転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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別れと夢

「何やら嫌な予感がしますねぇ」

 

 濃霧の森の中で、キルゲは馬に跨りながら呟く。

 

「隊長、今からドラゴンを討伐するのに士気を下げるような事を言うのは控えてください」

 

 自分の横にいた青年がキルゲに注意する。この青年は新兵の時からキルゲが教えていた青年で、25歳という若さで今回の帝国の討伐隊の副隊長を務めている優秀な男だ。ただ少々真面目すぎる気質なのが彼がまだ若い証拠だろう。

 

 そんな副隊長の注意にキルゲは気にする様子もなく返答する。

 

「ただの勘ですよ。討伐の前に濃霧というのは不吉な気がしますからねぇ」

 

「確かに森の濃霧は不気味でしょうが、口に出さずとも良いでしょうに」

 

「そうは言いましてもねぇ、今回の討伐作戦は穴が多すぎるんですよ」

 

「協力とは名ばかりの寄せ集めですからね。各国の精鋭なんて言っても指揮系統がバラバラじゃあ作戦の意味がありません」

 

「超魔導大国からの兵も腕はありますが指揮はあまり得意ではなさそうですし」

 

「やはり罠なのでしょうか?」

 

「こらこら、こんな所でそんな物騒な事、言ってはいけませんよ」

 

「申し訳ありません」

 

 副隊長は今の会話で察した。キルゲは罠の可能性を否定しなかった。それだけで副隊長は今回の討伐が罠であること半ば確信していた。

 

 副隊長はキルゲを信用している。キルゲの活躍を近くで見た父や祖父の話を今まで散々聞いてきた。

 

 実際に軍で入団した時には新兵全員対キルゲの模擬戦をして、軍に入ったことで増長していた新兵の心を綺麗にへし折った。その伝説は今でも有名だ。

 

 だからこそキルゲが罠の可能性をハッキリと否定しなかった事で副隊長は警戒心を上げた。

 

「ギィィヤァァァァ!」

 

 後ろから叫び声が聞こえた。それはこの森の中でいやというほど響いていた。

 

 だがそれを気にする間もなく先行させていた部隊が慌てた様子で戻り、先頭のキルゲへと報告する。

 

「報告します! 森の奥にあるという竜の巣は確認出来ずただの周りより巨大な木があるだけです!」

 

「なっどういうことだ! 竜の巣を各国の討伐隊で囲むのではなかったのか!? これでは囲むどころの話ではないではないか!」

 

 副隊長が驚いたように言うが、先行していた部隊も困惑しているようで何も言えない。だがキルゲはすぐに判断した。

 

「全部隊に告ぐ! 一度森を出る! このまま馬を走らせ直進する!」

 

 その命令に全員は馬を走らせる。森は普段は危険な魔物も出ず、商人などの馬車も走っているだが今は当然誰もいない。

 

 それが竜のせいなのか、別のナニカなのかキルゲ達にはわかりようがない。今は隊長の言葉を信じて馬を全速力で走らせる。すると後ろの濃霧の中からドラゴンが顔を覗かせ、討伐隊を追いかけてくる。

 

「地砕竜ですか……混沌竜ではないようですね」

 

「どうしますか!? 隊長!?」

 

「このまま馬を走らせ、巨大な木のあたりで私が相手をします。討伐隊はこのまま進みなさい」

 

「なっ! …………いえ、わかりました!」

 

「よろしい」

 

 キルゲの指示に副隊長は一瞬動揺したようだが、すぐに持ち直した様だった。

 

 やがて前方に他の木よりも大きな樹木が見え始める。どうやら街道は木を避けるような形であるらしい。

 

「では、後は頼みましたよ」

 

「了解しました!」

 

 キルゲは馬から降り、地砕竜を待ち構える。地砕竜はキルゲに突進するのではなく直前に止まった。どうやら警戒している様だった。

 

 キルゲは地砕竜を視界に入れながら、今後のことを考えていた。

 

 どうしたものやら…………罠があるのはわかっていましたが地砕竜を用意するとは、こんな森に地砕竜などいるわけないですしそもそも目的の混沌竜は翼を持った黒竜だ。地砕竜と見間違えるはずもない。

 

 こうなると混沌竜の存在も嘘である可能性が高くなってきた。だが未だに目的が見えない。私を殺したいのであれば地砕竜では力不足。

 

 となると他の罠がありそうだ。だがキルゲはその気配を感じ取る事が出来なかった。

 

 だからこそ不気味なのだ。敵の目的が見えない。それにパーティーの件といい、敵の戦力が地砕竜だけなのといい、色々と強引と言うか雑すぎる。まるでこちらを侮っているような感覚。

 

「もしや敵の目的は私たちではなく他にあるのでしょうか? あくまでこちらは邪魔をされないための妨害?」

 

 キルゲの中でピースが嵌るような感じがしたと同時に、後ろから巨大な魔素を感じた。今まで感じたことのないほどのオーラ、キルゲの危機感が最大まで高まっていた。

 

 そして己の直感に従い、地砕竜に突進するように真っ直ぐ向かっていく。地砕竜は巨大な魔素に怯えているようで、体を丸めている。キルゲは地砕竜を飛び越え地竜を盾のようにした。

 

 キルゲのその直感は正しかった。巨大な魔素の塊が爆発するように膨れ上がり、森一帯が光に呑み込まれた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ユリウス様! 

 

ユリウス様! 

 

ユリウス様! 

 

「ユリウス様!!!」

 

「…………ドーラ………………?」

 

 自分を呼ぶ声に目覚めた俺はゆっくりと起き上がる。何が起きた? 

 どうして俺は横になっていた? 

 

 周りを見渡すと限り、瓦礫の山で俺はその上にいた。

 

「ドーラ、何が起きた?」

 

「私にもわかりません。私は陛下より使用を頼まれており、外に出ておりました。戻る途中に巨大な魔素の塊が帝都の方角に向かっていく様子を目撃し急いで戻りました。そして、つい先程ユリウス様を見つけた次第です」

 

 巨大な魔素の塊? …………そうだ…………俺はあれからエレナとリーゼを守ろうとして…………

 

「エレナとリーゼは!?」

 

「いえ……、お二人の姿は見ておりません」

 

 もはや原型もないが、立地的にここは城下町のあった場所だ。まさかここまで吹っ飛ばされたのか? いや、今そんな事はいい……城は丘にあるはず…………

 

 丘の方を見るがそこにあるのは立派な城ではなく、城だったものの瓦礫だった。俺は居ても立ってもいられずに走り出す。ドーラも遅れて追従する。

 

 近くで見ると、より悲惨な光景だった。立派だったはずの城は見る影もなく崩れ落ち、誰がどう見てもこれは城には見えないだろう。

 

「エレナ! リーゼ! 父上! 母上! 返事をしてくれ!!」

 

 そう叫びながら瓦礫の山を走る。だが誰の声も聞こえない。急いで庭園に向うがそこは、いくつかの瓦礫により元の美しさは見るも無残な姿になっていた。辛うじて庭園だとわかるのは所どころに植物があるからだろう。

 

「エレナとリーゼはここに居たはず……」

 

 所どころにある瓦礫をどかすとエレナとリーゼは居た。どうやらエレナは咄嗟にリーゼを抱き寄せたのだろう。見つかったことに安堵し近くに寄る。

 

 だが俺はその姿を見て言葉を失った。

 

 エレナとリーゼは確かに一緒にいた。そして一緒に瓦礫で下半身を潰されていた。瓦礫は血に染まっており、エレナとリーゼは目を開いたまま動かない。

 

 

 

 エレナとリーゼは死んでいたのだ。

 

 

 

 ドーラが何か言っているが耳に入ってこない。目の前の現実を受け入れることが出来なかった。

 

 いっそこのまま死んでしまいたい。近くにいたのに何も出来ずに自分だけ無事なんておかしいだろ…………こんなことなら初めから

 

 

パァン! 

 

 

 唐突に大きな破裂音と頬に痛みを感じた。ドーラが俺にビンタしたのだ。

 

 ドーラは涙を浮かべている。彼女のこんな表情は初めて見る。普段は愛想が悪い方なのに、そんな彼女が涙声で俺に言った。

 

「ユリウス様……エルザ様があちらにおります。最後の話を聞いてあげてください」

 

 ドーラが瓦礫の山の向こうを指す。俺はドーラの言葉に動揺しながら急いでその方向へと向う。

 

 なんでだよ……最後ってなんだよ……誰か嘘だって言ってくれ…………

 

 おぼつかない足を無理矢理走らせて瓦礫の山を越えると、そこに母上はいた。瓦礫の山に背を預けながら座っていた。

 

 その姿は無事とは言えない。瓦礫に押し潰されなかっただけで、胸と腹に机か椅子の足らしきものが突き刺さっていた。なんとか生きているだけで、今にも死にかねない重体だ。

 

 母上は俺に気づいたのかこちらに笑顔を向けてくる。

 

「良かった。なんとか間に合った……」

 

「母上……」

 

「ユリウス、今から私が言うことをしっかりと聞きなさい」

 

 母上は俺の頬に冷たい手を寄せながら、優しい声でどこか悲しげな様子で言った。

 

「夢を持ちなさい。私は最後まで夢を持てなかったけどユリウスには、夢を持つ資格がある

 だから、彼女の様に怒りに呑まれないで、自分の力は夢のために使って」

 

「待って、待ってくれ! そんな……まるで最後みたいなことやめてよ…………」

 

「口調が崩れてるわよ、ユリウス」

 

「そんなこと……どうでもいいだろ……」

 

 今にも泣き崩れそうだった。こんな悪夢は御免だ。

 

「ユリウス、私やアルベルトじゃなくて、エレナとリーゼを助けてあげてあの2人は貴方の心の支えになってくれるわ」

 

「キルゲとドーラに力をあげて。あの2人は貴方の手足にきっとなってくれる」

 

「何を…………言っ……て…………」

 

「ユリウス、ありがとう。貴方はすごいわ。そしてごめんなさい。アナタにすべてを押し付けて」

 

 

 

 そう言うと、母上の手は頬から離され母上の目から光が消えた。

 

 

 

《個体名エルザのユニークスキル『束縛者(シバラレルモノ)』の効果が消失し、個体名ユリウスのユニークスキル『奪取者(ウバウモノ)』とユニークスキル『付与者(アタエルモノ)』の封印が解除されました》

 

 

 

 今はそんなことどうでも良かった。

 

 ただこの喪失感が辛かった。

 

 守れなかった無力さに打ちひしがれた。

 

 目の前で失う悲しみが言葉では表現出来なかった。

 

 (ユリウス)はすぐに泣き叫びたかった。だが皇子としての矜持がそれを許さなかった。

 

 皇子としての自分が(ユリウス)の感情を押し退けて冷静な部分で考えてしまう。

 

 母上の言っていることは要領を得なかった。自分の言いたいことを言って終わったが話に関連が見えない。

 

 ただ今、何をすべきかはすでにハッキリとしている。

 

 俺はゆっくりと口を開き、唱えた。

 

 

 

聖別(アウスヴェーレン)

 

 

 

 帝都を覆うように青い円環が現れる。その光はまるで神のように神々しい光であったがそれを見たのは2人しかいなかった。

 

 光は徐々に青の円環から溢れるように大きくなり、鐘の音色を響かせながら帝都の周りを光の柱が覆った。帝都の中は青い粒子ようなもので溢れており粒子は円環へと昇って行く。

 

 やがて光の柱は消え、青の円環は収縮し大きな球体へと変化する。

 

 球体はさらに大きな光の柱となり、ユリウス、エレナ、リーゼへと降り注いだ。

 

 

 

 

《確認しました。

 

 個体名ユリウスの聖別(アウスヴェーレン)により、

 

 ユニークスキル『束縛者(シバラレルモノ)』を獲得しました。

 

 ユニークスキル『予知者(ミサダメルモノ)』を獲得しました。

 

 ユニークスキル『剪定者(センテイスルモノ)』を獲得しました》

 

 

 

《確認しました。

 

 個体名ユリウスの聖別(アウスヴェーレン)により、

 

 個体名エレナのユニークスキル『太平者(ネガウモノ)』が、

 

 究極能力(アルティメットスキル)運命之神(ノルン)』へと進化しました》

 

 

 

《確認しました。

 

 個体名ユリウスの聖別(アウスヴェーレン)により、

 

 個体名アンネリーゼはユニークスキル『誓約者(ヤクソクスルモノ)』が、

 

 究極能力(アルティメットスキル)誓約之神(ヴァール)』へと進化しました》

 

 

 

《確認しました。

 

 個体名アンネリーゼはユニークスキル『憎悪者(ゾウオスルモノ)』を獲得しました。

 

 個体名ユリウスとの魂の回廊が繋がっていることにより、個体名ユリウスより個体名アンネリーゼへ憎悪が譲渡されます》

 

 

 

『確認しました。

 

 個体名ユリウスはユニークスキル『悲哀者(カナシムモノ)』を獲得しました。

 

 個体名アンネリーゼとの魂の回廊が繋がっていることにより、個体名アンネリーゼより個体名ユリウスへ悲哀が譲渡されます》

 

 

 

《確認しました。

 

 個体名ユリウスの聖別(アウスヴェーレン)により、

 

 ユニークスキル『奪取者(ウバウモノ)』、『付与者(アタエルモノ)』、『予知者(ミサダメルモノ)』を統合し、

 

 究極能力(アルティメットスキル)全知全能(ジ・オールマイティ)』へと進化しました》

 

 

 

 

 

 

 

「終わらせよう…………この悲劇を……」

 

 

 

 




進化祭り

次回、ようやく原作キャラと喋ります。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

  • 1と2を知っている 
  • 1は知らないが2は知っている 
  • 1は知っているが2は知らない
  • 1も知らないし2も知らない
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