水神の家族、フォンテーヌの守り猫   作:チナトロ先生

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ねこの喜劇。



対峙

 ナヴィアが遺跡で目を覚ました時、合流したヌヴィレットと入れ替わりでアルジャンの姿は消えており、旅人によるとこちらを見つめた後、力ない足取りでこの場を後にしたとのことだった。

 

 そこから四人は石板を見つけ、フォンテーヌの予言について考察した。

 

 その後、占星術師たちの助言を受けた旅人は、鍵はフリーナの隠し事にあると考え、ポワソン町の船内でナヴィア、リネ、リネット、フレミネ、ヌヴィレットと合流し、検討の結果、それらを明らかにするためにフリーナを罠にかけ、説得するという案に行き着いた。

 

 しかし、この案については問題が一つあり、ナヴィアが声を上げた。

 

「この案は、フリーナ様を罠にかける以上、アルジャン様にもお話して、納得してもらう必要があるわ。今すぐアルジャン様を探しましょう」

 

『その必要はない』

 

 この空間に低い声が響いた。

 

 船の出入り口を見ると、白猫と黒猫が座っており、その頭上には黄金の軌跡が見えた。

 この声は恐らく元素力を利用しているのだと思われた。

 

『ついてくるがいい』

 

 白猫と黒猫が踵を返す。

 一行は猫たちを追ってポワソン町の外に出た。

 

 町の外では、白猫と黒猫がそれぞれ左右で奥へ進むように座っており、まるで道のように一行を誘導した。

 

 誘導されるままに一行が進むと、広い荒野に辿り着いた。

 そこには背を向けた銀色の猫――アルジャンが待ち受けていた。

 

 アルジャンが一行に顔を向け、対峙した。

 するとアルジャンの傍には巨大な獅子面が浮かび上がり、その後ろにはアルジャン自身を模したような巨大な金色の猫の巨象が現れた。

 獅子面が口を震わせると、声を響かせた。

 

『話は聞いた』

『私もお前たちと同じだ』

『フリーナは何かを隠している』

 

『笑うがいい、守り猫などと呼ばれながら』

『家族一人の心すら守れぬこの身を』

 

 その声には怒りが滲んでいた。

 旅人は、アルジャンが怒っているのだと感じた。

 それは旅人たちにではなく、恐らくは自分自身に。

 

『旅人、ナヴィア、リネ、リネット、フレミネ、クロリンデ――構えよ』

 

『旅人よ』

『もはや一刻の猶予も無いが』

『彼女の家族として、その心を傷つけるものであれば、黙って従うことはできぬ』

 

『――私が道を開けるに足る、人の力を見せよ!!』

 

咆哮と共に、戦いが始まった。

 

……

 

 偉そうに仰々しいことを言ったが、これはただの八つ当たりに近い。

 だが、彼女の家族として、旅人たちの力を見せて欲しかったことも事実だ。

 

 戦いが始まり、まずナヴィア・リネ・リネット・フレミネを優先して仕留めた。

 これは実力差というよりも、完全に四人の手の内を分かっているためだ。

 

 同じ元素を用いて大火力運用を行うナヴィアは後衛として非常に優秀であるため、緻密な元素力操作を信条とする私は、岩元素を操作奪取して真っ先に襲い掛かり無力化した。

 

 リネ、リネット、フレミネの三人はトリッキーな立ち回りを見せるが、その様子を日々最も見ているのは兄妹を除き訓練に付き合っている私であり、マジシャンのタネを理解する相手は三人の天敵と言えるだろう。

 

 だが旅人と【不敗の決闘代理人】であるクロリンデは訳が違った。

 

 猫の巨象による攻撃も、金色の槍も、地面を隆起させる攻撃すらも複数の元素と剣を駆使して捌く旅人には通らず、その隙を見て雷光の如き速度で急襲するクロリンデの連携に徐々に押されていった。

 

 こちらも全力で元素力を行使したが、旅人の守りを突破することはできず、そこで私に仕留めたと思わせた三人が撹乱しながらナヴィアを助け起こし、横合いからナヴィア必殺の礼砲によって、決着は付いた。

 

……

 

 戦いが終わり、旅人たちは地に倒れ伏したアルジャンの嘆きを聞いた。

 

『流石の旅人よ……所詮私など……世界の異物……長く生きているだけの獣に過ぎぬ……どれだけ家族が苦しもうと、何もできぬ……運命は変えられぬ……とんだお笑い種よ』

 

 アルジャンの悔恨を隠せない言葉を聞いて、パイモンは声を掛けずにはいられなかった。

 

「アルジャン……お前はフリーナのそばにずっと居たって聞いた。お前はフリーナに何もできなかったって思ってるかもしれないけど、おいらにとっての旅人みたいに、そばに居てくれるだけで助けになっていることだってあるはずだ。それに、フォンテーヌの人達もみんなお前に感謝してると思うぞ」

 

 旅人はどこまでも優しいパイモンの言葉に同意した。

 旅では様々な人々を見てきたが、誰しも隣に立つ者に自身の全てを伝えてはいないだろう。

 それでも、隣にいてくれるだけで救いになっていることがあるはずだ。

 

 ナヴィア、リネ、リネット、フレミネもパイモンの言葉に同意し、アルジャンはまた項垂れた。

 

 ヌヴィレットが一歩前に出て、アルジャンに声を掛けた。

 

「アルジャン殿、貴殿の気持ちはよく分かった。その上で、貴殿も彼女の家族として見届けてはもらえないだろうか」

 

 アルジャンは顔を上げ、旅人の顔を見て答えた。

 

『全て、お前たちの言う通りにしよう』

 

……

 

 旅人は全ての準備を済ませ、崩壊したポワソン町で人知れず涙するフリーナに声を掛けた。

 

 最後の幕が上がろうとしていた。




週ボスっぽさが伝わればいいなと思います。

パイモンが優しすぎて私までちょっと泣きそうになりました。

完結まで残り二話になります。
たぶん明日明後日も更新できそうです。
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