転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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原作をなぞる展開ってすごく難しい。自分のやりたいことと違和感なく合わせようとすると、めちゃくちゃ難産になります。

五章は基本ユリウスが黙ってるせいで原作カットの部分が多いですが、3期アニメの魔都開国編を見れば大まかな流れはわかると思います。


不確定要素

         開国祭三日目 

 

 武闘大会はユーリが棄権したことにより、急遽準決勝第二試合であるゴブタVSマサユキが決勝ということになった。

 

 予定より一試合減ったことになるが、観客の不協を買うことにはならなかった。獅子覆面VSユーリの戦闘がハイレベルすぎて、お腹いっぱいになってしまった観客が大勢いたのだ。

 

『でも決勝があれじゃあ微妙よねぇ』

 

『あの勇者擬きのスキルなら観客の大半が納得するだろうさ。結果的に魔国連邦側が優勝して丸く収まったんだ。万々歳だろ』

 

 ゴブタVSマサユキは、ゴブタが召喚した狼の魔物と合体したまでは良かったものの、その後勢いのまま壁に突っ込んで場外負けになった。

 

 その後マサユキが自分が負けだとマイクパフォーマンスをして、結果的に自爆したゴブタが優勝という呆気ない形で武闘大会は終了した。

 

 午前中の決勝が呆気なく終わったせいでエルメシアは完全に退屈してしまったようで、今は内心で愚痴を吐きながら次の催しの準備を待っていた。

 

『政治的には万々歳でも、面白くないじゃない』

 

『わがまま言うな。まだ催しがあるんだから良いだろ』

 

『それとこれとは話が別よ。せっかくユーリが出たのにあんな終わり方じゃ納得出来ないわ』

 

 頬を膨れさせ始めたエルメシアに対応していると準備が整ったようで、拡声器を使ったミョルマイルの声が闘技場全体に響く。

 

「皆様、大変お待たせしました! 

 これよりお見せするのは、魔国連邦が誇る難攻不落の地下迷宮でございます! 

 魔王リムル陛下が冒険者達へ解放する最難関。果たして突破出来る者は現れるのでしょうかッ!?」

 

 地下迷宮と言われても武闘大会のように直接見ることは出来ないと思っている者がほとんどだ。

 冒険者でもない一般人が参加出来るはずもなく、見学でも楽しめるという触れ込みだった観客はミョルマイルの説明に困惑している。

 

 そんな観客の疑問を解消するように、スクリーンが空中に映し出され、そこには武闘大会で司会をやっていたソーカが拡声器を片手に更に詳細を話始めた。

 

 説明によると、今回はドライアドが同行して迷宮に潜る挑戦者をリアルタイムでスクリーンに映し出されるようだ。

 

 参加する冒険者は、約3時間の間下層へと続く地下迷宮を探索することが可能。地下迷宮内はモンスターが徘徊しており、戦闘や逃亡などは自由だと言う。

 

 他にも地下迷宮には無数の宝箱があり、その中には下位回復薬や魔国連邦で作られた武具などが入っていて報酬として持って帰って良いそうだ。

 

 今回は特別に、挑戦者にはいくつかの救済アイテムが支給されるようで、上位回復薬十個・完全回復薬一個・帰還の呼笛・復活の腕輪が支給される。

 

 帰還の呼笛は、文字通り吹けば地下迷宮の外に出ることが可能なアイテムで、復活の腕輪は地下迷宮内での死からの復活効果があるアイテムらしい。

 

 死からの復活効果のあるアイテムか、迷宮内限定らしいがそうだとしても何の誓約なしに出来るのはかなり無法だな。

 それに、何だろうなこの違和感は。

 

 スクリーンな映し出された地下迷宮の映像にユリウスはどこか言葉に出来ない違和感を感じ取っていた。スルーすることも考えたが、念の為確かめることにする。

 

『エルメシア、少し確かめたい』

 

『あら以外。でも面白そうだし良いわよ』

 

 エルメシアから許可をもらったことだし、念の為エラルドにも話そうと近づくが、その瞬間にエラルドが叫ぶ。

 

「エ⋯エレレレレンンンンンちゃん!? ゴフぅッ!」

 

 壊れたラジオのように叫んだと思えば、エルメシアに腹パンされて蹲るエラルド。そう言えば親バカだったな。

 ちょうどいい、エレンも護衛すると言えばエラルドもストレスにならずに済むだろう。

 

 早速エラルドに事情を話すと、半泣きになりながらユリウスの手を掴んで「是非ともお願いします」と頼み始め、許可を貰いにリムル・テンペストの方へと向かっていく。

 

 急に半泣きのオッサンの対応することになったリムル・テンペストはかなり困惑していたが、すぐに事情を察したのか了承してくれたようだ。

 

 上階から飛び降りて舞台に向かう際にリムルから哀れむような視線を感じたが、きっと気の所為だと信じたい。親バカに巻き込まれた苦労人みたいに思われるのは、ユリウスとしても御免だった。

 

「おおっと! 次の参加者は、鎧の破損で決勝を棄権してしまいましたが、修繕して参加してくれるようです! 

 準決勝での試合は皆さんの記憶に強く残ったことでしょう! 天帝直属護衛ユーリィ──ー!」

 

 歓声が大きく上がり、観客の反応はかなり良い。勇者擬きのスキルと獅子覆面との激闘で、棄権にも大きな反感はない。

 

 続いて閃光の勇者マサユキ率いる勇者パーティーが紹介され、巨大な門に並び立つように参加者が並んでいるため、紹介順で次の勇者パーティーがユリウスの隣に並ぶ。

 

「ど、どうも」

 

 マサユキが会釈をしながら隣に並ぶが、他のパーティーメンバーがユリウスに向かって宣言し始める。

 

「何やらマサユキ様と互角などと巷では噂されているようですが、あまり調子に乗らないことですね」

 

「そうそう、マサユキ様に張り合って来ても決勝で怖気づいた事実は変わらないんだから」

 

「ちょ、ちょっと二人とも⋯⋯⋯⋯」

 

 メガネの男とフードの女がユリウスに突っかかり、マサユキは慌てて止めようとしている。チラチラとユリウスを見ているが、その表情には若干の怯えが隠れ見える。

 

「マサユキ・ホンジョウだったか」

 

「えっ? あ、ハイそうです。マサユキ・ホンジョウです」

 

 話しかけられると思わなかったのか辿々しく答えるマサユキに、ユリウスはマサユキに向き直りずっと気になっていた事を問いかける。

 

「最近、青髪ロングの女を見たことは?」

 

「えっ? 青髪? えっと⋯⋯⋯そういえばちょっと前に青髪の綺麗な人とすれ違ったような⋯⋯⋯⋯」

 

 困惑しながら肯定したマサユキは、思い出した事実に悩むような素振りを見せる。

 

「でも、何でそんなことを聞くんですか?」

 

「いや、深い意味がある訳じゃない。少し気になっただけだ」

 

「は、はぁ⋯⋯⋯⋯」

 

 脈絡のない質問に、怯えなど吹っ飛んだのか頭に大量のハテナマークを浮かべるマサユキとの話を、ユリウスは早々に切り上げた。

 話を無視されたメガネの男とフードの女が何か言っていたが、思考に浸っていたユリウスとマサユキの耳には何も入ってこなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「それでは挑戦者も出揃ったところで、いざ地下迷宮を解放しましょう!」

 

 ミョルマイルの宣言と共に巨大な門が脈動するように動き出し、その扉がゆっくりと開かれる。観客は興味津々にその様子を覗き込む。

 

「では参加者の皆さんは扉にお入りください! 観客席の皆さんはスクリーンをご覧くださいね!」

 

 ソーカが説明する中、参加者である轟雷というパーティーと、ガイという武闘大会でゴブタにやられた冒険者は、復活の腕輪に対してかなり懐疑的になっている。

 

 そんなガイ達に対してエレンが注意したりするが、ガイに今ここで試して証明してみろと言われると、日和ながら了承してカバルを犠牲にしようとする。

 

「仰る通り。死から復活と言われても、にわかには信じられませんよね。私が実験台になりましょう。ガイ殿・轟雷の皆さんもそれでよろしいですかな?」

 

 予想していた反応であろうそれに、ミョルマイルが実験台になることを提案する。その提案に、カバルが尊い犠牲にならずに済んだとホッと安堵していていた。

 

 ソーカが説明しながらミョルマイルを攻撃して試そうとすると、間に割って入るようにガイがミョルマイルの腕をぶった斬る。

 そのままミョルマイルにとどめを刺すと、闘技場はシンと静まり返った。

 

 その瞬間、ミョルマイルの死体が光となって消え門の入り口に死んだはずのミョルマイルが無傷で現れた。轟雷や観客もその信じられない光景に驚いている。

 

「(死なないとわかってる上に、パフォーマンスの一環だと言うのにリムル・テンペストは随分と動揺しているな。

 今のガイの行動が腕輪が発動しない条件に何か引っかかりそうだったのか、勝手に殺されて不快になっただけか)」

 

 復活の腕輪の発動条件が何か話された様子はない。腕に嵌めるだけで良いとのことだが、それが本当ならあの動揺の仕方はなんだ? 

 

「さぁ、これより先には未知の世界が広がっております。

 勇気ある挑戦者を待ち受けるのは、果たして!」

 

 多少のトラブルはあれど、地下迷宮探索の開始が歓声と共に告げられた。

 

 

 

 それからしばらくの時間が経過し、ユリウスは地下迷宮の壁や床を探りながら歩いていると、感じていた違和感に気づいた。

 

「(これは、チャンドラー達がいた神樹の中と似た気配だ)」

 

 以前エルメシアと超魔導大国の調査に赴いた際に見つけた神樹内部の迷宮。壁や地面の材質などは違うが、気配がそっくりなのだ。

 

 気の所為ではない。間違いなく同質の物だ。壁や地面を軽く叩きながら周囲を探るが、かなり広い。しかも下にも空間がかなり続いている。

 

 数日で踏破するのは広すぎて物理的に不可能な迷宮。これを一から創り出せる人物は非常に限られる。そして、俺はその人物を知っている。

 

『解析が終了しました。以前の神樹の迷宮との比較の結果、この迷宮はスキルの類で創り出した物ではありません。最低でも聖文字レベルの力の行使が必要です』

 

 嫌な予感が当たってしまった。使わないように心掛けてる『平和之王(ソロモン)』を使ってまで確かめて良かった。

 間違いない、これはラミリスが創り出した地下迷宮だ。

 

 余計に面倒なことになった。この段階で把握出来たのは不幸中の幸いだ。交流があるのは知ってたが、まさかここまで協力してるのか。

 

 これで三人の魔王が魔国連邦に深く関わっていることになる。いや、それどころか同じ陣営とすら考えても良いくらいだ。

 

 この忙しい情勢に、不確定要素が更に増えた⋯⋯⋯⋯⋯。もういい、エレン達のサポートをさっさと終わらせよう。

 

 ユリウスはこの茶番劇を終わらせるために足に力をいれる。一気に駆け出したユリウスは、罠を無理矢理スピードで突っ切って遭遇する魔物も無視していく。

 

 入り組んだ構造だが、エレン達にはマーキングは済ませてあるのでそこまで最短で進む。曲がる際は壁を蹴って時短と罠の回避を同時に行っていた。

 

 あっという間に下へと進んだユリウスは、騒がしくなっている部屋へと扉を蹴破って侵入する。中にはエレン達三人組が多数のモンスターに囲まれていた。

 

 それぞれが連携して対処しているが、如何せん数が多く対処仕切れていない。そして、一回り大きい熊型の魔物がエレンに爪を振り下ろした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 地下迷宮イベントが開始されてから二時間。参加者達はそれぞれのペースで攻略を進めている。

 

 マサユキのパーティーはラミリスのミスで落とし穴を設置した結果、奇跡的に上手いこと利用して下へと進んでいた。轟雷のパーティーは希少級の武器を宝箱から手に入れてからは順調だし、ガイは一人で迷宮内を疾走して次々と宝箱のアイテムを手に入れている。

 

「ラミリス君。これ以上のミスはないだろうね?」

 

「ないであります!」

 

 ビシッと敬礼するラミリスを横目に、まだ何かあるのではないかと半信半疑な俺は上手く進めているエレン達三人組のパーティーを見る。

 

 ラミリスとヴェルドラをお菓子で買収したエレン達三人組は、順調に宝箱を回収している。宣伝も兼ねて色々と回復薬なども渡したのだが、演技慣れしてないせいか片言でわざとらしい。

 

「や、やっぱ魔国印の下位回復薬は上位回復薬並みに効くゼ」

 

「えースゴーイ。そんな回復薬が宝箱からタダで手に入っちゃうのぉ?」

 

「お得な迷宮でやすね」

 

 うん。やっぱりわざとらしいな。全体的に見て宣伝は上手くいっていると言っていいだろう。気になるのは⋯⋯⋯⋯⋯さっきから中々動きを見せない鎧姿の男だ。

 

 うーん。地図を作る様子も壁に印を書く様子もない。護衛としては優秀でも、冒険者としては優秀って訳でもないのか? 

 

 まぁ、エラルド公爵が娘のエレンが心配で参加することになって少し可哀想だが、こちらが出来ることはないし頑張ってもらいたい。

 

 あれ? ならエレン達について行けばよかったんじゃないか? 尾行して影から守る感じでもないし、もしかして本当に困ってるのでは? 

 

 エラルド公爵はさっきから挙動不審だし、エルメシアさんは呆れた様子でスクリーンを見ている。何かフォローしといたほうがいいかな? 

 

「なぁ、ラミリス。エレン達を護衛の人達と合流させることは出来ないか?」

 

「え? 出来るっちゃ出来るけど、必要ある?」

 

 ラミリスがそう言いながらスクリーンに指差すと、そこには横抱きの状態で救出されたエレンと、いつの間にか三人組に合流している黒騎士がいた。

 

「ちょっ! どうなってるんだ!? ラミリス!」

 

「えっーと⋯⋯⋯⋯アタシ具体的なことはわからないんだけど⋯⋯⋯⋯」

 

 ラミリス曰く、俺が目を離して思考に浸っている内にエレン達三人組は落とし穴を活用して四階層まで移動し、エリアボスの吸血蝙蝠の大群との戦闘を始めた。

 

 ラミリスがエリアボスの情報まで流したことについては後で色々聞き出すとして、エリアボスとの戦闘は途中まで順調に進んでいたらしい。しかし、罠を作動させてしまったようで更に魔物が溢れるように部屋に現れたようだ。

 

「そんなギミック低階層にはなかっただろ!?」

 

「私も知らないのよさ! 多分師匠だって! 宝箱の確率も弄ってたし!」

 

 ラミリスの慌てようから嘘を言っているようには見えない。多分ヴェルドラが「こっちのほうがスリルとやらがあって楽しめるだろうな、クアァァハッハッハッ!」とか言って罠を用意したのかもしれない。

 

 エレン達はそれを知らなかったのだろう。エリアボスだけじゃなく大量の魔物の相手を同時にするのは、三人では限界がある。

 

「で、何で護衛の人があそこにいるんだ? あの人まだ一階層にいただろ?」

 

「えっとね。何か急に凄いスピードでエレンちゃん達の元に向かってたの。壁とか蹴って罠を避けてたし、とにかくすごかった!」

 

 説明が雑だが、言ってることは特に間違っていないのだろう。でもどうやってエレン達までの道を最短で行けたんだ? ラファエルさんも何も言わないからわからないみたいだけど。なんにせよ間に合ったみたいで良かった。

 

 エラルドさんも助けが間に合った喜びと、エレンをお姫様抱っこしている護衛さんへの怒りで凄い顔になっている。エルメシアさんに叩かれて元に戻ったけど、後で護衛の人は大変そうだ。

 

 その後ガイがトラブルを起こしたり、マサユキのパーティーが十階層のボスを倒したりと、色々ありつつも練習した俺の演説も成功。開国祭最後のイベントも無事に終了し、楽しかった祭りは終わりを迎えようとしていた。

 

 残る問題は商人達への金貨の支払いだけだ。

 魔国(ウチ)に恥をかかせようとしていた奴を炙り出してやるとしよう。

 

 




[地下迷宮の違和感]
二章で出てきた神樹の地下迷宮と、ラミリスの地下迷宮は非常に似ているとユリウスは感じました。何ででしょうね?


[マサユキへの質問]
ただの確認。本当に深い意味はない。ユリウスとしてはマサユキに対しては複雑だが、今話すことは出来ない。


[リムルからの印象]
サリオンのジョーカー的な存在?エラルド公爵やエルメシアに振り回されてそうで苦労人の匂いがする。ラファエルさんが警戒しているし、獅子覆面との試合もすごかったからめっちゃ強いんだろうなくらいの印象。

わかりやすい覇気やスキルを使っていないのでイマイチ凄さが伝わってない。ラファエルなしのリムルの分析力は、多分こんな感じ。

金貨問題も原作通りなのでカット。飛ばした二日目深夜の会談と、もう一話で魔都潜入編は終了です。

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