正義ではなく 悪でもない
権利ではなく 義務でもない
妄想ではなく 理想でもない
ただ一つの現実
それは夢
ミリムとユリウスの会合が終わってから数週間後、ギィ・クリムゾンは、見飽きた吹雪を観ながら黄昏ていた。
「随分と辛気臭い顔ね。ギィ?」
からかうようにギィに話しかけるのは、ヴェルザードだ。いつもの少女の姿ではなく、長い白髪に金色の瞳を持つ妖艶な美女の姿だ。
「やっぱり、アレは殺したほうがいいわ。きっと私達の害になる」
ヴェルザードの言うアレとは、ユリウスのことだ。ヴェルザードは初めて会ったときからユリウスを警戒し、危険視していた。
「その話は、前にもしただろ。オレはそれでもいいと思ってる」
ギィの言葉に不満を覚えたのか。ヴェルザードの機嫌はどんどん悪化していく。
「ルドラとアレを重ねているの? 確かに、あの2人は似ている。どちらも勇者であり、皇帝……
片や人は分かりあえると考え、世界の完全征服を望み。
片や人の未来に完全な支配は不要と断言し、傍観を望んだ。
どちらも人の未来を案じているのに、考え方はまるで正反対。似ているようで全く似ていないわよ?」
ヴェルザードの言っていることは、的を得ていた。実際にルドラとユリウスは似ている点はある。立ち場、種族、勇者の資格、ありとあらゆる部分で一致している。しかし、思想だけはまるで違った。
ルドラは世界を統一し、恒久の平和を樹立することを目指していた。
争いと貧困をなくし、人類が発展することを夢見て。全人類が統一されて平和になれば、誰もが平等に暮らせるようになる。
人間は理解し合える生き物と考え、やがて一つの意思に纏まり、より良い世の中を創り出していける存在だと、心から信じている。
対してユリウスの考えは逆だった。
世界の統一は人類の進化を妨げ、恒久の平和は人々を堕落へと誘うだけの甘い毒と考えた。
人類の歴史は争いの歴史であり、平等とは都合の良い部分しか見ない愚か者が考えた綺麗事の現実逃避だと。
一つの意思に纏まれば生物的な多様性はなくなり、時代の変化にいずれ耐えられなくなれば、滅びるだけだと断言する。
もし2人が相まみえることがあれば、分かり合うことなど絶対にないだろう。
「アイツらが似ているのはそうだが、重ねてはねぇよ。ただ、バカなみたいな理想を、本気で叶えようしているアイツを見るとな…………」
「甘すぎじゃないの? アレはミリムは許しても、殺さないとは言っていないわ。もし、またミリムが暴走したら、アレがどうするのやら?」
「その時は、また止めればいいだろ」
ギィ・クリムゾンは傲慢だ。だがそんな傲慢が許される程に、世界でも指折りの強さを持っている。だからこそ、また止めればいいと当然のように言う。
ヴェルザードは、ギィの判断に不満は覚えても何もしない。ユリウスを危険視してはいるものの、自分であればどうとでも出来ると考えているからだ。
「あっそ、なら勝手にしたら」
ヴェルザードは吐き捨てるように転移で何処かに消えてしまう。
「ガキか、アイツは」
拗ねたヴェルザードにギィは、思わずため息をつくがこちらを心配して言ったのだから可愛いものだと自分を納得させる。
「ギィ様!!」
突然、ギィの前にレインが転移で現れる。レインの表情は珍しく慌てており、何かあったのは明白だ。
「どうした? ラミリスがまた何かやらかしたのか?」
ギィが冗談混じりに言うが、レインは反応する余裕もないのかギィの冗談を無視して報告する。
「
「珍しいな。アイツがここに来るのは…………時期といい、急に来たことといい、何かあるな」
ブランはユリウスとの話でも出てきた名前だ。
「あら…………、酷いわね。わたくしをなんだと思っているのかしら?」
ギィの前に唐突に一人の女性が現れる。その美女は真っ白に輝く美しい髪と、白い雪のような肌、紅く色鮮やかな瞳を持ち、令嬢の様な儚げで優しそうな雰囲気を持っている美女だった。
「よう。久しぶりだな…………ブラン」
「えぇ、そうね。今日はお邪魔させてもらったわ
「オイオイ、オレには名前があるんだから、そっちで呼べよ」
「ごめんなさい。確かギィだったかしら? 印象が薄いからすぐに忘れてしまいそうね」
一見謝罪しているようにも見える嫌味を言うブランだが、ギィは気にした様子を全く見せずにいた。
「で? 何しに来た? オマエがここに用があってくるとは思えないが?」
「少し頼みがあって来たの」
「珍しいな。プライドの高いオマエがオレに頼みなんて」
「頼みと言っても簡単なことよ。少しだけ、わたくしのする事に手を出さないで欲しいの」
ブランから出た言葉で厄介事だと確定してしまった。いや、ギィはブランがわざわざ白氷宮に来た時点で厄介事だとは薄々わかってはいた。しかし、大したことではないことに期待していたギィは、見事に期待を裏切られたことを残念に思いながら、こめかみを抑える。
「何をする気だ?」
「一つ、人間の国を滅ぼすだけよ。よくあることでしょ? 迷惑はかけないわ」
確かに、人間の国を一つ滅ぼす程度であればギィとしては、特に言うことはない。ブランが滅ぼした国など両手では数えられないほどあるだろう。
ブランがわざわざ釘を刺しに来たのは、ジョーヌやヴィオレのちょっかいに半ば本気で対応したことが原因だろう。西側で活動しているジョーヌやヴィオレはしばらく大きな行動をとることは出来ないことになる。
今、ブランを邪魔出来るのはギィくらいしかいないのだ。(
「いいぜ。こっちからは手は出さねぇそれでいいな?」
「えぇ、それさえ呑んでくれれば問題ないわ」
ブランが後ろを向いて、さっさと転移で去ろうとするところをギィが引き留める。
「最後に聞かせろ。たかだか、人間の国を滅ぼすことが目的ってわけじゃないだろ? 何を隠してる?」
ギィの言葉に、ブランはゆっくりと振り返る。その顔は上品ながらも、顔は恍惚としており笑みを浮かべている。
「隠してたわけじゃないのよ。ただ、会いたい人がいるの。それだけ」
ブランは言い終えたと同時に転移で消えてしまう。ギィはブランの様子に不安を覚える。
「………………面倒事になりそうだな」
光の帝国内、銀架城の一室にてアンネリーゼは今にも掴みかかる勢いでエレナを睨んでいる。
「ねぇ、エレナお姉様。私はお願いしているの、わかる?」
「わかっていますよアンネリーゼ様。だから先程から断っています。それと、お姉様という呼び方は誤解を生みますのでやめて下さい」
今にも爆発しそうなアンネリーゼにエレナは氷のような無表情で冷静に返す。
「いいでしょ別に、お姉様がさっさとお兄様とくっつかないのが悪いんだから」
「婚約者だったのはかつての帝国の話です。私とユリウス様の両親は亡くなりました。なので婚約の話はなくなったはずです」
「そんなこと言ってさ、エルメシアさんとお兄様が一緒に旅するの一番嫌がってたくせに」
「一人で行動させたら、危険な行動をとるのですから反対するのは当然です」
アンネリーゼの問い詰めに粛々と返答するエレナ。アンネリーゼはエレナの態度を焦れったく感じたのか、さも呆れましたというポーズをとる。
「あぁ言えば、こう言ってさ結局、お兄様とはどうするつもりなの?」
「話がズレていますよ。こんな話をするために来たわけではないでしょう」
アンネリーゼの質問を真っ二つにぶった切ったエレナは、話を戻す。アンネリーゼも話がズレている自覚があったのか、反論することもなく従った。
「シーゲル王国との戦争に参加させることは出来ません」
アンネリーゼのお願いとは、自身が戦争に参加するということだった。
そうなった原因は先日、シーゲル王国から来た使者が、さも当然といった様子で語った内容が問題だった。
曰く、光の帝国は15年前に帝国が滅んだ事をいいことに、帝国の民達を奴隷のように扱っており、そこを支配しているユリウスは蛮族の王だそうだ。
もちろんそんな事実はなく、むしろ15年前に他国を侵略した、シーゲル王国の方がよっぽど蛮族というものだろう。使者はその場で打ち首にし、首だけをシーゲル王国へと送り返したので恐らく、遠くない内に戦争になるだろう。
「そもそもユリウス様ではなく、私にお願いしている時点で、この話が通らないことはわかっているはずです」
エレナの言葉が効いたのか、渋い顔になるアンネリーゼ。
「これじゃあ、何のために聖文字を貰ったのかわからないでしょ…………」
「聖文字は、アンネリーゼ様の身に何かかあった際に守れるように与えた力です。決して、戦争のために使う力ではありません」
拗ねるアンネリーゼに優しく諭すエレナ。2人は昔から姉妹のように仲が良かった。立場が2人を妨げても、それは変わらずに続いている。
「アンネリーゼ様、賢い貴方であればわかってくれるはずです。もう少し自身の身を案じて下さい」
「そういうのはお兄様に言ってよ。私なんて可愛いものでしょ?」
どうやらアンネリーゼは、ユリウスの悪いところが似てしまったようだ。自身の安全を全く顧みないアンネリーゼに、ユリウスの面影を重ねてしまう。
「駄目です。あきらめて下さい」
「最近、シーゲル王国が騒がしいんでしょ? 今回の宣戦布告だって絶対、何か企みがあるんだから。聖兵じゃあ心許ないじゃない」
「誰から聞いたのですか。その話は…………」
アンネリーゼの話は、まだ一部の者しか知らない内容のはずだ。当然アンネリーゼには知る由もない話だが…………
「チャンドラーにお願いしたら、すぐに話してくれたよ?」
「あのクソジジイ…………」
エレナの言葉遣いが思わず汚くなってしまう。それもそのはず、実はこのようなことは初めてではない。チャンドラーはアンネリーゼをそれはもう可愛がっており、アンネリーゼも甘え上手なため、ポロポロと重要な話を漏らすのだ。
たちの悪いことに、あえてチャンドラーに知らせずにいた話も、いつの間にかチャンドラーは知っていて、意気揚々とアンネリーゼに語りだすのだ。
エレナとしては、頭の痛い話だった。注意しても反省の気配もなく、ユリウスはアンネリーゼのある程度の自由を認めているため、大きく出ることが出来なかった。
チャンドラーはアンネリーゼ以外には話さないので、今まで見逃してきたがアンネリーゼのお願いが悪化するのであれば何か対策を取らねばならない。
エレナは仕事が増えたと、忌々しいクソジジイを脳内でボコボコにして精神を安定させた。
「ハァ、わかりました。ユリウス様には私から話しておきます。ですが、ユリウス様が却下されれば当然参加させることは出来ません」
「わかったよ。今回はそれで我慢する」
エレナの最大限の譲歩に諦めがついたのか、アンネリーゼは不貞腐れながらも、了承した。
数ヶ月後、光の帝国とシーゲル王国の平原にて、双方の兵が遥か遠くの相手と睨み合っていた。
「おぉ~いっぱいいるな〜。アレ何人くらいいるかな?」
天幕からアンネリーゼが見ている方向には、平原を埋め尽くす程の兵が見えていた。
「相手の軍勢はおよそ八万程です。アンネリーゼ様」
「八万かぁ〜大きくなったねシーゲル王国も。ここまで集まると壮観だね」
「アンネリーゼ様。あまり無茶を…………」
同じ天幕にいるザイドリッツから苦言が出るが、アンネリーゼは最後まで聞かずに遮った。
「わかってるよザイドリッツ。許可されたのは、初めの一撃と必要な時の砲撃だけでしょ?」
なんと、アンネリーゼはユリウスから戦争参加の許可を得ていた。エレナは許可を得られるのは想定外だったらしく、苦い顔をしていたが、これもアンネリーゼの想定通りだ。
「(お兄様は、私の味方だもんね。これくらいのことを躊躇ってたら復讐なんて夢のまた夢だもの♪)」
ユリウスは、アンネリーゼの夢を知っていて黙認している。今回の戦争は、復讐のための慣らしでしかない。流石に直接戦闘の許可は得られなかったが、それは仕方ないとアンネリーゼは諦めている。
「じゃっ! そろそろ始めよっか!」
「おぉ! お嬢様の勇姿、このチャンドラーしかと目に焼きつけましょうぞ!!!」
「チャンドラーうるさい! ちょっと黙ってて!」
「ハイ………………」
大袈裟な反応をするチャンドラーを黙らせたアンネリーゼは、先制の一撃を与えるべく、相手の軍勢が一望出来るほどの高さの上空に浮かんでいく。
「いきなり降伏されないような威力にしろって言われてるし、1割くらいでいっかな」
「おい、なんだアレ」
「…………? さぁ? 星か?」
「こんな昼間にあんなに明るい星があるわけないだろ」
シーゲル王国の兵達が上空に光る星を見上げる。当然昼間に星があるわけないと思って真面目に考えることはない。それが人生最後の時間と知らずに…………
「
青白く光る巨大な光線が、シーゲル王国の兵達に降り注ぐ。扇状に広がっていた兵達の左大半が跡形もなく、消えた。
「あぁ、楽しみだなぁ………………ねぇ、お兄様」
それは星の力を体現する十二の形を司る
それは全能の力を持つ皇帝の血脈にして、その才能を受け継いだ加護を持っている
それは神話に残ることなく消えた怨念を、呪いの力へと変える異能を有する
それは自らの夢のために、あらゆる手段を惜しまない復讐姫である
【Z
アンネリーゼ・ベルツ
アンネリーゼ・ベルツ
かつて、国と両親を同時に奪われた可哀想な子(当時10歳)その原因がミリム・ナーヴァだと知り復讐を望む。ちなみにミリムも被害者なのは知っているが、そんなの知るかって感じ。
ユリウスとは、元々仲の良い兄妹だったがミリムを殺そうとしたり、かつて好きだった帝国と同じような光の帝国を建国したりと、アンネリーゼが喜ぶことばっかしている。兄妹じゃなかったらヤンデレ化してた。
普段は、貴族としての振る舞いや戦闘を学んでいる。将来的にエレナのような立場になる予定。
ちなみに聖文字が星関連なのは、死に際に見た光景が星だったから。
存在値 540万
好きな食べ物 甘い物全般
嫌いな食べ物 苦い物全般
最近の悩み チャンドラーがウザい。身体の成長が止まってきたこと
欠点 ミリム関連のことになると一直線! 我慢が苦手
将来の夢 ミリムぶっ殺!!
ユリウスについて
大事な大事なお兄様。唯一残った家族であるため、失うことを恐れている。エレナと早く結婚して、新しい家族をつくれと思っている。
転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します
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1は知らないが2は知っている
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1は知っているが2は知らない
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1も知らないし2も知らない