四章始まりました。予告通り、光の帝国内部を詳しく書いていきます。新しいキャラがいっぱいが登場するので、四章が終わったらまた設定集を出そうかなと思っています。
謎解き要素を入れてるので、小さな伏線や意味深な描写が多くなります。終盤に答え合わせがあるので、探してみてください。
最後の一人と星八世貴族
「やはり……貴様とは相容れることはないな。ルドラ・ナスカ…………」
「だろーな。俺様もそう思うぜ」
「敗者が今更私の邪魔をするか……亡霊らしいな」
「敗者ねぇ……そう見えんのか?」
「貴様を敗者と呼ばず何と言う。人形風情に良いように操られる貴様は、道化以下だろう」
「意思ってのは、案外引き継がれるものだろ?」
「貴様の意思に意味など無い。愚者の理想は力あって成立するものだ。力なき愚者など、見るに耐えん存在でしかない」
「平行線だな。どのみち
「消えるがいい……ルドラ・ナスカ。亡霊に世界を変える資格は無い」
二人の勇者の違い
これは光の帝国のラストピースになる最後の一人の話
「どこ……ここ…………」
辺り一面に広がるのは、砂。砂。砂。青空と太陽、砂しかない光景だった。
「どういうこと……わたし自分の部屋に居たはずなのに。どうして…………?」
その少女は困惑していた。気がついたら砂漠に放り出されているのだ。困惑するのも無理はないだろう。
「落ち着け、わたし。確か定期診察が終わって、ベットに横になったのは覚えている。その後は……どうしたんだっけ?」
少女の頭はかつてない程に回転していた。しかし、記憶の最後はベットに横になった所まで、その後自身がどうしたのかは全く覚えていなかった。
「どうしよう……。あの後寝ちゃった? その間に誰かがわたしを誘拐したとか? でも何で? というか誘拐で何で砂漠に置いてくの? 拘束もされてないし、辺りには人どころか人工建造物すらないし…………そもそも横になってたのに車椅子に座ってるわで、意味わかんない」
少女から疑問が出ては、わからないの答えで終わる。そんな思考が終わったのは、地震のような揺れを感じ取ってからだった。
「地震? 違う……初期微動のない激しい縦揺れ。何が起きてるの?」
揺れは徐々に大きくなっていく。少女は経験のない揺れに味わったことない恐怖を抱いていた。ここからすぐに逃げたくなる衝動に襲われるが、その前にソレは姿を現した。
「何!? 地面が盛り上がってる! ちょっ、待っ……」
少女の言葉など何の意味もなく地面から巨大な口が現れる。少女が口だと認識出来たのは、ソレがミキサーの刃のような形状を持った鋭い歯がビッシリと生えていたからだ。
「ヒッッ!」
少女はソレが巨大な口だとわかった瞬間。自分の末路を悟った。ミキサーのような鋭い歯で、自分はジュースのように粉微塵にされてしまうのだと、思ってしまった。巨大な口に呑み込まれる寸前だというのに、体は硬直し言葉すら発することが出来ない。
「(死ぬ…………イヤだ。こんなのイヤだ…………)」
巨大な口は、少女を呑み込むように地面ごと持ち上げるが、ここで予想していなかったことが起きた。
少女が座っている車椅子に歯が引っかかったのだ。巨大な口も異物に気づいたのか、無理やり呑み込もうと歯がミキサーのような回転運動を始める。
その勢いで少女の体は空中に放り出され、砂の地面へと落下した。
「ハ……ハハッ。何よコレ、こんな化け物地球にいるわけない」
少女は目の前の現実を受け入れられなかった。巨大な口の正体はワームだった。ファンタジー作品などに出てくる巨大なミミズのような生物。当然、地球にそんな生物が生息している事は確認されていない。
だが、目の前で車椅子を鉄くずに変えたのは間違いなくこのワームだ。ワームは車椅子だった物を吐き出し、目がないのにも関わらず少女を呑み込まんと巨大な口を開いた。
「なんでよ……せめて最初で一息に殺しなさいよ! こんなのおかしいでしょ…………」
少女は涙を流しながら、叫んだ。自身でも何を言っているのかわからないままに、言葉を吐き出す。その言葉がワームに伝わるはずもなく少女を呑み込む…………瞬間、ワームが消えた。
「えっ…………」
ワームは消えたのではない。ワームが地上に出ていた部分が、とてつもない速さで飛翔してきた集団に食い千切られたのだ。
それは鳥ではない。鳥のような羽毛を持っていなかった。
それはコウモリではない。皮膜の翼は持っていたが、コウモリよりも遥かに大きかった。
それは恐竜ではない。プテラノドンに近い形状ではあったが、それよりも合っている生物を少女は知っていた。
「
それはワームと同じく、現実では確認されていない生物だった。ワイバーンの集団は自身より巨大なワームを一瞬で食い千切ったのだ。
そのワイバーンの集団は、凄まじい早さでワームを食べていた。既にワームの半分はなくなっている。
「そうだ……逃げないと」
少女は自身の状況を思い出し、横たわっている自身の体を起こそうと力を入れる。しかし、後ろから音が聞こえたのだ。それもかなり近い距離から…………。
少女は、声を出しそうになる衝動を抑えゆっくりと振り返る。見えたのは、視界いっぱいのワイバーンの顔だった。
ワイバーンが口をワームの血と思わしき紫色に染めながら、口を開いた。
「シ、ショウゴウヲ! ショウゴウヲ!」
「喋った…………?」
ワイバーンは拙い言葉ではあるが、確かに人の言葉を発していた。
「ショウゴウヲ! ショウゴウヲ!」
「称号? 何それ……」
少女は称号が何かわからず、思わず呟いた。少女は目の前の事態に動転していて、気づくことが出来なかった。言葉を話すことが出来るという事は、言葉を理解しているという可能性に…………。
ワイバーンが同じ言葉を続けることをやめ、唐突に少女を見つめる。
ガラスのような瞳が少女を射抜き、少女の体は恐怖で動かなくなってしまった。
いつの間にか少女の周囲はワイバーン達に囲まれており、逃げ道は完全に断たれてしまった。
「リ、リヒトノ……タミ……ジャナイ!」
「ジャナイ!」
「タベテイイ!」
「タベテイイ!」
「タベテイイ!」
少女はそこで自分が失敗したことに気づいた。あの質問は食べていい人間とそうではない人間の確認だったのだ。
「(あっ……今度こそ死んだ。ワームみたいに引き千切られて死ぬんだ。わたし)」
絶望が脳裏をよぎり、目を完全に閉じてしまう。しかし、痛みは何時までもやってこなかった。
何時までもこない痛みに疑問を覚えた少女は、ゆっくりと目を開ける。そこにはワイバーンの死体があった。斬られた跡のようなもの残し、一匹として生きている者はいない。
「えっ…………」
今日、何度目の驚きかわからなくなってきた少女に声がかかる。
「大丈夫?」
「えっ……」
少女に声をかけた人物は全身を黒い鎧で覆い、赤黒いマントを羽織っている。鎧のせいで男性か女性なのかもわからないが、中性的な声で少女の様子を窺っている。
「大丈夫……です」
「それは良かった。大きな怪我は負っていないようだし、ひとまず安心だ」
「あの……なんでここに?」
少女は動揺で頭が鈍っていたが、明らかにおかしいことに気付いている。
見渡す限り一面の砂漠でどうしてここにいるのだろうか?
全身を鎧で包みながら砂漠にいるのは、どう考えてもおかしい。ただの自殺行為だ。
少女は頭の中に抱いた疑問を口にするよりも先に言葉が出てしまった。
「君がここにいると聞いて、急いで向かってきたんだ。色々話したい事はあるけど、こんな所で話すことじゃないし場所を変えよう」
「…………わかりました」
疑問も疑念もあったが、少女はそれどころではなかった。たとえ何かあったとしても、ワームに呑み込まれたり、ワイバーンに食い千切られるよりはマシだろうと…………。
黒騎士が倒れている少女を背負った所で、2人の前に赤褐色のワイバーンが降り立った。
「何をしに来た…………レグネジィ」
黒騎士が、先程よりもずっと低い声と厳しい口調でワイバーンに問いかける。
「そういう騎士団長様は、こんな所で人間を手助けとは随分と暇のようだな」
レグネジィと呼ばれたワイバーンは、先程のワイバーンの片言な言葉とは違い、流暢な言葉で黒騎士を挑発する。
「私は陛下の命でここにいる」
「陛下? その人間の女を助けるのが?」
レグネジィは訝しげな様子だ。そう思うのは当然だ。こんな砂漠で一人の少女を助けることが陛下の命だと言うのは、普通に考えれば怪しいだろう。
「(陛下って何!? ってかめっちゃワイバーン喋ってる!?)」
一方で、話題の中心にいる少女は話の内容に全くついていけないようだった。話の邪魔にならないように疑問を抑えつけ黙ることが、せめて少女に出来ることだった。
「疑わしいと思うなら直接確認するといい」
「…………いいや、必要ない。一応お前は団長だ。陛下の命を騙る愚図を団長に任命するはずもない」
一触触発の雰囲気は、意外にもレグネジィが引いて鳴りを潜める。
「精々、その席に泥を塗らない事だな。団長」
レグネジィは、そう言い残してあっという間に飛び去ってしまった。
「(急に現れたと思ったら、あっという間にいなくなったり、なんだったんだ。今の?)」
「すまない。無駄話を聞かせて」
少女が急すぎる展開を脳内でツッコんでいると、黒騎士が謝罪してくる。
「えっと、わたしは特に問題ないですよ? 何の話かもついていけなかったですし……」
「それはそうだが…………いや、君の気遣いを素直に受け取ろう。これ以上時間を無駄にする前に、まずは君を安全な場所に運ぼう。少し急いで飛ぶから、しっかり掴まっててくれ」
「…………飛ぶ? それってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
少女が言い終わる前に、黒騎士は少女を背負いながら、飛行機を軽く越えるスピードで飛んだ。
こうして、少女こと松平桐乃の波瀾万丈の異世界生活が始まった。
松平桐乃と黒騎士が出会った頃、
「全ての星八世貴族が揃うのは何時ぶりだ?」
髭を蓄え、軍服のような服を着た体格の良い男、フォルトン公が周りの公爵に問いかける。
「さぁ? ここ100年でそんな記録がないのは確かね」
赤いドレスを着た未だ二十代と言われても通じるであろう金髪の女、ロレーヌ公が答える。
「少なくとも、我らの代では初めてのことじゃ皆、失礼のないようにな」
この中で一番高齢であろう白髪の老人、アーレンベルク公が他の公爵達に注意を呼びがかける。
「それより重要な事は、なぜあの方々が全員集まるのかということです。それほどの事態が起きた。又は、起きようとしているという事なのでは?」
中年でメガネをかけた文官のイメージが強い細身の男、テック公はこの異常事態の原因を考えていた。
彼らは、星八世貴族と呼ばれる者達だ。彼らは貴族の中で最も権力を有しており、帝国で唯一私兵を持つことを許されている貴族でもあった。
そんな彼らが緊張することなど、皇帝陛下との謁見くらいしかないと思われがちだが、星八世貴族の中でも序列という者があった。
特に、今この場にいない四人の公爵は、星八世貴族が生まれてから一度も変わることがなく、君臨し続けている正真正銘の化け物達だ。
普段は会議に出ることすらない四人が、同時に集まることなどないはずだった。だからこそ、彼らは緊張していた。もちろん全員そのような様子は全く見せずに、他の公爵達の様子を窺っている。
「テック公、そなたの考えもわかるが、あの方々の腹を探ろうとはしないことじゃ」
それは、本心からの忠告だった。普段は蹴落とし合う貴族でもやってはいけないタブーというのはある。光の帝国に産まれた者達は、ソレを無意識に避けようする。この忠告も、そんな考えがあってのものだった。
「わかっていますアーレンベルク公。ですが、思考を止めては意味がありません。我々には帝国を守る義務があるのですから」
「フンッ! そもそもあの方々は何を考えている。普段はまともに会議に出ずにこちらの口出しばかり、皇帝陛下も何故何も仰らないのだ!」
「ちょっと、変なこと言うのはやめてちょうだい。貴方が不敬な事を言うのは勝手だけど、私を巻き込まないで」
それぞれが各々の思惑を持ち、相手の思惑を探ろうとしている。そんな中で、部屋の扉がノックもなしに開く。
「お待たせしました」
そう言って、入って来たのは4人の公爵達と一人のメイドだ。公爵達はそれぞれが各々の席に着き、メイドは8人の席に紅茶を淹れた後、部屋の扉の近くで待機する。
「何をしている。速く出ていけ」
フォルトン公がメイドに命令するが、メイドが動く様子はない。その態度に癪に感じたのか。声を少し荒げ、警告のように言おうとする。
「おい、これは…………」
「良いの良いの、私が許可したから」
が、その前に部屋に入って来た公爵の一人に止められる。
「星八世貴族での会議は、我々以外に内容を知るのは禁じられているはずでは?」
「私が良いって言ったの。わかるでしょ、フォルトン公?」
フォルトン公の言った事は正論だ。しかし、この場での序列において逆らう事など許されなかった。
フォルトン公は何も言わずに黙る。部屋が静寂に包まれた所で、会議が始まった。
「それでは、星八世会議を始めます」
宰相 エレナ・ハッシュヴァルト
首都ゼーレ統括 テスタロッサ・ヴァイス
南西都市ナハト統括 アンネリーゼ・ベルツ
北東都市ヴァルト統括 ヨハン・ザイドリッツ
南方都市ブリエ統括 フランツ・テック
北方都市アルテ統括 エーベルト・アーレンベルク
北西都市クレイド統括 アンリ・ロレーヌ
南東都市レヴォルト統括 マルクス・フォルトン
これは光の帝国で起きる一つの事件の序章である
新キャラが7名も出てきました。大事なのは前半の2人と一羽なので、最悪後半の4人は流してもいいです。
星八世貴族について
星八世貴族とは、貴族の中で最も位の高い8名の公爵がそう呼ばれている。一応は序列などはなく、同列とされている。
それぞれの星八世貴族が、首都ゼーレを六芒星の形で囲むように都市を管理しており、例外的に宰相と首都統括がいる。
上位の星八世貴族は一度も変わっておらず、下位の星八世貴族は度々変わっている。
転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します
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1と2を知っている
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1は知らないが2は知っている
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1は知っているが2は知らない
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1も知らないし2も知らない