ドラゴンクエストⅢ 呪文を知らない娘たち   作:Projectアリア

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勇者は呪文を使えない/アリアの勇者学その一

旅立ちの日、ルイーダの酒場にて

 

 

「戦士のサラだ。武器の収集が旅の目的だ。」

大きな声で話す戦士の人。どこか誇らしげに胸を張っている。

 

「クーだよ!鍛錬しよ!勇者さんも一緒に、鍛錬しよ!」

武闘家の子は元気よく拳を突き上げる。その活発さにつられて、私も思わず微笑んでしまう。

 

「ヒオです。一応、魔物使いです。魔物の研究がしたいです。」

控えめに話しながら、長い白髪を指先で軽く弄るこの人は魔物使いだそうだ。

 

ルイーダお姉ちゃんが紹介してくれたパーティ候補を見て、ルイーダお姉ちゃんに抗議する。

 

「私の要望、全然聞き入れられてないんだけど!」

「あら?そう?皆、元気でいい子たちよ?」

「そうじゃなくて!私の体質を知ってるでしょ!呪文使える人が欲しかったのに・・・」

 

がっくりと項垂れる私。

 

 

 

 

 

ここはアリアハン。勇者が旅立つ地として有名な町だ。

勇者といっても一人だけではなく、私の他にもたくさんいる。

そもそも勇者とはなんだ?という話だが、少し特殊な職業である。

 

通常は自分が培ってきた技術で自ら職業を名乗るか、ダーマ神殿と呼ばれる場所で職業を変え新たな人生を歩むこととなる。

だが、勇者とは各国の王が認可を出して勇者と名乗れるようになるのだ。

アリアハンでは勇者の認可が緩く、また補助金も出るため多くの勇者がこの地から旅立つ。

 

 

ここに一人の少女、アリアもまた勇者として旅立とうとしていた。

父に勇者として有名なオルテガがおり、その血筋と才能に多くの期待が寄せられていた。

誰もが、彼女もまた父に続く存在になると信じていた。

 

はずであった。

 

 

幼い頃に町の外に抜け出し遊んでいたところ、通りすがりの蝙蝠男によってマホトーンを掛けられてしまったのだ。

当時は呪文も覚えておらず、体調も悪くなかったため、無事に逃げ切れたと思っていた。

しかし年月が経ち、いざ呪文を使おうと思っても全く使えない。

知らない内に何か呪われたのかと思い教会に行き調べてもらったところ、マホトーンがずっと掛かっていることが判明した。

更に悪いことにマホトーンを掛けられてから治さずに放置してしまっていたため、体に呪文が染みついてしまい世にも珍しい『マホトーン体質』になってしまった。

 

 

 

 

がっくりと項垂れている私に戦士の人が不機嫌に話しかけてくる。

 

「勇者が一人旅立つからと聞いて来てみれば、随分と嫌そうな感じじゃないか。

 私じゃそんなに不満かい?」

 

「あ、す、すみません。不満というわけじゃないんですが・・・。私、呪文が使えないんで」

 

「なんだ。呪文が使えないのかい。そりゃ僧侶の一人でも欲しいわな」

 

事情を理解してくれたのか、戦士の人も納得してくれたみたい。

話していると今度は元気な武闘家の子が肩をバンバン叩いた。

 

「大丈夫だよ!勇者さん!鍛えた体が一番の武器ね!」

 

「あはは。そうだね。私も呪文が使えない分鍛えてはいたから」

 

「おぉ!勇者さんも鍛錬好きかぁ!一緒に鍛錬しよう!鍛錬!」

 

落胆されるわけでもなく、元気な様子で話しかけてくれると助かる気持ちだ。

 

「あの~。それで私達は一緒に旅に出てもいいんでしょうか?」

 

白く長い髪が綺麗なお姉さんが、少し困った顔で尋ねた。

 

「あ、はい。よろしくお願いします。

 というか、今は他の人いないんだよね?お姉ちゃん」

 

「そうね。今、私の酒場にいる冒険者さんはここにいる三人だけね」

 

「そういうことなんで、私としても一緒に旅に出てもらえると嬉しいです」

 

 

そう言って、私は改めて三人に向き直った。

そうだ。これから私はこのパーティの皆と共に世界を救いに行くのだ。

呪文が使えないパーティ?それがどうしたというのだ。

『世界を救う』という信念を胸に、仲間たちと冒険に出る。

素晴らしいことじゃないか。

気持ちを切り替えた私は、三人に向けてしっかりと挨拶をした。

 

 

「この度、勇者になりました。アリアといいます。

 呪文は使えませんが、どうぞよろしくお願いします」

 

ぺこりとお辞儀をする私に三人も笑顔で挨拶をしてくれた。

 

「改めて。戦士のサラだ。旅の目的は武器集め。

 全ての武器を集めるのが旅に付いていく条件だな!

 店売りのものもいいが、一点物の武器は特に好きだ!

 あー!待っててくれ!私の武器たち!」

 

自己紹介するや否や恍惚とした表情で一人語りを始めた戦士。

 

「クーは武闘家だよ!好きなことは鍛錬!

 鍛えた体が一番最強!」

 

元気がいいのは非常にいいことだと思うが話す時くらいはスクワットしないでほしい。

 

「魔物使いのヒオです。小さい頃に魔物に舐め回されてから魔物のことがもっと知りたくなりました。

 魔物の研究が旅の目的になりますね」

 

まともだと思っていた人が、突然のカミングアウト。

なんでこの人、いきなりこんなこと言ってるの?大丈夫なの?

 

「最初にはっきり言っておいた方がいいと思いまして」

 

素敵な笑顔で話してくれるが、話している内容はぶっ飛んでいる。

 

 

こうして呪文を使えない私達のパーティが結成された。

 

 

 

 

アリアハン城下町 門前

 

お姉ちゃんの酒場を出ると、すぐに活気ある町の音が耳に飛び込んでくる。

石畳が整然と敷き詰められた道の両側には、さまざまな店が軒を連ねていた。

パン屋から漂う香ばしい匂い、鍛冶屋で金属を叩くリズミカルな音、そして行き交う人々の楽しそうな声。

 

「活気があっていい町だよね、ここ!」

クーが周りを見渡しながら嬉しそうに言った。

元気な彼女には、この町の雰囲気がぴったりだと思う。

 

「まぁな。だが、こんな平和な町から一歩外に出れば、すぐに魔物だらけだぞ」

サラが腕を組みながら、冷静に警告する。

確かに、この平和な風景を当たり前だと思ってはいけない。

勇者としての役目を果たすには、覚悟が必要だ。

 

私はふと足を止め、門の方へと目を向けた。

青空を背に、町を囲む石造りの城壁と大きな木製の門が堂々とそびえている。

ここを越えれば、いよいよ私たちの冒険が始まるのだ。

 

だけどその前に大事なことがある。

 

私は門の前で大きく手を叩き、明るい声を上げた。

「それでは装備でも整えましょうか!」

 

サラがため息交じりに腕を組む。

 

「おいアリア。なぜ今それを言う。武器屋は逆だぞ」

 

「お金がありません。稼がないと」

 

ヒオが眉を顰め、小首をかしげながら

 

「あれ?勇者の認定はされたんですから補助金出たんじゃないですか?」

 

「アリアハンは認定が甘い分、補助金も少ないんです」

 

指を一本立てて真面目な顔になる私。

 

「勇者をたくさん輩出して、その中の一人でも世界を救えばいいですから。

 数撃って当たるといいなって感じですね」

 

ヒオが困ったように続ける。

 

「その分、一人当たりの金額は少なくなると。

 ちなみに補助金どのくらいなんですか?」

 

「50ゴールドです」

 

サラが目を剝き勢いよくツッコむ。

 

「おい!武器屋で何も買えないじゃないか!」

 

「だから稼がなくちゃいけないんですって!」

私がそう返すと、サラはさらに大きな声で言い返してくる。

 

「その稼ぐための武器がないだろうが!」

 

私はこれ以上ないというほど、清々しい表情になった。

 

「ありませんね。でも、やるしかありません。素手で」

 

「素手で?」

 

「素手で」

 

肩を落とす二人とは対照に、クーは元気一杯だった。

 

「クーはいいよ!この拳があるからね!」

 

元気いっぱいのクーが、両手を握りしめてポーズを取る。

 

私はつられて微笑む。

 

「クーはいい子ですね。そうですね。やりましょう!」

 

クーの頭を撫で、門の外へと向かう私とクー。

そこにサラの制止がかかる。

 

「待てアリア」

 

腰に携えている銅の剣を指差した。

 

「その腰に差している銅の剣はなんだ」

 

私は銅の剣を一撫でして

 

「私物ですけど」

 

サラが今生の頼みとばかりに拝み倒してくる。

 

「壊さないから貸してくれ」

 

剣をぎゅっと抱きしめて後ずさる私。

 

「嫌ですよ。っていうか、皆さんの装備は?」

 

サラとヒオは気まずそうに視線を逸らした。

 

「ルイーダさんの所のレンタル品借りてたからなぁ」

 

「私、本分は学者みたいなものでして。装備品とかはパーティ組んでからでいいかなと」

 

「この体があれば、それだけで大丈夫!」

 

クーの眩しい笑顔とは裏腹な二人を見ながら

 

「完璧に補助金頼りじゃないですか。

 自業自得です。狩りますよ。素手で」

 

「「素手は嫌だーー!!」」

 

 

 

数十分後

 

門の近くの広場で休憩をとる私達。

肩で息をするサラ。もう動けないとばかりに這いつくばるヒオ。

クーは武闘家だけあって素手での戦闘に慣れている。まだ余裕がありそうだった。

 

「すまん。マジで素手はキツい」

サラが息を整えながら、私に訴えてくる。

 

「すみません。こちらも見てて辛いものがありました」

 

自業自得だとはいえ、慣れない素手での戦闘は見ていて不安を覚える。

ここら辺は強いモンスターがあまりいないとはいえ、戦闘とは命がけである。

どうにかして、装備を整えてあげたくなった。

 

息も絶え絶えなヒオが声を振り絞る。

 

「な、なにか・・・勇者特権で、ハァハァ・・・武器とか、もらえないんですか・・・?」

 

私が水筒から一口水を飲み、考え込んでいると、サラが唐突に声を上げた。

「そういえば昔、うちにも勇者が来て何か持って行ってたことがあるぞ」

 

「あー。お宅訪問制度のことですか?」

 

「ちゃんと名前のある制度だったのか」

 

正確にはもっと堅苦しい名前だが、こちらの方がわかりやすい。

 

「勝手に取っていったら盗人と変わりませんから。

 そのお宅の不要なものをもらったり、宿屋だったら忘れ物を使わせてもらったりしますね。」

そう答えた後、思い出したことを続ける。

「あ、小さなメダルについては別ですけど」

 

ヒオは不思議そうに眉を寄せた。

「井戸に住んでる変なおじさんが集めてるやつですか?」

 

「そう。あのメダルに使われている金属って何なのかわからないんだよね。

 それを解明するためにどの国も躍起になっているみたい。

 お城ではそう教わったかな」

勇者の勉強をしている時に習ったことをそのまま話す。

 

首をかしげるサラ。

「それじゃ、メダルはお城にもっていってもいいのか?」

 

「国としてはその方が嬉しいだろうね。

 でも大した報酬もないから、あのおじさんのところにもっていった方がいいかな」

私は肩をすくめながら答える。

身も蓋もないが、どうせなら豪華な報酬がある方がいいに決まっている。

 

「あのおじさん、すごいお宝持ってるからな。

 いや、本当に何者なんだ?」

 

サラが首をかしげながら、うんうんと唸っているとヒオがまた問いかけてきた。

 

「すみません。さっきのお宅訪問の話に戻るんですが、お城のものは勝手に持って行っていいんですか?」

 

「交渉次第である程度は大丈夫だよ。勇者の認定をした以上、協力しなきゃいけないからね。

 国からすると本当に取られたくないものは宝物庫に入れてあるし」

軽く笑いながら答える。

 

サラの呆れた声が聞こえてくる。

「あれって盗賊対策じゃなくて勇者対策だったのか」

 

「まぁ、鍵をもっていれば持って行ってもいいんだけど。

 逆に宝物庫の鍵を開けられるくらいの勇者だったら本格的に協力してもいいってことじゃない?」

 

ヒオが興味深げに頷く。

「勇者制度の裏側って感じですね」

 

私は続けて勇者について説明する。

「実際、勇者の認定って強さとか呪文の適正とかもあるけど、制度に対して理解があるかの方が大事だしね」

 

サラは不思議そうに尋ねてきた。

「強さの方が大事じゃないのか?旅立ったのに死んでしまってはどうしようもないだろ」

 

苦笑しながら、やんわりと否定する。

「冷たい言い方だけど死んでしまっても問題ないんだよね。旅をしてトラブルを起こした方がもっと問題なんだよ」

 

ヒオはどうやら納得がいったようだった。

「なるほど。認定した以上、その国の看板を背負っているわけですからね」

 

頷きながらヒオの言葉を肯定していく。

「アリアハンはその部分に重点を置いているからね。

だから制度に対しての理解があれば勇者の認定が下りやすいの」

 

サラはまだ納得がいってないようで

「それでも強さだって大事だろ。アリアはその・・・呪文が使えないだろ?」

 

私に対する疑念、というよりは心配してくれているのだろう。

なんだかんだで優しい人なのだと思う。

 

軽く笑いながら、認定が下りた理由を説明する。

「呪文が使えない分、他の分野を頑張ったかな。それに勇者が使える呪文に対しての適正『だけ』はあったから」

 

ヒオは苦笑しながらもすぐに理解してくれた。

「あー。呪文は使えないけど、習得することはできるんですね。

 なんというか、認可の抜け穴をつくような・・・」

 

それを聞いたサラは少し呆れ顔である。

 

「そういうこと。とりあえず、素手はキツいからお城とか民家に訪問して色々もらってこようか」

話のキリもいいところになったし、次の方針が決まったので行動に移すとする。

クーなんかは体力が回復したのか、こういった話に興味がないのか筋トレを始めてしまっている。

 

真顔で訴えかけてくるヒオ。

「お願いします。もう素手は嫌です」

 

サラも素手で戦わなくていいとなったから元気が出たみたい。

「話も纏まったし行くとするか!そこのロリ筋肉!筋トレしてないで行くぞ!」

 

「ロリっていうな!難しい話わかんなかったんだもん!」

 

クーにはいつまでも元気でいてほしいと思う。

 

 

 

 

おまけ

 

お城での交渉や民家の訪問が終わり、何となくの装備が整った私達。

いざ町の外に出て資金稼ぎを再開した。

 

最初の戦闘を終え、これで少しは冒険者らしくなったかなと思ったその直後──。

 

「なぁ、アリア」

神妙な顔で話しかけてくるサラ。

 

「はい。なんでしょう?」

きょとんとした表情で返事をすると、サラはこれまで見たことのないほど真剣な表情で囁いてきた。

 

「武器は装備しないと意味がないんだぜ」

その言葉は苦悶に満ちており、私もつい言葉を失う。

 

サラが尚も続けてくる。

「ヒオを見てみろよ。この世の終わりかって感じだぞ」

 

視線をヒオの方に向けると、確かにこの世の終わりを彷彿とさせる雰囲気を出したヒオがいた。

 

焦った私はすぐに道具袋に手を入れる。

「す、すみません!すぐ皆に渡しますね!」

 

 

これからの旅先が不安になるような出来事であった。




初めて、二次創作にチャレンジしました!

大好きなドラゴンクエストⅢ。
盛り上げていきたいですね!

文章が拙いこともあるかと思いますが、今後ともよろしくお願いします!
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