酒カスエルフ、ダンジョンへ行く   作:エルフスキー

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短いです


閑話 おらりお酒滓書簡

 

 

拝復

 

 入梅の砌、其方は長雨の続く頃でありましょう。我が師におかれましては如何お過ごしであらせられるのか。

 拙者幸いにして変わりなく、日々をかしく暮らしておりまする。この不肖の弟子をご憂慮なさることがあれば、是非にご放心召されよ。是非に。

 

 

 ……便箋が余り申した。であれば申し開きをさせて頂く。

 拙者は御身の便りに目を通さずにいたのでも、蔑ろにしたのでもございませぬ。

 師もご存知であられるように、拙者は忘れ易い性質でございますから、幾度返信を綴らねばと思い至っても、都度失念してしまうものでして、詰まる所……

 

 うむ。思い浮かぶ限りの言い訳を既に使ってござった。ただ筆不精をお許し下さいますよう、お詫び致しまする。

 

 オラリオの便箋は長うございます。葉書であれば疾うに済んでいる筈。世の人は何をつらつら綴るものか。

 隣に居る娘は……手紙を書く拙者を真似て、すぐ隣に居る拙者に書を宛てる呑気な娘でありますが……昨日の夕食などを書いている。

 成程。拙者は昨晩お酒を呑みました。

 

 この辺りで宜しゅうございますね。御身がご健勝であられること、日の出ずる国が平らかであること、大御神様の御代が永く続きますことを、西の地よりお祈り致しまする。

 

敬具

破門されておらねば──

御身の一番弟子より

 

猛き雷の尊き方

敬愛すべきお師さまへ

 

追伸

 Lv.3に成り申した。

 

 

 

 

「……手紙の書き方も教えたはずなんだがな……」

 

 『社』と呼ばれる神々の溜まり場で、タケミカヅチは苦笑した。

 彼が書簡を書いたのは三年前。返事の催促が二年前で、再催促ですら半年前だ。往復の時間を考慮したとて、流石に待たされすぎである。

 便りが無いのは良い便りといっても、限度というものはあろう。仮に彼一人ならば「仕方ないヤツめ」と流しても良かったが、他に責っ付かれている以上そうも行かない。

 

 ちなみに社に郵便が届いた際、他の神々は面倒臭がって受け取りに行かなかったくせ、あの渡り鳥の書簡と聞いた瞬間に奪おうとしてきたので、軒並み投げ倒した武神であった。

 

 さて、どう返事をしたものだろうと、タケミカヅチは考える。

 一言物申したい気持ちはあるが、説教臭い文言にはしたくない。

 お前は危ない目に遭っていないか……いや、周囲を危ない目に遭わせていないかとも尋ねたい。

 

 近頃起きた大事件で、英雄都市は情勢が悪化していると聞く。無事だとは思うが、あまり燥ぎすぎないようにして欲しい。

 干物でも送れば喜ぶだろう。いや、醤油の味が恋しければ、一度里帰りをするように勧めるか……

 

 

「って、こら、こらこらこら!?」

 

 膝の上で遊んでいた幼子が、いつの間にか文机に乗り上げていた。神様が熱心にするものが気になったらしく、興味津々な様子である。

 頭が大きい。目が丸い。まだ這い歩きをする年頃だ。

 

「墨は触るな、というか硯、あぶな、うおおっ!!?」

 

 幼子が体勢を崩し、頭から畳へ落ちかける。寸前に腕を伸ばして守るも……拍子に机がひっくり返ってしまい、ガタンと大きな音が鳴った。

 

「人の子……人の子こわい……お前たちはどうして進んで死に向かうんだ……?」

 

 ドクドクと動悸を抑える神を他所に、幼子がきゃらきゃらと笑っている。恐れ知らずのぷっくりした頬は、墨で黒く汚れていた。これは洗わなければ落ちないだろう。

 タケミカヅチは力なく笑みを浮かべ、可愛い『子』を抱き上げてやりながら……恐る恐る、奥の間にいるであろう女神に言った。

 

「すまん、手紙を駄目にした……いや違う、不可抗力だ、ごめん、ごめんて、いや本当にすいませんでした!」

 





 そろそろ暗黒期なので今後の方針を考えております。

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