日英同盟召喚   作:東海鯰

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新型機

日本国東京都福生市

航空自衛隊・在日英軍横田基地正門前

 

「異世界侵略を企てる英日政府を断固として許してはなりません!! 我々、平和を愛する市民の力で、帝国主義、軍国主義の象徴であり、平和を破壊する横田基地を即時閉鎖させようではありませんか!!」

 

第零航空団の発足を控えている航空自衛隊・英国王立空軍横田基地。基地の前では、それを阻止しようとする左派勢力が集まっていた。彼等はヘルメットと丸太で武装しており、拡声器を持つ男性が集まった支持者らに自らの主張を訴えていた。

 

「異世界転移後、英日政府は話し合いによる平和的な解決を放棄し、気に食わない国に対して、鉛の雨を降らせた!! 皆さん!! コレは明らかに帝国主義そのものではありませんか!!」

「「そうだそうだ!!」」

「更に英国政府はパーパルディア皇国を挑発し、無用な戦争を引き起こした!! 彼の国が殲滅戦を表明する大義を与えた!! 違うか!? そして日本政府はそんな英国政府に追随し、パーパルディア皇国を挑発した!! こんな帝国主義を放置してよいのか!!」

 

演説は更に続く。

 

「新たに発足した高市内閣は軍備増強路線を推進し、この福生市に騒音の塊であるステルス戦闘機を配備する予定であると!! 市民の暮らしを何だと思っているのでしょうか!? そんな物に使うお金はあるのに、消費税は下げない!! 年金は減らす!! 医療費の自己負担3割化!! OTC類似薬の保険適用除外!! ふざけていますよね!!」

「そうだ!!」

「自由国民党と日本刷新の会の連立政権は速やかに退陣だ!!」

「自由国民党と日本刷新の会による悪夢の連立政権!! 石葉内閣が退陣し、ようやく日本が憲法9条に基づいた平和国家への道筋を期待した大多数の市民に対して、公正党は長年の過ちを認めたのに対して、日本刷新の会は軍国主義への道へアクセルを踏んだ!! 皆さん、絶対に許せませんよね!!」

 

横田基地の前には、立憲国民党、公正党、日本コミンテルン党、社国党、令和新徴組、そしてそれらの傘下の労働組合や宗教団体、極左暴力集団に加え、IRAやリーム王国解放戦線、パーパルディア皇国独立党等、反英集団が多数参加。彼等は横田基地を包囲する形で展開しており、総勢15000は下らない数が集まっていた。

 

「・・・・・・これはマズイかもな・・・・」

 

基地周辺でデモ隊の監視にあたる警察官らはそう呟いた。

 

「一部ではありますが、明らかに武装している集団もいます。何かの拍子で基地に突入するかもしれない」

「しかし、こんな事をしてはスパイ防止法での摘発は避けられないだろうに・・・・」

 

異世界転移後、日本ではイギリスからの要請もあり、スパイ防止法の制定を進めていた。石葉内閣の間には実現出来なかったものの、道筋は付けており、引き継いだ高市内閣は連立与党である日本刷新の会と共に法案を提出。党内の左派勢力や公正党との選挙協力が無ければ勝てない議員らの妨害があり、一度は否決された。しかし、否決後に高市沙苗総理は連立与党である日本刷新の会の吉町代表、富士田共同代表と会談。そこで解散総選挙を決定した。実は高市沙苗は、石葉内閣崩壊後に行われた自由国民党総裁選出馬を表明した頃から日本刷新の会に対して、自由国民党内の反乱分子の選挙区への候補者擁立と引き換えに、反乱分子への非公認と、日本刷新の会の候補者への選挙協力を持ちかけていたのである。また、同時に公正党に譲って来た選挙区は原則日本刷新の会に譲り、自由国民党側は候補者を出さずに、日本刷新の会の候補者を推薦する等、秘密裏に選挙区の住み分け作業を実施。日本刷新の会は見返りとして、総理大臣指名選挙では「高市沙苗」と書く、と。こうして発足した第一次高市沙苗内閣では、日本刷新の会からは富士田文丈共同代表が総務大臣、浦野康人衆院議員が環境大臣として入閣。その他副大臣や政務官として日本刷新の会から多数の議員が入閣した。その後行われた解散総選挙では、高市旋風が吹き荒れ、自由国民党は単独過半数を回復、日本刷新の会は大阪、兵庫、京都で大勝した他、大分3区を始めとした反乱分子の選挙区でも勝利、連立政権から去った公正党は広島3区で代表の齊藤鉄男が落選。比例区もたった6議席と言う大惨敗を喫した。他野党は国民党はやや議席を伸ばし、政参党は議席自体は増やしたものの、伸び悩んだ末に解党して消滅。立憲国民党、日本コミンテルン党は大幅に議席を減らし、社国党は一議席も得られなかった。

 

「明日にも採決だろう? 遡及立法の観点から今日の行動では裁けねえだろうけど、直に豚箱送りだろうな」

 

基地周辺で警戒にあたる警視庁は万が一に備え、正門前にバスを並べてデモ隊が直接基地に入れないように遮断。同時に自衛隊とイギリス軍に対しては、裏口からの出入りを要請。更に自衛隊とイギリス軍も万が一に備えて装甲車や戦車にエンジンを入れ、警戒している。

 

「・・・・お、おい!! あれ!!」

 

警戒にあたっていた警察官の1人が指をさす。次の瞬間、

 

パアアアン!!

 

「あの馬鹿!! マジで撃ちやがった!!」

「緊急事態発生!! デモ隊の中に銃器で武装した集団がいる模様!!」

「どうすんだよ!? こちとらリボルバー銃しかねえんだぞ!!」

「基地の中に退避だー!! 総員退避ー!! 自衛隊とイギリス軍に救援を要請しろ!!」

 

急な銃器使用。テロ攻撃を想定していなかった警視庁はただ基地の中へ逃げ込む事しか出来なかった。

 

「Ó a Dhia... níl póilíní na Seapáine chomh maith sin ach an oiread.(やれやれ・・・日本の警察も大したことはないな)」

「Dóibh siúd againn a throid i gcoinne ionróirí na Breataine, is cosúil le casadh lámh linbh é seo.(イギリスの侵略者共と戦ってきた我々からすれば、赤子の手をひねるようなものよ)」

 

デモ隊の中に銃器を密輸した者がいた。IRA残党員である。先の神聖ミリシアル帝国戦にて北アイルランドの独立を掲げ、イギリス軍の背後を突くべく武装蜂起した彼等だが、即座に鎮圧。殆どの戦闘員が逮捕・拘束の後に大逆罪にて起訴。異世界転移後に、イギリスでは死刑制度が復活しており、彼等は近い内に絞首刑に処される見込みである。その結果、僅かな残党員が日本やクワ・トイネ公国へと逃亡。北アイルランドに潜伏している残党員は連日警察やイギリス軍に拘束されている。今回、日本国内で活動しているのはそのIRA残党員の中でも更に過激的な集団、誠のIRA、通称北アイルランド独立戦線である。本国を追われた彼等は、日本の左派勢力と手を組む事で地下に潜り、武装蜂起の機会を伺っていた。立憲国民党や日本コミンテルン党の幹部らに働きかけ、イギリスは北アイルランドにおいて、アイルランド人を迫害し、民族浄化を行なっていると日本国内で宣伝させた。日本の国会においても、政府に対してイギリスは北アイルランドにてジェノサイドを行なっていると主張させ、悪逆非道の大英帝国とそれに従属する日本という構図を広めさせようと試みた。しかし、その主張は極一部の人間にしかささらず、大多数の人間からは無視されていた。やがて、高市内閣が一度は否決されたスパイ防止法を再度国会に提出するとの報道が流された。いよいよ逃げ場はないと悟った北アイルランド独立戦線の戦闘員らは、東京都内におけるイギリス軍の一大拠点、横田基地への襲撃を立案。決行日は反日反英デモと同じ日とし、デモ隊に紛れた戦闘員が基地を襲撃し、別働隊はイギリス大使館を襲撃することとしていた。

 

「Anois an t-am, a laochra Shinn Féin!! Tabhair ceartas ar na gadaithe olca sa Bhreatain!!(今こそシン・フェインの戦士達よ!! 悪逆非道のブリテン島の賊に裁きを下すのだ!!)」

 

警官隊が基地内に逃げ込んだ隙をついてIRAは規制線を破り、基地内に向けて突入を開始。他のデモ隊も彼等に続く形で突入していく。特にヘルメットと丸太で武装した集団は目が血走っていたという。他のデモ隊も群衆心理が働き、次々へと基地内へ雪崩込み始める。

 

 

東京都千代田区

駐日英国大使館前

 

「まさか本当に内乱が起きるなんてな!!」

 

英国大使館前では、武装蜂起したIRAと大使館防護の為に事前展開していた陸上自衛隊と警視庁の合同部隊による銃撃戦が展開されていた。

 

「こっちの装備じゃまるで歯が立たねえな!!」

 

ドーン!!

 

「クソッタレ!!」

「バリケード代わりのバスがやられたか!!」

 

銃撃戦が始まると、警視庁の部隊は劣勢を強いられる。自衛隊による治安出動はまだ発令されておらず、発令されるまでは警視庁が対応にあたる事になっていたからだ。当初警視庁は単独でIRAによるG事案に対処可能であると豪語していたが、イギリス政府から寄せられたIRAに関する情報を見るなり聞くなりすると白旗を掲げた。IRAは自動小銃に加え、対戦車ミサイルや対空ミサイルで武装しており、警視庁単独で対処した場合、SATをもってしても全滅するという結果が出たからである。しかし、IRAが行動を起こす前に治安出動を発令する訳にもいかず、防衛省と協議の結果、駐日英国大使館や横田基地、皇居の周辺で警視庁と自衛隊による合同訓練を実施し、訓練名目で自衛隊の部隊を展開する。事案が発生した場合は可及的速やかに治安出動を発令する、で決着がついた。また、日本政府は日英同盟に基づき、イギリス政府へ支援を要請。イギリス政府もIRAを根絶やしにする好機として、横田基地に陸軍部隊を投入。万が一に備えて駐日英国大使館内にも部隊を配置した。

 

「隊長! たった今、高市内閣総理大臣が治安出動を発令!! 大泉防衛大臣の命を受け、事前に展開していた自衛隊の部隊が行動を開始しました!!」

「同時にイギリス軍も行動を開始した模様!! 我々には予定通り撤退するように指示が出ています!!」

「よし!! 撤退だ!! 直ちに防衛線を下げろ!!」

 

事前の計画通りに撤退を開始。退く警視庁の部隊を追ってIRAが進んでくる。

 

「・・・・・・来たか」

 

撤退する警視庁の部隊とすれ違うように陸上自衛隊のパトリアAMV装甲車と89式装甲戦闘車、イギリス陸軍エイジャックス装甲戦闘車が次々と駐日英国大使館の敷地内より姿を現す。IRAにより破壊された警視庁の車両を押し退け、その銃口をテロリストへ向ける。

 

「総理より命令が下った。テロリストに慈悲を与えるな、との事だ!! 攻撃開始!!」

 

日英両国陸軍部隊はIRAに対して無慈悲な鉛の雨を降らせる。忽ちIRAの戦闘員らは一瞬にして肉片と化していく。

 

「Bhí siad ag ceilt feithicil armúrtha...argh!!(装甲車を隠していやがったか・・・・ぐああ!!)」

「Cé gur Seapánach é, tá sé ullmhaithe go han-mhaith!!(日本人の癖に用意周到な!!)」

 

機関砲を浴びせられたIRA戦闘員の一部は旧東ロウリア王国にて作られた旧ロシア製の対戦車ミサイルの劣化コピー品で応戦する。しかし・・・・

 

「Tá córas cosanta gníomhach feistithe air!! Mallacht air!!(アクティブ防護システムを搭載していやがったか!! 畜生!!)」

 

異世界転移後、日英両国は合同でイスラエルやドイツで開発されたアクティブ防護システムのブラックボックスを解析し、国産化に取り組んでいた。開発に成功した新型のアクティブ防護システムは「グローリー(栄光)」と名付けられ、G5各国の戦車や装甲車への搭載が進められている。

 

「各車前進!!」

 

IRAが怯んだ隙に日英軍が前進。正規兵並みの重装備で武装している彼等に対して、日英軍は慈悲を与えずに機関銃をお見舞いする。完全に抵抗する者がいなくなったところで警視庁の部隊が反転し、残党狩りと検挙を行う。駐日英国大使館前での戦闘では、日英側の死者はなし、警視庁の部隊に5名の負傷者を出した一方でIRA戦闘員は81名がその場で死亡し、18名が残党狩りの末に射殺、10名が警視庁に投降した。一方で横田基地では・・・

 

 

日本国東京都福生市

航空自衛隊・在日英軍横田基地

地下シェルター戦闘機格納庫

 

「IRAの残党としばき隊、更には日本赤軍に各種宗教団体が反日反英連合軍を結成。横田基地内部に不法侵入・・・・ね〜」

 

異世界転移後、横田基地では大規模な改修工事が推進されていた。その改修工事の一環として、核攻撃にも耐えられる地下シェルターを新設。地下シェルターは横田基地に勤務する全ての隊員や軍属を収容する事が可能なだけでなく、戦闘機やヘリコプターを格納し、仮に敵が弾道ミサイル攻撃を仕掛けてきたとしても、簡単には制空権を喪失しないようになっている。地下シェルターの戦闘機格納庫には、第零航空団に配属される隊員を始め、戦闘機やヘリコプターのパイロット、整備員が避難していた。

 

「G5各国の中で一番平和な日本で内乱・・・それも重火器で武装した連中か。面倒だな」

 

タブレットで地上の様子を確認しているウッチーとハイネ。横田基地には侵入者確認の為に無数の監視カメラが設置されており、必要に応じて画像を確認出来るようになっている。

 

「我々にも出番があるのでしょうか? 地上戦はもう懲り懲りですよ・・・・・」

「なんだラスティ? そんなに地上戦が苦手か? ニュー・ホンコン総督府でお前さんの嫁さんと一緒に戦ってたじゃねえか」

「まあ、そうですけど・・・・ただ、思い出すんですよ。敵地に不時着して、命からがら逃げた日の事を・・・」

「・・・・・あ〜、思い出した! 確かラスティが乗ってた紫電改2が敵の対空砲に撃ち落とされて、敵地に不時着した日だね〜あの日は大変だったよね〜」

 

 

在りし日のムー・グラ・バルカス帝国統治下レイフォル国境付近

 

「たまには紫電改も良いね〜」

「何時もはスツーカだからな。全く機動性が違う」

 

ウッチーは無線で隣を飛ぶオグリに話しかける。オグリも待ってましたと言わんばかりに返答する。

 

「ん? オレの背後を取った気でいるのか?」

 

グラ・バルカス帝国空軍仕様のアンタレス艦上戦闘機がオグリ機を背後から奇襲しようと試みる。

 

「紫電改2の性能を、このオレを舐めて貰っては困るな!!」

 

アンタレスを遥かに上回る上昇性能を見せつけ、一瞬にして逆に背後を取るオグリの紫電改2。

 

「・・・・・終わりだ!!」

 

オグリは慣れた手付きで20mm機関砲をアンタレスにお見舞いし撃墜。

 

「ひゅ〜、エースパイロットは狙われて大変だね〜」

「ウッチーに言われたくはないな」

 

この日も国境地帯では、ムー空軍とグラ・バルカス帝国空軍による空中戦が繰り広げられていた。ムー本土への侵攻を阻止する為、越境攻撃を仕掛けるムー側と、ムー本土侵攻への下準備の為、基地の設営作業を行なっているグラ・バルカス側による激戦の舞台となっていた。日英の空軍部隊は強力である一方で数が少なく、より脅威度の高い地域やオタハイト、マイカル防空に割り当てられており、数の上ではムー海軍・空軍の紫電改2やJu-88スツーカ2が主力であった。ムー空軍は数でグラ・バルカス空軍に劣る一方で、性能では圧倒しており、必要に応じて日英の空軍部隊の支援が受けられる事から、基本的にはムー側が制空権を握っていた。しかし、グラ・バルカス帝国側は国境地帯に強固な要塞を築いており、制空権をとっても中々脅威を取り除く事は出来ないでいた。更に要塞には第二次世界大戦にて、久我山に配備されたものに酷似した高射砲が設置され始めており、ムー側も少なくない損害を出していたのである。

 

「アレが噂の対空砲か!!」

「生憎にも、オレ達の機体はスツーカじゃねえ。残念だが、撃たれる前に帰る・・・・ん?」

 

次の瞬間、対空砲が火を噴く。

 

「・・・・ああ、一機落とされたな」

「だが比較的制御は出来てるな・・・・あれだと、ギリギリ敵地に不時着するが・・・」

 

二人の眼前には右翼を撃ち抜かれ、不時着するべく必死に機体を操縦するムー人パイロットの姿が映る。

 

「・・・・・・助けてやるか。ウッチー、上空直掩を頼む!!」

「はいは〜い。でも、敵地に着陸したら駄目だからね〜」

 

攻撃を完了し、ムー空軍司令部は部隊に撤退を指示。各機が順次離脱する中、オグリとウッチーは不時着した機体の方角へ進路を変更。

 

「此方、内機。我が方の紫電改2が敵地に不時着した。小栗機と共に救助に向かう」

 

ウッチーは本部に報告を行い、オグリと共に救助へと向かう。

 

 

「・・・・・いってえ・・・・」

 

対空砲に撃ち落とされた機体から一人の若い容姿端麗なオレンジ髪の男性が脱出する。

 

「・・・・・敵地か。だが、比較的味方の勢力圏に近い。救助は来るだろうな」

 

オレンジ髪の男性は周囲を確認する。幸い、周りにグラ・バルカス帝国軍の姿はないようだった。

 

「流石は我軍の最新鋭機だ。自動消火装置のお陰でエンジンからの出火は抑えられ、燃料タンクに引火しなかった・・・うっ!!」

 

命こそは助かったものの、不時着の衝撃で肋骨を骨折しており、痛みを覚える。上手く立てず、その場にしゃがみ込む。

 

「・・・・・・最悪の場合は・・・・」

 

オレンジ髪の男性は腰にさしている拳銃を手に取る。ムー空軍は自動拳銃にイギリスから輸入したSIG SAUER P226を採用しており、彼もそれを携行している。

 

「・・・・・・敵に見つかりませんように・・・・」

 

祈るように彼は機体の残骸に身を隠す。

 

「・・・・・・見つかってしまったか・・・・」

 

上空に一機のアンタレスが現れる。彼は機体の残骸に身を隠し、只管にアンタレスがいなくなることを祈る。アンタレスは只管にその場を旋回している。恐らくは地上の様子を本部に報告しているのだろう。

 

「・・・・・・どうする・・・・このままじゃ、敵に捕虜にされてしまう・・・・」

 

彼は最悪の事態を想定する。同時に拳銃での自決を視野に入れ始める。

 

「・・・・・・・この音は?」

 

彼は此方に近付くエンジン音に気付く。

 

「・・・・・・これは・・・・紫電改2!!」

 

直後、味方の紫電改2がアンタレスを撃墜する。火達磨と化したアンタレスはバラバラになって地上へと落ちていく。

 

「・・・・はっ! 味方に見つけて貰わないと!!」

 

機体の残骸から飛び出した彼は上空を旋回する、2機の紫電改2に手を振る。

 

「・・・・なんとか味方に見つけて貰えたか・・・暫くしたら陸路で救助隊が来るな・・・・ん?」

 

彼は異変に気付いた。明らかに一機が高度を下げ、此方に向かって来ていたからである。

 

「・・・・・キャ、キャノピーが開いてる? え? マジで此方に来てないか?!」

 

やがて一機は地面スレスレを滑空し始める。

 

「お、女?!」

 

彼の目には女性パイロットが操縦する紫電改2の姿が映る。

 

「手を伸ばせ! お前を乗せたら上昇する!!」

「・・・・・は、はい!!」

 

彼は必死に手を伸ばし、味方の紫電改2の女性パイロットの手を掴む。

 

「おらあああ!!」

「うわああ!!」

 

強引に引っ張られた彼は無理やり機内に乗せられた。本来は1人乗りの紫電改2の機内はかなり窮屈になる。

 

「キャノピーを閉めろ!! 上昇する!!」

「は、はい!!」

 

彼は言われるがままにキャノピーを閉める。

 

「窮屈だが、少し我慢しろよ!!」

 

味方の紫電改2が上空直掩を行う中、速やかに上昇。途中、偶然にも哨戒飛行中であったアンタレスと遭遇するも、これを難なく撃墜。エヌビア空軍基地へと向けて移動を開始した。

 

「・・・・・お前、綺麗な顔だな。どこかの貴族の息子か?」

「へ?」

 

唐突に話しかけられた彼は気の抜けた返事をする。

 

「何者かを聞いている。答えろ」

「・・・え〜と、俺はムー空軍エヌビア空軍基地所属の戦闘機乗り、ラスティ・マッキンリー少尉です。皆からはラスティと呼ばれています」

「マッキンリー・・・・・ムー貴族院議長、ジェレミー・マッキンリー議長の知り合いか?」

「知り合いも何も、息子です・・・・次男ですけど・・・」

「そうか。オレは小栗闘子だ。皆からはオグリと呼ばれている。因みにあっちの機体は内闘也、ウッチーが操縦している。アイツはオレの双子の弟だ」

「・・・・・オグリに、ウッチー・・・・ええ!? に、に、日本のエースパイロットじゃないですか!?」

 

オグリはチラッとラスティの顔を見る。ラスティの顔を見て、オグリは一瞬だけ顔を赤らめる。

 

「ラスティ・・・・気に入った。明日からお前はオレとウッチーの傍にいる事を認めてやる。まずはケガを治しやがれ」

「・・・・・ええ!?」

 

 

「あれ以降、ラスティは俺とオグリの傍に控えることになったんだよね〜」

「感動的な出会いじゃねえか。ていうか、命からがら逃げてはいねえじゃねえか。まあ、見つからないか不安だっただろうがな」

「まあ、小栗さんとの出会いはそこからでしたから、ある意味運命の出会いですけど・・・・」

「そんな事より、俺達の戦闘機でも詳しく見てみない? 地上の事は地上の皆さんに任せてさ」

 

ウッチー、ハイネ、ラスティは格納庫に駐機している最新鋭のステルス戦闘機に歩いて向かう。

 

「これが最新鋭のステルス戦闘機F-37か。F-35がベースになっていながら、どこかF-22を彷彿とさせるね〜」

 

最新鋭ステルス戦闘機F-37。航空自衛隊では、老朽化が進んでいたF-4EJ改やF-15Jの前期型の置き換えとしてF-35を147機導入する予定であり、F-4EJ改の置き換えは完了していた。そして徐々に追加のF-35の導入が始まった矢先、日本は異世界転移に巻き込まれてしまう。生産国アメリカとの連絡が完全に途絶してしまい、追加のF-35の導入が困難になってしまう。それだけでなく、既存のF-35の整備にも苦労する事になった。また日本だけでなく、F-35を導入、または予定していたイギリス、カナダ、オーストラリアも同様であった。重整備については、日豪が連携して現在各国が保有しているF-35の稼働率を維持する事に決まったものの、アメリカ無くして各国が求める数を確保する事は出来ないのは明らかであった。日本のF-15JやカナダのCF-18については、ドイツ、イタリア、スペインが担っていた部位の製造を新たに日本、カナダ、オーストラリアが担当する形でイギリスからユーロファイタータイフーンを導入する事で穴埋めをする事に決定したものの、航空自衛隊の後期型のF-15Jやオーストラリア空軍のF/A-18F並びにEA-18Gの代替機の確保が課題となった。ユーロファイタータイフーンの追加配備が検討されたものの、基本設計が古い事、また古の魔法帝国という潜在的な脅威が存在しており、自前のステルス戦闘機を開発・配備・運用する必要があった事から、日英加豪共同開発という形でプロジェクトが始動した。F -22を上回る最強の戦闘機を開発する事を最重要目標とし、日夜各国の技術者らが開発に邁進。潤沢過ぎる予算が惜しみなく投じられ、更に運悪く異世界転移に巻き込まれてしまったアメリカ空軍のF-22ラプター1機が嘉手納基地に取り残されており、容赦なくブラックボックスを開封。そこから得られた技術情報も活用された。更にHENTAIの高い技術力と紅茶野郎のイカれた発想が容赦なく注ぎ込まれ、遂に小牧にて試験機が完成した。

 

F-37A(航空自衛隊・英国王立空軍仕様)

乗員∶1名

全長∶51.5ft

全幅∶35.0ft

全高∶15.0ft

翼面積∶470ft2

空虚重量∶29300lbs

機内燃料重量∶18500lbs

ペイロード∶19000lbs

最大上昇可能高度∶19500m

最大離陸重量∶80000lbs

エンジン∶F137-PW-100(ロールスロイス社製)

最大速度∶M3.0(試験飛行ではM3.9を記録)

航続距離∶1500n.mile

戦闘行動半径∶750n.mile

荷重制限∶+10.0G

固定武装∶25mmガトリング砲

その他武装∶各種ミサイル及び爆弾

特徴的要素∶搭乗員の酸素マスク不要、湯沸かし器(紅茶専用)搭載

 

「アフターバーナー中に紅茶でも飲む気かな〜?」

「最高にイカれてんな」

「F-37はお陰様でコストが上がり過ぎてヤバいらしいんですが・・・」

 

後に日英はF-37を100機購入する計画を両国の財務省に提出。しかし、

 

「1機辺りF-35の3倍ってなんだよ!? ふざけてんのか!! それと紅茶専用湯沸かし器なんか絶対にいらねえだろ!! 無駄な仕様を省いてコストを削減して来やがれ!!」

 

とマジレスされてしまい、ぐうの音も出なかった関係者は已む無くF-37のダウングレードを開始。F-37/Dの開発を開始。過剰過ぎる性能を落とし、コストをF-35の約1.3倍に抑える事に成功。既に生産を開始してしまった初期型の30機については、日英のエースパイロット専用機として配備される事になるのである。

 

「ところで地上は大丈夫なんですかね?」

「こんな事もあろうかと、日英の狙撃手を各所に配置し、デモ隊のやべー奴だけ射殺する手筈だと誰かが言ってたな」

「まあ、基地に不法侵入した奴の末路なんか気にしても仕方ねえだろ?」

 

※地上では日英の狙撃手にIRA戦闘員やしばき隊、日本赤軍等の構成員が射殺。脅威を排除した後に警視庁、自衛隊、イギリス軍によりデモ隊は基地から追い出され、悪質者はその場で逮捕されした。

 

「ラスティのF-37のエンブレムはオグリのエンブレムを組み合わせたものか。奥さんの意思を引き継いでて良い感じだぜ!」

「オグリにも操縦して欲しかったな〜」

「俺もそう思いますよ」

 

(続く)

 

 

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