ゲヘナ学園 教室
「ン、イオリは委員会。僕はバイトまで時間あり。いとまあり」
暇を持て余したソラハはキララとエリカを探す事にした。
学園を歩いていると、中庭のベンチに座ってる2人を見つける。
「やっほー2人とも、僕が来たよ」
背後からキララにぎゅーっとくっつくと、くすぐったそうにピンクの髪が揺れた。
「きゃははっソラハちゃん、こそばゆいって」
「こんにちは、ソラハさん。試験勉強は順調?」
「んーぼっちぼっちかな。放課後たまにイオリと勉強してるよ」
「えぇ~2人とも偉偉じゃーん。けど私たちもちょいちょいやってるよ~!」
キララが手に持ってた単語カードを見せてくる。
「中庭で涼みながら、キララちゃんとだしあいっこしてたんだ。ソラハさんも一緒にやる?」
「うん、やるやる。てかキララちゃん、僕と競争しようよ。どっちが先に答えれるかでさ」
「おっソラハちゃんいいね~!いいよっ乗った!」
ハグされたままキララが瞳を燃やす。
その体を後ろから左右に揺らしながら、ソラハは友人らとの時間を楽しんだ。
☆
「今さらだけど、キララちゃんの今日付けてるカチューシャ可愛いね。ツノつきじゃん」
「そうっしょ!この間見つけて、ピンときちゃって買ったんだ~!私もエリカちゃん達見たいな可愛いパーツが欲しくって~」
「うんうん、スゴい分かるよ。僕とキララちゃんは何もないもんね」
2人でギターを弄ってるエリカを見やる。
ちょこん、と生えた角にすらりと伸びた尻尾。
「~♪」
ギターを触りながら、機嫌良さげに揺れる尻尾を2人で凝視する。
ユラリユラリと動くそれに、触りたいなぁと2人は同時に思ったが、口には出さなかった。
ソラハやキララのような「ヒューマン」の生徒が、幼少期に自分にはない部位を持ってる友人に対して深い興味を示す、というのはキヴォトスではよくある事だった。
どんな感覚が尋ねたり、勝手に触ったりなど...
だが15にもなると、そういう事はしなくなる。
社会的経験により、無神経に値すると学習するからだ。
「...僕のイオリにもあるんだけどさ...いいよね、カッコいいよね...」
「うん...ちょーわかる...あとイオリちゃんはソラハちゃんのじゃないからね」
が、それでも人は自分が持ってない物に憧れるので、ソラハはボーッとエリカのギターを聴きながら、悪魔特有の尻尾を眺めていた。
「ふふっ、そんなにじっくり見なくても...まあ、君らには無いもんね」
「うん、そだよ。なんにも持ってません。あー、なんか1日だけ、尻尾とか角とか生える薬とかないかなぁ」
「キャハハ!ソラハちゃん、それ面白いね!こう、化粧品みたいに、色んな種類があって~」
「そうそう、今日の僕は長めの尻尾!とか気分とコードごとに合わせられてさ~」
「へぇ、ソラハさんいいねそれ。私もたまに角を自由に弄れたらなって思う時あるから」
「あっやっぱりそうなんだ。ふふん、これが僕の考察力、だよ」
「おっスゴイスゴイ」
胸を張るソラハに、キララが適当に相槌を打ったので、ソラハはその頭に顎を乗せてグリグリした。
キララのくすぐったそうな声が中庭に響いた。
それに合わせてエリカがギターを鳴らした。
「あっそうだ、テスト終わったら夏休みくるじゃん?イオリとウォータープールに行くんだけど...2人も来ない?」
「えっそれめっちゃいいじゃん!私らもどこか行きたいって話してたから!」
「うん。キララちゃんとね、夏らしい事したいよねって」
「いようし、それじゃあ決まりだね。イオリの所が合宿あるみたいだからそれが終わってからね」
「オッケー!日にち決まったら教えてね、バイト開けとくから」
そんな風に雑談をしてると、突如爆発音が校内に響いた。
飛び散った破片が此方にも飛んでくる。
「わわっどこから」
「葉箱さん、あっちの方みたいだよ。行ってみよ」
近づいてみると、C4爆弾の爆発を遠めにノートを記録してるグループが見えた。
「ひゃっほう!今回のC4ちゃんはなかなかの完成度だー!」
自由が校風のゲヘナ生らしく、中庭で爆弾の成果を観察してるらしい。
「あの人たちは...確かC4爆弾同好会だね」
エリカの捕捉を聞きながら、うわーやってんなぁとソラハが思っていると、馴染み深い声が聞こえた。
「コラー!おまえら!校庭で無闇に爆発物を使用するのは禁止だ!」
「うげ!もう来やがった!」
銀髪のツインテールに、紺色の制服帽。
風紀委員のイオリが数人の同僚と一緒に現場に駆けつけた。
「あっイオリちゃんだね~」
「うん、イオリはカッコいいなぁ」
邪魔にならないように、遠めから3人で眺めてると、抵抗を始めた同好会と風紀委員で戦闘が始まる。
「今日はC4爆弾ちゃんのお披露目会なんだよー!邪魔すんなー!」
「そんな好き勝手、許すわけないだろ!」
同僚に支援されながら、イオリが先陣を切る。
爆弾と銃撃の雨を素早いステップで掻い潜る。
時には投擲された爆弾を、ライフルをバット代わりにして打ち返す。
「規則違反者め!」
彼女の愛銃、クラックショットが火を吹く。
説法代わりに同好会の連中にヘッドショットが突き刺さる。
「少しは頭を冷やしなよ」
バタバタと気絶したメンバーを拘束しながら、イオリがスマホで業務連絡を行う。
「アコちゃん先輩?例のやつらにお灸を据えたから、一旦そっちに持ってくね...えっ?牢屋が満室?一旦事情聴取でボイスデータを送って欲しい?...了解」
てきぱきと処理を進めていくイオリ達。
エリカが口を開く。
「牢屋満室って言ってたね。風紀委員も大変そうだなぁ」
「マジそれね~、ゲヘナは自由な子達が多いから、反省部屋が幾つあっても足りなさそうだね~」
ふとソラハは疑問に思ったので訊ねてみた。
「2人はさ、今まで反省部屋送りになったことある?」
「いやー私はないかなぁ、キララちゃんもでしょ?」
「うんうん、何にもお世話になってないよ~。ソラハちゃんもだよね?」
「うん、僕も厄介にはなってはないよ。まあ代わりに牢屋送りになっても、僕のイオリが早めに解放してくれるでしょう、フフン」
エリカが首を傾げる。
「いやー...銀鏡さんの性格なら、忖度せず真面目に処罰しそうだけどね...」
「......」
ソラハの脳内でイメージが始まる。
手錠を付けられたソラハを容赦なく牢に押し込むイオリ。
『うえーんイオリぃー。このままだと僕、カフェイン不足で死んじゃうよー』
『いい機会じゃないか、これを機にそのコーヒー中毒を治せ』
『そんなー。友達割引で早めに開放とかない?』
『そんなものはない!親友相手だからって怠慢はナシだ。じっくり反省するんだな』
ガチャン!と扉を閉められ、格子越しに遠ざかって行く背中が想像できた。
「うん...エリカちゃんの言うとおりだね...」
「キャハハ!イヤな想像でもしちゃった?イオリちゃん、一段落ついたみたいだから話かけにイコイコ」
キララに手を引かれながら現場に近づいた。
「やっほー!イオリちゃんお疲れ~!」
「こんにちは銀鏡さん、流石の腕前だね」
「あぁ、おまえら見てたのか。まあご覧の通りだよ」
「...やあイオリ、僕だよ。ちなみに僕は何も悪い事してないからね?」
「ソラハか、ん?なんだその口ぶりは...何か後ろめたい事でもあるのか...?」
イオリがジト目で近づいて来たので、ソラハは自分より少し背の高いエリカの後ろに隠れた。
「イヤだっ、まだ今日のカフェオレ飲んでないのにっ」
「...ソラハ、やっぱりおまえ何か危ない事に首突っ込んで...」
「職権濫用だ、イオリのストーカー」
エリカが自分の周りをグルグルしだした2人に思わず苦笑いになる。
イオリが諦めて本題に移る。
「まあいいや、それで聞いてくれよ。コイツら、中庭にお宝が眠ってるとか言い出してさ。お手製爆弾の実験も兼ねて定期的にここらで爆発起こすんだよ」
「へー、それで銀鏡さん達がすぐ来れたんだ」
「あぁ、なんでも帝王の遺産があるとかなんとか」
「キャハハ!帝王?なにそれ。私は初めて聞いたな~!」
「卒業した先輩の中に、そういう肩書きの人がいたってな。なんでも凄い発明家だったとか」
「へえ興味深いな。その人の作品が学園に隠されてるんだね」
「あぁ、でも私は正直半信半疑だけどね。そういう噂話は学園都市の定番だろ?」
「わっかる~!学園七不思議とかね!この間も夜中の廃校舎からピアノの音がするとか聞いたし~!あるあるだよね!」
ソラハがピョコンと顔をだす。
「...でもイオリはさ、なにか否定できない理由があるんでしょ」
「...あぁ、さっき電話してた、2年のアコちゃん先輩とかがさ、ソイツらの話に結構真面目に付き合ってて...」
「ふーん...風紀委員の人達、みんな真面目そうだし。そういうホラ話にも業務対応するんだろうね」
「あぁ、おそらくそんな感じだ」
話半分で流せばいいのにな、とボヤくイオリ。
同僚の風紀委員らも同じ考えなのか苦笑いを浮かべていた。
「じゃあ私たちはパトロールに戻るから」
帽子を被り直すイオリへソラハが手を送る。
「うん、バイバイ、イオリ。風紀委員頑張ってね」
「あぁ、じゃあな」
イオリの後ろ姿を見送りながら、ベンチへ戻る3人。
キララが口を開く。
「ゲヘナ学園も歴史長いらしいからね~!私も無限に噂話流れてくるよ~!」
「まあ、キララちゃんの場合は友達多いからね、尚更だよね」
エリカの相槌を聞きながら、ソラハはぼんやりと考えていた。
「(帝王ねぇ...ホントにいたのかなぁ)」
☆
喫茶ヘルツの鯨 地下の研究室
アロヨンから、今回は特殊繊維の服の性能を試したいと言われたので、ソラハはマット運動をしていた。
「ヨイショ、ヨイショ」
丁度バランスボールがラボにあったので、トレーニングを行う。
近くのパソコンでデータを見ていたアロヨンが呟く。
「...うん、うん、熱エネルギーの伝導良好。」
「アロヨンさん、こんなんでいいですか」
「はい、大丈夫です。......今度はランニングマシンで試して見ましょうか」
「ハーイ」
走りながら、ソラハは今日の出来事を話した。
「...それでっ、なんか帝王の遺産とかっ、そういう都市伝説とか流行っててっ」
「へー、そうなんですね」
「はいっ、連邦生徒会にもそういうのあります?」
「まあ...なんか色々ありますね。海の合宿で幽霊船を見たとか」
「うわー面白そうっ」
しばらく走っていると、アロヨンがスイッチを止めた。
「そろそろ休憩にしましょう、今後の事で少し話したい事もありますので」
「?はい、分かりました」
アロヨンに連れられ、休憩室で一息つく。
「ソラハさんは、オーパーツという物をご存知ですか?」
「オーパーツですか...?こう未知のテクノロジーで作られたみたいな...?」
「ええ、そのような解釈で問題ありません」
アロヨンの顔が真剣味を帯びる。
「実はキヴォトスには様々な、オーパーツという物が発掘されてます...一説によると、古代文明が関与してるとか」
「古代文明...今のキヴォトス以前にも文明が存在していたと...?」
「はい、そういう可能性があります。その文明が残したとされるオーパーツ...それは今の技術では解明は難しく、扱うのも困難な代物」
「でも...それは何かしら用途があって作られた物...という事ですよね?」
「はい、お察しの通り。それが何かの拍子で発掘され、予期せぬ現象を引き起こす...」
「.......」
それはまるで、統計から将来的な自然災害の予測を聞いているような。
今の自分に直接関係なくても、形容しがたい不安感を煽られる。
「この部活...連邦生徒会開発部では、それらの研究と回収を行っています」
「なるほど、それで秘密裏の...」
「はい。単刀直入に言うと、ソラハさんにはオーパーツの回収任務もお願いしたいです。状況によっては危険な場所に踏み入る事もあるかと」
「そう、ですか」
すみれ色の瞳が伏せられ、重苦しい空気が流れる。
「.....」
ゆっくりと考えを巡らせる。
本来、実験のテスターとしてソラハは雇われており、そこまで協力する通りはない。
そもそも、自分の用な生徒に出来る任務なのか。
明らかに身の丈を超えている、ように感じてしまう。
「その、オーパーツが暴走して、誰かの日常に悪影響が出ちゃうんですよね」
「はい、その危険性があります」
学園の中庭で、銀髪のツインテールが規則違反者を制圧していた姿が頭を過った。
爆弾の煙の中でも、迷わず前に出て、日常を守ろうとしていたイオリの姿。
(僕も...少しでも、彼女に近付けるなら...)
怖さはある。自分の力不足も分かっている。
でも今は、挑戦したい気持ちが強かった。
「分かりました。この僕が、協力します」
アロヨンは少し目を見開き、それから静かに微笑んだ。
「ありがとうございます。此方も最大限のフォローはします。無理はさせませんので、安心してください」
少々お待ちください、と残し彼女が別の部屋へ行った。
「フゥー......」
天井を見上げ、細く息を吐いた。
なんだか、人生の分岐点に立ち入ってる様な気分だった。
(危険な場所か...いや、恐れるな葉箱ソラハっ、多少そういう経験も積まないと、イオリのようにはなれないぞ)
「お待たせしました」
アロヨンが長方形のケースを手に帰ってきた。
「さあソラハさん、こちらをどうぞ。開けてみてください」
言われるがままに留め具を外し、蓋を開ける
「これは...」
「はい、これこそがパラソルショットガンのマイナーチェンジモデル...ショットランサーです!」
それは槍と銃を融合させたような形状。
先端は長く漆黒の槍で、槍の付け根から中央にかけて、複雑に組み合わされた機械的な機構が広がる。
中央部に埋め込まれたスコープのような部位には握り手を兼ねたグリップがあり、さらに後方へは細い持ち手が伸びていた。
「これが、任務中でのソラハさんのメインウェポンとなります」
「これを...僕が....」
無意識に手をかざし持ってみる。
「んん...ちょっと重たい...」
銃口と一体化した槍部分が大きいため、それなりの重量があった。
「今日はこちらの慣熟訓練としまして、調査任務はまた次回にしましょう」
「ラジャーです」
☆
アロヨンがパソコンに戻り、フィールドに入ったソラハはゆっくりとショットランサーを構えてみる。
最初は重くて取りにくく、槍の部分が思ったより長く感じた。
だが、グリップを握った瞬間から、なんだか体が自然に反応する。
(……重いけど、これならイオリにも、少しは近づけるかも)
アロヨンの声が静かに聞こえる。
『射撃モードに切り替えてください。ここで補正システムをテストします』
ソラハはスイッチを切り替えた。
スコープが明るく光り、頭部に小さなディスプレイが投影される。
「よし……」
右手で武器を握り、左で全体を支えた。
槍の重さが反動を抑え、逆に安定して見える。
「……撃ってみるよ」
指を軽く曲げると、ショットランサーが小さく鳴った。
カカカカカッ!
的に向かって三連射。
弾道が思いの外正確で、綺麗な三連の穴が開いた。
ソラハは目を丸くした。
「え……この僕が、ぴったりに命中……?」
アロヨンが微笑む声が聞こえる。
『射撃補正能力が武器に搭載されていて、AIが自動で弾道を補正するようになっています。
重いからこそ、反動が抑えられるんですよ』
ソラハは再びショットランサーを構えた。
「なるほど……それでなんか使いやすいのか……」
重量武器を食わず嫌いしてたソラハには初めての感覚だった。
右手を軽く震わせて、今度は動く的を狙う。
左手で武器の先端を支え、腰を少し引いて安定させる。
カカッ! カカッ! カカカッ!
弾道が驚くほど正確で、三発とも綺麗に収まった。
「す、すごい...!」
『問題無さそうですね。それではいつものやつ、行っちゃいましょうか』
フィールド内にポツポツと箱型ロボットが現れる。
ビル風のオブジェクトの上には狙撃タイプが眼を光らせ、遠くから重装甲タイプが歩行する音が響く。
『全部、やっつけちゃいましょう!』
ゴクリとソラハが唾を飲み込んだ。
「いよーし...やっちゃうもんね」
ぎゅっと武器を握りしめ、すみれ色の瞳が闘志に燃える。
「この僕と!ショットランサー君の力で!全員、コテンパンのパンパンにして見せましょう!」
☆
黒い箱形ロボットが陣形を組んで襲ってくる。
外側から各個撃破して、陣形を崩す。
「うりゃー!」
フォーメーションを直される前に、バリアを張りながら中央突撃。
ショットランサーの物理攻撃で荒らしながら、リーダーと思われる個体へ優先的に攻撃。
そうこう、もみくちゃにしてるとディスプレイからアラート表示。
「スナイパー君も見てるねぇ!」
センサーの着弾予測に従い、発射された大口径弾をショットランサーその物を盾にする。
ズバンッ!
ランス基部に重たい衝撃が来て、腕がビリビリと震える。
「ここから届かないけど、君を認知したからね!」
露骨に銃口を向けると退散したので、暫く攻撃は来ないだろう。
狙撃タイプのAIは撃つ度にスナイプポイントを変える癖がある。
「あの子は一旦放置でいいや...あとで可愛がる」
周囲のロボットに意識を戻して戦闘を続ける。
暫くすると重装甲タイプの足音が近付いて来た。
「おいでなすったね」
巨腕のガトリングが容赦なく火を吹く。
ダッシュ回避。
ショットランサーのバリアと質量装甲で防ぎながら、足元の撃破した個体を拾う。
「うりゃー!飛んでけー!」
軽く放り投げたロボットを、勢いよく槍の先端に押し当てると同時にバリアを展開。
瞬間的に放出されたエネルギーがロボットの電磁装甲とぶつかり、高速で吹っ飛んで行く。
敵の右足首にそれが直撃した。
「そこだけ狙うからねー!」
執拗に右足首を攻撃。
時にはランサーで突撃しながら、ひたすら集中放火。
「動きが鈍くなった!」
チャンスとばかり、頭部に登り詰める。
槍の先端がカメラアイへ向けられる。
「......」
重装甲タイプが以前のように足元の個体を蹴り飛ばす。
壁に反射したそれが彼女の背後を襲う。
バキン!
が、振り向き様に振るわれたランサーが叩き落とした。
「もう、油断はしないよ」
バッとしゃがみこんだ瞬間、スナイパーライフルの狙撃が重装甲のカメラアイを一撃で破壊した。
「フレンドリーファイアだね」
ズシンと崩れた巨体から飛び降りる。
「スナイパー君仕事してて偉いね。この僕が今可愛がってあげる」
トットットッと少女がビルに向かって疾走した。
☆
モニター越しに、狙撃タイプを串刺しにして振り回すソラハの映像が見える。
「フフ、ソラハさん、順調に扱えてますね」
バイタルデータを参照する。
特殊繊維の衣服が彼女の身体能力を強化してるのが見て取れた。
武器の重量の件も問題ない。
彼女は扱えるかに臆していた様だが、これが結果だ。
「つまるところ、最初の1歩させ踏み出せれば後はなんとかなる、という事ですね」
元よりそれ込みの補助装備であり、テスターが扱えない代物を作るアロヨンではなかった。
「これなら、実戦で投入しても問題ないでしょう」
ショットランサーの設計図を展開する。
「それでも、一部の機能はまだ使えてませんけどね...まあそれはおいおいで」
データを閉じると、ソラハを迎えるべく立ち上がった。
☆
夜 ソラハの部屋
「ふわー、今日も頑張ったな~」
バランスボールの上で音楽を聴きながら、独り言ちる。
両腕が筋肉痛でじんわりと痛むが、それもなんだか心地好かった。
「ふふっ...もしイオリが僕の戦ってる姿を見たらビックリするだろうな~。まあ、そんな機会ないと思うけど」
ベッドの上でスマホを弄ってると眠気に襲われた。
「むにゃむにゃ...イオリ...僕、少しずつだけど、強くなってるからね...」
そんな寝言が聞こえた。
☆
ソラハは夢を見ていた。
暗くてよく見えないが、黒装束のシルエットの少女が戦ってる。
その手には槍と銃を合体させたような武器を携え、何かから逃げるように縦横無尽に街中を跳んでいた。
(まるで、怪盗みたいだな...)
そんな風にぼんやりと考えていると、彼女の姿がチラリと見えた。
片目にはモノクル、そして左肩に付けたペリースが宙にはためいていた。
(やっぱり、僕の予想通り怪盗なんだ、あの人...あのモノクルは電子スカウターかな...何かを探してるみたいだ)
黒装束の少女がキョロキョロと見回しながら、屋根から屋根へと滑空して行く。
そして何かを見つけたように建物の中へ侵入した。
(あそこにお宝でもあるのかな...)
何かを掴む少女、すると入り口から別の人物が現れる。
(警察の人かな...)
そこまでだ、と言わんばかりボルトアクション式ライフルを構え、じりじりと黒装束の少女へ近づく。
少女は逃げる素振りを見せたが、諦めたように武器を構えた。
(戦いたくないのかな...あの怪盗の人...)
戦闘は黒装束の少女の防戦一方だった。
なんとか隙を見て逃げ出し、ハァハァと肩で息をしながら、ずるずると壁に背を預け座った。
(...なんだか、苦しそうだなぁ...この人...)
そこでソラハの夢は途切れた。
☆
ここまでご愛読ありがとうございます
ショットランサーの見た目ですが、某クロスボーンがモチーフです、気になる方は検索してみてください。
コメント、感想も大変嬉しいです、励みになるのでお気軽に入力してくださると幸いです。