水神の家族、フォンテーヌの守り猫   作:チナトロ先生

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ねこの日々。



季節は巡り

 あれから少しの時間が経った。

 

 フォンテーヌ廷は今日も平常運転をしているが、目に見える様相には少し変化があった。

 

 あの日、エピクレシス歌劇場において力を見せてから、街を歩く自分に畏怖し遠巻きに見る大人もいたが、それ以上に寄ってくる子供たちにもみくちゃにされながらも無抵抗な自分を見て彼らも安心したようだった。

 分かったからヒゲを引っ張るのはやめて欲しい。

 

 最も大きな変化は、フォンテーヌ廷へヌヴィレットが招き入れたメリュジーヌ達だろう。

 彼女たちは、今の段階では正直に言ってフォンテーヌの人々に受け入れられているとは言い難い。

 だが彼女たちの優しさや善良さは間違いのないものであり、いずれ問題なく受け入れられるだろうと思う。

 もちろん私は彼女たちと仲良くさせてもらっている。

 最近は彼女たちが私の意思を読み取れることに気付いて、彼女らをいわゆる"翻訳者"として使おうとする子供まで出てきた。

 必要以上に人々と近寄りすぎるのも良くないと考え、メリュジーヌ達には私からの指示でそうした要望には基本的に応えないよう伝えて回った。

 

 ヌヴィレット殿とは、襲撃とメリュジーヌの件から、少し距離が近づいた気がした。

 あの襲撃のことについては丁寧にお礼を言われたし、元々私は彼を悪く思ってはいない。

 厳格な彼はこちらを特別扱いすることもなく、必要以上に近づくこともなかった。

 それでも会えば挨拶をする程度の仲にはなったし、メリュジーヌを通して話をすることもあった。

 

 

 そして、以前にエピクレシス歌劇場で感じた元素力について、力の成長に伴い正確に感知することができた。

 人の居ない時間帯を見計らって忍び込み、地下室にて目に見えぬ存在に声を掛ける。

 

「にゃあ~」

『おや、また僕に会いに来てくれたのかい』

 

 たまに会いに行くのは、彼女からのお願いだ。

 彼女の正体には心当たりがある――だから、その願いを断る気は起きなかった。

 彼女は人の身では無いからか、彼女の言うことは読み取ることができた。逆にこちらが意思を伝えることもできた。

 

 彼女は決して名乗らなかったし、こちらも聞こうとは思わなかった。

 彼女との間では、いつも他愛の無い話をした。フォンテーヌの人々のこと、街の様子、散歩の話、そして一緒に住む家族のこと。

 どうでもいいような話。それで彼女は十分楽しそうだった。

 

 

 それから数年後、自分の中できっかけとなる出来事があった。

 

 メリュジーヌがフォンテーヌの街に来てから数年後、フォンテーヌの捜査機関マレショーセ・ファントムはメリュジーヌのカロレを初のメンバーに加え、そのたゆまぬ努力の結果、人々から信頼を得て「平和勲章」が受賞された。

 しかし、それはヌヴィレットの権力やメリュジーヌの躍進を快く思わない勢力の反発を買った。

 そしてそれはメリュジーヌのカロレに事件の容疑をかけ、ヌヴィレットを失墜させる陰謀へと繋がった。

 彼女は事件の最後、混乱する民衆と事態を収めるために自らが犠牲になることを決意し、自刃を試みた。

 しかし、その時私は元素力を行使し、力づくで彼女と殺到する民衆を止めた。

 

 結果的に彼女の命は助かり、首謀者達は捕えられた。

 だが、彼女は思慮の結果フォンテーヌの街を去ることになり、護るべきものたちに力を向けた私自身も考えることがあった。

 

 言葉を直接伝えることができない我が身では、人々の繊細な諍いに入るのは、今まで以上に避けるべきという結論を出した。

 もちろん、一方的な略奪などに対しては黙っていないつもりだ。

 

 私はとても長い時間、外的要因からの守護者という立場に努めた。

 

 

 

 季節は巡り続ける。

 

 長い時間をかけて、鮮烈な感情は少しずつ身を潜めていく。

 

 家族――フリーナは平穏な日々を穏やかに過ごしているかと思うと、時折不安に駆られた表情を見せる。

 彼女が心から安心できる日は訪れていない。

 運命はまだ何も終わってはいないのだ。

 

 

 そして長い長い―――とても長い時間が経った後、いくつかの出来事が始まった。

 

 ポワソン町に『棘薔薇の会』が生まれ、それから数十年後、会長がその娘へと移った。

 暖炉の家『ブーフ・ド・エテの館』が建てられ、子供たちが住み始めた。

 『不敗の決闘代理人』が現れ、メロピデ要塞の管理者は『公爵』へと変わった。

 

 それから、海面が上昇しているという事実が確認された。

 

 全テイワット大陸に情報網を引いてすら、一向に見つからない解決への道。

 ここ数年、フリーナの様子は特に沈痛を極めた。

 自身は彼女の焦燥を感じながらも傍で寄り添うことしかできなかった。

 彼女は言葉にならない苦しみを堪え続け、一度も私に具体的な心中を吐露することはなかった。

 

 

 そして、自由の国モンドより、『旅人』という人物の噂が聞こえてきた。

 

 審判の日はすぐそこまで近づいていた。




数百年飛びました。

評価、感想、ここすき、誤字報告どれもありがとうございます。

メリュジーヌのカロレ(ヌヴィレットの伝説任務登場)の件については、迷いました。
けれど、独自解釈と好きなことを書くのが二次創作と考え、こうした結末にしました。
カロレがフォンテーヌを去った後も、ヴォートランとカロレは何度も会って仲良く過ごしました。

色々と考えた結果、先に書いておきますが、ゲーム本編の魔人任務が完成されすぎているため、ここから先において本作の主人公(猫)の出番はわずかになります。
もう少しだけお付き合いください。
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