隣国スペル王国との戦争が終わって、2年……帝国はようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。
俺はエレナといつものように城の庭園でお茶を飲んでいた。
「そろそろ、超魔導大国のパーティーの時期ですね」
「5年前から招待されてた謎のパーティーだな」
結局なんで5年前に招待状を出したのかは謎のままで終わった。そもそも何かの意図があったのかすら分からなかった。
「私も婚約者として参加したかったのですが…………」
「周辺国家のほぼ全てが参加するパーティーなんだから王族とその護衛くらいしか基本行けないのは仕方ないだろ?」
「それはわかっていますが、ユリウス様だけなのは不安なんです…………」
それはどういう意味で言っているのだろうか? 聞くのが怖いが意を決して聞くことにする。
「暗に頼りないって言ってます?」
「ユリウス様はパーティーがお嫌いではありませんか…………」
「そりゃあ楽しくないし、腹の探り合いとか面倒くさいから」
「だから不安なんです…………」
エレナは頭が痛いといわんばかりに頭を押さえながらため息を吐く。ドーラが慰める様に紅茶とお菓子のおかわりを差し出す。
「良いですか! ユリウス様パーティーとは外交の場なんです。ユリウス様の評価は国の評価に繋がれるんです! ただでさえユリウス様は今、話題の人なんですから!」
「好きで話題の人になったわけじゃない…………」
「そういう所です!!」
実に不本意だが、俺は国内でも国外でも有名になってきている。
理由は言うまでもなく、スペル王国での戦争が原因だ。
父上は最初は止めようとしていたのだが目撃者が多すぎるために隠蔽は諦め、俺をヨイショする事にしたらしい。諦めないで欲しかった…………
そしてあの場に居たのは自国の兵士だけではなく敵国の兵士まで見ていたのが問題だった。俺の話はスペル王国でも広がり商人を通じて周辺国家にも伝わったわけだ。
帝国が言っているだけなら、周辺国家はデタラメか誇張しているだけと思っただろう。だが争っていたスペル王国の兵士達まで見ているとなるとデタラメの可能性は低くなってくる。
一番不味かったのが戦場に直径100mの陥没痕があることだ。
これが証拠となり俺は本陣に襲撃してきた賊を大魔法を使って倒したと英雄と尾ひれがついた話が事実という事にされたわけだ。
確かに襲撃者は倒した。大魔法じゃないが平原に陥没痕を作ったのも俺だ。たがその後は寝てたし、英雄は1人で敵軍の兵士を丁度3割を殲滅して戦争を終わらせたキルゲのほうだろう。
「よく考えてみれば俺、絶対に目立つのか。最悪だな……」
「今、気づいたのですか!? ユリウス様は次期皇帝なのですよ!? そんな人が1人で大魔法を発動させ戦争を勝利に導いたのですから他国からしてみれば無視出来ないことなんです!!」
「大魔法じゃなくて、スキルを使った
「そういう細かい事を言っているのではありません!!」
エレナが語彙が強くなってきている。普段はもっと落ち着いているんだが、ここ最近というより戦争が終わってから俺に対して随分と遠慮がなくなった気がする。いや距離間が詰まるのはいいことなんだが。
ハッシュヴァルト家が文官だからかこういった貴族のマナーなどにうるさい。逆に俺は言葉よりも戦う方が性に合っているため、意見がぶつかる事が多々ある。
今回パーティーだって本当は参加なんてしたくない。参加年齢が十五歳以上となっているためにギリギリ参加出来てしまう。
ちなみに今年は超魔導大国のパーティーと俺の誕生日パーティーは時期が被ってしまうために誕生日パーティは中止なった。
そうして俺は、エレナのパーティーで気をつけないといけない事を片手間に聞きながら、今日のお菓子を楽しむのだった。
「ちょっと! 聞いてますか? ユリウス様!?」
ハイハイキイテルヨー
パーティー当日の夜、城の大広間にアルベルトとユリウス、護衛のキルゲに侍女兼護衛のドーラがいた。
今回のパーティに行くメンバーだ。本来ならばもう少し護衛を連れていくところだが定員は5人だったために諦めている。
ちなみにエルザは体調が悪いので欠席、アンネリーゼも年齢の問題で出ることは出来ない。
「大広間で待っていれば、迎えを寄越すと言っていたがどう意味だ?」
アルベルトが訝しげに眉を寄せながら言う。
「おおよそ、予想がつきますが……」
キルゲは何処か心当たりがあるようだが、珍しく何か言い淀んでいる様子だ。
すると突如として大広間の中央が光り大きな門が現れる。門が開き、迎えと思われる風精人が10人ほど現れる。1人の美丈夫が前に出て、礼をする。
「初めましてアルベルト陛下、自分は魔法大隊隊長のリネンと申します。今宵は皆様の案内役を務めさせてもらいます。
我々は人のマナーに疎く、失礼な真似をしてしまうやもしれませんがどうかご容赦を」
「構わないとも、種族が違えば文化も価値観も違うものだ。こちらも風精人の文化に詳しい訳では無いが大丈夫かな?」
「もちろんですとも。では、こちらに門は直接会場へと繋がっておりますのでご安心を」
「その門は何時までここにあるものなんだ?」
「説明不足で申し訳ない……これは簡易的なものなので一度使えば消えますし。常駐させるにはもっと大規模な施設が必要になりますので問題はありません」
「そうか、なら良い」
表面上は納得した様な姿を見せたアルベルトだが内心は穏やかではなかった。
門を設置する条件はわからないがもし、いつでも門を出せるのであれば、城に奇襲を仕掛けることが出来ると言っていることと同義だ。
アルベルトは超魔導大国の技術の差をひしひしと感じながら門を潜った。
門を潜った先は巨大な森だった。
いや森ではない規模が大きいせいで気づけなかっただけでここは植物園に近い建物だった。
「ようこそ皆様、超魔導大国の首都ソーマに」
そこは風精人の国なだけあって、自然が豊富だった。
人間が作る人工的な町ではなく、自然と町が合体した様な自然一体型都市だった。初めて見る光景にユリウスは圧倒されていた。
植物園から少し進むと天高くそびえ立つ巨大な大樹が見えてきた。
「これが神樹ウーアアルトです。人にとっての王城の様なもので、今宵は神樹の中でパーティーを行います」
「中? 樹の中でパーティーをやるのか? 樹に悪くないか?」
俺はリネンの説明に勢いで聞いてしまう。神樹と言うくらいだからそこら辺の話は地雷になりかねないと言うのに思わず聞いてしまった。慌てて口を閉じたがもう遅い、前を歩いている父上から圧を感じる…………
「フフッ大丈夫ですよ。神樹はその程度は何ともありませんし、我々もなかなか入れる場所でもありません。神樹の中は王族とその関係者のみが住むことを許されているのですよ」
リネンが俺に微笑みながら細かく説明してくる。これはセーフってことなんだろうか? いやだめだ父上から後で注意される気配を感じる。今回は俺が軽率だったので反省することにする。
神樹の麓までついた俺達はそこにあった魔法陣の上に乗り転移魔法で神樹の中に転移した。
神樹の中は広々とした空間になっており、上を見るとなぜか星空が見える。魔法によるものだろうか?
他の国の王族や代表はすでに到着しており、おそらく俺たちが最後だろう。中に入った途端に視線の嵐に晒されながら自分の席へ案内される。
帝国の席は上座で一番奥に即席の玉座(それでも豪華だが)があり、その横には王女が座る席がある。
それにしても視線が凄い。視線からは畏怖、羨望、嫉妬、憎悪と様々な感情を感じるが全体的良くない感情ばっかだ。恨まれすぎだろ……俺の国。
俺たちが席に着くとすぐに灯りが消え、玉座の灯りが集まる。これだけでも凄い技術だ。やってることはスポットライトだが魔法で再現するのは難易度はかなり高いはずだ。
そんな事を考えていると、薄緑の綺麗なドレスを着た1人の女性いやまだ少女と言っていい風精人が出てくる。周りはその少女の登場にざわついている。
それも当然だろう。俺もてっきり王が出てくると思っていたが出てきたのは少女だ。風精人の王は男なので彼女か王と言うのはないだろう。だとすると彼女は王妃か王女か?
「私は超魔導大国の王女のカガリと申します。今宵はパーティーに参加していただきありがとう。今日集まって貰ったのは皆さんの国とある協力があるからです」
あんまり慣れてなさそうな演説をするカガリ、演技だとしたら大したものだがこの状況で舐められる様な真似をするの意味がないためおそらく素だろう。
しかし協力して欲しい事とはなんだろう? これだけの国を集めて一体何をしようというんだ?
「その協力とは、
「カオスドラゴンとは風精人の間で語り継がれる伝説で、魂を何らかの原因で失ったドラゴンが混沌竜と呼ばれる存在で生きとし生けるものの全ての命を奪うと言われています」
「混沌竜は魂を失った存在であるため魂を求め喰らいます。魂を喰らい続ければ、混沌竜は強くなり続け対処が出来なくなってしまいます」
「ですが我が国だけでは混沌竜を逃がしてしまいかねない。我々は人類で協力し混沌竜の早期討伐の協力をお願いしたいのです!」
魅了する演説ではなく、熱が入る様な演説だったな。実際に今正体不明のドラゴンが暴れているという情報があるのは確かだ。
ここ最近はドンドン被害が大きくなっているとも、帝国ではそれらしい被害は出ていないが北の方ではかなり大きな町も破壊されたそうだ。
「私の国はかの竜の討伐に協力致しますぞ!!」
「我が国も参加する! あの邪竜は儂も忌々しく思っておったわ!」
「もちろん参加させていただきますとも。人類協力のいい機会ですしね」
他の国が次々に参加していく……何故だろうかこの不安は。
何故彼らは一度話を国に持ち帰り後日、話を持ち込まないのか。
確かに王女カガリの演説は熱が入る様ないい演説だった。演説慣れしてないのも警戒心を下げる要因になっている。
だがどうも都合が良すぎる…………演説はまだいい、だがいきなり混沌竜の討伐は変だろう!
正体不明のドラゴンが暴れ始めたのが2年前でパーティーの招待が来たのは5年前だ。時期が会わない。
なによりこの空気。この構図はまるで演説に熱狂する市民のようだ。
いがみ合っていた各国が風精人の王女の演説で協力し邪悪なドラゴンを討伐する。
まるでおとぎ話だな…………
父上はこの異変に気づいている。今、話を持ち帰るなんてとても言えない。
今、断れば殺されるのではないかと錯覚するほどに周りの様子は異常で狂気じみていた。
「我が帝国も参加させていただく……」
気づいた時にはもう遅く、父上は消える様な声でそう言う他なかった。
最悪の歯車が回り始めた。その事にまだ誰も気づいていない。
ここから物語が加速していきます。
転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します
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