僕はイオリの規則違反者!   作:ソーイラテ

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ショッピングモールでの光彩

約束の日、ショッピングモールの入口で2人は落ち合う。黒のミニスカ姿のイオリを見て、ソラハが微笑む。

 

「流石、相変わらず似合うね、ミニスカート。」

 

「なんだよその笑顔は…まあ、この前話した通り、私のファッションは大体こんな感じだ。」

 

少し気恥ずかしくなったのか、なんとなくイオリは服を正す。そして今度はソラハの格好を見やる。視線に気付いたソラハが嬉しそうな顔をする。

 

「それでどう?僕の私服は?」

 

君から見て新鮮かい?と手を広げる。黒のショートパンツに青のフレアシャツ。腕もとは軽く折り曲げ、手首が見えるカジュアルな装いだった。

 

「ふーん、なかなかいいんじゃないか」

 

「ふふ、どーも」

 

いつもは、学園の制服がデフォルトの2人にとって、友人の私服姿はなんだか貴重に見えた。

 

キヴォトスの学園都市において、生徒の服装は基本自由だが、新1年生らは学園準拠の物を着用する事が多い。

 

それは入学したての学園の制服が、少女らにとって魅力的に映るからである。相対的に3年生らは、私服に近い姿や、部活内での地位に相応しいスタイルになる事が多い。

 

イオリの場合、風紀委員の新入りのため、専用のブレザー姿が常だった。

 

「風紀委員はある程度経験積んだら、服装も自由にカスタムしていいんだよね?」

 

「そうだよ。2年の先輩たちでも、既に弄ってる人いるしな。」

 

イオリは、先輩らがどんな服装だったかを思い出す。各々が、自分好みの服装にアレンジしつつ、風紀委員としてのイメージに適したものになっていた。

 

そういう、"こなれた"感は新入生目線では羨望であり、イオリは自分の将来の姿見を空想した。

 

「せっかくだし、それ用のウインドウショッピングもしようか」

 

なんてソラハが言うので、イオリは思わずぷっと笑って、少し早すぎるんじゃないか、と返した。

 

 

 

 

色々なショップを回るなか、当初の目的の1つである、イオリのグローブのため、2人はガンショップの装備品コーナーに来ていた。

 

「うーん、これがいいかな」

 

黒とピンクのツートンのグローブを選んだイオリは、サイズを確かめると装着してみた。

 

「…うん…うん…」

 

グーパーグーパーと、感触を確かめる。

 

「射撃感覚も試さないとな…ソラハ?ちょっといいか」

 

「うん?いいのあった?」

 

近くで、黒と緑のグローブを見ていたソラハが、顔を向ける。

 

「ああ、付けた状態で射撃感覚を試したい。向こうで撃ってきていいか?」

 

「いいよ。せっかくだし、僕も付いてくよ」

 

OKとイオリが返事し、店員に確認をとり、グローブを持ち込んだまま、併設された射的スペースに入る。

 

ぎゅっとグローブを嵌める。指にピッタリとフィットした感覚に、イオリは好印象を抱きながら、愛銃"クラックショット"を取り出す。ボルトアクションライフルをカスタムしており、床尾部分にトゲトゲとしたパーツを付けてるのが特徴だった。

 

すぅーと深呼吸をし、銃を脇に抱えるようにして、狙いを定める。的に向けて射撃を3回行う。

 

「ふぅん。なかなかやるね」

 

近くで見守ってたソラハが感想を溢す。3発ともサークルのほぼ、ど真ん中に的中していた。

 

「うん、なかなか悪くないな、これ」

 

グローブの感触を確めるイオリ。これに決まりだな、と購入を決める。

 

その横で、ソラハもついでに持ってきたグローブを装着。黒と緑のソレを、イオリの目に映るように見せる。

 

「それじゃあ、僕も試しちゃおうかな」

 

隣のブースに足を踏み入れ、鞄からハンドガンを取り出す。イオリが銃を仕舞い、お手並み拝見とばかりに腕を組み、彼女の動向を見守る。

 

視線を受け、ソラハがニヤリと笑い、銃を構える。

軽快な射撃音が3発響く。

 

「ふう…まあ、こんなもんかな」

 

サークルの外縁ばかり命中したそれらは、とても褒められたものではなかった。

 

「はぁ、どこがこんなもんだよ…相変わらず微妙な射撃だな」

 

「うーん、これ付けたら、僕の命中率も上がると思ったんだけどね」

 

甘くないね、なんてぬかすので、そりゃそうだろと、イオリは返した。

 

結局、イオリだけグローブを購入した。

 

 

 

 

「あっここだよ、僕が行きたかったカフェ」

 

「へえ、ここか」

 

グローブを購入し、どことなくホクホクのイオリを連れて、ソラハは店内に案内した。

 

レジに並びながら、ソラハが店員からメニュー表を受け取り、イオリにも見えるように広げる。

 

「うわ~どれにしようかなぁ。ココアラテもいいし、このアーモンドミルクもいいな~」

 

「へー色々あるんだな」

 

2人は同身長なので、肩を寄せあってメニューを見るには丁度良かった。

 

「あっこれだよ、チョコミントフラッペ」

 

「おぉ…」

 

カフェオレをベースに、うす緑のホイップと、チョコレートソースがかけられたソレは、イオリにとって大変魅力的に見えた。

 

「これにする」

 

即決するイオリにソラハがニコニコする。

 

「おっけー、じゃあ僕はコーヒーフラッペにしようかな」

 

レジで注文し、受け取った2人は、席に座るとさっそく口をつける。

 

「ん、いけるな、これ」

 

チョコミントフラッペの、すっきりとしたミントに、ミルクとクリームの甘味の調和。イオリの尻尾が機嫌よく揺れる。

 

「んん~~~、おいし!」

 

その隣でソラハもコーヒーフラッペを堪能する。

 

「あぁ~~脳ミソに染み渡る~。良かったらイオリも1口飲んでみる?」

 

「えっ、あぁなら遠慮なく」

 

ずいっとストローの先を向けられたので、イオリは反射的に返事をした。

 

ソラハのフラッペのストローに口をつける。カフェオレの控えめなコクと、クリームの甘さが絶妙だった。

 

「どう?こっちもいいでしょ」

 

「うん、いいね」

 

「じゃあ代わりに、イオリのも1口貰おうかな」

 

なんて言ってソラハが顔を近づけて来るので、イオリは、最初からソレが狙いか、と思いつつもストローを近付けてあげた。

 

「ん~チョコミントの味がする」

 

「なあソラハ、おまえ、もっと射撃の練習したらどうだ」

 

「えっ~、やっぱしないと駄目かな。なんか勝手に命中率が上がるアイテムとかない?」

 

「あるわけないだろ…ゲームじゃあるまいし……でも、まあ強いて言うなら、体幹だな」

 

「僕のバランス感覚が良くないって事?」

 

「鍛えるならそこかなって私は思うよ。体幹が強化されると、射撃時のブレが減るし。なにより体全体の使い方も良くなる。」

 

「そっかぁ…」

 

ソラハはポチポチとスマホを弄り検索する。

 

「へー、バランスボールとかで鍛えるのかぁ」

 

なんてしばらく雑談してると、イオリのスマホから緊急の連絡が届く。

 

「(ショッピングモールで、警備用ドローンが暴走!?場所は……ここじゃないか!)」

 

風紀委員のグループチャットを見る限り、何人かが現場に急行してるらしい。

 

反射的に立ち上がりそうになったイオリ。だが、コーヒーを飲みきり、のんびりしているソラハを伺う。

 

「(今日はソラハと買い物を楽しむ日だ…仕事に行くのはどうなんだ…)」

 

「(いや、でもモール内が荒れたら、買い物どころじゃなくなる!)」

 

「ソラハ!」

 

「イオリ?」

 

手短に説明するとソラハは、じゃあ僕も付いていくよ、と返す。

 

「わかった、行くぞ!」

 

イオリは素早く空になった容器を捨てると、ソラハもそれに続いた。

 

 

 

 

イオリらは、モール内の所定のエリアに近づくと、にわかに逃げ出す市民らとすれ違った。

 

「ソラハ、あと少しで接敵するぞ」

 

「う、うん」

 

「最優先は市民の避難だ。無理に倒そうとしなくていい。牽制しつつ避難を完了させる。」

 

「わ、わかった」

 

ドローン達が暴れまわるフロアの一角、そこに到着した瞬間、イオリがばっと飛び出す。

 

「貴様らの相手は私だ!」

 

逃げ遅れてる市民から、標的が自身に向くように牽制射撃。ドローンらがにわかにイオリを狙い始める。

 

ソラハも続くようにハンドガンを撃ちながら、市民を誘導する。

 

「こっちです!こっち!」

 

そうやってデタラメにドンパチしつつ、避難誘導を続けると、フロア内が閑散としてくる。

 

体力が切れたソラハは物陰に隠れつつ、状況を伺う。

 

「(ハァ…ハァ…避難は大方完了したかな…あとは風紀委員の人達が来てくれるから、大丈夫な筈だ)」

 

遠くにいるイオリは、遮蔽物を利用しながら単身、ドローンらと戦闘を続けている。

 

「!」

 

その時、ソラハはフロアの端に、子供が1人逃げ遅れてるのを目視した。机の下に隠れていたのだ。

 

「(あの子を!)」

 

考える間もなく飛び出し、子供の救助に向かう。

イオリが引き付けてくれてるお陰か、苦もなく到着し話しかける。

 

「ここは危険だ、あっちへ走れるかい?」

 

子供は頷くと、誘導に従い走り出す。ソラハも盾になるように、後ろから付き添い走る。

 

数体のドローンがソラハ達に気付き、攻撃を始める。ソラハの体に何発か命中する。

 

「(いった。もう、できるなら撃ち落としたいけど、全然当たんないな!)」

 

殺意が湧いたソラハは、子供を誘導しつつ本気で狙いを定める。しかし、空中をランダム起動するドローンを落とすのは、今のソラハの技量では困難だった。

 

子供を送り届けた時、ドローンの射撃がソラハの脚を襲った。

 

「つっ!」

 

バランスを崩し、転倒してしまう。そこに1体のドローンが突貫を仕掛ける。

 

「(ちょっ、嘘でしょ)」

 

突っ込んでくるドローンの動きが、走馬灯のようにゆっくりと見える。ソラハは動けない。

 

 

そこに、凄まじいスピードで、銀色のシルエットが割り込んだ。

 

 

「!」

 

銀髪のツインテールをなびかせ、ソラハの正面に滑り込むと、手にした銃を逆手に持ち、ドローン目掛けてぶん投げる。

 

ライフルの床尾部分に装着されたトゲトゲが、ドローンのメインカメラに突き刺さる。

軌道を逸らし墜落したソレから、素早くライフルを回収すると、振り返って少女は言った。

 

「大丈夫か?ソラハ」

 

手を差し出すイオリの光景が、ソラハの瞼に焼き付く。

烈烈と輝く深紅の瞳と、しなやかな体。それは銀鏡イオリという少女が、日頃から己の体を鍛え、努力している事の証左だった。

 

「う、うん…」

 

立ち上がろうとしてソラハは、腰が抜けてる事に気付く。

 

「おぶっていくか」

 

見かねたイオリがソラハの側で跪くと、そのままお姫様抱っこをする。ひゃわっと悲鳴を上げるソラハに、物珍しさを感じるが、気にせずすぐに移動する。

 

その二人を、残りのドローン全機が追いかけてくる。

 

「い、イオリ…」

 

腕の中のソラハが不安げな声をあげる。

 

「いや、もう大丈夫だ」

 

大量のドローンが火を吹こうとした瞬間、別方向から射撃音がした。

 

数機が墜落する中、今度はイオリとソラハを守るように、シールドを持った生徒が数人躍り出る。

 

隙間1つ許さぬと、展開される陣形。身に纏うはゲヘナ風紀委員の制服!

 

「!」

 

驚くソラハの背後から、多くの部隊員が駆けつける。そこから事態の収束まではあっという間だった。

 

 

 

 

「ええ、ええ、そんな感じです」

 

遠くで、風紀委員のメンバー達と事後報告をしているイオリを、ソラハはぼうっとみていた。

 

「(………………)」

 

思い出すは先程の戦闘。

 

体力が尽きてバテる自分、大立ち回りするイオリ、そして…

 

ソラハの中で様々な感情が渦巻く。それは情けなさだったり、ヒーローのように助けてくれたイオリへの憧れだったり、友愛だったり。

 

「(………これは………)」

 

自分の腰に手を回し、何となく撫でる。お姫様だっこして貰った感触が、まだ残っていた。

 

「(イオリ……僕は、僕は……)」

 

自分の今の感情が何なのか、理解できずぎゅっと手を握る。そこに、粗方報告が終わったのかイオリが駆け寄る。

 

「待たせたな、あとはもう大丈夫らしい」

 

「…そっか、じゃあ移動しよっか」

 

「あぁ。……それで…悪いな、今日はこっちの仕事に付き合わせてしまって」

 

咄嗟の判断で同行させてしまい、気まずそうに顔を向けるイオリ。そういう直情的な所は、彼女の美点であり、欠点でもあった。

 

「いいよいいよ、僕もいい刺激になったしね」

 

イオリと居ると飽きないね、なんてソラハがイタズラな笑顔を向けてくるので、いつもの彼女に戻ったな、と安心した。

 

「それじゃ…買い物の続き、するか」

 

「うん!」

 

その後は2人でショッピングを堪能した。

 

 

 

 

夜。

 

ソラハは自室のベッドに寝っ転がり、スマホで通販サイトにアクセスする。

 

「イオリは言ってたよね…体幹を鍛えろって……」

 

悩んだ末に、バランスボールを電子決済で購入する。

 

「……僕も……もっと……」

 

瞼を閉じる。疲れてたのか、頭部の青緑色のヘイローは、すぐに消失した。

 




イオリさんが買ったグローブは勿論、ゲーム内で着けてるやつです。
ソラハのヘイローですが、わりとシンプルなのをイメージしてます。
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