ロウリア王国軍先遣隊本陣
「全軍前進を開始しました!」
「今日という今日は許しませんよ!! クワ・トイネの奴らは軍民問わず魔獣の餌にするのです!!」
アデムの命令により魔獣軍団を先頭に先遣隊が突撃する。腹を空かせ、飢えたケダモノはギム目掛けて勢いよく前進する。
「ん。 なんだあれは?」
魔獣軍団を統率する兵士が此方へ向かってくる飛翔体に気付く。次の瞬間、突然大地が噴火したかの如く一面爆炎に包まれる。
「ギムが噴火したのか!?」
「あそこに火山なんてないぞ?!」
クワ・トイネ公国陸軍本陣
「撃て撃てー!! 砲身が破裂しても構わん!! とにかく敵の頭上に鉄の雨を浴びせてやるのだー!!」
イギリスから供与された105mm砲が遂にロウリア王国軍に向けてその火力を見せ付ける。これまでの訓練の成果もあり、兵士は皆キビキビと動いている。自分たちの国を守るため、愛する家族のため。絶対に負けられないクワ・トイネ公国陸軍はひたすら砲弾の雨をロウリア王国軍に浴びせる。
「先頭の魔獣軍団が此方に向かって来ます!!」
「戦車隊は魔獣軍団を全滅させよ!!」
「おのれクワ・トイネの奴らめ! だがこれだけ近付ければ此方のものだ!!」
魔獣軍団も砲撃により壊滅的被害を受けていたが、それでも一部の部隊は砲撃を掻い潜り前進を続けていた。そんな彼らの前に現れたのは昨夜現れた鉄の象の群れである。
「で、出やがった! 鉄の象だ!!」
「こっ、こっちに来るなー!!」
次の瞬間、先頭を進んでいたオーストラリア陸軍所属のM1A1エイブラムスが発砲。それに続いて後続の戦車部隊も行進間射撃を行う。クワ・トイネ公国陸軍兵が操縦するエイブラムスはニュージーランド陸軍の装甲車部隊の護衛を受け、停止した状態で射撃を行う。
「モイジ団長!! あと15分程でエジェイから日英の航空隊による爆撃が開始されるとのこと!! それまで耐えられたしと!!」
「よし! 皆の者! ここが正念場ぞ!! 15分後には日英の航空隊による支援攻撃がある!! それまで何としても耐えるぞ!!」
その間、ロウリア王国軍は一方的にやられるばかりであった。105mm砲により重装歩兵は壊滅、魔獣軍団は戦車並びに装甲車部隊の攻撃により全滅。恐怖のあまり逃げ出す兵士が後を絶たず、立て直しは困難であった。
「パンドール様!! ここは撤退を!!」
「撤退だと? アデム君らしくないではないか」
「既に我が魔獣軍団は全滅しています! このまま続けていては・・・」
「鉄の象が後退して行きます!!」
「何?!」
一方的に魔獣軍団を攻撃していた戦車並びに装甲車部隊が突然後退したことにロウリア王国軍は首を傾げる。一部の兵士は今迄の復讐と言わんばかりに前進する。
「鉄竜が向かって来ます!!」
「まさか、鉄竜が向かってくることがわかっていたから後退したのか!!」
「何かが此方に降ってきます!!」
降り注ぐJDAMを最後にパンドールやアデム達の思考は永久に途絶えることになる。エジェイを飛び立った日英の航空隊はロウリア王国軍に対して徹底的な空爆を実施。先遣隊指揮官のパンドールやアデムは戦死し、組織的抵抗は不可能となった。
「最後の総仕上げだ! 総員着剣せよ! 突撃ー!!」
アサルトライフル片手にクワ・トイネ公国陸軍が前進する。後退していた戦車や装甲車も再度前進し、ロウリア王国軍を次々と撃破していく。イギリスから供与されたアサルトライフルはロウリア王国軍の鎧を難なく貫き、盾も意味を為さない。数時間後、辺り一面戦死者で埋まり、戦闘は終結。ロウリア王国軍先遣隊は僅かに逃げ帰った一部を除き全滅または捕虜となった。
「・・・・小銃一つ取っても我が国の物を遥かに凌駕している・・・それにあの飛行機は明らかに音速を超えていた・・・・」
ギムの町に潜伏していた情報局の職員は急ぎ帰国の途につく。無事帰国した彼はただちに報告書を取り纏め、上司に写真付きで提出した。その後、情報局は秘密裏に日英について調査を開始することになる。
「何!? ロウリアが敗れただと!?」
「そのようです」
「そのようですじゃないだろ!! あの計画に幾ら金を注ぎ込んだと思っているんだ!!」
「ですが、まだ海軍は残っていますし、まだ陸軍も本隊が残っています・・・」
「・・・・もしロウリア王国が崩壊となれば、どうなるかは分かるな・・・」
「・・・・はい・・・・」
先遣隊全滅の知らせはやがて各国の情報局員や報道機関により世界各地に届けられることになるが、ロウリア王国本国はそれどころではなかった。
ロウリア王国 王都ジンハーク ハーク城
「・・・・どういうことだ? クワ・トイネ公国は大した国力を持たぬ国ではなかったのか・・・・?」
玉座に力なく座る大王ハーク・ロウリア34世は頭を抱えていた。つい先ほどジンハーク近郊のワイバーン部隊の基地で謎の爆発が発生し、ワイバーンは全滅。竜騎士も殆どが死亡した。
「・・・・余は見たのだ・・・ワイバーン部隊の基地に向かって飛翔する槍を・・・・」
大王が見た槍はイギリス海軍が発射したトマホーク巡航ミサイルである。
「国境線から遠く離れた王都さえ攻撃出来ると奴らはアピールしている・・・・まさか、我が国が門前払いした日本とイギリスの仕業か!? そうに違いない!! 蛮族共にそんなことが出来るわけがないのだ!! あれは日本とイギリスの攻撃だ!!」
しかし、イギリスは我が国に対して宣戦布告して来ている。そもそもとして、この戦争はロウリア王国がクワ・トイネ公国並びにクイラ王国に対して侵攻したことで開始されたもの。今更時は巻き戻せない。
「こうなれは海軍に頼る他なし・・・・それに先遣隊がもし日本とイギリスにより全滅させられていれば、余に不満を抱く南西の諸侯らが日英に靡くやもしれん・・・」
ロウリア王国はその後御前会議を開催。クワ・トイネ公国に侵攻中の陸軍を全てジンハークに戻し、日英の王都侵攻並びに諸侯の反乱に備えることになった。しかし、その日の夜には南西の諸侯らがイギリス国王に忠誠を誓うとして、ロウリア王国からの独立を宣言。ローデシア連邦を名乗り、ロウリア王国に対して宣戦布告した。無論ローデシアの背後にはイギリスのMI6が関わっており、ローデシアの諸侯はロウリア王国に忠誠を誓う諸侯の領地へ侵攻。殆どの諸侯は侵攻軍に参加していることから留守居の兵しかおらず、次々と陥落していく。こうしてロウリア王国は南部からの脅威にも備えなくてはならなくなり、迎撃の部隊を出撃させた。
ローデシア連邦軍本陣
「いよいよあの憎きロウリア一族に反旗を翻す時が来たか!」
「左様。元々我らはロウリア王国大王、ハーク・ロウリア33世の治世の時に無理矢理併合させられた者、親や兄弟を処刑された過去を持っている」
「そもそも我らはロデニウス大陸の統一に興味などない。むしろクワ・トイネやクイラとは昔から友好関係を築いていた。そなたも大王の命に反してエルフや獣人を匿っているであろう?」
「匿っている? 何を申すか。某の妻は人とエルフのハーフだ。匿って等いない。堂々としておるわ!!」
「何なら拙者は人と獣人のハーフにござる!!」
「御託はよい! 我々ローデシア連邦はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の傘下としてロウリアから独立を回復したのだ!!」
「連合王国国王を国家元首とし、戦後日英両国に市場を開放。亜人に対しての差別を禁止し、人権を全ての領民に保証。拷問や奴隷売買の禁止等の法整備を条件に日英は我らの領地経営そのものには関与せず、特権を認め不可侵条約を締結する。これでよろしいですな?」
ローデシア連邦諸侯の代表がMI6の職員に内容を確認する。
「無論です。此方は我がグレートブリテン及び北アイルランド連合王国国王からのローデシア連邦国王就任並びに臣下として認める書状、此方は首相から先程の合意内容を認めた書状です」
「・・・・・確かに受け取りましたぞ」
ロウリア王国により門前払いされていた日英両国。日本は素直に引き下がったのに対して、イギリスは国内の不穏分子に反乱の機会を与えていた。南西地域の諸侯らがロウリア一族に対して強い不満を抱いていることに気付いた英国政府はMI6を通じて調略を実施。先遣隊が壊滅した報せを受けローデシア連邦は遂に蜂起したのである。
「しかし、本当に宜しかったのですか?」
「良いのだ。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国はロウリア王国に宣戦布告している。更に明日までにローデシア連邦に参加しない諸侯は皆、ロウリア王国敗戦と共に土地、資産、地位全てを召し上げるとある。そなたも見たであろう。列強パーパルディア皇国のマスケット銃とは比べ物にならない程連射出来る銃を」
旧ローデシア連邦諸侯に接触していたイギリスはロウリア王国とは圧倒的差があることを見せ付ける為、特殊部隊を派遣。諸侯の精鋭との模擬戦を行い、実力で国力を認めさせていた。課題と考えられていた亜人に対する差別意識は幸運にもローデシア連邦諸侯の間にはなく、むしろジンハークにいられなくなった亜人を積極的に匿い、自身の領地経営に活用していた。
「確かにアサルトライフルと申す兵器は恐ろしい。あれをイギリスは全ての歩兵が持っているのですから・・・」
「人権や平等、拷問や奴隷の禁止等課題はあるが、我らはロウリア一族は違う。必ずや異なる価値観を克服出来るであろう。むしろ出来ないと次に潰されるのは我々だ」
ジンハークに向けてローデシア連邦諸侯軍は進軍を続ける。道中ロウリア一族に与する諸侯を滅ぼし、逃げた兵がジンハークに逃れる。逃れた兵により民の間にも不安が広がる。
「シャークンよ・・・・最早そなただけが頼りだ・・・」
南西の諸侯に離反され、ロウリア側に残った諸侯は確実に制圧されていく。一部ではイギリスの特殊部隊がローデシア連邦軍に援軍として参戦しているとの情報もある。一連の報告を受けた大王は力なく玉座にへたりこんだ。
「・・・・・もし海軍も敗れた際は・・・・」
大王は侍従長をよび、もし海軍が敗北した場合に備え、ある指示を出した。それを聞いた侍従長は耳を疑ったが大王の顔を見て嘘偽りはないと悟った。
「・・・・陛下、本当によろしいのですか?」
「ああ。全ては余の責任だ。そなたを始め、臣下の者には罪はない。皆は余の欲望のために従わされていたことにすればよい。咎を負うべきは余と余の父だけだ」
「・・・・かしこまりました」
クワ・トイネ公国マイハーク海軍基地
日英連合艦隊旗艦空母プリンス・オブ・ウェールズ
「哨戒中の哨戒機より入電! 敵の大船団を発見したとのこと!!」
「よし! 全艦出撃!!」
マイハーク海軍基地に停泊していた日英連合艦隊は次々に出港する。見送る音楽隊の手により某宇宙戦艦のオープニングBGMが流され、基地のクワ・トイネ公国海軍兵士が総出で手を振る。日英連合艦隊は補給艦と海上保安庁の巡視船4隻を残し、全艦出撃。洋上で陣形を整え、此方に向かってくるロウリア王国の大船団に立ち向かう。その内、護衛艦いずもにはクワ・トイネとクイラの観戦武官が同乗している。そして翌日、遂に海軍同士の武力衝突が始まるのである。
(続く)