25、26、27話を少し加筆修正しました。
それとBLEACHっぽく、星十字騎士団のメンバーのポエムをそれぞれ用意しようと思います。やっぱBLEACHって言ったら巻頭ポエムだよね。
「ユーリだ。よろしく」
黒髪の短髪に青い眼をした青年は、帽子をとって桐乃に軽く挨拶をする。
「案内人さんで良いんですよね?」
「あぁ、合ってる。いや、合ってます」
「あまり気になさらずに、普通にしてくれればいいです」
ユーリは桐乃の立場を知っているのかは不明だが、案内人は慌てて言葉遣いを直そうとする。しかし、桐乃としては周りから余計な勘繰りをされたくないのでそれを止めた。
「……左様で。じゃあ何処に行く? アルテは広いし、入り組んでるから全部周るなら数ヶ月あっても終わらないぞ」
ユーリもそれを察したのか、桐乃の立場等を聞くことはないまま案内人の仕事を始める。
「まずは、大きな市場に行きたいです」
アルテの街の特産は山脈から出る鉱石を使った工芸品の様だが、桐乃はそれよりも市場が見たかった。市場は情報の宝庫だ。商人は総じて横の繋がりが広く情報通でもある。
いきなり商人から情報を教えて貰うのは難しいかもしれないが、市場を見るだけでも情報は得られると桐乃は考えた。
「よし、じゃあここから少し坂道を下った先に大きな市場通りがある。まずはそこに行こう」
屋敷と中心街は離れているが、桐乃の提案で歩いて行く事になっている。理由は単純で、馬車から得られる情報は一瞬見える景色くらいで、殆ど参考にならないからだ。
「ここから街の全体像が何となく見えるんですね」
「屋敷があるのは、街でも高い場所だからな。山の谷間に造られた街だし、縦に長い上に高低差が凄いんだ」
ユーリの言う通り、北方都市アルテは山脈の中に位置している。故に街は迷路のように入り組んでおり、場所それぞれの高低差が激しい地形だ。
近くの鉱山では魔鉱石などが掘り起こされ、夜になっても活気盛んなのがこの街の名物になっている。
「ヴァルトとは随分とはかなり違いますね」
「あそこは農業が主で、こっちは工業が主だからな。盛んな産業に合わせたような都市になるものだよ」
遠くからも見える複数の煙突から煙が出ている光景を見ながら20分程歩き続けると、だんだん賑やかな声が複数聞こえてくる。
「そろそろ市場だ。昼時は混むから、俺から離れないようにしてくれ」
「わかりました」
二人が入り組んだ建物の隙間道を通り抜けると、恐らく大きな通りへと出た。恐らくと付くのは、あまりにも人が多いからだ。
朝の満員電車とまでは言わないが、数メートル先に何があるかわからない程には人が多い。
ユーリは慣れた足取りで人の隙間を縫うように歩いて行くが、桐乃はどうにか付いていくので精一杯だ。ユーリはその様子に気づいたのか、桐乃の手を握り離れないように引き寄せた。
「今日はいつもより人が多い。悪いが我慢してくれ」
「…………わかりました」
いきなり手を掴まれてギョッとした桐乃だったが、この状況で逸れたくもなかったので渋々受け入れた。
暫くすると中央に銅像がある広場のような空間に出た桐乃は、早すぎる休憩を取り始める。ベンチに座った桐乃は肩の力を抜くように脱力した。
「人混み苦手なのか?」
「……あまり、こういった場所には行かなかったものですから。少し人酔いしてしまいました」
少し顔色の悪い桐乃は、ゆっくりと息を吐く。どうやら精神生命体になっても人酔いはするらしい。役に立つか微妙な豆知識を手に入れた所で、いつの間にかユーリが両手に何かを持ちながらやって来た。
「人酔いで食欲がなくなるのかは知らないけど、とりあえず甘い物でも食べとけよ」
そう言ってユーリは、コーンに入った丸くて白っぽい物が付いた食べ物を桐乃に手渡した。もしかしなくてもバニラアイスである。
「(異世界にバニラアイス……。もしかしてコレもレオナルドの仕業なのでは?)」
アイスの歴史は結構古いらしいが、流石に庶民が当然のように甘味を食べられた訳ではないだろう。しかし、ユーリが片手間に買ってきた辺り、そう高い物という訳ではない筈だ。
レオナルドが常識を壊すような道具や技術を産み出しているので、コレもそうなのではないかと疑ってしまう桐乃。…………正解である。
レオナルドは砂糖や胡椒、スパイスなどの生産にもガッツリ関わっており、量産体制はかなり前から整っていた。庶民ですら甘味はそこそこの頻度で食べれる程には普及していて、アイスの屋台まである始末だ。
「ありがとうございます。いくらでしたか?」
「良いよ。今回の案内でかなりボーナスが貰えたんだ。そのお礼ってことで」
「普段からこういった仕事をしているんですか?」
「いいや。普段は、屋敷の庭師をやってる。というか、観光客なんて滅多に来ないから、案内人なんて仕事はない」
ユーリが言うには、観光をするのは貴族やかなり金を持ってる一部の庶民くらいしかしないそうで、貴族に案内人なんて不要だし、金を持ってる一部の庶民は大抵が商人の様で、此方も案内人などいなくても自分が知っているか、伝手があるからとても儲からないらしい。
つまり自分のような土地勘のない異世界人しか案内人は必要がなく、観光業はまるでないようだ。
ここまで考えて、桐乃に一つ疑問が思い浮かぶ。
「他の国からは観光に来ないんですか?」
「……いいや、光の帝国には他の国の人間を知ってる人なんていないと思うよ」
観光客どころか、誰も知らない? それはあり得るのだろうか?
わたしが転移したであろう場所は、一面が砂漠で他にも何も見えなかった。もしかして周囲が砂漠で囲まれているから、他の国との交流が難しい?
そもそも変だ。砂漠が接しているのであれば、ヴァルトのような自然豊かな農業都市も、ゼーレのような白系の建物で統一された街並みが出来るはずがない。もっと、その土地や気候にあった建物や服装、食文化がなければおかしい。
桐乃が知っている都市は首都ゼーレと北東都市ヴァルト、北方都市アルテの3つだが、それぞれの街並みは全てが違う。
場所によって多少の違いはあっても、国ごとに似通った特色があってもおかしくない。
しかし、光の帝国にはそれが見当たらない。全てがごちゃごちゃなのだ。国としての歴史がまるで見えてこない街並みに、桐乃は何処か不気味な感情に支配される。そんな事が起きうるのは、シミュレーションゲームで無理矢理作り出さなければ難しい。
「アイス溶けるぞ…………」
「えっ……あっ!」
考察をしている内に時間が経ったのか、アイスが溶け始めていた。慌てて手に付く前にコーンと一緒に食べきった桐乃は、気分が落ち着いて来た事を自覚し、ゆっくりと息を吸うとベンチから立ち上がった。
「人混みはどれくらいで落ち着きますか?」
「昼時が終わればある程度落ち着く筈だ。市場じゃなくて昼メシにするか?」
「そうですね……。人混みが落ち着くまではそうしたいです」
「なら、良い店があるんだ。混んでるだろうけど、とりあえず行ってみるか?」
「お任せします」
桐乃としては時間を潰せる場所であれば何処でも良かったが、思えばレオナルドと行ったカフェ以外は基本自分で作るか、銀架城の食堂で食べたくらいで、街の飲食店には行った事は碌になかった。
コレも情報収集だと思い、桐乃はユーリについて行く。その足取りが少し軽い事は誰も触れなかった。
大通りを外れ、10分程歩いた距離にあった店は、他の建物とは一風変わった西部劇に出てくるアレのような店構えの店だ。中はバーカウンターと丸テーブルが不規則に置かれていて、奥のバーカウンターにいる店主と思わしき人物は強面で髭の生えた男で、客も殆どが体格の良い男達で相当賑わっているようだった。
ユーリは迷う様子もなく奥のバーカウンターの席に座り、桐乃は内心で店を間違えたと思ったが、その様子もないので目立たぬようにそーっとユーリの隣の席に座った。
「シュニッツェルとソーセージ2人分、あとこの子にはミルクも、俺は水で」
ユーリが席に座ったと同時に注文すると、店主と思わしき男は精算機? のような物のボタンを押す。すると、レシートのように紙が出てきて、その紙には先程ユーリの言った言葉と同じ『シュニッツェルとソーセージ2人分、ミルクと水が一つ』という文字が印刷されていた。
男はその紙をユーリに渡し、後ろの棚にあるミルクと水を取り出しグラスに注ぎ始める。
「その紙って…………」
「紙……? 領収書だけど?」
まさかの印刷技術に桐乃は驚く他ない。とても異世界のやり取りとは思えない程の現代要素を見せつけられた桐乃は、完全に黙ってしまう。
「適当に頼んだけど、苦手な物とかなかったか?」
「いえ、特にはないですけど。シュニッツェルって何ですか?」
「薄く伸ばした肉を衣に纏わせて揚げた料理。食べたこと無い?」
「たぶん。初めてです」
とんかつやハムカツに近い料理だろうか。注文に手間取らないから良いけど、先に一言くらい欲しかった。
「オイオイ、ユーリ! 誰だよその可愛い嬢ちゃん! お前の連れか?」
丸テーブルにいたであろう体格の良い男が、ジョッキ片手にユーリに絡んでくる。顔が赤いことから昼から酒を飲んでいるらしい。急に来た男に桐乃は驚くが、だる絡みされたユーリは特に気にする様子もなく冷静に返す。
「アンドレー、お前酒飲み過ぎだ。午後の仕事に影響出るぞ」
「良いだろ〜、最近景気が良いからよ! 酒だって美味くなるんだよ!」
「おいラルフ! この酔っ払いを持っててくれ!」
ユーリがアンドレーと呼んだ男は、機嫌が良いのかユーリに肩を組んで酒を煽る。ユーリは話にならないと判断したのか、アンドレーが座っていたであろう席と一緒にいる男に話しかける。
「酔わせてやれよ。ここ最近、調子が良いんだ。それで? 俺達にも聞かせろよユーリ。女と飯とは良い身分じゃねーか」
ラルフと言われた男は、ユーリの言葉を取り合う気はないのか話を桐乃の方へすり替え始める。まるで親戚の子供に彼女が出来てからかうオッサンの様だった。
「そうだ! そうだ! 生意気だぞ! ユーリの癖に!」
「お前だけ可愛い娘と飯とかズリぃぞ!」
「盛ってんのか!」
いつの間にか、周りの酔っ払い達が一斉にユーリをからかい始める。どう見ても悪酔いしている男達は、酒の肴に恋バナ? を選んだようだ。
「やめな! あんた達! ガキを虐めるんじゃないよ!」
大きな声が店中を響く。バーカウンターの奥から来た背の高い女の人が、煙草を咥えながら酔っ払い達に一喝を入れる。
「良いじゃねーか! エヴァだって気になるだろ!」
「アンドレー、あんた飲み過ぎだよ! これ以上は飲ませないからね!」
「勘弁してくれよ!」
「ここじゃアタシがルールだよ! 文句があるなら出ていきな!」
肩まで伸びた茶髪を後ろで一つに纏めた女、エヴァの一喝に酔っ払い達は各々自分の席に戻っていく。どうやらこの店では誰もこの人には逆らえないらしい。
「ほら、シュニッツェルとソーセージ2人分」
「ありがとう。エヴァ」
「アンタも、女連れるならこんな店じゃなくてもっと良い店選びな!」
「勘弁してくれ…………」
ユーリがエヴァにお礼を言うが、エヴァはユーリを叱責しだす。その叱責にユーリもたじたじだ。
「嬢ちゃん。もしユーリになんかされたらアタシに言いな。拳骨いれてやるから」
「えっと、ありがとうございます」
エヴァはそう言って、さっさと奥に引っ込んで行った。台風みたいな人だなと思いながら、いつの間にかあるミルクと大皿に乗った料理を見る。
シュニッツェルは薄いとんかつのような見た目だが、かなりデカい……。わたしの顔よりもデカいカツの上には、薄くカットされたレモンが数枚乗っている。
付け合わせにポテトサラダとコーン(トウモロコシ)とソーセージが5本付いていて、かなりボリューミーだ。
料理と一緒に来たフォークとナイフで早速シュニッツェルを一口大に切り分け食べてみる。
サクッとした音が鳴り、口に肉の味とバターの風味が広がる。とんかつのようにソースがあるのではなく、レモンと塩コショウのシンプルな味付けのようだ。
衣はきめ細かく思ったよりも脂っぽくないようで、一枚くらいならペロリと食べ切れそうだ。
付け合わせのポテトサラダも食べてみるが、桐乃が食べた事のあるポテトサラダと少し違う味付けだ。ほのかな甘みと爽やかなスパイスを感じる。ただマヨネーズを合わせた物とは違う味で、恐らく違いはスパイスだろうか?
ソーセージはハーブとスパイスの香りと、噛むごとに溢れる脂と旨味が口の中で暴れる。皿の端に付いたマスタードは甘口のようで、ソーセージとの相性は抜群だ。
肉と濃いミルクは喧嘩しがちだが、水で割られているのか非常に飲みやすい。それよりも棚にあった瓶の筈なのに、何故かミルクはよく冷えていた。
シュニッツェル、ポテトサラダ、ソーセージ、コーンのサイクルで食べ続ける桐乃。特にポテトサラダとソーセージの味は桐乃好みで、脂が多い筈なのに全くそれを感じさせない。
「随分と美味しそうに食べるな……」
隣のユーリが、桐乃の様子を見て呟く。
「そうですか?」
「それはもう幸せって感じだった」
「…………この店の雰囲気のせいじゃないですかね?」
「雰囲気?」
「最初はちょっと躊躇いましたけど。皆美味しそうに食べて、お酒を飲んで、笑い合う。こういう雰囲気は幸せって感じがして好きなんです」
ユーリは後ろのテーブル席で笑い合う男達を見る。ジョッキに入った酒を飲み、よく笑っている。確かにそこには幸せがあった。
「…………幸せか。確かに良いものだな」
ユーリのその言葉は、辛うじて桐乃の耳に届くだけで男達の笑い声で掻き消えた。
レオナルドの設定暴露その2
マスクくん24号(仮名)
一見白いゴムボールのように見えるが、血液を垂らすとその対象と全く同じ顔のマスクが出来上がる。
髪の色から髪質、旋毛の向き、肌質、虹彩、声帯、耳の形等の細かい部分も再現可能。あくまで頭部のみのマスクの為、身長や体格、指紋などは誤魔化せない。
レ「試作に試作を重ねて生み出した一品だよ。魔素などは一切使わずにDNAの情報のみで変化するようになってるから、相当な感知スキルでもないとわからないよ。
モデルは洋画の『マスク』からイメージしたんだ。子供の頃に一度見てね。なかなか忘れられなかったんだ。若干ホラーチックだったけど、私は結構好きな映画だったかな」
小説の方針について少し考えました。1から3章とは違い、4章では光の帝国の掘り下げの為に長いペースでの展開が目立ちますが、その展開についての考えが知りたいです
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正直、遅い
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普通
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気にしていない
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掘り下げは欲しい
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はよ原作入れ
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作者の好きにしてくれ
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逆に速い