹴散らすのも簡単だ。だがそんなことをすればさらに目立つことになるだろう。指名手配の逃亡犯になるか大人しく捕まるかの二択だった。

 

「(今は情報が足りない。この状況で暴れても良いことはないな)」

 

 ユリウスは素直に捕まることにした。ユリウスが手を挙げ地面に伏せると、兵士達はユリウスの手を後ろに組み縄できつくしばり、頭を地面に押さえつける。

 

「(わかってはいたが、乱暴だな。ていうか他国で捕まる皇帝ってどうなんだ? 流石に威厳がマズイような気がする)」

 

 ユリウスは兵士達に捕まりながら、今更、皇帝の威厳があまりにもないのではと気にしながら連行されていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「(連行はされて、武器は持ってないか調べられたし腕は縛られたけどそのまま牢屋に放り込まれて放置かよ……)」

 

 ユリウスが捕縛されてからすでに1時間ほど経過していた。目に見える範囲に見張りなどはなく、牢屋も厳重とは言えず鉄格子があるだけだ。

 

「(いい加減動くか)」

 

「チャンドラー」

 

 ユリウスが腕を縛っている縄を解きながら小さく呟くと影から杖を持った濃い緑色の髪をした老人が出てくる。

 

「お呼びでしょうか。ユーリ坊っちゃん」

 

 チャンドラー(緑髪の魔人)は以前、原初の魔人がヴェルダナーヴァによって2人に分かれた魔人の一人で、ユリウスはチャンドラーと名付けていた。

 

「(あの時は他のことで余裕がなかったから、ろくに考えずに配下にするとか名前をつけるとか言っちゃったんだよな…………忠誠心自体はあるみたいだし、今更いいとも言えない…………)」

 

「チャンドラー、今は情報が欲しい。かと言って事態はなるべく大きくしたくない。だからバレないように情報を集めろ」

 

 ユリウスが命令するとチャンドラーは嬉しそうに頬を緩ませる。

 

「もちろんでございます。ユーリ坊っちゃん。儂への初めてのご命令、しっかりと果たしましょうぞ」

 

 チャンドラーが自信満々に言うと、自分の頬を膨らませると頬が掌サイズの肉団子のようになる。それを千切ると肉団子に翼が生え、生き物のように動き始めた。

 

肉分身(スプリット・ターマー)

 

 肉分身達はスルスルと鉄格子を抜けると分裂し始めやがて豆粒サイズになって散らばっていく。

 

「後は感覚を共有しつつ探ればある程度の情報集まりますぞ。ユーリ坊っちゃん」

 

「あぁ、それはいいんだが…………その坊っちゃんって言い方どうにかならないのか…………?」

 

 ユリウスは嫌そうにチャンドラーに聞くが、チャンドラーは満面の笑みで肯定する。

 

「今は陛下と呼ぶのはマズイでしょう? だからユーリ坊っちゃんと呼ばせてもらいますぞ」

 

「(絶対坊っちゃんって呼ぶ必要はないだろ…………)」

 

 ユリウスが内心で悪態をついていると誰かが近づいて来る気配がした。

 

「影にいろ」

 

 ユリウスが小さく言うとチャンドラーは静かに影へと潜っていった。ユリウスは近づいてくる者を鉄格子から覗くと、そこにいたのはシルクのような光沢がある薄手のドレスの服にデニム生地のショートパンツのエルフの女。しかもその顔と服はエルメシアにそっくりだった。

 

「エルメシア? いや…………誰だ…………」

 

「あれ? わかるんだ? ……あの子とは結構似てるはずなんだけど?」

 

「で? 誰なんだ?」

 

「どうせなら当ててみてよ?」

 

「友人でもない奴との会話を楽しむ趣味はない。牢屋にいるなら尚更だ」

 

 ユリウスは自分をからかってくる女の話に付き合うつもりはなかった。あるのはコイツが誰なのかという疑問だけ。

 

「つれないわねぇ。男の好みは似なかったのかしら……?」

 

「あの子…………」

 

 意味深なことを言う女にふと嫌な予想を思いつくが、当たっていても碌な事がなさそうなので即座に思考を放棄した。

 

「まぁいいわ。私が誰かよりも今は大事な事があるの。今回の濡れ衣は貴方を狙った犯行の可能性が高いわ」

 

「それが事実である証拠はどこにある。そもそも誰が俺を狙う? 狙われる覚えはない」

 

「証拠はないわね。でも、貴方のことを狙っている黒幕がこの国の至るところに手を回してるのは確かね。おかしいと思わなかった? 民衆が不安がっているのも、衛兵が警戒しているのも全部貴方を狙うための舞台装置。つまりここは劇場で、誰かが貴方をその劇場に参加させようとしているの」

 

「そしてこれは人のやり方ではないわ。これは人を陥れ、楽しむ悪魔のやり方よ。悪魔は国の権力者を操って国を滅ぼす事がたまにあるのよ」

 

 悪魔の知り合いはギィやギィの配下だが、ギィがこんな回りくどいやり方をするイメージはない。どっちかと言えば直接会って「戦おうぜ」とか言ってきそうなイメージがある。

 

「仮にそれが全て真実だとして、誰がわざわざこんな舞台を俺のために作る?」

 

「さぁ? 悪魔の知り合いなんていないもの」 

 

 女はあっけらかんとした感じで言ってくる。その感じがエルメシアの姿と重なって少しイラッとするユリウスだが、スルーして別の質問を投げかけた。

 

「じゃあ、なんで俺にそれを言った」

 

「だって、娘のボーイフレンドですもの。このくらいのサービスはするわよ?」

 

 腰に手を当てながら前かがみになり、こちらにウインクしながら言う女にユリウスは冷たい表情を向ける。

 

「ちょっと! なにその顔! せっかく色々教えたのに!」

 

「エルメシアの母親だとしたら、その歳でそのアピールはキツイし普通にウザい」

 

 ユリウスの心にもない言葉に顔を真っ赤にした女が捲し立てるように反論してくる。

 

「なっ!! 君、デリカシーがないわよ! もうちょっと女の子には優しくするものよ!」

 

「するべき女性には優しくしてるよ」

 

「もういいわ!! せっかく人が協力してあげようとしたのに! あの子もどうしてこんな失礼な子と…………」

 

 ユリウスは完全に茶番にと化した空気に思わずため息を吐きそうになるがぐっと堪え、鉄格子を素手で曲げ外に出た。その様子を見ていた女は、先程の様子は一体どこにいったのかと言いたくなる程に真剣な表情で問いかけてくる。

 

「話を信じてくれたってことでいいのかしら?」

 

「これ以上牢屋にいても仕方ないと判断したから出たんだ。情報は別で集める」

 

「素直じゃないわねぇ」

 

 ニマニマとからかう女に大聖弓を浴びせたくなったユリウスだが全力でスルーする。

 

「チャンドラー」

 

 俺の呼びかけにチャンドラーが影から出てくる。その様子に女は驚いているようだが当然無視する。

 

「よろしいので?」

 

 チャンドラーが暗に始末しなくても良いのかと聞いてくるが、本当だった場合が面倒だし、それよりももっと大事な物がある。

 

「それはもういい。それよりも情報はどうだ?」

 

「そこのエルフが言っている事はどうやら本当のよう、なにやらユーリ坊っちゃんの似顔絵が貴族の間で出回っているようで貴族達は我先にとユーリ坊っちゃんの身柄を血眼になって奪い合おうとしていますな。確かにこれは人間には難しい。悪魔の干渉と考えるのが自然でしょう」

 

 女は「ね? 言ったでしょう?」と言わんばかりのドヤ顔でユリウスを見ているが、反応すると面倒なのでまたスルーだ。

 

「悪魔がこの国にいるのか探せ。いるのならそいつの思惑が知りたい」

 

 チャンドラーにそう命令していると女が話かけてくる。

 

「じゃあ心配はなさそうだし、私はあの子の様子を見にいくわね。話たいこともいっぱいあるし巻き込まれたら大変だもんね」

 

 女はにこやかに言ったがユリウスはエルメシアが家出している話を覚えているため碌なことにならないと思っていた。しかし、エルメシアを助ける気はなかった。

 

 ぶっちゃけ1年近く家出しているのだから怒られても当然だろうと思っているし、自分を狙っているのだとしたらエルメシアを巻き込むわけにもいかなかった。

 

 そう考えている内に女はここを離れようと歩き始めていたが、突如振り返った。

 

「そう言えば、まだ名前言ってなかったわね。シルビアよ。覚えておいて」

 

「ユーリだ。アンタが本当に母親だったとしたら情報に感謝しとく」

 

「やっぱり、素直じゃないわね」

 

 シルビアは苦笑しながら出口へと歩いていく。

 

 色々ふざけていたが、エルメシアの母親というのは恐らく本当だろう。まだ母親のフリをしてこちらを騙そうとしている可能性もあるが、それは情報を精査すればいいだろう。今はとりあえず相手の目的を知るのが先だな。それ次第で行動が変わってくる。

 

 

 

 

 

「あっ…………ボーイフレンド否定するの忘れた……」

 

 

 

 

 

 この件が片づいたら誤解を解いておこう…………

 

 ユリウスはとんでもない誤解を残したままエルメシアに迷惑をかける気がしたが、すぐに思考を放棄した。

 

 




シルビアさん登場です。

ユリウス目線の話だったので描写はないですが、シルビアさんは王国で一緒にいたエルメシアとユリウスを恋人だと思うほどに距離が近いです。

黒幕については、ちゃんと原作キャラなので誰なのか考えてみてください。

あらかじめ言っておくと、一章のギィや二章の原初の魔人といったボス戦はない予定です。戦闘シーンはちょっとだけですかね。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

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