酒カスエルフ、ダンジョンへ行く 作:エルフスキー
「なぁソーマ、自分この後暇やろ?暇やんな?丁度ウチも暇してん」
「帰る」
「相変わらず陰気な奴っちゃなぁ!ウチら付き合いもそれなりになるやんけ。そろそろ心開いてくれてええんちゃう?」
ロキは陰キャに絡んでいた。隣席の生徒に絡む男子中学生の如く、かなりダルいウザ絡みである。
『神会』終了の宣言と同時ソーマがそそくさと立ち去ろうとする一方、ロキはガッチリその腕を掴む。
ソーマはあからさまに嫌そうな顔をしたのち、構わずそのまま歩みを進めた。
ズルズルとロキが引き摺られ、その手が掴んだ近場の
き、帰宅の意思が強すぎる……!?ロキは戦慄した。
「ダウナー系の
「製造業従事者を……
「いや何のプライド!?変なとこ愉快な神やでホンマ……ちょ、ヘルメス、このままだと押し負けてまう、もうちょい踏ん張りや!」
「ろ、ロキ?あのロキさん?よりによってなんで髪を掴んで……ア痛たたたたた容赦が無い!千切れちゃう!俺の毛根が死滅しちゃうからぁ!?」
二対一だが接戦だった。
苦闘の末に引き合いが拮抗、ヘルメスの
「一口十ヴァリスから!」「俺はロキに賭けるぜ、その
娯楽に飢えた神々は瞬く間に賭け事を始め、方々をヴァリスとお囃しが飛んだ。馬鹿騒ぎを察した
残るは不謹慎な馬鹿くらいのものだ。此度は暗い話題を扱ったはずの議場だが、深刻なムードは微塵もない。
下界の暗雲とは関係なく、神々のモラルは常に底辺を這いずっている。
神々の罵声と歓声が響く中、遂に形勢がひっくり返った。
頭皮を押さえてシクシクと哀しげに泣く巻き込まれのヘルメス。「うぉおっしゃァい!」とオッサン臭い声を上げて、ロキはオーディエンスにアピールする。
足元にぶつかった帽子を拾い上げると、ソーマは深い溜息を吐いた。
バベル高層階のテナントには、神々のみが利用できる店が並んでいる。うだつの上がらない男神どもが溜まるこの軽食店もその一つ。
彼らはかつて来店した美神の再臨を夢見て、安いワンドリンクとテーブルチャージを延々と払い続けているらしい。
カウンターに腰掛けたロキは白々しい笑みで言う。
「いやぁ、なんか悪いなぁ!奢ってもらうことになってしもて!」
「……帰りたい」
ロキがソーマに絡むのはそう珍しいことでもない。とはいえ狙いはソーマ本神ではなく、男神の膨れ上がった財布だった。
彼女は享楽を愛する典型的な神であり、また派手な遊び方を好みもするので、帰結として金遣いが豪快になる。
故に【ロキ・ファミリア】では主神(並びに幼いアイズ)に対してお小遣い制が導入されているのだが、そんなものは月頭で使い切ってしまうのだ。
なお計画性の塊たるフィン及び、
とはいえロキが好む『
一方【ソーマ・ファミリア】の規則においては、純利益の三割が主神の口座に直通する。本神が意図せざるとも、ファミリアの経済活動の根本にはこの趣味神があるからだ。
されど神酒の制作費はガチガチに予算が固められている為、ソーマはポケットマネーに手を付ける用件がない。精々ザニスがチョロチョロ運用に持ち出すくらいのもので、資産は増え続ける一方だった。
こんな暮らしを随分長く続けているので、ソーマは莫大な死蔵金を抱えし謎の
【ギルド】から腰の低いご機嫌伺いを受けるのも、ディアンケヒトに怪しげな投資勧誘されるのも、全て自業自得なのだ。
「他神の金で食う飯は最高やな!」
ロキはなだらかな胸を張った。眷属の悪名高さ故に敬遠されがちな酒神派閥であっても、
そもソーマの眷属は権威に弱いか頭が弱いかの二択だから、仮にカツアゲ現場を見られたとて、「まあ、はい……程々でお願いします……」だの「わは!虐められてござる。ウケる」だのと主神を助けようともしないだろう。
尤も権威に弱い方の眷属に、可愛い眷属たちは一杯食わされてしまったようだが……。
「そういやウチの眷属らが世話になったらしいなぁ」
「知らない」
「襲撃の被害とかはどうだったん?死人は出なかったっちゅう話やけど」
「分からない」
「ところで帰雁ちゃん元気?」
「いつぞやの抗争から見ていない」
「立て板に水!もうちょいコミュニケーション取ろうや!」
「……俺に聞きたいことがあるなら」
俯いたままだったソーマがふと顔を上げ、真っ直ぐロキの顔を見た。
「さっさと言ってくれ。まだ終わらせていない作業がある」
「……おお、そら悪かったなぁ」
ロキはビールを呷りながら、コイツはやっぱり白だよなぁ、と思う。
神々の本性とは在り方そのもの。不変不滅とはそれ即ち、時勢程度で自らを変えられないことを意味している。
ソーマは酒造りにしか興味がない。つまり原材料を手に入れられるだけの物流と、それを確保できる仕組みと、製造の環境があればそれで良いのだ。
そんな神が敢えて反体制側を支援するだろうか?
しかし現実として、【ソーマ・ファミリア】の資源が継続的に【闇派閥】へ流れていることは裏が取れている。となれば、やはり。
「帰雁ちゃんが居なくなった
「……半年は前だ」
話は終わったとばかりに席を立ち、男神は一人店を出る。取り残されたロキはフンフンと鼻歌を歌いながら、一人答え合わせに満足していた。
つい先日襲撃を受けたばかりにしては妙に損耗の少ない本拠。ファミリアの主軸たる神酒の販売になんら影響の出ていない現状。
彼らは運営状況を保っている。最低限の支出を出すことで。
タネを明かせば簡単な話だ。【ソーマ・ファミリア】は散発的かつ小規模な『抗争』で【闇派閥】に敗北しており、ザニス・ルストラは敢えて物資を奪わせている。
協力関係でこそなくとも、コラテラルダメージを材料にして、両者はある種の取引をしているのだ。
嫌らしいやり方だった。彼らは【闇派閥】に金を払っているようなものだが、あくまで自己防衛のためという名目がある。
『正義』と『秩序』を背負って彼らを糾弾することはできても、【ソーマ・ファミリア】はその殆どがLv1の低級冒険者。正面から対等にやり合って太刀打ちできるはずがない。
「弱者の事情など知ったことではない。ただ奪われるがままに死んでゆけ」などと言ってしまえば、【闇派閥】の言い分と変わらなくなってしまう。
「ま、どうとでもできる話ではあるんやけどな!」
寧ろお誂え向きの状況があったものだ。下界の子の稚い策謀を前にして、悪戯の神はニンマリ笑う。
ここは【勇者】率いる【ロキ・ファミリア】らしく、彼らを
ふと伝票の上に置かれた
血染めの桜が舞っている。狂い咲きの花々だ。女は不快感に眉を寄せながら、足元に倒れ伏す少女を見下していた。
廃教会は相変わらずの寂れ具合で、それでも誰かが寝床を整えていたから、一夜を明かす程度は訳がなかった。それがなんとも腹立たしい。
「……忌々しい、花だ。うつくしいばかりで……人を惑わす。櫻には碌な思い出がございません」
「まだ喚くか、小娘」
女は一つ嘆息したのち、止めを刺そうと歩み寄り……疾った一陣の風がそれを遮る。身の凍る重圧に晒されながら、リュー・リオンは剣を構えた。
やっと新刊が読める……
リア友が「酒カスにミニスカサンタを着せてほしい。靴も舐める」とか言ってきたんですけどどうしましょうね。コイツ頭おかしいのかな……
既出の誰との関係が好き?
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