投げられた賽が示す先
来たる一歩で祖国と進み
戻らぬ二つの種を蒔き
三度の勝利で地に堕ちる
光の帝国から東。死の大地の影響が徐々に広がりつつあるこの地にも、まだ緩やかな丘と緑の大地が残っていた。だが、その平穏は死の大地とは別の要因によって、確実に蝕まれつつあった。
侵略者の存在が、平穏を終わりへと導こうとしている。
蹂躙せよ。蹂躙せよ。足を喰らわば頭まで。
蹂躙せよ。蹂躙せよ。喰える全てを喰らうまで。
蹂躙せよ。蹂躙せよ。果ての先まで呑み込まん。
遥か彼方、距離にして十数km離れた場所からも聞こえてくるその大合唱に、レオナルドはすでに辟易としていた。
「どうにかならないのかな。この大合唱は?」
うんざりした様子で豪華なソファに身を沈め、頬杖をついたレオナルド。隣で呑気に紅茶と茶菓子を嗜んでいたカエサルが答える。
「彼らなりに、士気を上げているんだろうね。実際、敵からすれば恐ろしいだろうし、足並みも揃っているみたいだ」
「そんな真面目な解答は求めてないよ。煩いから愚痴っただけ」
二人がいるのは、
「それにしても、彼女を置いていって良かったのかい?」
「……カエサル。君は相変わらず趣味が悪いね。どうせわかっているくせに」
一見、心配しているように聞こえる問いかけも、カエサルが本心で言っていないことなど、レオナルドにはわかりきっていた。大方、私の反応が見たかったとか、そんな所だろう。
「酷いな。純粋に心配していると言うのに……」
白々しく肩をすくめ、わざとらしく悲しげな素振りを見せるカエサル。だが、いい大人の嘘泣きなど気持ち悪いだけだ。レオナルドは、カエサルを視界にから外すように顔を背け、作戦の目的を思い返す。
今回の目的は主に三つ。
一つ目はオーク達の生きたサンプルと、オークディザスターの死体の回収。
二つ目は軍内部における過激な思想を持つ者に、作戦失敗の責任を押し付けること。
三つ目は、星十字騎士団による軍の尻拭い。そして存在意義の誇示だ。
軍の内部には、貴族に反感を抱き、過激な思想に染まった者や光の帝国への忠誠心が薄く、野心だけが肥大化した者が一定数存在する。
今回は、そういった者達に表向きは指揮を任せている。そして失敗を誘発させ、その間に星十字騎士団がオーク達を一掃することで、星十字騎士団に否定的な一部の貴族や軍も功績を出し、一時的に黙らせる策略だ。
「そういえば、彼女に出した問題の答えが面白くてね」
ウソ泣きの演技はどこに行ったのか、将棋盤を取り出しては何時ぞや桐乃に出した問題を並べ始める。
「アドバイスを送ったんじゃないのかい?」
カエサルが桐乃に問題を出したとは、レオナルドに一言も言っていない。唐突に始まる話に溜め息が出てくるが、カエサルはお構い無しに話を続ける。
「まぁまぁ、とりあえずコレを解いてみてくれよ」
レオナルドが将棋盤を覗くが、そこにあるのは定石過ぎるところもあるが、一般的な中盤の盤面だ。振り飛車穴熊と居飛車の左美濃。お互いの飛車は敵陣に成り込み、竜となっている。
大きな違いは角に有無と囲いの違いだろう。穴熊側の角は持ち駒にあるが、左美濃は2筋に成り込んで馬になっている。
問題は左美濃の囲いが一部崩れていることだ。桂馬はすでに囲いを飛び出して穴熊に攻めかかっている。端の歩も五筋まで伸びていることから、端攻めをしようとしているのがわかる。
まだ中盤の殴り合いで、初心者からは一見互角に見えなくもない盤面だが、レオナルドは考える間もなくあっさりと即答する。
「9四歩で開戦から攻めれば終わりだよ。すでに左美濃側が勝勢だね」
「早いね。将棋としては正解だよ」
カエサルの引っ掛かる言い方に、ツッコむ気も失せるが話をしない訳にもいかない。
「引っ掛かる言い方だね」
「確かにこの盤面の最適解は9四歩だ。穴熊は堅いとはいえ、竜1枚しかおらず持ち駒に戦力が集中しているのは攻め手に欠ける。君なら間違いなく最善手を導き出して詰ませることが出来るだろうね」
「お世辞はいいから、意図を教えてくれ」
いきなり将棋の問題を出すなんて意味不明だ。カエサルは頭がおかしい所があるが、ふざけてはいないはずだ。…………きっと。
「具体的な正解はない。欲しかったのは彼女の意思がどのくらいあるのかだよ」
「意思?」
「将棋ならそれはわかりやすい。明確な意思を持っての一手には目的があるけど、意思がない一手は目的がない物になりがちだ。彼女は1一馬で香車を取ったんだ」
「1一馬は凡手というか、悪手じゃないか」
レオナルドの言葉は正しいものだ。穴熊側にみすみす攻める時間を与えただけだし、戦力は充分足りている。余計な時間を使うだけなら凡手どころか悪手と言っていい。
「だから言っただろう? 将棋としては正解だって。将棋やチェスは、どんな犠牲も払ってでも相手を詰ませれば勝利になる。
でも現実においての最適解は、相手の駒を総取りして敵には一切の駒を与えないことなんだ」
「屁理屈もいいとこじゃないか。将棋の問題で現実を持ち出すなんて引っ掛け問題どころじゃないよ」
正解にさせる気のない問題にレオナルドは軽く非難するが、カエサルはわかってないと言わんばかりの大袈裟なジェスチャーで首を横に振る。
「別にレオナルドが間違っているとは言っていないよ。ただ、将棋を通して彼女の意思がどこにあるのか知りたかっただけだよ。この問題に明確な正解は存在しない」
問題に正解が存在しない時点で、タチが悪い。話し疲れたレオナルドは、最後に聞きたいことだけを聞くことにした。
「なんでそんな回りくどいことをしたのかはさておき。桐乃の答えは君的にはどうだったんだい?」
「不安かな? 開戦の一手か戦力の増強かを悩んでいたようだけど、現実に置かれている状況に引っ張られて戦力を増やしたかったんだろうね」
「…………」
「……なんでそんな顔をするんだい?」
レオナルドの顔は、気持ち悪いと思っているのが一目でわかる表情だった。そんな露骨な表情に、たじろぎながらもカエサルは問いかける。
「将棋の一手だけで、相手の性格や心情を読む君を心底気持ち悪いと思っただけだよ」
そこへ、陛下直属のメイドが一人、レオナルドの影から現れる。
普段戦場に彼女達が介入することはないが、今回はある事情により数人が監視として寄越されていた。
「お話中、申し訳ありません。経過報告に参りました」
レオナルドは話を切り上げ、メイドに視線を向ける。
「状況はこちらが不利気味です。敵側のオーク軍の戦力は二割ほど削りましたが、こちらの損耗は一割以下。ただ、初期の勢いはこちらが有していたものの、オークたちは喰らった肉で強化されており、戦況は徐々に彼らの側へ傾きつつあります」
「滅却師の力の使用は確認されたかい?」
「現在、オーク達が滅却師の力を使用した様子は確認されておりません」
オーク達が敵を喰らい強くなることはすでにわかっていた。問題は滅却師の力を取り込めるのか、確信が持てないことにある。滅却師の力は、持ち主が死ねば陛下に還元される。なので問題はないと予想されてはいたが、念の為警戒はしていたのだ。
「普通なら撤退も視野に入れる状況なんだけど。指揮官はその判断すらできないだろうね」
意味ありげにカエサルを見るレオナルド。その視線には皮肉と若干の非難が混ざっていた。
「彼らは恐怖を感じていないだけさ。自分たちが勝てると思い込んでいる」
「私から見れば、君の聖文字のソレは統率ではなく洗脳だよ」
「物は言いよう、力は使いようと言うだろう? そういった使い方ができるってだけだよ。教育だって、悪く言い換えれば洗脳の類いじゃないか」
「極論だね。精神に介入している時点で言い逃れはできないよ」
カエサルがのらりくらりと躱そうとするが、レオナルドはその言葉をバッサリと切り捨てた。
「茶番はここまで、さっさと終わらせようじゃないか」
その一言で空気が一変する。カエサルはおちゃらけた雰囲気は鳴りを潜め、静かに立ち上がる。花弁が彼の身体を包み込み、白いトーガ風の衣装は白亜の鎧姿へと変貌する。
一方のレオナルドは、白く濁ったビー玉を取り出すと、それを躊躇なく砕いた。次の瞬間、テントは眩い光に包まれ、二人の姿はその場から掻き消えた。
「……どこだ、ここは……?」
オークディザスターの視界に広がっていたのは、先程までの草原とはまったく異なる、果てしなく続く灼熱の砂漠だった。空には容赦ない太陽が照りつけ、風が熱砂を巻き上げている。周囲に配下の姿は見当たらず、自分一人がぽつりと取り残されていた。
「(転移の魔法か? だが、発動の予兆はなかった。幻惑にしては精巧すぎる……)」
警戒心を強めながら、オークディザスターは静かに息を吐き、周囲の状況を読み取ろうとする。
「やぁ、元気そうだね?」
突如、真後ろから聞こえたその声に、オークディザスターは即座に前方に跳び離れた。砂煙の向こうに現れたのは、白亜の全身鎧を纏った男──カエサルだった。
「(どういうことだ……ここは見晴らしの良い砂漠だ。周囲を警戒していた我に、どう近づいた?)」
「気になるかい? 君にどうやって近づいたか」
挑発的なその一言に、オークディザスターはわずかに表情を動かし、会話から情報を引き出す方針を取る。
「……貴様は何者だ。我をどうやって戦場から引き離した」
「無視かい? 酷いなぁ。まぁいいさ、質問の答えは簡単。転移させただけだ」
まるで軽口を叩くように、カエサルはさらりと核心を述べた。あまりにあっけらかんとした態度に、オークディザスターは苛立ちを隠せず叫ぶ。
「我は
その咆哮に対し、カエサルはほんの少し困ったような仕草を見せた後、肩を竦めて言った。
「……困ったな。生憎、これでも軍の指揮を務めているんだ。『ハイ、降伏します』なんて言う訳ないだろう?」
「愚かだな。指揮官が前に出るなど、愚の骨頂だ」
オークディザスターは挑発を含め、カエサルを嘲笑う。だがその態度にカエサルは動じた様子はなく、肩を竦めた。
「豚に正論を言われるなんてね。人生、わからないものだよ」
その軽口に激昂したオークディザスターは、巨大な両手斧を振り下ろす。狙いは、目の前の人間の頭部。
カエサルは寸前で半身を横にずらし、ギリギリでそれを避ける。
「おしゃべりは終わりかい? 別に構わないけどね」
挑発の口調は変わらない。だがその身のこなしは確かな実戦経験を感じさせた。怒りに任せて突進するオークディザスターの巨大な腕が振り下ろされるが、それもカエサルは軽やかにバックステップでかわす。
「嫌われたかな?」
「ほざけ!」
次の一撃は両手斧による横薙ぎ。カエサルを両断しようと迫るそれを、いつの間にか手にしていたロングロードが受け止めた。
「なっ!?」
自殺行為にも等しい防御に思えたが、カエサルは逆手で剣を構え、下に突き立てると、その峰に手甲を添えて攻撃を真正面から受け止める。
「一応、名前だけは名乗っておこう。カエサルだ。覚えなくて構わないよ」
そのままロングロードを斧の下に滑らせ、抑えていた手甲でアッパーカットのようにかち上げる。武器の交差点に衝撃が走り、両手斧が跳ね上がる。
隙だらけとなったオークディザスターの胸部に、ロングロードを剣先に近い刃を持って、柄の部分で打撃が加えられた。
「グッォォォォォ!」
鉄塊のような重みが鎧越しに伝わり、巨体の魔王は吹き飛び、砂地を転がった。
「今のは殺し打ち『モルトシュラーク』と言って、剣の柄で相手を殴るシンプルな西洋剣術だ。威力は体験した通り、相手を斬れずとも、その衝撃は計り知れない」
さらりと解説を入れるカエサルに対し、オークディザスターは激しい怒りで体を震わせる。しかしそれ以上に、ある異変に気づき戦慄していた。
「(……待て、なぜこの我が痛みを感じる?)」
『痛覚無効』。それはオークディザスターの持つスキルのひとつ。その効果は、痛みという感覚自体を遮断するはず──だった。
「痛くて動けないかい? それとも、何故痛みを感じるのかがわからずに困惑しているのかな?」
またも、心を読むように言葉を投げかけてくる。沈黙を貫くオークディザスターに対しても、カエサルは淡々と続ける。
「君が痛覚無効のスキルを持っていることは、報告でわかっていたさ。当然、その対策を怠ってはいない」
この人間は、自分の存在すらも予測して準備していた──その事実が、オークディザスターを初めて"不安"という感情に引きずり込んでいた。
オークディザスターは、進行中に戦ったことはほとんどない。あるのは軍の士気を上げるために、残った人間の中で最も強い者をねじ伏せて喰らう時だけだ。
その時にはすでに、周囲の人間のほとんどが殲滅されている状況だった。しかし、カエサルは報告があったと言った。
魔法やスキルの有効範囲などは、そう長くなく、数キロが良いところだ。オークディザスターの周囲には数百キロのオークがひしめいている。それはつまり、数百キロ以上の距離からの観測か、誰にも気づかれずに進入する手段があるということになる。
本来であれば鼻で笑うような話だが、一瞬で孤立させられる手段があることも相まって、警戒せざるを得なくなっていた。
「仮に貴様の話がすべて本当だとして、なぜ兵を無理に突撃させた?」
「それは君たちとは別の理由だよ。気にしなくていい」
話が終わったのか、カエサルはロングロードを構える。
カエサルが構えたのを見て、オークディザスターは最大限警戒しながら、相手の動きを観察する。
だが、予想だにしない行動がオークディザスターの目に映った。カエサルはロングロードを思い切り投擲したのだ。
人間とは思えない膂力から放たれた剣は、真っすぐオークディザスターに迫る。しかし、虚を突いた行動とはいえ、武器を手放す愚行に、オークディザスターは心の中でほくそ笑む。
両手斧で剣を弾き、丸腰になったカエサルとの距離を詰めようとすると、壁のような物がせり上がり、行く手を阻む。突っ切ろうと攻撃を加えるが、壁は異様に硬く、両手斧での破壊は困難だった。
「面倒な、だが時間稼ぎは無意味だ!」
10メートルはある壁を一息で飛び越え、今度こそカエサルの前に勢いよく降り立つ。
「オルガン砲」
カエサルの呟きと同時に、壁を越える前にはなかったパイプオルガンのような形状の砲の十数門が火を吹き、オークディザスターをせり上がった壁まで吹き飛ばした。
「……グッ…………貴様ァ!」
肉が焼けた酷い匂いが周囲に広がる。咄嗟に両腕で守ったが、オークディザスターの腕は見るも無残な姿になっていた。
「不思議かい? たかだか砲の一つや二つで、自分の腕が吹き飛ばされたことに」
多くの人間の魂を取り込み魔王種を得たオークディザスターに、通常の兵器は通じることはない。それが意味することは、
「貴様ッ、その武器はスキルの類だな! どこからか武器を呼び出して扱う。丸腰だったのは、こちらの油断を誘うためか!」
「概ね正解だよ。正確には、呼び出すのではなく顕現させると言う方が正しい」
カエサルは手に持っていた複数のサイコロを地面に落とす。サイコロは花弁のように消え去り、地面に波紋のような波を起こすと、その波紋からあらゆる武器が現れた。
「武器はまだまだたくさんある。次はどれが良いかな?」
「ほざけっ、その程度でこの我を殺せると思うな!」
オークディザスターは、焼け爛れ、原型の残っていない両腕を一瞬で再生させる。
「
オークディザスターの背後からオーラが枝分かれするように実体化し、カエサルを喰らわんと複数のオーラが迫る。
カエサルは大した反応をする訳でもなく、無防備に腕を伸ばす。混沌喰は待ってましたと言わんばかりに腕に喰らいつく。
「そのまま腐り果てろ!」
混沌喰は肉に触れた途端に腐食し、朽ち果てる強力な技だ。喰らえばタダでは済まない……はずだった。
オークディザスターは混沌喰に食いつかれたカエサルが、一向に死なないことに警戒する。よく見ると、カエサルの腕の鎧が先程のものとは色や形状が違った。それは赤黒く、小さめなガントレットのように見えた。何より手甲には、青白い血管のような光が流れていて、混沌喰の牙を一切通していなかった。
「
レオナルド設計兵器ブルートシリーズ、籠手血装。
本来霊子を血液の中に流して発動する
通常の武器に霊子を流すと、ほとんどの武器自体が持たないのだ。霊子兵装を使用すればなんの問題のない話だが、カエサルは聖文字の都合上、霊子兵装をほとんど使わない。
どうにか有効活用出来ないかと思考した末に、レオナルドに頼み込んだ結果、この籠手血装の発想に至った。もちろんレオナルドは鍛冶師ではない。設計までは出来ても作ることはできない。
だが、カエサルにとってはそれで充分だった。
籠手に喰らいつく混沌喰を殴って消滅させ、一瞬のうちにオークディザスターの懐に踏み込む。そのままカエサルの拳が、踏み込みと同時にオークディザスターの腹に吸い込まれ、地面にひび割れを発生させながら直撃する。
「ガッ、オェッ…………」
とてつもない衝撃が、一切逃げることなく受けたオークディザスターの鎧は跡形もなく砕け、後ろに数歩下がりながらおびただしい量の血を吐き出す。額には皮脂がびっしりと浮かび、内臓が破裂した痛みでろくに声を出すこともできない。
「さて、これで終わりかな」
「……貴様、それほどの力を持ちながら……グゥッ…………」
オークディザスターは、カエサルに問いかけようと必死に言葉にしようとするが、痛みで話すことができない。
「なぜ、実力差があるのにさっさと殺さないのかって? 簡単だよ。君の死体は綺麗に残して欲しいからさ」
これはレオナルドの推論ではあるが、スキルによる再生能力には精神的な理由が必要だと考えてられている。
以前、レオナルドは再生系のスキルを持つ魔物の精神を弄り、傷を負っている感覚と自覚を消去した。
その結果、身体の一部を切除したにもかかわらず、身体が再生することはなく、魔物の傷はそのまま悪化して死亡した。
他にも、自殺に追い込むほどのストレスを魔物に与えた状態での傷の治り具合を、通常の状態と比べた。
結果的に、ストレスを与えた魔物の傷の治りは、通常の状態よりも遅いことがわかった。
つまり、いかに再生能力が高く、頭や心臓を破壊しても生き返る魔物を殺すには、まず精神を殺せば状態の良い死体になるということだ。
「君の再生は随分と遅くなった。さっきは両腕をあっという間に再生したというのに、今は全くだ。思ったよりも早く心が折れたね」
オークディザスターは、カエサルの言っていることのほとんどを理解できなかった。だが、それでも一つだけは確信できた。
「(……この男は、我を敵とも、餌とも見ていない。もはや個として認識しているのかすら怪しい)」
声色も口調も、驚くほどに普通。そこには圧力も覇気も、恐怖を与えるような威圧も存在しない。だがそれ故に、オークディザスターは完全に圧倒されていた。己を貫くこの畏怖が、圧倒的な力によるものなのか、それとも理解を超えた異質な存在に対する本能的な恐れなのか、彼自身にも分からなかった。
「ほっ」
まるで足元の石ころでも払い除けるかのように、カエサルは軽い調子でオークディザスターの足を払った。
鈍い音と共に骨が砕け、巨体が崩れ落ちる。膝から崩れ落ちたオークディザスターは、四つん這いになり、唇を震わせながら呟いた。
「ば……化け物め…………」
「化け物にそう言われるなんて、光栄だよ」
「
その言葉と同時に顕現したのは、刃渡りが一メートルを優に超える特大の大剣。その鋼鉄の塊は、ためらいもなく振り下ろされ、四つん這いの獣の首を鮮やかに断ち切った。
断末魔すら許されず、オークディザスターはその場に崩れ落ち、二度と動くことはなかった。
それは一糸乱れぬ統率により、恐怖をも克服する指揮を行う
それは人類史に存在したあらゆる武具を、最高練度で振るう
それは構想上の兵器であろうとも、その原理の一切を無視して顕現する
それは彼方の世界で最も繁栄した社会生物が造り出した。歴史そのものである
星十字騎士団 【H
ガイウス・ユリウス・カエサル
レオナルドの設定暴露その9
聖文字【H 英雄】について
その本質は人類史における武器を顕現させる力と、軍勢を統率する力にある。
[ピグマリオン]
味方と認識している対象の統率が可能になる。統率を受ける兵士は、その潜在能力の引き出しや恐怖の克服、身体能力の向上などが可能で、かつカエサルが指揮権を持つため、その足並みが乱れることはない。
今回の戦争では兵士達が負けることが目的なため、潜在能力を引き出すことはせず、統率のみを行っている。表向きの指揮官は、自分が指揮していると感じているが、実際はカエサルが操り無謀な突撃を命じていた。
[英雄の証]
人類史に存在していた武器であれば全て召喚可能で、尚且つ最高練度での使用が可能になる。好みではないが銃火器なども召喚可能。
聖文字で顕現した武器の等級は、物質創造などで造られたものとは違い、歴史の再現に等しいため、全て最上級の神話級となっている。
たとえ未完成であったとしても、構想や設計図があれば原理の一切を無視して召喚可能。
レ「イカれているの一言だよ。世界を滅ぼすなら上位に入る聖文字じゃないかな?特に最後の部分が一番恐ろしいね。
それにしても、英雄という名の力が兵器を召喚するのは、中々の皮肉だと思うけどね」
小説の方針について少し考えました。1から3章とは違い、4章では光の帝国の掘り下げの為に長いペースでの展開が目立ちますが、その展開についての考えが知りたいです
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正直、遅い
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普通
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気にしていない
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掘り下げは欲しい
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はよ原作入れ
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作者の好きにしてくれ
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逆に速い