転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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     一輪のスカビオサを手に取った日

      貴方は私を   光で照らした 

         だから私は 

      貴方に一輪のニワトコを捧げる



救えなかった命と救われた者

「どうしたものか…………」

 

 ユリウスは自室の椅子にゆっくりと座り、背もたれに背を預けながら幾つかの悩みについて考えていた。その中の一つである原初の白(ブラン)について、ギィに聞くつもりでいた。

 

 ユリウスは目を閉じ、昨日の会談を振り返る。

 

「オレ以外の原初?」

 

「あぁ、それについて知りたい」

 

 ユリウスの質問に、ギィは悩む様子を見せる。

 

「実はな、ここ最近原初の紫(ヴィオレ)原初の黄(ジョーヌ)がお前のことを探っていてな。せっかくミリムの件が解決するところに割って入って、掻き乱されても鬱陶しいから適当に相手して追っ払ったばかりなんだよ」

 

 ギィから聞く話は、ユリウスには初耳の情報だった。光の帝国周辺の状況や各国の情報は、常に網を張り巡らせているが特にそのような情報は出ていない。悪魔達の隠れ方が上手いのか、それともギィがいち早く気づき大きな行動を起こす前に終わらせたか…………。

 

「なんでその2人は、俺のことを探っていたんだ?」

 

 ユリウスとしてはこの疑問が大きい。ブランといい、他の原初といい、悪魔に目を付けられすぎだ。

 

「そりゃあ、オレとあそこまで派手に暴れたんだ。暇な連中は面白い物に惹かれるからな、オレと戦って生きてる人間なんてそういない」

 

 つまり面白そうだから、ちょっかいをかけようとしたわけだ。傍迷惑な話だ。悪魔からすれば、あの騒動は面白そうの一言で済んでしまう。

 

 ユリウスからすれば、不快だが悪魔としては普通のことなのだろう。なにせ数万年以上前から生きているのが原初の悪魔だ。国が滅びることなんて、よくある行事でしかない。

 

「他の原初は、何もしてこないのか?」

 

原初の紫(ヴィオレ)原初の黄(ジョーヌ)の動きはわかりやすい。そもそも隠す気もなかっただろうしな。原初の黒(ノワール)は、気分屋の変人でそこらを転々としてるからわからん。原初の白(ブラン)は、東を縄張りにしているはずだ。だから西の端に近いお前のところに関与するのは難しいだろうな」

 

 ギィが嘘をついているようには見えない。だがブランがカルテン王国に関与しているのは、間違いない。ギィはそれを知っているのか? 

 

 ギィの情報源がわからない以上、考察にも限界がある。少なくともカルテン王国は、悪魔が支配していても国としての体裁を保っていた。

 

「(だめだな…………。ブランが何をしたいのかまるでわからない。光の帝国目的? それとも面白半分でちょっかいを出しているだけ? 可能性は無数にあるが、どれもしっくりこない。

 結局、『平和之王(ソロモン)』で配下の悪魔の確認しても大したことはわからず。わかったのは、目的は本人しか知らない可能性が高いことだけ…………)」

 

 そこまで考えて、ユリウスは今出てきたのが赤、紫、黄、黒、白だけの5柱のみのことを思い出す。

 

「他の原初は? あと2人いるはずだろ?」

 

 ユリウスの言葉にギィはキョトンとした表情をする。実に珍しい表情だ。

 

「オレの後ろにいるだろ?」

 

「???」

 

 ユリウスはギィの後ろを見るが、いるのはメイドの2人だけだ。ユリウスはまさか……と思う。自身の予想が外れていることを願いながらギィに確認する。

 

「後ろにはレインとミザリーしかいないぞ」

 

「レインが原初の青(ブルー)でミザリーが原初の緑(ヴェール)だぜ」

 

 ギィはさも当然といった様子で断言する。ユリウスの予想が当たってしまった。ユリウスは思わず出かけた罵倒の言葉を飲み込む。

 

「てっきり、原初はお前みたいなやつばかりだと思ってたよ」

 

「おいおい、オレが七柱もいたら世界がヤバいだろ」

 

「自分で言うな。まぁ、原初のことはわかった。こっちにちょっかいをかけるならそれ相応の対応をすればいいだろ」

 

 あまりブランについては、しれなかったがこれ以上追求して怪しまれても面倒なため、ユリウスはここらで話を終わらせることにした。

 

「一応、忠告しておくぜ。原初の白(ブラン)は誇り高い奴だからな。原初の黒(ノワール)はお前なら問題ないと思うが、アイツは興味を持つと大変だぜ」

 

「忠告になってるのか。それ?」

 

「まぁ……アレだ。頑張れ」

 

 適当すぎるギィの忠告を受けて、その話は終わった。その後は問題なく会談は終わり、リーゼのことなど一気にユリウスの疲れが溜まったが、それは御愛嬌だ。

 

 

 

 ユリウスはゆっくりと目を開け、情報の整理を終える。根本的な問題は何も解決してはいないものの、ギィの話は情報として価値のあるものだろう。

 

 だが、別の問題が残っている。

 

 問題とは、聖文字(シュリフト)ついてことだ。本来、聖文字を与える人物は慎重に選ばなければならない。しかし、すでに原初の魔人ともう一匹に与えてしまった。

 

 どちらも個人的な理由で、なおかつ慎重さの欠片もない行動だ。だが結果的に大きな戦力と替えの利かない力が手に入ったのは間違いないことだ。

 

 だからこそ、「この結果がある種の必然性があったのではないか?」とユリウスは考えた。

 

 まず思いついた仮定は、聖文字には精神支配の権能があり、忠誠心を植えつけているのではないか? と言う考えだ。

 

 だが、この仮定はすぐに否定された。『平和之王(ソロモン)』には解析能力があるので。大抵のことであれば、解析することが出来る。しかし、聖文字にそんな権能はなかった。

 

 そのかわりにある逆説が生まれてしまった。それは、ユリウスに忠誠を捧げる可能性がある者に聖文字を与える事が出来るという仮説だ。

 

 チャンドラーとキューザックは、聖文字を与えることは出来ないはずだった。しかし、原初の魔人になると聖文字を与える事が出来るようになっていた。

 

 原因についてはまだわかっていないが、これは意思の有無ではないかと考えていた。まだ確証はないものの、十二分にあり得ることだとユリウスは思っていた。

 

 仮にこの仮説が合っていた場合、聖文字を与える者は最初から自分に忠誠心がなくとも構わないことになる。かなり厳選が楽になるのでそうであって欲しいものだが、決めつけるわけにはいかないため、ユリウスはある実験を行った。

 

 実験といっても簡単なもので、聖文字は人間以外の魔物や精霊にも適性を持つ者がいる。試しにそのうちの一匹に聖文字を与え、どうなるのか観察する実験だ。失敗しても聖別で奪えば良いので、多少の被害が出てもする価値はあるとユリウスは考えていた。

 

 その実験を行ったのがカルテン王国での事件が起こったすぐ後の出来事でそろそろ1年ほど経つのでユリウスは様子を見に行くことにした。

 

 

 

 

 

 聖文字を与えたのは、光の帝国から遥か北東に位置する森にいた元大地の上位精霊の妖精族(ドライアド)だ。元々この辺りの森に住処にしていたようだが、ミリムの暴走の影響で上位精霊からドライアドになったがほとんどの森が消え、自身も消える寸前でユリウスが見つけ聖文字を与えた。

 

 それ以降、ユリウスはドライアドに会っていない。経過観察では聖文字の力で森を復活させ、かなりの範囲で森を広げていることはわかっていたが、実際に森に入ったのはこれが初めてだ。

 

 森に入って少しした辺りで、ユリウスは強い違和感を感じた。森そのものが濃い霊子で満たされていて、まるで森そのものが一つの生き物であるかのようだ。

 

 違和感を持ちつつ森の奥へと進んでいくと、大きな湖が見えてくる。その湖の水上には大きな角を持った翡翠色の鹿が佇んでいた。その鹿の体表には薄い緑の蔓と樹の枝が巻き付いており、樹の枝からは美しい白い花がいくつも咲いている。

 

 鹿はすでにこちらに気づいているようで、ゆっくりとユリウスに近づいてきた。

 

「お待ちしていました。救世主様、このような姿ではありますがご容赦を」

 

 その鹿は、ユリウスに服従するように頭を垂れた。ユリウスは敵意が無いことはわかっていたが、思っていたよりも腰の低い姿勢に驚きながら、気になった事を聞くことにする。

 

「その救世主様って呼び方はやめてくれ。あと、なんで救世主なんだ?」

 

「少し、場所を変えましょう」

 

 ユリウスの問いに鹿は顔を上げ、宝石のような瞳でユリウスを見つめると、周りが逆行したように戻り始める。

 

「少しの間、私の記憶の旅にお付き合いください」

 

 そう言いきるのと同時に周囲の光景は森から荒れ果てた大地へと変わった。

 

「ここは以前、私が精霊だった頃の住んでいた森だった大地の姿です。16年ほど前、災厄が訪れ森はあっという間に消えさり、大地は荒れ果てまるで地獄絵図のような景色でした」

 

「そんな災厄がさらに広がり続けようとした時、空に広がる蒼き光の円環を見ました。それから私は、ある人間を見続けていました。災厄相手に向かっていく1人の人間を…………」

 

 それは当時の聖別の光景だった。ユリウスの視点ではわからなかった。被害者の視点。地獄絵図とは良く言ったもので、山も森も大地も等しく消えていく。そんななかで、遥か上空ではあるがミリムに挑むユリウスの姿は良く目立った。

 

 しかし、フェーダーツヴィンガーでミリムを拘束した辺りで周囲は先ほどの森の景色へと変わった。

 

「それから、全ての精霊統べる精霊女王ラミリス様が災厄の怒りを抑え、終わってしまいました……。ラミリス様は我らの森を癒すのではなく、災厄を救う事を優先しました」

 

 鹿は淡々と事実を語り続ける。そこに悲しみなどは見かけられず、ただ機械的に話している。

 

「恨んでいるのか?」

 

 精霊女王は同じ精霊ではなく、ミリムを助けたことを恨んでいるのかとユリウスは思った。しかし返って来たのは思った回答ではなかった。

 

「いいえ、ラミリス様の考える事が私のような者にわかるとは思えません。きっと何か考えがあると思っています。ですが…………、やはりショックでした。見捨てられたと言っていい状況に生きる意味をなくした私は、そのまま消えるつもりでした。そんな時に現れたのが、あの時に見た人間である貴方様です」

 

 なんとなく経緯がわかってきた。出会ったのは偶然だが、まるで会うべくして出会ったような…………例えるなら運命というやつだろうか。

 

 ユリウスとしては、運命という未来が決定しているような状態は嫌いだ。ユリウスにとって未来とは、自らが選び、掴み取る物だと思っている。しかし、これを偶然と片付けるには出来過ぎているようにも感じる。

 

 まるで知らない誰かが、運命の糸を1つに手繰り寄せているようで不気味だった。ユリウスは嫌な想像を振り払って話を続けた。

 

「それで、救世主って言うのは文字通り自分を助けてくれたからってことか?」

 

「少し違います。というより足りないというべきでしょうか」

 

「森は私であり、私は森そのものです。謂わばここは私の中と言っていい。故に、私は森の中に入った者の心がわかります。ユリウス様は、大量の魂を自身の力にされた事を悔やんでいるようですが、それと同時に、ユリウス様がいたからこそ助かった命や今を生きている命があるのです…………。そんな貴方様はまさしく我らの救世主なのです」

 

 その言葉には、今までまるで感じなかった強い感情が籠もった言葉だった。たがユリウスにその言葉は響かない。

 

「俺の心がわかるなら、その言葉に意味が無いことはわかるだろ…………?」

 

「わかっています…………。ですが言葉にしなければ、ユリウス様は助けた命の感謝すら認めないでしょう。ユリウス様の力になった魂の嘆きや恨みの声が忘れられないのは承知しています。私はただ、貴方様に感謝している者がいることを知って欲しかったのです……」

 

「わかってはいるさ。ただ、あそこまでして目的をちゃんと果たせなかった俺が許せなかったんだ……。そんな中途半端な俺が感謝されても、素直に受け取れない」

 

 ユリウスが助けた命は、死した者たちの魂を利用したからできた芸当だ。それはユリウスの望んだ過程ではない。光の帝国を建国したのも、けして民のためではなく、夢という自己都合だ。

 

 そんな自分に感謝する者の顔を見ることが、ユリウスには出来なかった。

 

「貴方様、私は貴方様が完璧な善では無いことを知っています。貴方様が自分の中の矛盾に悩んでいることも知っています。私を利用しようとしていることも知っています。

 貴方様は納得出来ないでしょう。それでも私は、貴方様に生きる理由を与えて下さったことを感謝しています。どうか、私の忠義と感謝を受け取っては頂けないでしょうか…………?」

 

 その言葉に嘘偽りなどないだろうと確信出来るほどに、強い感情が伝わってくる。ユリウスは今更自身の行いを後悔しているわけではない。ただ自分の所業は、魔王のやっている事と何が違うのかわからなくなっていた。

 

「………………わかった。その力、私のために使え…………」

 

 ユリウスではなく、ユーハバッハとしてその忠義を受け取った。ユリウスが結果に納得せずとも、エイクスは確かに救われた。その感謝を完全に否定してしまうことは、救った事実を否定したも同然だ。そんなことはユリウスには、出来ないことだった。

 

「まずは、名前だな。お前にエイクスュルニルの名を与える」

 

 翡翠色の鹿、否。エイクスュルニルは頭を垂れ感謝を述べる。

 

 

 

「ありがとう御座います。ユリウス様と陛下に忠誠を捧げます。どうかこの身をご自由にお使い下さい」

 

 

 

 これは、いつか生まれる光の帝国の最強の矛であり盾となる騎士団が生まれる前日譚。皇帝に仕える英雄の一人が、忠誠を誓った瞬間だった。

 

 

 

 

それは神話に残る英雄に救われながらも、その光に心を焼かれずに忠誠を捧げている

 

 

それは世界の法則すら書き換える大地の化身にして、あらゆる現象をも引き起こす

 

 

それは一つの大陸の流れすらも操り、森羅を掌握している

 

 

それは精霊でありながら妖精としての側面を持つ、世界でただ一人の種族である

 

 

 

 

    星十字騎士団(シュテルンリッター) 【F 森羅趨勢(ザ・フロー)

 

 

        エイクスュルニル

 

 





         エイクスュルニル

かつて上位精霊だった現ドライアド、本来であればドライアドになるはずだったが、聖文字の影響で半分精霊で半分妖精といった感じになった。一応人の姿にもなれるが、普段は鹿の状態で過ごしている。

エイクスュルニルは光の帝国の北東に存在する樹海にいて、大地や森の管理を行っている。大聖樹も樹として、扱われるためエイクスュルニルは、大聖樹の範囲内の大地を全て管理することが出来る。今後は農地等の管理を一任される。

存在値 4400万程(名前バフ、聖文字バフ、大聖樹バフ)

好きな食べ物 新鮮な果実

嫌いな食べ物 酒類

最近の悩み 陛下が色々なことを抱え込みすぎていること

欠点 時間にルーズなので時間の約束などが守れない

ラミリスについて 

ラミリスの行動に恨みなどはなく、精霊女王の決めたことだからと受け入れている。だがユリウスに忠誠を誓ったため、ラミリスのために動くことは、ユリウスに許された場合のみしかない。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

  • 1と2を知っている 
  • 1は知らないが2は知っている 
  • 1は知っているが2は知らない
  • 1も知らないし2も知らない
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