転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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      かつての群れに帰るに如かず

      黒は鳴かず   白は飛ばず

        されど主に導かれん





白黒の鳥と黒白の君主

「これでいい? ザイドリッツ」

 

 空から降りてきたアンネリーゼが、先ほどと変わらない様子で確認してくる。ザイドリッツはそんなアンネリーゼの姿を見て内心恐怖でいっぱいだった。

 

「(初めての戦場で、何のためらいもなく軍勢の2割近く殲滅するなど常軌を逸している。昔の純粋無垢な少女とはまるで別人だ)」

 

 アンネリーゼは特に悲しむわけでも、高揚しているわけでもない。ただ、当たり前のことのように聞いてくる少女はとても戦場にいるとは思えない様子だった。

 

「ザイドリッツ?」

 

 何も返答しないザイドリッツに違和感を覚えたのか、再度ザイドリッツを呼ぶアンネリーゼ。

 

「ぁ…………、凄まじい一撃でしたな。アンネリーゼ様」

 

「うーん…………。どっちかって言うと失敗かな〜もう少し威力を抑えるつもりだったけど…………、これじゃあ相手の戦意は完全に喪失したんじゃない?」

 

「(2万近い人間を跡形もなく消し飛ばして、まだ手加減していたとは…………これが陛下の聖文字の力なのか…………それとも、アンネリーゼ様だからこそここまでの力になったのか…………)」

 

 ザイドリッツはアンネリーゼの力の考察を一度やめ、質問に答える。

 

「ドーラの報告によると、相手の兵は一時は混乱した様子を見せましたが、すぐに混乱は収まり逆に戦意が増しているようで」

 

「…………? 何で戦意が増すの? 味方が死んだら戦意って増すものだっけ?」

 

 アンネリーゼの疑問は最もだ。味方を鼓舞し状況を立て直すことは出来る可能性はあるが、それでもこの短時間に全軍の指揮を上げるのは、異常だ。

 

「相手の兵の様子は、異常の一言のようで興奮した様子でうわ言を繰り返しているとか」

 

「魔法とかかな? それともスキル? まぁ、この規模で出来るなら相当な相手だし、ソイツは私がやろうかな?」

 

 アンネリーゼはやる気の様だが、ザイドリッツがすぐに止めに入る。

 

「アンネリーゼ様。おやめください。直接戦闘は陛下からの許可は下りていません」

 

 その言葉を聞いて、顔を逸らすアンネリーゼ。忘れていたのか、注意されるまで無視する気だったのか不明だが、なんとか止めることに成功する。

 

「…………わかったよ。ここで大人しくしてるから、チャンドラー? 飲み物と軽食ちょうだい」

 

「ただいま! 用意致します!!」

 

 アンネリーゼはさっさと天幕へと戻っていく。どうやらすんなり引いてくれるようだった。

 

「(なんとか、抑えて下さったか。陛下に与えられた命は、アンネリーゼ様の監視と敵軍の殲滅だ。アンネリーゼ様に全て倒されては敵わない)」

 

 ザイドリッツが受けた命である敵の殲滅は、戦術的な意味での殲滅ではなく、文字通りの殲滅だ。殲滅の際、兵達を主に使いアンネリーゼを前線に出さないようにも言われていた。

 

「(相手は、何らかの手段で恐れを知らぬ軍勢。対してこちらは、滅却師の力を得た一万の兵達。数ではこちらが不利だが、こちらの兵達はアンネリーゼ様の一撃で士気は最高潮にある。武器をいつ、どこでも用意可能なのも兵達の動きの無駄をなくし、身軽に動くことが出来る。

 懸念点があるとすれば、こちらの滅却師としての実戦経験の少なさと相手の主力だな。前者はともかく、後者の主力は無視しきれん。場合によっては、ある程度の犠牲も覚悟すべきか…………)」

 

 ザイドリッツが今後の事を振り返りながら、作戦を修正していると、酷く慌てた様子の兵が現れる。

 

「ザイドリッツ様! 緊急の報告です!!」

 

「緊急? 何があった?」

 

「シーゲル王国が火の海と化していると!! 緊急の知らせが届きました!!!」

 

「………………何?」

 

 事態は誰も知らぬところで、急速に動き始めていた。しかし、誰も知らないはずの事態をただ一人、把握している者がいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「陛下、一体何をお考えになっているですか?」

 

 キューザックがいつもより硬い表情で、ユーハバッハに問う。

 

「それは、アンネリーゼに戦場に行く事を許可したことか? 

 

 それとも、シーゲル王国の惨状についてか?」

 

「どちらもです。陛下」

 

 ユーハバッハに何らかの考えがあるのは、キューザックは既に察していた。しかし、その真意は未だ不明であり行動を移すこともなく、銀架城の玉座で座り続けている。

 

「キューザック。私はな、一度負けた相手と同じ原初の悪魔相手に、先手を取られることは愚かだと思っている」

 

 原初の白(ブラン)の行動原理は不明な点がある。カルテン王国の配下の悪魔の暴走はともかく、なぜカルテン王国を配下の悪魔に支配させようとしていたのかは謎のままだ。

 

 相手がそこらの悪魔であれば、そこまで重要視する案件ではなかった。しかし、ギィと同じ原初の悪魔相手に悠長な考えをするつもりは、一切なかった。

 

 

 そのために、ユーハバッハはすでに手を打っていた。

 

 

 カルテン王国の件が終わって少し経った頃、ユーハバッハは、ある2羽の白いカラスと黒いカラスに聖文字と名前をを与えていた。

 

 2羽のカラスは群れからはぐれたカラスだった。白いカラスは他のカラスから、半殺しにされ群れに置いていかれ、黒いカラスは、唯一白いカラスを見捨てずに守るように寄り添っていた。

 

「ユリウス様、何故俺たちを助けたのでしょうか? 俺たちは戦うことも出来ないただのカラスです。力を与えるのであれば、他に相応しい者がいたのではないですか?」

 

 黒いカラスのムニンが、ユリウスに問いかける。

 

「その通りです。ボク達はユリウス様が助けるほど価値があるとは思えません。この力もユリウス様にとっては無用の長物なのでは?」

 

 白いカラスのフギンも、ユリウスにへと問いかけた。

 

「フギン、ムニン。俺は必要だったから助けたんだ。だから感謝する必要はないし、懸念するようなこともない」

 

 ユリウスは半ば確信していた。聖文字を与えられる者は何らかの要因ですでに決まっている。フギンとムニンを見つけたのは、2羽が偶然光の帝国に迷い込んだからだ。ユリウスは、たまたま2羽を見かけただけ。

 

 原初の魔人、エイクスュルニル、フギンとムニン、ここまでの偶然が重なればもはや必然だ。

 

「お前達の力を借りるぞ」

 

「「我らのような力であれば、如何様にもお使い下さい」」

 

 フギンとムニンの目が紅く染まる。ユーハバッハには、全てが見えていた。光の帝国だけではない。北の果てにある氷の大地から南にある大陸と間違える程の巨大な島、山脈に連なる大量のドラゴンの群れ、東に連立する国々、そして白の女王の姿さえも…………。

 

 

 

 

 

それは何の変哲も無い鳥でありながら、ただ一点に特化した力を持つ

 

 

それは異なる世界すら観測し、決して悟られることはない

 

 

それはあらゆる状態に共鳴し、世界規模に拡大した権能である

 

 

それは導きの元に導かれ、全能に干渉する権利を有している

 

 

 

         星十字騎士団(シュテルンリッター)

 

 

  【O 次元観測(ジ・オブザベーション)  【R 比翼共鳴(ザ・レゾナンス)

 

 

      ムニン      フギン

 

 

 

 

 

「キューザック、少し外に出る」

 

 玉座に座っていたユーハバッハは、突如として立ち上がる。

 

「では、お供を」

 

「いらん。私一人でいい」

 

「しかし…………」

 

「全て見えている。これ以上理由は必要か?」

 

「………………いえ、出過ぎたことを」

 

 キューザックはユーハバッハが何か隠していることを察した。ユーハバッハも気づかれていることに気づいているはずだ。その上で何も言わずにいる。キューザックは、歯がゆい思いだったが命令をのみ込んだ。

 

「(陛下が何を考えているか不明だが、何か考えがあるのだろう。私は陛下を信じるのみ)」

 

 そうして、玉座を去っていくユーハバッハの背をキューザックは何も言わずに見届けた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 アンネリーゼの一撃が炸裂したほぼ同時刻、シーゲル王国は地獄絵図と化していた。

 

「イヤァァァァァァ!!! やめて! 許して!」

 

「俺の腕が! 腕がない!! 誰か助けてくれ!!」

 

「おかぁさん! おかぁさん!! 何で! 何で!!」

 

「これは…………なんだ。何が起こってるんだ!!!」

 

「子供が!! 子供がいるの!! だからやめてください!!!」

 

「コイツをやるから! だから俺だけは見逃してくれよ!! なぁ!!!」

 

 阿鼻叫喚とは、このことだろう。多くの悪魔が受肉し民を襲っている。逃げようにも王国は炎の壁囲われ、街も火の海化していた。とても栄えている国には見えない光景だった。

 

 許しを請う娼婦の女性、腕をなくした冒険者と思われる男、母親の死体を抱き抱える少女、困惑して動けなくなる初老の男、子供を抱き抱え許しを請う母親、友人を売り自分だけが助かろうとする男。

 

 誰もが絶望し、逃げ惑っていた。だが逃げる場所などどこにもなかった。最初は、国の外にまで響くほど轟いていた叫びも徐々に小さくなっている。

 

「………………まさに悲劇だな」

 

 ユーハバッハは、火の海と化したシーゲル王国を上空から何もせず、ただ見ていた。

 

 敵国であるシーゲル王国の住民を助ける義務はない。そもそもこうなる事を知っていてユーハバッハとして来たのだ。皇帝は迷わず王城の門へと降り立った。

 

 すると、門が開きそこには灰髪の少年がいた。一見ただの少年にしか見えないが、かなりの強さの悪魔だ。原初の悪魔には及ばないが、相当上の地位にいる悪魔なのは察せられる。

 

「ようこそ、ユーハバッハ陛下。我が主君が中でお待ちになっております。どうぞこちらに」

 

 灰髪の少年は、礼儀正しくお辞儀をしてユーハバッハを城の中へと迎え入れる。案内役のようで、敵意などはないようだった。

 

「お一人で来られたのですか?」

 

 灰髪の少年は、ユーハバッハが護衛の一人も連れてこないことに違和感を覚えたようで、疑問を投げかける。

 

「必要のない事だと、お前はわかっているだろう?」

 

「………………ご慧眼恐れ入ります」

 

 それ以上灰髪の少年が話すことはなく、しばらく後をついていくと、街を一望できるテラスへと辿り着く。本来であれば、賑わっている街の様子を見れるはずだが、今は燃え盛る炎と崩れていく建物が見えるだけだ。

 

 ここまで案内した灰髪の少年は、役目を終えたとばかりに姿を消した。

 

 テラスには、二つの白い椅子と円形テーブルが一つ。椅子には座っている女性が見える。それは、雪のように白い髪と肌にルビーの如く輝く紅い瞳した女性だった。

 

「ようやく…………お会いできましたね。陛下?」

 

「…………そうだな。原初の白(ブラン)

 

 ブランは、見惚れる程の笑みを浮かべユーハバッハを歓迎する。原初の悪魔だと知らなければ、高貴な貴族だと勘違いするほどの神秘的な雰囲気を纏っていた。

 

 

 

 白の女王と黒の皇帝が相見える。そのことを知る者は、誰もいない。

 

 

 




         フギンとムニン

他と大して変わらない2羽の鳥、カラスに近い鳥であって地球と同じ鳥ではない。牙を持っており、主食は魚の海鳥。白い鳥のフギンは群れからその見た目から群れから追い出されていた。黒い鳥のムニンは、唯一群れの意向に従わずにフギンを助けた。

群れで生きられない鳥は、弱者として自然に淘汰されるはずだった。しかし、何の運命かユリウスが2羽を拾った。

普通の鳥のため、戦闘力はないが名前と聖文字を得た結果、精神生命体となりながら人と同じ知能を持ち、会話も可能になった。

存在値 100

好きな食べ物 魚

嫌いな食べ物 刺激が強い物

最近の悩み 戦闘が全くできないこと

欠点 綺麗好きで周りの環境にうるさい

ユリウスについて

感謝の気持ちがあり、ペットとして飼われていることに誇りを持っている。ユリウスの全知全能に干渉することが許可されているため他の星十字騎士団よりも信頼を得ていると思っている。


転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

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  • 1も知らないし2も知らない
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