転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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長いです。

もうすぐで評価数が50になりそうでワクワクしてます。


舞踏会とかつての光景

 脱獄から数日経った夜、王都郊外の森の奥の山小屋でユリウスはチャンドラーが集めた情報を整理していた。情報によるとカルテン王国の現状はユリウスが思っていたよりもずっと酷いものだった。

 

 すでに王国の中枢にまで悪魔は入り込んでおり、もはや悪魔の支配する国と言ってもおかしくないほどの侵食されていた。

 

「思っていたよりも酷いな……数年、もしかしたら十年単位で悪魔がゆっくりと王国を支配していた可能性まで出てきた。チャンドラー、今回の黒幕はどんなやつだと思う?」

 

「明確な情報はないですな。じゃが坊っちゃん。悪魔は契約にうるさく、強者に従う生き物。ここまでの規模の支配が出来るとなるとそれなりに高位の悪魔、最悪の場合原初が関わっている可能性はあるかと」

 

「チャンドラーに匹敵する悪魔はどのくらいいる?」

 

「そうですなぁ……原初ともなると儂に匹敵する程にもなるものの、あやつらの強さは個体ごとに曖昧ですからなぁ。まぁ赤や黒、白辺りは儂だけではちとキツイですなぁ」

 

 この世界には原初の悪魔という最初に生まれた七柱の悪魔が存在する。世界の創世の時代から生きている精神生命体であり、不滅の存在であるとも。

 

 悪魔のほとんどは人間達が生きている物質界と言われる世界ではなく、冥界と言われる精神世界に住んでおり、肉体を持たない精神生命体である悪魔は、物質界で活動するには魔力によって体を構成し、一時的に活動したりする。悪魔召喚などがいい例だ。

 

 今回の原因は王国が強力な悪魔をに召喚したものの、契約を守れずに国を乗っ取られてしまったのだろうか? それとも悪魔側に何らかの思惑があって王国を乗っ取ったのか…………

 

「(結局、黒幕の思惑を今集められる情報で確定させるのは難しい……かと言って、あまり事態を長引かせたくない。となると……)」

 

「直接探るのが手っ取り早いんだよな」

 

 情報によると、10日後の夜に王国中の貴族を集めて仮面舞踏会を開くようだ。しかしどういう名目のパーティーなのかは招待された貴族達にも知らされていないという怪しいパーティーだ。

 

 しかも何故か俺のいた牢屋にもパーティーの招待状があった。脱獄したのにまるで騒ぎが起きてない事といい、明らかな挑発でありどう見ても罠だ。

 

「相手の罠に乗らずに今から王国にいる悪魔を殲滅すればよろしいのでは?」

 

「物騒過ぎるし、後で色々問題になりかねない。それに今回の件で大事なのは問題の解決より黒幕が誰で、目的が何なのかを知ることが優先だ」

 

 そう、問題の解決は前提条件でしかない。手段を選ばなければいくらでも方法がある。しかし欲しいのは情報だ。

 

「光の帝国には確か陛下の力を与えられた諜報員がいたはず、それらを使えばより正確な情報が得られると思いますが…………?」

 

「お前の言いたたいことはわかる。だが今回はナシだ。悪魔にいい思い出なんてろくにないからな……狙いが俺なら尚更だ」

 

 ユリウスにとって悪魔と言って思いつくのはギィ・クリムゾンだ。最古の魔王でありながら悪魔の頂点の一柱である原初の赤、その強さは暴走したミリムをあしらうほどの強さ持っていた。

 

 あれから15年、今のユリウスであればあの時のようなことにはならないと確信を持って言える。

 

 技は磨き続けているし、『全知全能(ジ・オールマイティ)』の制御も上手くいっている。それに成長の妨げになるからまだ早いと思って使わなかった『人類之祖(アダム)』の概念創造も、原初の魔人相手に使って聖霊子の力を手に入れて格段に強くなった。

 

 だが……絶対に勝てると言いきることがユリウスには出来なかった。

 ある種のトラウマなのかもしれない。それほどにあの時の敗北はユリウスの心に重くのしかかっていた。

 

 だからこそ、ユリウスが狙いであるなら周りを巻き込むことを嫌った。今の光の帝国の戦力では、あの時の悲劇になりかねないと考えているから…………。

 

 今後の行動を悩んでいると山小屋に近づく気配がした。敵ではなく知っている気配だ。チャンドラーに影に戻るように指示し、気配の主が山小屋のドアを開くと、そこにいたのは明らかに機嫌が悪そうなエルメシアだった。

 

 機嫌の悪いエルメシアに話しかけるのを躊躇うユリウスだが勇気を振り絞って話しかけた。

 

「あー元気そうか?」

 

「これが元気な人に見えるの?」

 

 刺々しい返しをするエルメシアにユリウスはもうしばらく話しかけるのを避けたかったが、山小屋で機嫌の悪いエルメシアと居続けるのも避けたかった。

 結局、ユリウスは迷った末にエルメシアをどうにか宥めることにした。

 

「母親と会ったか?」

 

「…………えぇ、会ったわ。かなり怒られたけどユーリの状況も色々聞いたしね」

 

 エルメシアはユリウスに視線を向けずにそっぽ向きながら話す。怒っていると言うより恥ずかしがっているように見える。まぁ自分と母親の喧嘩を知り合いに知られたくはないだろう。

 

 ユリウスはシルビアの事を触れないようにして話を続ける。

 

「状況を聞いたならわかるだろ? 悪魔が俺を狙っているなら今すぐにこの国を出るべきだ」

 

 ユリウスとしては今すぐにエルメシアにはシルビアと共に国を出ていって欲しいところだが、エルメシアは余計に機嫌が悪くなったのか顔をさらに顰めながらこちらに聞いてくる。

 

「あのね。今更仲間はずれにするつもり? また一人で解決しようとするなんて前の事、反省してないの?」

 

「相手は国の中枢に入り込むだけじゃなく複数の悪魔が受肉して支配している場所なんだぞ。そんな事が出来るのは高位の悪魔くらいしかいないんだ」

 

「それはママも予想してたわよ。でもね、私が言っているのはそういうことじゃないの。ユーリがまた他の事を気にして一人で解決しようとしてることが問題なの」

 

「お前は悪魔の強さ知らないからそんな事を言えるんだ。黒幕が原初の悪魔だった場合、被害がこの国に収まるかもわからないんだ。余計な戦力は足手まといにしかならない」

 

「私だって、原初相手に勝てるとは思ってないわ。私が気に入らないのは、足手まとい以前にユーリが私を一緒に戦う仲間だと見てない事を言ってるの。今回の黒幕が原初ではないと確定したとしてもユーリは「自分が狙われてるから」とか言うでしょ?」

 

「………………」

 

 図星だった。確かに足手まといを理由に、エルメシアを今回の件に関わらせないようにしてる事を否定することがユリウスには出来なかった。黙ってしまったユリウスにエルメシアは先程と違い優しい声で話す。

 

「自己責任だと思って解決しようとすることは悪いとは言わないし、守ろうとしてくれるのは嬉しいけど行き過ぎれば過保護なだけよ?」

 

 ユリウスはしばらく黙った後、諦めたようにエルメシアに問いかける。

 

「協力してくれるか?」

 

「もちろん」

 

 ユリウスの言葉に先程までの機嫌はどこにいったのか、エルメシアは見惚れるような笑みを浮かべ了承した。

 

 

 

「それで? これからどうするの?」

 

「舞踏会の夜に全ての貴族と受肉している悪魔を集めたパーティーがある。わざわざ招待券を貰ったんだ。罠ごと踏み潰して終わらせる」

 

「なるほど……だから私のところにこんなのが来るわけねぇ……」

 

 そう言ってエルメシアは懐からパーティーの招待状を取り出す。

 

「どのみち、エルメシアをこの件に巻き込む気だったわけか」

 

「ちょうどいいじゃない。わざわざ送って来たんですもの着飾って行きましょう?」

 

「遊びに行くんじゃないんだぞ……」

 

 ユリウスが注意するがエルメシアは何処か楽しげだ。悪魔のパーティーなんて地獄かなにかだろうに本当に大丈夫なのか…………? 

 エルメシアの様子に不安を覚えるユリウスだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「なぁ、俺がドレスを作らなかったらどうするつもりだったんだ?」

 

 パーティー当日の夜、ユリウスとエルメシアは馬車で王城へと向っていた。ちなみにドレスなどの正装や装飾品などはユリウスが霊子創造で生み出したものだ。今は、いつもの服に霊子創造のドレスを上書きしているような状態で、霊子を分解すればいつでも戦闘が出来るようにしている。

 

 馬車はシルビアが用意してくれたもので、シルビア曰く「わかってるわ。あの子のドレスが見たいのでしょ?」とドヤ顔で用意していたものだ。本当はドレスも用意していたみたいだが戦闘の邪魔にしかならないので当然却下した。

 

 エルメシアはパーティーのドレスついてあまり考えていなかったのか俺の質問に答えづらそうにしていた。

 

「どうって……なんとかしてたわよ…………」

 

 顔を赤くしてそっぽ向くエルメシアに思わず呆れてしまうが、向こうもドレスを用意して来るなんて思って無いだろうから、問題無いと思うけど…………

 

「ほら、イチャイチャしてないでもうすぐ着くわよぉ」

 

 馬車を操っているシルビアのからかいを無視して、エルメシアに事前に伝えた作戦を振り返る。

 

「いいか、俺達は今から敵の罠に突っ込むわけだ。状況次第ではすぐに戦闘になる。俺達の目的は敵の正体の把握と事態の沈静化、ここまでは良いな?」

 

「戦闘はユーリがメインでやって、私が情報を探るんでしょう?」

 

「そうだな。敵が複数いるのは確認済みだし、戦力は俺一人でも問題ないはずだ」

 

 探った情報の中には悪魔が十数人に貴族の護衛や私兵達がいたがどれも俺一人で十分の戦力しかない。ハッキリ言って大した戦力ではないが上位魔将(グレーターデーモン)が数人いるので国一つくらいであれば滅ぼす事も出来るだろう。

 

 ちなみにシルビアはパーティーに参加せずに外から様子を見て、状況次第で好きに動いてもらうことにしていて、チャンドラーはユリウスの影で待機だ。

 作戦の確認が終わったところで馬車が止まる。ちょうどついたようだ。

 

「それじゃ、エスコートお願いね?」

 

「……わかりましたよ。お嬢様……」

 

 馬車から先に降りたユリウスに向かって、エルメシアがからかうように差し出した手をとりエスコートするユリウス、2人は王城の門の前で重厚な鎧を着た兵士に招待状見せるとなにかされる事もなく通される。

 

 舞踏会は王城に入ってすぐの大広間で行われていて、すでに周囲に多くの貴族達も豪華な服を着てパートナーと若い息子や娘を連れている。とはいえ、ここにいる貴族は男爵などの爵位が低い貴族ばかりで公爵などはまだ姿を見せていない。

 

 招待状には仮面を付けるように書いてあったため、ユリウスはカラスを模ったドミノマスクをエルメシアはバタフライマスクを付けていて、他の貴族も、すでに仮面を付けているので正確な顔はわからないようになっている。

 

「不気味だな…………」

 

「仮面のこと?」

 

「こんなにも相手の顔がハッキリしないと不気味に感じる」

 

「貴族の趣味なんてそんなものよ」

 

 ユリウスが、仮面のついた人が大勢いる会場の状況を不気味がるとエルメシアが辛辣気味に酷評する。2人は集団に紛れるように

 

「それよりも主役が来たわよ」

 

 エルメシアがそう言って視線を向ける先には大広間の奥にある階段から降りてくる2人の男女だ。男の方は50代過ぎでかなり体格が良く服装からして王だろう。もう1人の女は20代くらいの美女だ。

 

 だがどういうことだ? あれが王妃とは思えない。本来であれば主役は王と王妃になるはずだ。そもそも王妃は最近、病死したはずだし、王には娘はおらず息子が二人だけのはず……。

 

 それにこの気配、女の方は間違いなく悪魔だ。他にも周囲に悪魔の気配が増え始めた。もはやこっちに隠す気もないらしい。

 一体何をしたいのやら…………。

 

 階段の途中で王が止まると、会場の光が消え王だけが光に照らされる。会場の全員の注目が王に集まったとこで、王は話し始めた。

 

「皆のもの、今日はよく集まってくれた。今日のパーティーに疑問がある者もいるだろう。だがまずは、楽しもうではないか!」

 

 王はそう言って、中央に移動し隣の女性と踊り始める。二人の動きに合わせて光が動き、周りのパートナーを持つ貴族達は二人に習って同じように踊り始めた。

 

「私達も踊ったほうが良さそうね。リードしてくれる?」

 

「…………俺は元皇子だぞ?」

 

 ユリウスはそう言ってエルメシアの手を取り、音楽に合わせ周りと同じように踊りながら周囲の状況を探る。

 

 壁際にはパートナーを持っていない貴族や貴族の息子や娘がいる。本来舞踏会とは男女の出会いの場であるため、彼らがいるのは当然だろう。

 

 問題は、会場を囲むようにいる悪魔の気配だ。逃さないようにしているのは明白でさらには、アンチマジックエリアまで張って転移魔法で逃げる手段を封じている。

 

「どうするの? このまま続ける気?」

 

 エルメシアが小声で囁いてくる。エルメシアとしてはこれ以上囲まれるのはマズイと思っているようだが、そうもいかない。

 

「わざわざこんな事をする理由がわからない。この茶番をする理由があるなら知っておきたい」

 

「それは気になるけど、取り返しのつかないことになる前に行動に移さないと面倒よ」

 

 エルメシアの忠告を受けていると、曲が終わり2人はダンスを終える。次はパートナーを持たない男性がパートナーを持っていない女性にダンスを誘う。

 

 2人はそのまま周囲の警戒を続けるが、舞踏会中に襲われるわけでもなく、舞踏会は終わり晩餐会に変わっていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 舞踏会はひとまずの終わりを迎え、大広間にテーブルと食事が運び込まれていく。どうやら珍しい立食形式のようで、貴族達は談笑という名の腹の探り合いをしている。

 

 ユリウスは目立たないように軽くつまむ程度に食べるがエルメシアは警戒して手をつけようとしない。ユリウスに通用する毒などまずないため問題ないが、エルメシアは咎めるように小声で注意してくる。

 

「ちょっと! 罠かもしれないのに食べてどうするの!」

 

「なにもしないのは却って目立つだろう? それよりも、誰にも話しかけられないのはわざとだよな?」

 

 パーティーが始まって以降、2人は誰にも話しかけられずにいた。どう見ても異常であり、この会場の全ての人間がグルの可能性が上がった。それ自体はあり得ることなため、ユリウスはあまり気にしていない。

 

 問題はどうやって口裏を合わせたかだ。そもそも国来たばかりのユリウスを罠に嵌めるにはユリウスの居場所を特定しながら他の貴族に情報を共有する必要がある。チャンドラーにバレず情報交換するのは普通の人間には不可能だ。

 

 この場人間が全てグルならチャンドラーを欺きながら情報を共有する方法、または近いことが出来る者がいるということになる。

 

「やっぱり気づいてないのね」

 

 エルメシアがやっぱりという顔で呟く。そんな反応が返ってくると思わなかったユリウスは反射的に頷いた。そんなユリウスを見たエルメシアは呆れながら説明する。

 

「あのねぇ、私達は無意識に英雄覇気が漏れ出てるのよ。貴族は相手の事をしっかり見極めないと破滅しかねないんだから」

 

「じゃあ、単純に気圧されてるのか?」

 

「一般人からしたらダダ者じゃないって思うには十分よ。まぁ下手に強かったりしたら、漏れ出てる程度の英雄覇気じゃあ意味ないでしょうけど」

 

 エルメシアの言っていることは事実だった。仮面をつけているとはいえ、有名な貴族の顔はこの場にいる誰もが知っている。知らない顔ということは、大した人物では無いということになるはずだ。しかし、ユリウスとエルメシアの2人は誰から見ても目立っていた。

 

 仮面越しでもわかる2人の美貌。エルメシアの身に纏っている薄い雨色のマーメイドドレスに、後ろに纏められた輝く銀の髪。エメラルドで統一された装飾品の数々。そのどれもが一級品であった。

 

 ユリウスはこれといった装飾品はつけられていないが、仮面越しとは思えないほどの美貌に惹かれる者がいるほどであり、その仮面を剥がし、その顔を見たいと誰もが思っていた。

 

 ユリウスはここでも皇子のポカが出て、女性なんだしこれくらいの物ががいるだろうと、現在の製造技術では作ることが出来ないレベルの装飾品を作ったり、自分の中の当たり前(とある材料で作った最高品質)のドレスを用意していた

 

 エルメシアは目立つ事をわかっていたが、どうせ敵の罠なのだから隠れようとしても無駄という大義名分があったため黙っていた。(本当はパーティーで舐められるような格好をしたくなかっただけ)

 

 そういった理由で2人は誰にも話しかけられずにいたわけだが、ユリウスが周りの貴族達の心情を知ることはない。

 

 ちょっとしたトラブルはあれど、晩餐会が進みそろそろ終わりの時間が近づいてくると王の声が大広間に駆け巡る。

 

 

 

「皆のもの、今日の急な集まりによくぞ集まってくれた。皆は何故、急に舞踏会を開こうとしているのか疑問に思っているだろう? 皆のその疑問に答えよう。ここ最近、国中で妙なことが起きているとの噂が広まり、民達が不安に苛まれている事を皆は知っているだろう?」

 

 

 

 王が言っているように妙な事が起きているという噂自体は存在している。その影響でカルテン王国の民達が不安に苛まれているのも本当だ。だが、妙な事が一体どのようなもので具体的に何が起きたのかは終始曖昧な情報だった。つまりこれは、意図的に流した噂である可能性が高いとユリウスは踏んでいた。

 

 そうとは知らない若い貴族達のほとんどは王の話に聴き入っているが一部の者は難しい顔をしている。ユリウスのように違和感に気づいているのかどうかは不明だが、わかったような顔で頷いている者よりはマシだろう。

 

「そして、この妙な噂は15年前のあの災厄の日の時にもあった」

 

 嫌な方向に話が傾いてきた。15年前の災厄の日とは、ミリムの暴走のことだろう。中央諸国には直接被害は無いだろうが、その恐怖はしっかり根付いているようだ。若い者はともかく、当時を知る貴族は皆一様に顔を顰め、中には顔を青ざめる者もいる。

 

「私はこれが災厄の前兆なのではないかと考え、情報を探った」

 

 王は大袈裟とも言えるような素振りで話していく。その姿は王というより舞台の演者の様だ。

 

「そんな時、高名な予言者が現れ私にこう予言した」

 

 

 

『汝の国は運命の別れ道にある。判断を間違えれば蒼き円環の光が汝の国を滅ぼすであろう』

 

 

 

「皆も知っているだろう!! あの日見えた蒼き円環の光を!! アレは破滅の光だ!! 恐ろしいあの光が我がカルテン王国を滅ぼすと!!」

 

 ふざけた暴論だ。蒼き円環というのは聖別(アウス・ヴェーレン)のことだろうがあれで国が滅びることなどないし、その根拠もない。

 しかも言っているのは胡散臭い予言者とやらで穴だらけの暴論だ。これを信じるのは恐怖で心がおかしくなった者だけだろう……

 

「不味いわよ……これ…………」

 

「…………?」

 

 エルメシアの焦る声に疑問を浮かべ周りを見ると、先程まで王に視線を向けていた全員が、仮面越しでもわかる憤怒をその顔に浮かべ威嚇するように歯を剥き出しにして、こちら凝視していた。

 

 その様子は不気味の一言だった。100人は軽くいる人々が恐ろしい表情でこちらを見ている。しかし、その中で一部の人間は正気の様子でユリウスを嘲笑するように見ている。演説をしている王や公爵などの高い爵位を持つ貴族達だ。そんな異常な空間で、王の演説に熱が入る。

 

「私はどうにかして、この危機を乗り越えようと策を巡らせた。そして真実を知ったのだ! 崩壊した西の地にて、光の帝国という国が建国された。そしてその災厄の原因は光の帝国にあるという真実に!!!」

 

 大凡のストーリーは見えてきた。傲慢にも程があるが今はまだ聞きたいことがある。まだこの茶番を聞き続けろ……

 

 ユリウスは自分の中に湧いてくる感情を抑えながら、自信満々に演説する王に睨みつける。

 

「そして! 邪悪な光の帝国を打ち倒し正義を実行するためには、たとえ悪魔の力を借りてでも我が国が戦わねばならないと!!!」

 

「彼らは言った!! 光の帝国の皇帝がまんまと私が仕掛けた罠に掛かったと! さぁ立ち上がれ! 今こそ我らが邪悪なる皇帝に正義の鉄槌を下すのだ!!!」

 

 周りの者たちは目を血走らせ、ドレス姿で襲いかかるのではないかと思うほどに興奮している様子だ。そしてユリウスとエルメシアを囲む兵士達、彼らも正気ではなく息を荒くしている。

 

 そしてその様子を見ながら悦に浸る王や公爵などの爵位の高い者達、なりよりも元凶であろう王の隣にいる女だ…………

 

「(そうだ…………。この状況、似ているんだ。以前、超魔導大国であったパーティーと同じだ)」

 

 

 

 

「あぁ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吐き気がする…………」

 




今回は結構難産でした。

次回はユリウスが暴れます。

あと今回出てきた女悪魔はオリキャラです。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

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