幸薄魔法少女 作:幸薄美少女
玲の瞳に迫り来るミノタウロスの巨体が映り込む。赤黒い筋肉が波打ち、その巨躯が一歩動くごとに空気が揺れた。角が霧を切り裂くたびに、耳を劈くような音が体育館内に反響する。
「私はもう逃げない……!」
玲の声は震えていたが、瞳の奥には決意が宿っていた。目の前のミノタウロスが獣じみた咆哮を上げ、床を砕くような力で突進してくる。空気が振動し、体育館の構造そのものが揺れるように感じられる。その圧倒的な威圧感に、一瞬玲の体は硬直しかけたが、歯を食いしばり、力でそれを抑え込んだ。
震える右手を見つめる玲。その手を強く握りしめると、自分の意思を込めるように念じた。指先から生まれる純白の輝き。それは、命を宿すかのように脈打ちながら手のひら全体に広がり、玲の胸の奥を熱くした。
玲はその手を掲げ、光をさらに集中させていく。体育館全体を照らす眩い光が、闇を一瞬押し返した。その光は清らかで力強かったが、どこか不安定さも感じさせる。
「…これでっ…消えろっ…!」
玲の叫びとともに、右手を振り抜く。純白のエネルギーが矢のように放たれ、一直線にミノタウロスの胸を目指す。その光が描く軌跡は一瞬の静寂をもたらし、次の瞬間には轟音が響いた。
だが――
─────玲は知らないことだが、羊の悪魔との戦闘は"本"が補助を行っていた。玲の思考を誘導し、光の玉の威力を高めていた。故に只の一撃で羊の悪魔を滅せることができた─────
ーー煙の中から現れたのは、傷一つ負っていないミノタウロスだった。その目には冷酷な光が宿り、まるで玲の全力を嘲笑うかのようだった。攻撃が届かなかった事実を前に、玲の胸に冷たい感覚が広がる。
「…そんなっ……」
玲は後ずさりながら、思わず弱音を漏らした。その時、ミノタウロスが再び咆哮を上げ、迫り来る巨体を一層加速させた。巨獣の瞳が赤く輝き、その圧倒的な存在感に、玲の足元はさらに重くなる。
背後には治療中の紗月がいる。逃げることは許されない。玲は右手を再び掲げ、光を生み出そうとした。しかし、力は先ほどの攻撃で消耗しており、頼りない微かな輝きが揺らめくだけだった。
「もっと……もっと強く!」
必死に想像する。もっと大きな光、もっと鋭い力を――。だが、焦りばかりが先行し、光はますます不安定になっていく。
それでも玲はやぶれかぶれに光を放ち、周囲に煙と霧を撒き散らした。しかし、視界を奪うその煙は、玲の恐怖をさらに煽るだけだった。どこからミノタウロスの攻撃が来るか測がつかない。
「どこ……どこから来るの?」
その瞬間、足元が震え、地面が揺れる。次の攻撃が左横から迫ってきていると気づいた時には遅かった。斧による猛烈な衝撃が玲の脇腹を襲い、無力に壁へと叩きつけられる。息が一瞬で奪われ、声が口から苦しげに吐き出される。
「がっ……!」
視界がぼやけ、耳鳴りが止まらない。頭が割れるように痛む中、鼓膜を突き破るかのようなミノタウロスの咆哮が、空間を震わせた。玲の額から冷たい汗が滴り落ちる。手足には力が入らず、鉛のように重い。息が苦しく、まるで胸の奥を掴まれているようだ。
目の前に巨大な影が迫り、まるで自分の命の終わりを告げる音のように、ミノタウロスの蹄音が響く。
必死に立ち上がろうとする玲の足元はふらつき、崩れるように床に倒れ込んだ。その動作が何より無力さを突きつけ、さらなる恐怖を煽る。迫りくる影が一層大きくなり、低い呼吸音が不気味に耳を打った。
刃のように鋭い角が、ゆっくりと玲へと向けられる。その距離がじわじわと詰まり、焦燥と恐怖が入り混じる中、彼女は無意識に叫んだ。
次の瞬間、角が光を反射して一瞬輝くと、ミノタウロスの突進が玲に迫った。彼女は咄嗟に横に転がり、寸前のところでその突進をかわす。重い蹄が床を砕く音が轟き、破片が飛び散る。
玲は膝をついたまま、再び立ち上がろうとする。しかし、絶望的な現実が彼女の足を絡め取るかのように重く感じられる。
目の前には、なおも立ちふさがるミノタウロス。その巨体がさらに恐怖を増幅させ、玲は冷たい息を吐きながら震える右手を掲げた。
手のひらから漏れ出た光は、わずかに白く輝くだけ。虚ろな希望が形をなさないまま、玲の心の奥底で絶望が広がっていく。
「……どうして……」
その呟きは、消え入りそうなほど弱々しかった。どれほど力を振り絞っても、その光はミノタウロスには届かない。玲の頭の中に浮かぶのは、自分の弱さ、無力さ、そして――恐怖。
ミノタウロスが再び踏み込んでくる。その一歩ごとに地面が揺れ、玲の心臓が恐怖と共に跳ねる。震える手足、乱れる呼吸。冷や汗が背中を伝い、全身が小刻みに震え出す。
「怖い……」
小さな声が漏れ出る。玲は自分の声にすら驚き、全身が震えた。恐怖が彼女の喉を締めつけ、呼吸を妨げる。視線の先では、ミノタウロスが無機質にこちらを見下ろしている。巨大な存在がまるで恐怖そのものの形を成したかのように、玲の心を支配していた。
───もう無理だ……
そんな思考が頭をよぎる。力が足りない。もう何もかもが無力に感じる。魔法少女としての力も、ただの空虚な力にすぎないのではないか。あの白い光も、ただの幻想に過ぎないのではないかと思えてきた。だんだんと、目の前のミノタウロスが現実のものではなく、自分の恐怖そのものに見えてきた。
「怖い……怖い。こんなもの、どうやって倒せるっていうの?」
もう、力を使うのが怖い。使っても無駄だと思える。無力感が心を満たし、全身が冷たくなる。心の中に、深く暗い穴が開いていくのを感じた。
─────でも、でも私は……
その言葉が、玲の口から自然に出た。自分は、何を恐れているのか。もう、答えはわかっていた。恐怖そのものが、玲を縛りつけていた。そして、自分が怖れているのは、力を使うことができないことでも、ミノタウロスそのものでもない。自分が「弱い」ということが、怖いのだ。
「私は……弱い」
その認識が、玲をさらに突き刺した。力が足りない、戦えない、何もできない。そんな自分を、目の前の恐怖が突きつけてきた。彼女は今、自分の無力さを、避けては通れない現実として突きつけられている。
「逃げたくない……」
それでも、玲は意を決して目を開ける。目の前に立ちはだかるミノタウロスを見つめながら、玲は深く息を吸い込んだ。
恐怖はまだ消えていない。むしろその感覚は、ますます鮮明に感じられる。しかし、そこには、恐怖に怯えるだけの少女ではなく、自分の弱さと向き合おうとする強い意志が宿っていた。
「私が弱いなら、弱いままでいい」
自分の弱さを認めることが、最も恐ろしいことだった。それは、どうしようもない暗闇に落ち込むような感覚を伴っていた。しかし、玲はその暗闇に足を踏み入れた。もう、逃げることはしない。自分を否定し続けることも、しない。
「それでも、私はここに立っている」
その言葉は、小さな呟きでしかなかった。それでも、玲の心の奥深くに響き、揺るぎないものとして刻まれた。恐怖を感じることが弱さを証明するわけではない。むしろ、それは玲が「生きている」ということの証だった。恐怖を否定せず、そのまま抱えたまま、ここに立つ――それが、今の彼女にとっての戦い方だった。
ミノタウロスの足音が、再び迫る。だが、玲はその足音をただ静かに受け止める。力を使えなくても、何もできなくても、それでも立ち続ける。恐怖を感じながら、それを受け入れて、前に進んでいく。
「怖い。でも、それでも私は、ここにいる」
玲の言葉が、空間に溶け込むように響く。彼女の目が閉じられると同時に、内側で何かが動き出した。恐怖を受け入れた瞬間、玲の中に眠っていた何かが目覚め始めた。それは純白の光として、ゆっくりと彼女の手のひらに集まり始めた。冷たく震えていた指先に、暖かさが戻る。心の奥で静かに燃える火が、玲を支え始める感覚。
再び、ミノタウロスが地を蹴る音がした。その巨大な体が動き、圧倒的な質量を伴って迫ってくる。だが、玲の足はもう動かなかった。ただその場に立ち、目を開けて怪物を見据える。心臓はまだ激しく鼓動していたが、玲はそれを静かに受け入れた。
「私が、私を信じる……!」
玲の右手が、ゆっくりと前に伸ばされる。その瞬間、純白の光が手のひらから溢れ出した。光は以前のような頼りない輝きではない。力強く、揺るぎない意志を宿しているかのように、玲の内側から溢れ出すように輝いていた
目の前のミノタウロスが突進を始めた。地響きと共に迫りくるその巨体。
だが、玲は目を閉じず、ただその動きを見据えた。自分の中に流れる力を感じながら、全身を集中させる。
「届いて……!」
玲は叫びと共に手を突き出した。純白の光が一層強く、熱を伴って放たれる。光の軌跡は空気を引き裂き、一直線にミノタウロスの胸元を目指す。炸裂音と共に眩い閃光が体育館を包み込んだ。
一瞬の静寂。そして――
その光の軌跡は、空気を引き裂き、ミノタウロスの胸を目指して一直線に突き進む。光が爆発的に炸裂する瞬間、煙が広がり、体育館が一瞬にして眩い白で包まれた。
だが――
煙が晴れると、そこに立っていたのは、傷一つ負わないミノタウロスだった。その体には微塵の損傷もなく、まるで玲の光など無かったかのように、再び彼女を見下ろしている。
「……っ…」
玲の目が見開かれる。息を呑む音が響く。彼女の光は確かに届いたはずだった。それでも、怪物にはまるで通じていない。その光景に、一瞬、玲の心が深く沈んだ。
けれど――
「まだ終わりじゃない……!」
玲はすぐに顔を上げた。その瞳には、再び立ち上がる決意が宿っていた。恐怖も、挫折感も、全てを受け入れて、それでも進む。それが玲の戦い方だった。
「もっと……もっと強く!」
光がミノタウロスの体を貫くと、再び爆発音が響いた。だが、目の前の怪物は今度も倒れることなく、ただ無表情で立ち尽くしていた。
玲はその姿に、再び心が沈みかけた。しかし、彼女はその感情を振り切るように、もう一度手を伸ばした。力を込めて、ただ自分の全てをその光に込める。
「私は……私は負けない!」
玲は再び手を伸ばし、全身全霊を込めて光を放つ。これまで以上に強烈な輝きを帯びた光が、ミノタウロスの体を直撃する。その瞬間、怪物の巨体が揺れ、足がわずかに後退するのが見えた。
「これで、終わりじゃない。」
玲は自分に言い聞かせるように呟いた。恐怖も、痛みも、すべてを受け入れて進む。それが彼女の戦い方だった。自分を追い詰め、弱さを乗り越えた今、玲は確かに一歩前に進んでいた。
だが、ミノタウロスも再び突進を始める。その赤黒い筋肉がうねり、角が霧を切り裂きながら玲に迫る。その威圧感に、玲の体は硬直した。心臓の鼓動が耳鳴りのように響く。息が詰まり、足元がぐらつく感覚に襲われた。
それでも、玲は目を閉じて深く息を吸った。そして、自分自身に言い聞かせる。
「……私は、私が思い描くものを現実にする。」
玲は深く息を吸い込んだ。目の前では、ミノタウロスが巨体を揺らしながら近づいてくる。蹄が床を叩く音が響き渡り、その一歩一歩が周囲の空気を震わせる。圧倒的な威圧感に玲の全身は緊張で硬直していたが、それでも彼女は冷静にその動きを観察した。
何度攻撃しても立ち上がる、不屈の存在。その怪物に正面から挑むには、ただの力では足りないと玲は悟る。圧倒される恐怖を押しのけながら、彼女の中に一つのイメージが芽生えた。それは、巨大な鎖だった。
太く、鋭く、そして重い鎖――。
玲の頭の中で、その金属の冷たさが手のひらを包み込む感覚まで鮮明に描かれる。意識を集中し、そのイメージをさらに緻密にしていく。イメージが現実に迫る確かな感覚が体中を満たした。
絶対的な力を持つ、牢獄のような束縛。
そのイメージが、頭の中で鮮明に描かれる。長くて太い鎖が、まるで生き物のようにうねりながら、ミノタウロスを捕らえる。そして、その鎖がミノタウロスの巨体に絡みつき、動きを封じる――
「来い……!」
玲が一気に念じると、空気が震え、体育館が軋みを上げる。まるで世界が彼女の意志に反応するかのように、巨大な金属の鎖が現れ、宙を舞いながらミノタウロスに向かって降りてきた。
ミノタウロスがその鎖に気づく前に、鎖はすでに四肢に絡みついていた。太くて、重くて、絶対的な力を持つその鎖が、怪物を引き寄せ、動きを封じ込める。
体に絡みつき、力強く引き寄せられる。鎖が生きているかのように動き、ミノタウロスの足を絡め、巨躯を縛り上げていく。ミノタウロスは激しく暴れ、蹄を踏み鳴らして抵抗しようとするが、鎖は次々と絡みつき、身動きが取れなくなっていく。
玲はその光景を目にして、初めて小さな手応えを感じた。恐怖と不安に支配されていた心が、ほんの少しだけ安堵に包まれる。だが、それは一瞬のことだった。視線を戻せば、まだミノタウロスは力を蓄え、何とか動こうともがいている。
「次は、もっと強くて……どんなものでも貫くもの…」
玲は、再び心の中でイメージを膨らませる。鎖だけでは足りない――もっと、もっと強い力が必要だ。ミノタウロスを殺すためには、さらに強い力、圧倒的な力が必要だ。
玲は再び息を整え、意識を集中させた。次に必要なのは、圧倒的な破壊力を持つ何か――ミノタウロスを完全に倒すための力だ。
玲の中に新たなビジョンが生まれる。それは――空を突き抜けるほどの巨大な剣。剣の形状は鋭く、ドリルのように回転し、まるで天そのものを貫くかのような力強さを感じさせるものだった。
玲がそのイメージを具現化するために力を込めると、再び空間が震えた。天井を突き破るかのように巨大な剣が現れ、その回転する刃先がミノタウロスに向かって突き進む。剣は一直線に怪物の胸を目指し─────
────その巨体を貫いた
ミノタウロスは耳を劈くような断末魔を上げた。巨体がぐらりと揺れ、鎖に引き寄せられたまま大きく倒れ込む。完全に動かなくなった怪物を目の当たりにして、玲はようやく鎖を解除した。
煙の中、ミノタウロスの倒れた姿が現れる。玲は膝をつき、荒い息を吐いた。全身の力を使い果たし、体が限界に近づいているのを感じながら、それでも勝利の手応えを確信する。
「これで……終わった……」
玲が振り返ると、後ろにいた紗月は未だ純白の光を放ちながら治癒の力を使っていた。青白かった彼女の顔色はわずかに穏やかさを取り戻している。それを見て、玲の胸には安堵の感情がじわりと湧き上がった。
しかし、その瞬間だった。 突如として圧倒的な重圧が空間を支配する。足元がぐらりと揺れ、玲はとっさに一歩後退する。その時――ミノタウロスの残された力が爆発的に解放された。
巨体から繰り出された一撃が、鋭く太い角で玲の体を捉えた。次の瞬間、玲は空中へと弾き飛ばされる。衝撃で意識が一瞬遠のきそうになる中、玲の体は天井を突き破り、瓦礫と共に冷たい空気の中へと放り出された。
「っ……!」
玲は咄嗟に全身を広げ、視界に広がる青空を見つめた。その一瞬の静寂の中、彼女は次に迫る脅威を感じ取る。 ――ミノタウロスが、驚異的な跳躍力で地上から空中の玲を追いかけてきていた。
筋肉が隆起した巨体が空を裂くように浮かび上がり、その鋭い角が日差しを反射して光っている。玲は急いで体を翻し、空中で姿勢を立て直した。その場で純白のエネルギーを集中させ、足元に光の足場を作り出す。力強くそれを蹴り上げることで、さらに高く跳躍する。
玲はミノタウロスとの間に距離を取ることに成功したが、その猛攻は止まらない。巨体は空中でも異様なバランスを保ちながら、再び彼女に迫ってきた。さらに、その額の間から黒い霧が噴き出し、空中に硬い足場を次々と生み出していく。ミノタウロスはその足場を利用して猛スピードで跳び移り、玲を追い詰めていった。
玲は息を整える間もなく、空中で追撃を続けるミノタウロスを見据えた。その巨体が繰り出す猛攻。
玲は自分を鼓舞しながら、必死にイメージを膨らませる。地上の戦いとは違い、空中では逃げ場がない。彼女は周囲を見渡しながら、自分が使えるものを探した。そして、思いつくのはやはり――イメージの力。
空を裂く音とともに、ミノタウロスが再び追いすがってくる。その巨体が、まるで空気の壁を押しのけるように動き、玲を標的に斧を振りかざしてきた。玲は瞬時に手を前に突き出し、イメージを具体化する。
「盾――!」
玲の前に純白の光が収束し、大きな楯が形作られた。その楯はミノタウロスの斧を受け止め、衝撃音とともに砕け散ったが、玲はその隙をついて横に飛び、距離を取ることに成功した。
「…やっぱりっ…重い……!」
玲は手を握りしめると、空中で意識を集中し始めた。彼女の周囲に光の粒が集まり始め、やがて無数の矢となって形成されていく。それらの矢は、玲の意志に従って空中を舞い、ミノタウロスを包囲した。
「行け!」
玲の叫びと共に、矢の嵐がミノタウロスに向かって放たれた。矢は次々と巨体に命中するが、その厚い筋肉はほとんど傷を負わない。ミノタウロスはさらに霧を凝縮して、黒い盾を作り出した。その頑強な盾は矢を容易く弾き返していく。
玲は眉を寄せ、息を整える間もなく、次なる一手を考え始めた
「このままじゃ、耐えるだけで終わる……!」
玲は自分が押されている状況を悟り、さらに高度を上げることを決意した。足元に光の足場を何度も作り出し、それを蹴り上げることで、どんどん空の高みへと向かっていく。
その間にも、ミノタウロスの猛追は止まらない。巨大な斧が轟音とともに振り下ろされ、玲の体に迫る。その一撃一撃の衝撃が空間を裂き、風圧が肌をかすめた。しかし、玲はその全てを紙一重でかわしていく。息を詰めるような攻防が続く中、彼女の中に湧き上がる力が次第に強まり、背中には光が集まり始めた。
やがて、その光は玲の背中に大きな翼を形作った。その翼は一度羽ばたくと、周囲の雲を吹き飛ばし、玲の体が宙に浮かび上がる。風が鳴り響き、玲はその光の翼に乗って、まるで空の支配者のように高く飛び上がった。
一方、ミノタウロスもその光に反応し、再び突進してくる。玲はその動きを見据え、空中でさらに強力な攻撃をイメージした。
「槍――!」
玲の手の中に、眩い光をまとった長大な槍が現れる。それは純白の光で形作られ、鋭い先端がミノタウロスを正確に捉えている。玲は槍を構え、全身の力を込めて渾身の一撃を投げ放った。
槍は晴天を裂き、眩い光の軌跡を描きながらミノタウロスへと向かって飛ぶ。その軌道は、玲の全ての意志が込められたかのように鋭く、揺るぎなかった。
ミノタウロスもまた、その槍の威力を直感したのか、巨大な腕を振り上げ、濃密な霧を凝縮させて盾を作り出す。その盾は黒く、幾層にも重なり合った闇のような質感を持ち、重厚そのものだった。槍がその盾に衝突した瞬間、空間を震わせる轟音が響き渡る。
光と闇のエネルギーがぶつかり合い、晴天ににまるで爆発の花が咲いたかのように光が散る。玲はその光景を見つめながら、拳を握り締めて歯を食いしばった。
「まだだ……これじゃ足りない……!」
玲の目に再び決意の炎が宿る。ミノタウロスは盾で衝撃を受け止めたものの、そのまま一瞬の隙を突いて再び突進してきた。その巨体は霧をまとい、まるで闇そのものが彼を後押ししているかのような迫力を帯びている。
玲はその圧倒的な迫力に一瞬たじろぐが、すぐに自分を奮い立たせ、再びイメージに集中した。今度は、自らが槍そのものとなるような感覚を鮮明に思い描く。
「もっと鋭く……もっと強く……!」
玲の周囲に漂っていた光の粒が渦を巻くように集まり、彼女の体へと吸い込まれていく。その光は玲の姿を完全に覆い隠し、やがて一つの巨大な槍へと変貌を遂げた。純白の槍を纏った玲の体は、青い空にひときわ眩い星となった。
「終わらせる!」
玲は光の翼を力強く羽ばたかせ、ミノタウロスに向かって一直線に突き進む。槍を纏った玲と、霧の闘気を纏ったミノタウロスが、再び空の中で激突した。その瞬間、衝撃波が空間を揺るがし、地上の瓦礫を震わせた。その余波は、遠く離れた街にまで届くほどの力を持っていた。
剣と角がぶつかり合う一瞬、玲は全身全霊を込めて槍を押し込む。彼女の意志が純白のエネルギーに変わり、ミノタウロスの闇を少しずつ浄化していく。ミノタウロスの目に宿っていた憤怒と怨念の輝きが、徐々に薄れていくのが見て取れた。
「これで、終わりだ!」
玲の叫びとともに、純白の槍がミノタウロスの上半身を貫く。その瞬間、空は眩い光に包まれ、霧は完全に消え去った。ミノタウロスの巨体は光の粒となり、静かに空に散っていく。
玲は宙に漂いながら、その光景を静かに見つめた。心臓が高鳴り、全身に疲労が押し寄せてくる。
「やっと……終わった……」
玲はそう呟いたが、その安堵とともに体はふらつき、重力に引かれて地上へと落下し始めた。光の翼も力を失い、制御を失った玲は、再び空を自由落下していく。
冷たい風が彼女の頬を撫でる中、玲はそっと目を閉じた。
その時、微かな温もりが玲の体を包み込む。それは天から差し込む、まるで誰かの祈りのような柔らかな光だった。玲はその光の中で、深い眠りに落ちていった。
【動画】下北沢の上空にミノタウロスが出現
1:名無し ID:DYXn+GmWW
渋谷の悪魔を倒した謎の少女もいるで
ソース↓
htps://vdeo.twimg.com
2:名無し ID:NkQL8pVOJ
これ今日のやつか?見た奴いんの?
4:名無し ID:kO51yJYHZ
しろりんキタ――(゚∀゚)――!!
6:名無し ID:31mhFK9i5
下北いたけど、音やばかったぞ。空から雷みたいな音響いてたし、地面揺れてた。
17:名無し ID:kO51yJYHZ
んだこれ
20:名無し ID:kO51yDJGH
下北もかよ、これからどうなるんだまじで。
21:名無し ID:Dv2YYu3mM
渋谷のやつとかミノタウロスとか、もうおちおち外もでられんね
23:名無し ID:hW4DLIJiC
何これマジ?
44:名無し ID:Q943P6rSd
>>23
別角度から撮った動画も上がってる。
htps://vdeo.twimg.com
25:名無し ID:nwLCSOYir
結局あの少女の正体って何か分かった?
41:名無し ID:KYULNZefA
>>25
わかってない
27:名無し ID:nwG42LuSA
下北に住んでるけど、今朝見たら瓦礫とか散乱してたわ。警察も報道も何も言わないのマジ謎。
30:名無し ID:Gs+1pSsEm
何あの槍
33:名無し ID:IeiZfUh50
結局この少女の名前どうなった?
39:名無し ID:rPaA1Yert
>>白燐(しろりん)ってことになた
36:名無し ID:4WfnztBcT
これ半分犯罪だろ
40:名無し ID:6V1Gxr/8s
相変わらず幸薄そうで安心した。
42:名無し ID:ppT9F8Pyz
ミノタウロスは元々世田谷の学校に出現してたらしい
55:名無し ID:MX/33FfoI
>>42
俺もTwitter見たわ。体育館に出現したミノタウロスの動画
58:名無し ID:kO51yJYHZ
>>42
そもそもなんで体育館にスマホ持ってきてるやついんねん。バレるやろ
47:名無し ID:tHpZ4pCOB
白燐マジですこ
50:名無し ID:TjkMhPTLK
体育館にしろりんいたのは、いつもの謎ワープってことでok?
53:名無し ID:Zvzz5JFNM
>>50
多分そう
56:名無し ID:TYmkkJwrV
てか白燐いなかったらどうなってるんだろうな。銃とか効くのかわからんし
77:名無し ID:wrihrL+Db
>>56
それ
あの謎に神々しい光以外で悪魔に効くイメージがわかん
58:名無し ID:hkSCcDO8J
またかよ
59:名無し ID:6o+VhoCrM
もうこれ日本出ていった方がいいよな。こんなのこわすぎる
80:名無し ID:dWGPEnAXu
>>59
でも日本には四季があるから
62:名無し ID:t9Zm0r1IA
今回の白燐めっちゃ苦戦してね?前みたいに一発で滅してくれよ…
66:名無し ID:x5jq40K5z
白燐が弱くなっているのか、悪魔が強くなっているのか
69:名無し ID:wPJ3oSY24
てか最後どうなった?墜落してね?
88:名無し ID:vKjX98C9A
>>69
空から白燐に光が刺してワープしたようにみえるけど
72:名無し ID:voakYaZJR
あの悪魔の残骸とかのこってるのかね?マジで謎だわ
高評価くれると嬉しくて更新頻度が爆上がりします