花粉で死にかけてる作者です。この時期は体調が終わるので投稿が遅れる可能性がありますが、あしからず
光の帝国で最も安全な銀架城の最奥のユリウスの私室にて、レオナルドが会議が終わってからすぐにユリウスを問い詰めていた。
「それで陛下、一体何を考えているんだい?」
そう質問を投げかけるレオナルドの表情は少し冷たさがあった。相当、怒りがあるようだ。
「陛下か……。ユリウスとは呼ばない辺り、会議で何かあったのか?」
「惚けないでくれよ。私はね、別に家族を特別扱いするなとは言わないさ。けどね、公私の区別くらいはつけて欲しいよ」
アンネリーゼの扱いに苦言を訂するレオナルド。レオナルドは、ユリウスがアンネリーゼを甘やかしていると思っているらしい。
「まるで俺が何か知ってる前提の話だな」
「私がそこまで鈍いと思うのかい? 態々エリアスに向かわせたのも、私に面倒を見るように命じたのも全て考えあっての事なんだろう?」
「さぁな、案外適当な理由で任せただけかも知れないだろ? まあ、もし名探偵に推理があるなら聞かせてくれよ。レオナルド……」
あくまでも知らないという体をとるユリウスに、レオナルドは若干の苛立ちを覚えたがユリウスのペースに乗らないように冷静に対応する。
「推理も何もないよ。突然転移して来た桐乃を偶然エリアスが拾うなんてあり得ない事だろう? つまり陛下は…………」
レオナルドの言葉を遮るように、コンコンッと私室の扉がノックされる。
『陛下、御報告がございます。よろしいでしょうか?』
「ここまでだな……」
声の主はマリーだ。おそらく会議の件の報告に来たのだろう。これ以上話を続けるわけにいかなくなったレオナルドは、最後に友人として問いかける。
「ユリウス、君は何を考えて桐乃を私に預けたんだい? 私の時みたいに自分でやれば良いじゃないか」
「お前の時は俺しかいなかった。だが、今回は別だ。俺よりもレオナルドが適任だと判断した。リーゼに関しては全てが終わった後に話す。それまでは命じた通りにしてくれ」
はっきりした事は言わずに、暗に信頼してくれと言ってくるユリウス。
「君は本当にズルいよ…………。そうやって、誰かの心をいつも利用する」
「恨み言は後で幾らでも聞く。今は彼女を頼む。■■」
「その呼び方はやめてくれ…………。今の君と向き合う気になるほど、私は強くない…………」
最後に悲しげな言葉を言い残し、レオナルドは転移で私室から姿を消した。
「入れ」
「失礼いたします…………。陛下、何かありましたか?」
部屋に入ってきたマリーが、何か違和感に気づいたのかにユリウスを心配するように問う。
「何のことだ」
「いえ……余計な真似を致しました。アンネリーゼ様の報告に参ったのですが…………「不要だ」……」
マリーの報告をユリウスは途中で遮り、皇帝ユーハバッハとして命令する。
「アンネリーゼについてはこれまで通りでいい。時期が来たら行動に移せ」
「御身の御心のままに」
ユーハバッハの命に、マリーは自身のスカートの裾を摘み礼をする。同時にマリーの影が蠢き、部屋にはユーハバッハ一人が残った。
既に光の帝国が渦巻く策謀の嵐へと、桐乃は巻き込まれている。本人がその事に気づくのは、もう少し後のことだった。
「レオナルド? 大丈夫ですか?」
外の景色を眺めながら放心していたレオナルドを心配するように、桐乃が声をかける。
「…………ん? あぁ、大丈夫だよ。ちょっと考え事があっただけさ」
「そうですか……。もうすぐヴァルトに着くみたいですよ」
心配した様子の桐乃にレオナルドは問題ないと伝え、旅に出る前の事を誤魔化した。
「そういえば、たった3日で着くと思ってませんでした。思ったよりも近いんですね」
「もしかして気づいていないのかい?」
何やら、桐乃は勘違いしているようでレオナルドは認識を正すために一つヒントをあげた。
「窓を開けてみると良いよ。すぐにわかるさ」
「…………?」
レオナルドの言葉に疑念を浮かべた桐乃は、言われた通りに窓を開けると物凄い勢いの風が桐乃を襲った。
「ちょッ! 何ですかこれ!」
「車とかが走ってる時に窓を開けると、風が凄いだろう? それと同じだよ」
「そんなレベルじゃないですって!」
風で車内が髪と音が凄いことになりながら説明するレオナルドに、桐乃は大声でツッコむ。
実際、馬車は車の数倍の速度が出ていてその分の風は凄いことになっていた。
「何で馬車でこんな速度が出るんですか!?」
「馬車の下を見るとわかるよ!」
風の音がうるさい中の疑問に聞こえるように、大きな声で答えるレオナルド。桐乃が馬車の下を窓から覗くと馬車の車輪や馬の脚からキラキラと光る砂のような粒子が出ていた。
しかし、桐乃はそれ以上に驚くべき事実を見た。
「う、浮いてる…………」
馬車が地面から数十cm浮いた状態で走行していた。その光景に桐乃はまたもやツッコんでしまう。
「またハ◯ー・◯ッターじゃん…………」
「私は巨体の校長でも、馬がペガサスな訳でもないぜ?」
「ツッコむ所そこですか…………」
あまりにも的外れなツッコみに辟易としてしまう桐乃だった。
北東都市ヴァルトは、北に広大な樹海が特徴の農業都市である。管理された気候や土壌によって不作が起きる事はなく、毎年大量の農作物を生産し、他の都市へと送っている。
そんな自然に溢れた都市にやって来た桐乃は、その景色に圧倒されていた。
「凄いですね。これ全部が小麦畑なんですか」
桐乃は、馬車から顔を出し辺り一面に黄金色が広がる小麦畑を見渡していた。
「ここは、ヴァルトの南ら辺で小麦を主に育てているんだ。ちなみに稲作も今研究中だよ」
稲という言葉を聞いて、桐乃は突如首をレオナルドに向け目を最大限開いた状態で問い詰める。
「稲作? つまりお米なんですか。そうなんですね!?」
「あ、あぁ……そうだよ。いずれは白米も食べれるようになるよ」
突然様子がおかしくなる桐乃に、レオナルドは引き気味になりながら伝えると、桐乃はこれまで一度も見たこともないような笑顔で鼻歌を歌い始める。
「そんなに米が食べれるのが嬉しいのかい?」
「当然じゃないですか! 日本人の魂ですよ! レオナルドはもっと自分を誇るべきです!」
「誇るなら、もっと別の事で誇りたいよ。私は……」
『お二人共、そろそろ都市部のお屋敷に到着します。ザイドリッツ様には話を通しておりますが、どうなさいますか?』
御者席の方からドーラの声が聞こえてくる。ザイドリッツという名前は確か同じ星十字騎士団だと、レオナルドが言っていた。あまり出くわしたくないので街に出たいが、ここでのわたしの立場は助手だ。一人での行動は難しい。
「そうだね……。ザイドリッツもこの時期は忙しいだろうし、話はドーラから伝えてくれ。私達は、視察ついでに街に行ってくるよ」
『畏まりました。では、そのように』
話の内容がまるで読めない。この時期が忙しいのは何故だろうか? レオナルドの話では、ヴァルトの収穫時期はもう少し先の筈だ。忙しいのは他に理由があるのだろうか? それとも、普段から色々仕事があるとか?
桐乃の考えを余所に、馬車は大きな屋敷についてしまった。レオナルドに続いて桐乃は馬車を降りると、ふと視線を感じた。
「どうしたんだい?」
急に止まった桐乃を、レオナルドが心配して聞いてくる。
「何かに見られている気がして…………」
「あー、それはね。アレだよ。アレ、すぐにわかるというヤツだよ」
明らかに何か知っている反応だった。わたし達を監視している者がいる。レオナルドは何故気づいているのに黙っているのか、もしかして監視の目標はわたし?
桐乃は、レオナルドが騙そうとしている可能性が頭を過ってしまう。
やめよう。今更レオナルドを信じない事にしても仕方ない。わたしにはレオナルドを頼る道しか無いのだ。余計な疑いは却って危険だ。
「とりあえず、数日はこの屋敷で過ごすから。視察が終わったら街に出ようか」
メイドさんに屋敷の部屋を案内された後、桐乃はレオナルドの部屋で今後の予定を聞いていた。
「結局、視察って何をするんですか?」
「簡単だよ。ちょっと樹海にピクニックに行くだけさ」
聞いた限りでは樹海は、かなり広大でこの都市よりも広いと聞いているのだが、そんな樹海をピクニックなんて遭難しに行くようなものだ。
「死にに行くんですか?」
「急に何!? 死なないよ別に!」
突拍子もない桐乃の発言に、いつもボケているレオナルドも思わずツッコんでしまった。
「大丈夫だよ。私と一緒なら迷うこともないし最悪、樹海の主が助けてくれるよ」
「樹海の主?」
「そう、人々の怨念が「そういうの良いんで」……今日は桐乃が冷たい……」
怖がらせようとするレオナルドの戯言に桐乃は容赦なくぶった斬った。
「とりあえず、迷ってもちゃんと導いてくれるから大丈夫だよ」
桐乃が会話に付き合ってくれないせいで拗ねたのか、説明が適当になるレオナルド。結局、まともな説明を受けられずに桐乃は樹海に足を踏み込む事になったのだった。
ヴァルト北部の樹海には一つの噂がある。元々、樹海は限られた人間しか入ることは出来ない。樹海までの道はやりすぎというくらいに警備が厳重であり、間違っても入る事のないようになっている。
しかし、警備の軍人がなんの間違いか樹海に踏み入り迷ってしまう事があったという。それ以来、その軍人が戻ることはなく警備はより厳重になったとか…………。
「こんな話がある場所だから嘘じゃないんだってば!」
「結局、噂じゃないですか……。よくある怪談話ですよ」
レオナルドは必死に先程の話が嘘ではないと力説するが、現代日本に生きてきた桐乃からすれば馬鹿馬鹿しい話だった。
「そもそも、レオナルドの言った樹海の主とやらは一体誰が見たんですか? 誰も戻った事がないのなら、見るはずがないじゃないですか」
「そりゃあ、私の友達だからね」
あっけらかんとした様子で言うレオナルドに、桐乃は益々疑わしく思う。
「友達ですか? 樹海の主とやらが?」
「まぁ、会うことがあったら挨拶しようか。桐乃とも長い付き合いになるんだし」
長い付き合いとはどういう意味なのだろうか……。少なからず、わたしはレオナルドの言うホラーチックな存在とよろしくはしたくない。
レオナルドの意味深な発言にモヤモヤした感情を浮かべる桐乃だが、ふと馬車の窓から外を見ると大きな白い建物が建っている光景が見える。
「レオナルド、あの白い建物はなんですか?」
「アレは、軍の建物だね。あの奥に樹海が広がっていて、アレは樹海にいる魔物が街に入らないようにしているんだ」
「なんというか、無機質なデザインの建築ですね」
桐乃の感想通り、それは樹海を隠すように街を覆っている城壁のようだった。石壁のように石の文様があるわけでもなく、ツルツルと真っ白な材質のナニカが使われていて、とても自然の物を加工して作ったとは思えず何処が圧迫感があった。
しばらく眺めていると馬車が止まる。何事かと前を覗くと、なにやら巨大な真っ白な門の前に検問所のようなものがある。どうやら軍人と思われる者に馬車を止められたようだ。
しかし、何処か軍人達は警戒したように馬車を囲み出し御者に問いかけた。
『何者だ! 答えろ!』
「ちょっとレオナルド! どう見てもマズイですよこの状況!」
「うーん。ちょっと早く来すぎたかな……」
どう見ても警戒している軍人を見てマズイ状況だと悟る桐乃だが、レオナルドは面倒そうな表情で何一つ焦る様子はない。
「なんで、わたし達止められてるんですか!?」
「原因は色々あるけど、そもそもここに来る馬車なんて基本存在しないしね。強いて言うなら行きで使った白い馬車だけど、アレは何処でも通行が許可される特別な馬車だからね」
「なら、どうして態々馬車を乗り換えたんですか!」
「簡単だよ。そんな特別な馬車は乗れる人間も限られるし、御者だって限られてる。御者のドーラにザイドリッツの所に行かせたからね。だから普通の馬車しかなかったんだ」
レオナルドの解説は有り難いが、御者はなんて答えたら良いのかわからずにオロオロしている。まさか馬車が止められるとは思わなかったのだろうか。
『中にいる者は、出て来い! 出てこないのであれば、貴族だろうと容赦は出来ない!』
「これは私のミスだね。ちょっと早く動き過ぎたみたいだ」
レオナルドはそう言って、馬車のドアを開き降りていく。その足取りはピクニックに来た人のように軽やかだ。
「やぁ、済まないね。此方の通達が遅れてしまったみたいだよ」
「貴様は何者だ……」
レオナルドの緊張も見せない軽い口調に、軍人達は余計に違和感を覚えたのか、更に警戒した様子で問い詰める。
「格好で見てわかるだろう?」
「そのような軍服があるか! 巫山戯たことをするのであれば、容赦はしない」
「もう少しちゃんと見てくれよ」
軍人達は霊視兵装と思われる弓を展開し警告するが、その様子をまるで気にせずに、レオナルドは自身の左胸辺りを指差す。軍人達は訝しげに左胸辺りを見ると、次第に顔を青褪め即座に敬礼する。
「「「「「し、失礼致しました!!!」」」」」
「こっちの通達が遅れたせいだからね。気にしてないよ。君達が頑張ってくれると私も安心だよ」
緊張した軍人達に、レオナルドが軽い口調で問題ない事を伝えると少し空気が弛緩する。ひとまず問題は解決したようだ。
「一言くらい謝ったらどうですか……」
馬車に戻って来たレオナルドに一言注意する桐乃。
此方側の不手際なのであれば、軍人さん達は何も悪くない。むしろ謝ったほうが良い。
「いや、そういう訳にもいかないよ。今は星十字騎士団としての仕事中なんだよ?」
「立場上ってことですか? そう言う割に軍人さん達は気づいてなかったみたいですけど」
「正式な設立がつい最近決まったばかりだからね。まだ浸透してないんだよ」
軍人さん達の軍服は、濃い緑だった。白い軍服の上官なんて見たことがなかったのだろう。もしそうだとするとおかしな事がある。
「なら、なんで軍服さん達は納得してくれたんですか?」
「それはね。コレだよ」
そう言って、自分の左胸に付いている真円状の金属製バッチを指差す。バッチは星型のマークがついていて、至ってシンプルなデザインだ。
「コレは陛下が創ったバッチで、所謂勲章みたいな物だよ。コレを持っている人間は、星十字騎士団のメンバーだけなんだ」
「…………ん? そんな周りくどい事をするなら、星十字騎士団をさっさと設立すれば良かったのでは?」
桐乃の疑問は、思わぬ形で返ってきた。
「そりゃあ、星十字騎士団のメンバーは決まってる上に君が最後だからね。ようやく全員揃ったから設立したんだよ。
そもそも、表向きは英傑が揃う光の帝国の守護者って言う設定だからね。今後も表に私達が出る事は無いんじゃないかな?」
レオナルドが言うには、星十字騎士団は他の立場と兼任していて既に国の中枢に入り込んでいるようで、あくまでそういった存在がいる事を正式に発表するだけで、詳細は謎のままにするのだとか…………。
勲章は立場上、国の内部に所属していない者の為の物でしかなく、存在を発表させるのも急ぐ必要がなかったからだとか。
「なんか、思ったよりも適当ですね」
「この国自体がかなり歪だからね。究極的に言えば、陛下と星十字騎士団さえ居れば光の帝国は成り立ってしまうんだ。国民も貴族もその他全ては代替可能な物とする。酷いくらいに完璧だよ」
それは一体何に対する言葉なのか、わたしにはわからなかった。ただ、それが皮肉だと言うのが辛うじてわかったくらいで、レオナルドの表情は酷く渇いていた。
軍人達とのトラブルが終息し、馬車は10m以上はある巨大な白い門をくぐり抜け、樹海へと入っていく。
「道はちゃんと整備されているんですね」
樹海と言うくらいだから、道らしい道など存在しないと思っていた桐乃だが、整備された平坦な道を見て意外そうな顔をする。
「ここから少し先に進むと専用の家があるんだ。あまり私も来ないけど、滞在する時は使っているんだ」
「まさか、泊まりませんよね?」
桐乃が恐る恐るレオナルドに問いかける。流石に樹海の中で数日滞在するのは嫌なのだろう。
「今回はすぐに終わるから滞在はないよ」
レオナルドの言葉に、最悪のケースは回避されたと安堵する桐乃はゆっくりと息を吐き出す。
その際、桐乃は目を閉じてしまった。
次の瞬間、桐乃は馬車ではなく舗装された道も見当たらない場所にいた。
辺りは空まで木が生い茂り、昼間にも関わらず周囲は薄暗く地面も苔に覆われている為、足場も悪かった。
「えっ……何……コレ…………」
桐乃はただ混乱するしかない。馬車に居たはずが知らない場所にいるのだ。混乱するのは仕方ない無いだろう。
「とりあえず落ち着いて……、どうすれば良いんだろう…………」
桐乃に遭難した時の対処法など知るはずも無い。しかも場所は樹海で雰囲気はホラーチックだ。桐乃はパニックにならないように深呼吸をしつつ冷静を保っていた。
「せめて日向の方に行こう…………」
樹海と言う名に相応しく、木々が犇めき合い陽光はまるで地面に当たらない。人の手が入ったような道は当然なく、地面は苔でびっしりと埋め尽くされた道を滑らないようにゆっくりと桐乃は歩き始める。
しばらく歩き続けると開けた場所に出る。そこは広い湖で暖かな陽光が当たり、中心には小さな島がある。自然の雄大さを感じる神秘的な空間だった。
「ようやく、会えましたね」
女性の綺麗な声が後ろから聞こえてくる。桐乃はビクッと体を震わせ、慎重に後ろに振り向くとそこには大きな角の鹿がいた。
普通の鹿ではない。鹿は翡翠のような体色を持ち、その体には無数の蔓と細い枝が巻き付いており、枝からは白い花が咲いている。
体長も鹿の中でも大きめなヘラジカよりも大きく、3m以上はある。
そんな見たこともない鹿が、桐乃の真後ろで見下ろしている。
「えっ……と。し、失礼しました…………」
桐乃はそう言って、そそくさとその場を離れようとするが翡翠の鹿はそれを止める。
「そう怖がらずに、少し話しましょう。ここに人が来る事はあまりありませんから」
「は、はい…………」
出来ればいいえと断りたかった桐乃だが、そんな勇気が彼女にあるはずもなく、静かに頷く事しか出来なかった。
翡翠の鹿がゆっくりと湖の上を歩み始め、中心の小島へと向かっていく。しばらくした所で思い出したように桐乃の方を振り返った。
「貴方も此方にどうぞ」
もしや、この鹿は湖を泳げと言っているのだろうか。人は普通、水の上を歩く事は出来ないのだが……。そもそもわたしは泳いだ事もない。
仕方なく桐乃は産まれて初めての水泳を試み一歩踏み出すが、足が水に沈む事はなく、足を押し返す様に浮かぶ。
「水の上を歩いてる…………」
「フフッ、客人に泳げと言うつもりはありませんよ」
桐乃の考えが見透かされたのか、上品に微笑む翡翠の鹿。恥ずかしさを覚えた桐乃は顔を真っ赤にするが、何も言い返せず大人しく水の上を歩き、小島へと向かっていく。
「どうぞ、出せる紅茶はありませんが陽光が心地良いでしょう?」
遠くからは見えなかったが、小島には無数の蔓が絡み合って出来た椅子とテーブルがあった。翡翠の鹿に促され椅子に座る。
翡翠の鹿に饗されるという不思議な体験をしていると、翡翠の鹿が突然繭のように蔓に包まれる。蔓は徐々に形を変えていき繭が解けると、そこには翡翠色の髪を足首まで無造作に伸ばした女性になった。鹿の時と同じように周囲には、蔓や枝、白い花が浮遊している。
「はじめまして、最後の一人松平桐乃さん。
私は
樹海の奥深く、異世界の来訪者と樹海の主が出会った。運命のピースは、少しずつだが確実に揃い始めていた。
エイクスュルニルってめっちゃ言いにくいなって思いながら、この話を執筆しました。
転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します
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1と2を知っている
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1は知らないが2は知っている
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1は知っているが2は知らない
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1も知らないし2も知らない