転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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ゲルドってディアブロやベニマルとは違うカッコ良さがあるよね。“漢”って感じなのに優しい所が良い。転スラ日記でそう思いました。

それと、日間13位ありがとうございます。


水面下での波乱

 第一試合の獅子覆面とゴズールは大きな盛り上がりを見せた。観客はそのハイレベルな戦闘を間近に見て歓声を上げ、実力を持つ者もそのレベルの高さに驚嘆する。

 

 盛り上がりが冷めやらぬ中、第二試合が行われる。司会を務めるソーカが拡声器を片手に進行する。

 

「皆様お待たせしました! これより第二試合を始めます!」

 

 その言葉と共に、ゲルドとユリウスが舞台へと上がる。どちらも観客からは期待が大きい二人だ。第一試合のような迫力のある決闘を、誰もが望んでいた。

 

 両者は無言で近づき、舞台の中央付近で止まる。ちなみに、観客の予想では五分五分の戦いになるのではないかという予想が大半を占めていた。

 

 片や魔王の配下で、武闘大会での特別出場枠の一人。その体格から弱いはずがないという予想だ。

 そしてもう片方は魔導王朝サリオンの護衛の一人。実力は完全に不明だが、予選を一瞬で終わらせた猛者なら魔王の配下だろうと勝てるという予想が多い。

 

 これはあくまで一般人の意見だ。強さは体格でも魔素量でも決まらない。

 

 各国の重鎮達がその目を光らせてこのカードを見極めんとしていた。誰もが魔王の配下とサリオンの護衛の実力は少しでも知っておきたいのだろう。

 

 リムルやガゼルは、特にサリオンの護衛を注視して観戦している。

 

 腹の探り合いが始まる中で、舞台にいるゲルドとユリウスの間で続く沈黙はゲルドから破られた。

 

「良い試合を望む」

 

 ゲルドがユリウスに握手を求める。初対面では威圧感があって恐れられがちだが、根は非常に優しく真っ直ぐだ。マントを外した黒騎士のような鎧姿のユリウスは、ゲルドの真剣ながら真っ直ぐな瞳と目を合わせて握手を交わす。

 

「こちらこそ、よろしく頼む」

 

 握手を交わしあった両者は一定の距離を取り、レフリーのディアブロの開始の合図を待つ。二人の準備が整ったことを確認したディアブロは、その声を上げた。

 

「では、始め!」

 

「ヌゥぅン」

 

 開始と共にゲルドが速攻を仕掛けた。人間よりも遥かに大きな体躯から繰り出される拳は、構えもせずに突っ立っているユリウスを撃ち抜かんと迫る。

 

 ユリウスはその拳を紙一重で躱し、そのままゲルドの懐へと侵入する。流れるような自然な動作から来るとは思えないスピードで懐を許したゲルドは、腹にお返しの一撃を受けた。

 

「グォッ」

 

 その衝撃はゲルドを内部から広がるように全身に響いた。想像以上の威力に驚きながらも、これで怯むゲルドではない。拳を握った手とは逆の手でユリウスを掴もうと上から仕掛ける。

 

 もし掴まれれば、ゲルドの握力とパワーで鎧が無事では済まない攻撃だ。地味だが、蹴りや拳よりも警戒しなくてはならない。

 

 そんな危険な攻撃に対して、ユリウスが後ろに下がるとゲルドは予想していた。ゲルドの懐では避けるスペースが狭く、掴みを避けるのは難しいと判断した上での攻撃だった。

 

 後ろに下がれば、そのままタックルでの攻撃まで組み立てて行った掴みは、ゲルドの予想外の手段で避けられる。

 

「なっ!?」

 

 ユリウスは後ろに下がるのではなく、開脚して地面に張り付くようにして伏せたのだ。

 ゲルドとユリウスの体格差は一目瞭然。だからこそ、後ろに避けやすいように横に薙ぎ払う軌道で掴みかかったというのに、ユリウスは狭いスペースの中で伏せて避ける判断をした。

 

 ゲルドの腕は空を切り、懐に入られた状態でさらなる無防備を晒してしまう。ユリウスは開脚して伏せた体勢のまま半回転し、ゲルドが重心を置いている脚へと蹴りを入れる。

 

 ゲルドは掴み掛かるために若干だが前のめりの姿勢になっていた。その重心は片脚に寄っており、その脚を払われれば前のめりの状態で倒れ始める。

 

 その無防備に前に倒れ始めるゲルドに向かって、ユリウスは足を揃える。足を曲げて倒立したような体勢で両腕の力で跳び上がり、ゲルドの顎にクリーンヒットさせた。

 

「おおっと!? 何ということだ! まるで曲芸師のような動きでゲルド選手を翻弄し、ユーリ選手の両足が顎へとクリーンヒット!」

 

 ソーカの実況と解説に盛り上がる観客席の熱気はさらに増して盛り上がりを見せる。スクリーンには一連の流れをスローで再生され、観客によりわかりやすくなっているようだ。

 

 ユリウスがスクリーンから視線をゲルドに向ける。ゲルドは荒い息を吐いてはいるが、致命的なダメージは受けていない。顎と腹に鈍い痛みが残るが、その瞳からは闘志が消えるどころか余計に燃え盛っていた。

 

「まさか、ここまでとは。世界とは広い」

 

「そちらこそ、まだ若いだろうに」

 

 ゲルドは感慨深い気持ちだった。自分が最強などと驕ってなどいないが、リムル様の配下として恥ずかしくない強さを持つつもりだ。しかし、目の前の黒騎士の護衛に勝てる気がまるでしない。

 

 スキルや武器も使っていないが、それは相手も同じ。仮に使っても勝てるビジョンが見えてこないのがゲルドの本音だ。

 

 だが、それは諦める理由にはならない。リムル様が観ているこの試合で、無様な姿を晒すことは許されない。故に、今自分に出来る全力を相手にぶつける。

 

「一手、ご指南願う」

 

 ゲルドはそう言って前屈みの姿勢になる。それはまるで相撲における始めの構えと酷似しており、一目で突進とわかる。

 

 ゲルドは小細工抜きに真正面から攻めるという意思を示した。その上でユリウスに指南を願い出た。

 

 これは誘いと同時に、ゲルドの武人としての挑戦状だ。本来のユリウスはその申し出を受ける義理はない。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 少しの沈黙を挟み、ユリウスは無言で構えた。それを了承と受けとったゲルドは、全身から妖力を湧き上がらせる。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯感謝する」

 

 観客には聞こえない応酬ではあったが、観客も舞台の空気があからさまに変わったことを感じ取り、歓声が上がり盛りあがっていた闘技場は驚くほどの静寂に包まれる。

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 一切動くことなく、構えたままで睨み合う両者。糸が張り詰めたように緊張の間がそこにはあった。

 

 そしてふとした瞬間、その張り詰めた糸はプツリと途切れる。

 

「ウオォォォォッ!!!」

 

 ゲルドの雄叫びが張り詰めた糸を振り切って舞台を駆ける。その勢いはまるで重戦車の如くユリウスに向かって一直線に突進する。

 

 そのスピードは観客の目に捉えられることはなく、衝突まで一秒とかからないだろう。

 

 ゲルドの渾身のショルダータックルは真っ直ぐにユリウスへと迫り、空気を押し潰す音が闘技場に響き渡った。

 衝撃波が観客にまで届き舞台が砂煙に包まれると、誰もが観客席から乗り出して確認しようとする。

 

 砂煙が晴れ、そこには構えるために突き出されていた左手一本でゲルドを受け止めるユリウスがいた。

 

 ゲルドが驚愕とどこか晴れやかな笑みを浮かべたその時、ユリウスは受け止めた左手で肩を抉りながら掴み、逃げられないよう固定する。

 

「見事」

 

 ゲルドが呟いた称賛の言葉と同時に、その顔に拳が突き刺さり舞台の壁まで吹き飛ばされた。ディアブロがゲルドの様子を確認し、ソーカに視線を送り顔を横に振る。

 

 その合図を受け取り、ソーカの声が静寂の闘技場に響いた。

 

「しょ、勝負ありッ!! 最後の力同士の激闘を制したのは、ユーリ選手ですッ!」

 

 大歓声、そして拍手喝采だった。二人の勝負に観客席から惜しみない称賛が降り注ぐ。

 

 冷めやらぬ興奮に満ちた闘技場内の舞台の中で、ユリウスはゆっくりとその場から去っていった。

 

 

天帝直属護衛ユーリVS守護者ゲルド

 

 

勝者ユーリ

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「なんと言うか、なんかもう凄かったな」

 

 第一試合は迫力あるインファイトで凄かったが、第二試合は達人の間合いといった感じで色々凄かった。

 

 俺の語彙力がとにかくなくなるような試合だったことは間違いない。

 

「ですがよろしかったのですか? ゲルドが負ければ残りはゴブタだけですし、あの護衛とやらにゴブタが勝てるとは思えません。これではリムル様の威厳が⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 シオンの進言は一理ある。特別枠で出場した二人が簡単に負けてしまうと、俺は気にしないが魔王の威厳やらどうたらで色々と面倒事になりかねない。

 

 マサユキの実力を確かめるのも大事だが、威厳を気にしないといけないのが王様の大変なところだ。

 

 ミリムはそういう威厳とか結構気にするタイプだし、この武闘大会の結果もいずれ耳に入るだろう。ゲルドがいるからそこら辺は大丈夫だと思ってたけど、獅子覆面とサリオンの護衛までは想定してなかった。

 

 幸い、問題の二人は決勝までゴブタに当たることはないし、懸念点はマサユキくらいか? こうなったらゴブタにはちょっと頑張ってもらう必要が出てくるかもしれないな。

 

「なんならリムル様! 今から私が参加して⋯⋯⋯「ダメに決まってるだろ!」⋯⋯⋯ハイ⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 参加禁止したのにも関わらず参加しようとするシオンを、俺は慌てて止める。そんなことしたらブーイングの嵐だし、何より公平じゃない。

 

 にしても、ゲルドですら相手にならないとは。多分覚醒したクレイマンより遥かに強いよな。俺も進化したことでヒナタ相手にも優位に立ち回れたし、剣の修行も怠ってる訳じゃあないんだけどな。

 

 何だろうな、自然というか無駄が一切ないような動きをしているように見えた。素人目から見ても実感出来る動きの“美しさ”がよくわかる。

 

《告。個体名ユーリの解析は不能ですが、記録として保存し再現は可能です》

 

 ん? 解析出来ないのに再現は出来るのか? 

 

《対象を直接解析が出来ないだけで、対象の認識自体は可能です》

 

 えっと、俺にもわかりやすく説明してくれ。

 

《⋯⋯⋯⋯⋯個体名ユーリは透明人間のように映らないだけで、存在そのものが消えている訳ではありません》

 

 ほうほう、見えないだけで触れることは可能ってことだよな? 

 

《YES 対象の解析は不可能ですが、対象以外の周囲全てを解析することで動きの観察は可能です》

 

 本人が見えないから周りを塗りつぶして、浮き彫りにしたってことか。とんでもないゴリ押しだが、ラファエルだから出来るやり方だな。

 

《告。ただし、これは観察よる再現であって完全なものとは言えません。依然として個体名ユーリの解析は不可能であり、マスターに危険を及ぼす可能性があります》

 

 ある程度は仕方ないだろう。幸いサリオンの戦力な訳だし、対策は必要だろうけど今すぐにって訳じゃないだろ? 

 

《⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯》

 

 解析関係はさっぱりだからそっち任せになっちゃうけど。頼りにしてるぜ、相棒? 

 

《了。マスターの最善を尽くすのが私の役目です》

 

 やっぱり自我あるよな、これ。私とかガッツリ言ってるし。

 

《個体名ユーリの対策を進めます》

 

 あっ、逃げた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 二日目の開国祭を楽しんでいたレオナルドと桐乃は、メインイベントである武闘大会が行われる闘技場内の観客席で観戦していた。

 

『うーん。何で陛下が当然のように武闘大会に出てるんだろ』

 

『あの黒騎士姿の鎧の人って陛下なんですか?』

 

『まぁね。造ったのは鎧だけだけど、隠密性・耐性・探知能力はかなり高いよ。解析系のスキルや魔法を使われたら大体わかるし、解析も一緒に無効化してくれるしね。

 その分耐久性や防御力に難があるけど、陛下はそこまで求めてなかったから、そんなに苦労はしなかったかな』

 

 レオナルドが製造する武器や防具は、カエサルが顕現させた物とは違い特殊能力に特化している。そもそも、レオナルドは鍛冶職人ではない。

 

 普通に製造しても、どうしても性能が劣ってしまう。

 だが、鍛冶としてはかなり邪道ではあるものの、特殊能力に特化させることで有用性を保証している。

 

 今回ユリウスが着用している鎧は、究極能力(アルティメットスキル)でもなければ解析系や精神系などのスキルを自動的に無力化し、敵の攻撃なども事前に察知することが出来る護衛特化型だ。

 

 他にも、レオナルドがお遊びで追加したパージ機能・自爆機能・変形機構・思考操作機能を組み込んだ作品になっていた。

 

『レオナルドが造る物が凄いのはいつも見てるので知ってます。それよりも、何で陛下がここにいるんですか?』

 

 何も知らない桐乃は、正体を隠して武闘大会に参加しているユリウスの行動の意味がまるでわからなかった。だから知っていそうなレオナルドに聞いたのだが、当人は顔を渋くして答える。

 

『私も詳しくは聞いていないんだ。護衛に有用な鎧が欲しいって言われて、倉庫にあった試作品を改良しただけだよ』

 

『じゃあ、何も知らないんですか?』

 

『詳細は何も。サリオンの護衛って言ってたし、正体を隠したいのは察せられるんだけどね。

 私は天帝と陛下が親しい間柄だって聞いたことがあるだけだから、何でこんなことになってるのかはさっぱりだね』

 

 レオナルドはそこで気づく、桐乃がどこか暗い顔をして考え込むように額に手を当てて俯いてることに。

 

『どうかしたかい?』

 

『いえ、具体的なことは帰還してからにしましょう』

 

 頭を振り払うように横に振った桐乃が、話を無理矢理切り上げる。レオナルドは桐乃の言う通りに、追求はしなかった。

 これ以上二人の間でこの話題が上がることは、開国祭の間はなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

光の帝国(リヒト・ライヒ) 首都ゼーレ

 

「こうして二人でお茶をするのも、随分久しぶりだったかしら?」

 

「そうですね。表向きは対立している関係ですし、ゆっくりとなると時間も場所も限られますから」

 

 首都ゼーレにある銀架城とは別に存在する星八世貴族テスタロッサ・ヴァイスという役職のために与えられた広大な屋敷には、普通の使用人は誰も立ち入ることを許されない。

 

 ここは銀架城(ジルバーン)真世界城(ヴァールヴェルト)のように機密文書や極秘研究の資料などの表には決して出ない物の保管を許された屋敷だ。

 

 そこを管理するのがただの使用人では情報が漏れかねない。それ故に、立ち入りが認められるのは星十字騎士団やテスタロッサ直属の一部の悪魔、皇帝直属メイド達のみとなっている。

 

 皇帝派筆頭貴族のテスタロッサと貴族派筆頭貴族のエレナとして、表向き対立関係にある二人が隠れて会うには最適な場所でもある。

 

「それで? 態々陛下のいない時間に誘うなんて、何を考えているの」

 

「貴方に相談というのは少し変ですが、今後の光の帝国の方針について考える必要があると思いましたので、意見をください」

 

「意外ではあるわね。てっきり、わたくしのことを嫌っていると思っていたもの」

 

 エレナとテスタロッサの間柄は二千年以上も前からのものだ。しかし、プライベートで二人が関わる機会はそう多くない。むしろテスタロッサはエレナが自分を嫌っていると思っていた。

 

「貴方の陛下に対する想いや忠誠の仕方は、他の星十字騎士団と比べても異質です。同時に、私と似通っている部分があるのもまた確か。

 情勢が早く動き出すことが半ば確定している以上、ゆっくりしている暇はありません」

 

「⋯⋯異質ね。一理あるけど、正面切ってわたくしに言うなんて⋯⋯⋯⋯初めての経験だわ」

 

 配下の悪魔がそんなことを言っていたら、間違いなく不敬として罰を与えただろう。エレナは立場上は上ではあるし、文句を言うつもりはないが、ここまではっきり言われるとはテスタロッサも思っていなかった。

 

「単刀直入に言います。今後の陛下の行動の予想は、貴方もしていると思います。しかし、ルドラ・ナスカとの対談から陛下の様子がおかしいとの報告がありました。

 杞憂であれば構いませんが、ルドラ・ナスカとの対談の直後というのが気になります。貴方はどう思いますか?」

 

「言いたいことはわかるけど、陛下はきっとソコにわたくし達を立ち入らせようとはしないでしょうね」

 

「わかっています。それでも、だからこそ私達は知っておく必要があると思っています。この情勢を利用すれば、少しは変えられるかもしれません」

 

「エレナ、貴方は陛下⋯⋯⋯ユリウス様を変えたいの?」

 

 テスタロッサが薄々思っていたことを問いかける。エレナは宰相として陛下を支えてきた重鎮だが、陛下に対してではなく、ユリウスに対して忠誠を誓っているようにテスタロッサには見えていた。

 

 これがテスタロッサとエレナに似通っている部分だ。ユリウス皇子として婚約者だったエレナ、超魔導大国跡地でユリウスの涙ながらの叫びを唯一知っているテスタロッサ。

 

 それぞれがユリウスの弱さを知っている。だからこそ抱える不安。ルドラ・ナスカはユリウス・ベルツと似たようなルーツや夢を持っている。それが今回の様子の変化に関係しているのであれば、あまり良い状況とは言えないかもしれない。

 

 二人はそれを察しながらも、ユリウスに拒まれることを確信していた。テスタロッサは、いざとなれば自分の命を捧げる用意はいつでも出来ている。

 

 だが、目の前のエレナは事前に対処する方法を一考している。テスタロッサが一度捨てた考えでもあり、対処の方法次第では不敬になりかねない危険な行動だ。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯私は」

 

『お辞めください! 星十字騎士団だからと言っても、この場に入ることを許可する訳にはいきません!』 

 

 エレナが言いかけたその時、部屋の外が騒がしくなる。この場に無許可で入れるのは陛下一人だけ。星十字騎士団が使用している部屋に、許可なく入ることは誰にも出来ない。

 

 そんな部屋に入ろうとしている者がいる。メイドの声から星十字騎士団なことはわかるが、この大事な話を遮ろうとする愚か者は一体誰なのか、テスタロッサは少々不機嫌になりながら部屋の外に声を掛けた。

 

「許可するわ。入りなさい」

 

「失礼します」

 

 テスタロッサの一声で入って来たのは、意外でもない人物だ。むしろ強引に来た理由も察せられる。

 

「レディの部屋に許可もなしに入ろうとするなんて、礼儀がなってないのではなくて?」

 

「それについては申し訳ない。陛下がいない時間である今しか時間がとれなかった」

 

 冷ややかになったテスタロッサの声に一切動じることなく答えるその男は、エレナに視線を向けている。テスタロッサのことはまるで眼中にないような態度に、無理矢理追い出そうかと考え始めた辺りで、エレナが口を開いた。

 

「それで、何の要件でしょうか? リリウム

 

 外界での情勢が加速していく最中、光の帝国の内でも波乱の時を迎えようとしていた。

 




[ゲルドVSユリウス]
両者表舞台での戦闘のため、武器やスキルの類は一切使わずに技と力のみの勝負になった。
経験差や技量差などがあるので、流石にゲルドは勝てない。
だが、相手の技量に敬意を払ったゲルドに付き合い、ユリウスは正面から攻撃を受け止めた。


[ラファエルの解析]
ユリウスの本人の解析が全く出来ないので、動きのパターン化なども出来ないが、ユリウス以外の空間を全て解析することで、どういう動きをしていたか把握することが出来た。

観測出来ずとも、観察する方法はあるということである。


[エレナとテスタロッサ]
表向き対立関係にある二人がプライベートで関わることはほぼない。二人はユリウス対して仕えているのであって、陛下に仕えている訳ではない。

ユリウスか陛下かの忠誠のバランスは個人によって違うが、エレナが9対1で、テスタロッサが8対2のバランス。

仮に光の帝国を手放してユリウスとひっそり暮らせるなら迷わずそうしている。光の帝国への愛着はあれど、二人にとっては天秤にかけるまでもない選択肢なのだ。

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