転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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視点がいっぱい。


それぞれの思惑

「視察?」

 

 南方都市レヴォルトを治める公爵。マルクス・フォルトンは、信頼のおける文官の一人からの急な報告を受けていた。

 

「はい。最近設立した星十字騎士団から、二人がレヴォルトの視察に来るとの報告がありました」

 

「………………」

 

 忌々しい。ハッシュヴァルトは一体、何を考えている。

 

 マルクスは星八世貴族の一人であり、数少ない光の帝国の公爵だ。首都を除いた6つの都市の内の一つの管理を任されている程の権力を持ち、貴族の中でも有数の権力者。

 

 しかし、この国で公爵という爵位は絶対の物ではない。マルクスが任されているレヴォルト以外での権力は非常に限られていてる。他の都市を治める公爵も殆どがそうだが、例外がある。

 

 首都ゼーレを治めるテスタロッサ・ヴァイスと、宰相エレナ・ハッシュヴァルトは、公爵で在りながら他の公爵とは比べ物にならない程の権力を与えられている。

 

 その権力は絶大であり、同じ公爵であるマルクスでさえ潰す事が出来るだろう。だからこそ、疎ましかった。

 

 貴族には当然派閥があり、皇帝派と貴族派が存在する。エレナは貴族派の筆頭であり、テスタロッサは皇帝派の筆頭だが、二人は結託しているとマルクスは読んでいた。

 

「そうか、いつ頃視察に来る」

 

「3週間後との事です。ですがよろしいのですか?」

 

 文官は設立したばかりの怪しい騎士団を受け入れて良いのかと疑問に思っているのだろう。その意見は間違っていない。

 星十字騎士団は、陛下直属の騎士団で構成員不明、人数不明という怪しさしかない騎士団だ。しかも、貴族にも命令可能な特権すら有している。そんな存在が視察など、怪しく見えるだろう。

 

「陛下直属の騎士団なのだ。断る事など許されん」

 

「私はその陛下直属というのが気になります」

 

「どういう意味だ」

 

 文官が不穏な発言をしようとするが、マルクスはあえて止めずに耳を傾ける。

 

「陛下はここ数十年、表舞台に出ていません。今では顔すら知らない者もいる程です。もしや皇帝派の連中が……「やめろ」…………」

 

「それ以上はやめておけ」

 

 マルクスの静止に顔を強張らせ、言葉を止める文官。誰も聞いてはいないとはいえ、不謹慎な発言は問題になりかねない。

 

 それにマルクスは貴族派に属する公爵だが、皇帝派が嫌いというわけではない。だからと言って好きな訳でもないが、文官の懸念はあり得ないと否定出来る根拠があった。

 

「お前は陛下にお会いしたことはなかったな」

 

「会えるのは公爵位の物ですよ。ただの文官には夢のまた夢です」

 

「陛下は紛れもなくこの国を支配している。それは確かだ」

 

 断言したマルクスの発言に、ピンと来ないのか何処か納得しかねている文官。仕方の無い反応なのかもしれない。マルクス自身も、この目で見るまでは皇帝という存在が疑わしかった。

 

 光の帝国で皇帝の姿を見ることを許されている人間はそう多くない。宰相や聖兵軍元帥、皇帝直属のメイド達、星八世貴族、そして星十字騎士団のみだ。

 

 マルクスは今は亡き父から当主の座を継いだ際に、謁見を許され皇帝の姿を見ていた。

 

「(アレは、人ではない。皇帝という生き物だ。あの紅い瞳と目があった時、ソレを悟った。だからこそ腑に落ちない…………)」

 

「マルクス様? 報告は以上ですが、歓迎の準備を整えればよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、細心の注意を払え。新設された組織とはいえ重役でもある。此方の考えを悟られないようにしろ」

 

「畏まりました」

 

 文官は畏まったように背を伸ばし、敬礼をとって部屋から出ていく。

 

 

「(まだ、まだだ。もうすぐで準備が整う)」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 輝くような銀髪に右目は赤、左目は青の金銀妖目(ヘテロクロミア)を備えた美貌を持ちながら、吸血鬼の姫君でもある魔王ルミナス・バレンタインは、最悪の気分で突然やって来た客人の相手をしていた。

 

「それで? 一体なんの用じゃギィよ。わかっておるであろうが、今の妾は機嫌が悪い。くだらぬ用件であれば即座に叩き出す」

 

「落ち着けよ、ルミナス。お前の機嫌が悪い事を見越してこっちから来たんだ。茶の一つくらいはいいだろ?」

 

「フンッ、嫌味か貴様。妾の城があの忌々しい邪竜に滅ぼされたというのに、図々しく来た挙げ句茶を出せと?」

 

 ルミナス・バレンタインの城である夜薔薇宮(ナイトローズ)は、数年前に暴風竜ヴェルドラによって跡形もなく消し飛ばされていた。結果、彼女の国も滅び、残ったのは少ない配下のみだ。

 

 配下の吸血鬼達は、ルミナスに苦労をかけないようにと急いで仮の住宅等を準備し、ルミナスはある程度の生活を送る事が出来ているが、突然来た悪魔に茶を出す気などサラサラなかった。

 

「正直、八つ当たりでもされるかと思ってだけどな」

 

「望むなら、幾らでも案山子として使ってやろうぞ」

 

 ギィの懸念に、ルミナスは即座にそうしてやろうかと圧をかける。その反応に藪蛇だったなと、ギィは話をすぐにすり替えた。

 

「で、来た理由なんだが、最近光の勇者と契約したんだってな?」

 

「貴様が何故知っているのかはさておき、確かにグランベルの奴とは和平の契約を結んでおる」

 

 魔王ルミナス・バレンタインには、因果繋がった勇者がいる。それは光の勇者グランベルだ。長年、魔王と勇者として二人は争い続けグランベルは敗れた。

 

 しかし、ルミナスはグランベルを殺さずに交渉を持ち掛けた。元々ルミナスは人類を滅ぼそうと思っている訳ではない。吸血鬼族には人間の血は必要であり、滅ぼす事にはデメリットしかなかった。

 

 それはグランベルの目的『人類社会の平和』の利害の対立は起こり得なかった。故に魔王と勇者は契約を結び、ルミナスは勇者という戦力を手に入れ、グランベルはルミナスの国での権力を手に入れた。

 

 だが、そこに天災、暴風竜ヴェルドラが表れた事で事態はややこしくなる。ヴェルドラがルミナスの国を破壊した事で、対価として差し出す権力が実質無いに等しくなってしまった。

 

 勿論、都が荒らされたからといってそれで終わりではない。場所を変え復興の目処は立っている。

 しかし、夜薔薇宮が破壊されたせいでルミナスの機嫌は最悪だった。これも全て何の関係もないヴェルドラが暴れたせいなので、ルミナスはあのクソトカゲにいずれ地獄を見せてやろうと怒りを蓄えているのだ。

 

「なら豚頭魔王(オーク・ディザスター)の事は把握しているだろ?」

 

「最近魔王を名乗るオークのことじゃろう? 中央諸国を好き勝手蹂躙しているのじゃ、あれだけ暴れれば嫌でも目立つ。妾はそこまで世間知らずでもないわ」

 

 ルミナスは配下から豚頭魔王の事は聞いていた。そこまで手が回らなかったため、放置していた問題だが既に中央諸国の半分近く滅ぼしている。これ以上は看過出来ないといい加減手を出そうとしていた。

 

「それなんだが…………、手を出すのは辞めとけ。火傷するぜ」

 

「どういう意味じゃ……ギィ。戯れでは済まされんぞ」

 

 幾ら最古の魔王であるギィの忠告とはいえ、理由もなしに手を引く事は出来ない。この状況を放置すれば、豚頭魔王は中央諸国にいる人間を食い尽くしても収まることはないはずだ。

 

「光の帝国は知ってるか?」

 

「噂程度にはな、しかしアレは不気味なくらいに内界閉じこもっておる。碌な情報すらない謎に包まれた存在じゃろう? アレがどうした?」

 

 存在自体は、建国当初に確認されていたものの現在、光の帝国は外界との接触を物理的にも経済的にも交流を絶っており、基本的に領内には誰も入る事は出来ない。

 

 誰も知らず、西にある事だけがわかっているだけの幻でもあった。

 

「オーク・ディザスターの件、おそらく彼奴等が介入してくる」

 

「何故そう言える。ギィ、どうやってその情報を手に入れた」

 

「どうやっては置いておいて、問題は彼奴等の目的だ」

 

「…………」

 

 あまりにも露骨に話を逸らすギィに、思わずイラッとするルミナスだが、どうせ答える気などないのだろうと思い口を挟まず聞く。

 

「…………実はオレにもわからん」

 

「よし、そこに並べギィ。宣言通り案山子として使ってやろうぞ」

 

 ルミナスは、この巫山戯た悪魔に鉄槌を下してやろうと魔法を構えるが、ギィは慌ててルミナスに弁解し始める。

 

「待て待て! オレにもアイツの考えを読むのは難しいんだよ。アイツの考えは他と視点がまるで違う」

 

「アイツ? 誰のことを言っておる?」

 

 ギィが相手の考えを読めないと言うほどの存在はそういない。ギィは先手を取られたとしても、後手でしっかり対応する事が出来る頭脳と実力がある。

 だからこそ世界の調停者なんて重役が出来るのだが、そんなギィが難しいと断言した相手というのは、ルミナスとしても気になった。

 

「光の帝国の皇帝だ。前から探ってはいるんだが、大したこともない情報ばかり掴まされて対策されてるんだよ」

 

「ならば何故介入してくるとわかった」

 

「その掴まされた情報の中に今回のオーク・ディザスターの件もあった。暗に介入するなという警告だろうな。原初の白(ブラン)みたいなねちっこい手を使ってくるようになったな。あの皇帝は」

 

 愚痴を吐ように説明していると言うのに、何処か楽しげなギィに若干の驚きを覚えたルミナスだが、大事なのはそこでは無い。

 あの傲慢なギィが素直に警告を受け入れるとは思えない。何か策でもあるのか、それとも別の何かがあるのか…………

 

「ギィ、貴様はその警告を素直に受け入れるのか?」

 

「今回はそのつもりだ」

 

「何を考えておる…………」

 

 ギィの違和感にルミナスは警戒する。ギィとは敵対している訳では無いが、特別仲が良い訳でも無い。だからこそ警戒しなければいけない事だってある。中途半端な距離感の相手は、認識を間違えれば痛い目を見ると、ルミナスはよく理解していた。

 

「アイツの狙いは読めずとも、行動はわかりやすい。アイツはオーク・ディザスターを討伐しようとしている」

 

「その皇帝とやらの力を見るつもりか?」

 

「いや、アイツは出てこないだろうな。出てくるのは、アイツの配下だ。配下がどのくらいいて、どのくらいの強さを持っているかは一切不明だからな。今回は静観して見極める」

 

 ギィの説明を聞いてルミナスは暫く黙っていたが、一層真剣な眼差しでギィに問いかける。

 

「一つ聞かせよ。ギィ」

 

「…………ん?」

 

「……其奴と敵対しておるのか?」

 

 ルミナスの質問に、ギィは頬を綻ばせながらもハッキリと断言した。

 

 

 

「あぁ、敵だ。極上のな」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 樹海に潜ったその後、街には行かずに北東都市ヴァルトからは次の日には出立する事になった。

 急すぎるとも思った桐乃だったが、レオナルドが気遣ってくれたのだろう。

 

 行きと同じドーラさんが御者の白い馬車にレオナルドと共に乗り、北東都市ヴァルトを僅か2日で出て行った。

 それから3日程の馬車の旅は相変わらず快適で、困る事は一切なく次の目的地、北方都市アルテへと近づいていくのであった。

 

「そろそろ着く頃合いかな?」

 

「もう、完全に空飛んでますよね。コレ」

 

 レオナルドの様子もすっかり元通りになり、その表情は太陽のように明るい。桐乃もその様子にホッとし、声色が少し明るくなっている。

 

「北方都市アルテは山に囲まれた土地にある山脈都市だからね。馬車で行く道はありはするけど、時間が掛かるからショートカットだよ」

 

「アルテでは何をするんですか?」

 

 アルテで何をするのか聞いていなかった桐乃は、レオナルドに聞くが何処か反応が鈍い。気まずそうな表情で手を弄っている。

 

「あ~、えっとね。予定では南方都市の方に行くつもりだったんだ。けど、急遽北方都市に行く羽目になってね。視察とは違う目的で軍の施設に行くから、桐乃は入れないんだ……」

 

「銀のバッチなら何処でも入れるんじゃなかったんでしたっけ?」

 

 以前、レオナルドが軍人さん達に見せていた銀のバッチは何処でも入れる筈だ。なのに何故置いていきぼりなのだろうか……

 

「軍の施設自体には入れるとは思うよ? でも作戦に直接関わらない桐乃は部外者扱いだから、私とは一緒に行動出来ないと思うな」

 

 作戦……。軍の施設で話す事なのだから当然と言えば、当然なのだろう。ついていけないのは残念だが、我儘は言えない。素直に街で探索でもしよう。

 

「わかりました。ならわたしは、街に行こうと思います」

 

「そうかい? じゃあ、案内人も付けるよ。ドーラも別件があるしね」

 

 観光の案内人は大抵ぼったくりという偏見があるが、レオナルドが仲介してくれるのであれば大丈夫だろう。

 

「何時頃に終わる予定ですか?」

 

「うーん。軽く見積もって3時間ってとこかな。何度か行く必要があるから暇になると思うけど、本当に大丈夫かい?」

 

 レオナルドは心配の様で念を押して聞いてくる。まるで母親のように聞いてくるレオナルドに笑いそうになりながら、返答する。

 

「大丈夫ですよ。レオナルドは心配症ですね」

 

「桐乃はフラ〜ッとどっかに行きそうだからね」

 

 何時もの様に会話を楽しみながら、桐乃は山に囲まれた山脈都市アルテへと辿り着く。新しい出会いが桐乃に訪れるまでは、そう遠くない。

 

 アルテでも豪華な屋敷に滞在する事になった桐乃は、早速街に行こうと準備を整えている。服は当然、目立つ軍服ではなく至って普通の町娘といった服装だ。町娘にしては少々清潔すぎる様子だが、そこはご愛嬌だ。

 これで違和感はないだろうと姿鏡に写る自分を見ていると、コンコンッとドアがノックされる。

 

『桐乃、今いいかい?』

 

「どうぞ」

 

 桐乃の了承と同時に、ドアを開けてレオナルドが部屋に入ってくる。

 

「もう行くのかい?」

 

「えぇ、時間を無駄にしたくありませんから」

 

 樹海での忠告の真意は未だ不明ではあるが、桐乃は思考よりも先に行動に移すことした。まずは光の帝国の事について、何でもいいから情報を集める事。意味があるかは、実際に集めてみないとわからないため、とりあえず街に行くことにしたのだ。

 

「この街は結構入り組んでるから一人にならないようにね。案内人は護衛でもあるから、ちゃんと頼るように。あと、渡したお金は持ったかい? もしもの時は、渡した防犯ブザーを鳴らすんだよ?」

 

「ちゃんと持ちましたし、知らない街で一人でうろちょろなんてしませんよ。レオナルドは心配し過ぎです」

 

 アレもコレもと、口煩く確認してくるレオナルドに何も問題は無いと返す桐乃。妙に自信満々な姿が、逆にレオナルドを心配させる原因になるのだが、桐乃がそれに気づくことはない。

 

「もう行きますよ」

 

「案内人は門の前にいるからね。あんまり遅くならないようにね!」

 

 レオナルドと桐乃の構図は、まるで小学生の初めてのおつかいを見送る母親のようだった。桐乃は恥ずかしさを覚え、そそくさと門に向かうとそこには一人の男がいた。

 

 格好は桐乃と同じく、ファンタジー世界の普通の服装といった感じで特段変わった格好ではない。鍔付きの茶色の帽子で顔は見えないが、自分と同じくらいの青年だろうか? 

 

 青年は此方に気付いたのか、桐乃に話しかけてくる。

 

「あー、はじめまして。街を案内するって話で良いよな?」

 

「はい、よろしくお願いします。桐乃といいます」

 

 貴族の屋敷から出てくる町娘はどう考えても普通ではないが、話を通しているからか特に触れられる事もなく、青年は名乗った。

 

 

 

「俺は、ユーリだ。よろしく」

 

 

 





レオナルドの設定暴露その1

防犯ブザー(異世界バージョン)
見た目はランドセルとかによく付いているあの防犯ブザーにそっくりのレオナルド作の魔道具。ピンを抜くと音は鳴らずに、レオナルドに緊急連絡が届く。
他にも、対物理結界や対魔法結界、対霊子結界などの防御機能が組み込まれていて、普通の核撃魔法程度であれば防げるようになっている。

レ「即席で作ったから、性能は中途半端だね。本当は所有者を光学迷彩にする機能も付けたりしたかったけど、流石に無理だったよ。
これは個人的な意見だけどね。魔法やスキルに頼っているこの世界は、現代科学などの技術には弱い傾向があるんだ。単純に魔素を使っていないのが原因かな。探知魔法や探知系のスキルとかは魔素を探るタイプが多いから、光学迷彩だけでも結構誤魔化せたりするんだ」

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

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  • 1も知らないし2も知らない
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