日英同盟召喚   作:東海鯰

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国連軍首脳部の悩み

クルセイリース大聖王国

聖都セイダー テンジー城

 

聖王国大方針会議

 

国の大きな舵取りを行う時に行われるクルセイリース大聖王国の重要な会議である。聖王子ヤリスラはまだ5歳であるため、母である聖母ラミスも出席していた。

 

○聖王女ニース

 

○軍王ミネート

 

○外務郷サトシル

 

○総務郷ワイデス

 

その他国の重鎮達がテーブルにつき、後ろに部下達が並んだ。

 

「これを見ていただきたい」

 

各人の前に置かれた石盤に魔力が注入され、淡い青に輝く文字が浮かび上がる。

 

「つっ!!」

 

軍王ミネートによる北西新世界への侵攻計画だった。無論、考えたのは影の権力者たるイブリース大元帥である。

 

「説明いたします。技術革新によって、飛空艦の航続距離が伸びていることはご存じかと思います。これにより、本土から北西方の属領タルクリスへの飛空艦隊の派遣が可能となりました。同タルクリスの空王基地建設がまもなく完了いたします。今まで強力な海流により、到達することが出来なかった北西新世界へ強力な軍を送り届ける事が可能になります。既に一時接触は成功し、記載のとおりシルカーク王国なる国を正式に確認、同国の軍事力は弱く、我が飛空艦隊を派遣すれば鎧袖一触、すぐに攻め落とせるでしょう」

 

都合の悪いソロモン諸島侵攻艦隊並びにニュージーランド侵攻艦隊の話はなかった事にされる。軍王ミネートが、具体的侵攻計画の説明をしようとした時。

 

「お待ちください!!」

 

聖王女ニースが割って入った。

 

「北西新世界には強力な国家の共同体が存在します。仮にシルカーク王国が弱かったとしても、1国のみで図るべきではありません。私は北西世界の盟主、日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国に調査団を派遣し、強大な軍事力と技術力を確認しています。この件はすでにここにいる方々もご存じと思われます。広大な領域が広がる北西新世界に軍を送る事は危険です。

貿易によって国を富ませる方法を模索すべきです」

 

王女は日本国と大英帝国を見てきている。このまま戦争に突入すれば、国が滅びる。必死だった。

 

「ニース様、失礼ながら、ニース様の派遣した者達は幻惑魔法にかけられた可能性が多大にあります。まず、シルカーク王国と接触した際、国籍不明の国が、我が国で300年前に使用していた程度の大きさと速度を有する軍用飛空艦を運用していた事を確認しています。これには主立った武装も無く、空の機動力は取るに足りない、輸送用程度にしか使えない艦です。シルカーク王国との接触時も、迎撃にはワイバーンが上がってきております。仮に日本なり、大英帝国なる国がシルカーク王国へ駐留支配していたとして、国籍不明の航空戦力が来た際、自らの航空戦力を使用せずにワイバーンをけしかけるでしょうか?」

 

彼は続ける。

 

「軍用機を運用している場合、当然基地があると考えるのが自然であり、同基地を脅かす航空戦力が来た際に、ワイバーンをけしかける。その時点で航空戦力は取るに足りない事を証明しています。それに・・・・数年前の漂流者からの記録によれば、新世界の東部に位置する部分は第3文明圏と呼ばれ、同地域は世界の5大列強国の一つ、パーパルディア皇国が多大な影響力を持つ。 ニース様の派遣した者達の記録による日本国なる国家の位置は、そもそも群島で原始的な生活をする原住民が住んでいたとのこと。たったの数年で強力な国が出来、それが同地域を支配する列強国を超える存在になる。それこそ現実的ではなく、幻惑魔法にかけられていたと考えるのが自然です。そもそも、日本国なる国が本当に存在するのかも怪しい」

 

場が静まる。ちなみにイブリース大元帥は日本やイギリスがクルセイリース大聖王国を遥かに凌駕する軍事力を有している事を知っており、大いなる野望の為に動いている。ミネート軍王は単なる操り人形に過ぎない。

 

「第3文明圏と呼ばれる地域に、パーパルディア皇国なる列強国が居座り続ける事が出来たという事は、この国は他の文明圏からの侵攻を退ける力を持っているという事になります。 そして我が国の飛空艦隊はこのパーパルディア皇国を圧倒する力を持ちます。北西新世界の開拓は我が国のさらなる繁栄を約束し、我らが名は英雄として歴史書に大きく記される事となるでしょう」

「しかし、幻惑魔法などではなく、本当に日本国が圧倒的な力を有していたならば、我が国は亡国の道をたどります。さらなる調査団を派遣し、真実が判明した後でも遅くは無いのではないでしょうか?」

 

聖王女ニースは必死で食い下がる。自分の目で見てきた物は、確かなものであった。幻惑魔法の類いでは決して無い。王家の者として、臣民を守る義務がある。決して引くわけにはいかない。

 

「王女様、その後では遅いのです。シルカーク王国は確かに弱い。しかし、弱者なりに国を滅ぼされないために考え得るあらゆる対策を行う事でしょう。この地の列強パーパルディア皇国に軍事支援を申し出る可能性もあります。時間がかかればその分敵は強化されます。我が方も強化すれば良いのですが、予算も多くかかりますし、何より兵の死者が増えるのです。優位性は確保出来ても、人が死なぬ戦争など存在しません」

 

有無を言わせぬ正論に王女は黙る。無論、全ての正論は黒幕たるイブリース大元帥の書いた筋書き通りである。そうとは知らないミネートは、たたみかけた。

 

「それに、万が一、いや億が一、作戦が失敗して日本国やパーパルディア皇国が、我が国に攻め入って来たとしても、絶対に負ける事は無いのです。軍は先日、黒月族の遺産、しかも神話級古代兵器を発見いたしました」

 

場がざわつく。総務郷が興奮してミネートに尋ねた。

 

「ミネート殿、神話級古代兵器とはいったい?」

 

一時の沈黙。ミネートはニヤリと笑って話し出す。

 

「黒月族の対魔帝決戦兵器、キル・ラヴァーナルです。しかも残存魔力は最大で、兵器が100%可動出来る事も確認されています」

『オオォォォォォ!!!!』

 

ムードは一気に戦争開始に傾く。

 

「キル・ラヴァーナルか。圧倒的なる神話の遺産。負けん・・・・負けるはずが無いっ!!」

 

総務郷は目を輝かせた。

 

「私も見つけた時は震えが来ました。クルセイリース大聖王国は、現代においても神の祝福を受けているとしか思えません」

 

ミネートの発言で、場が盛り上がる。彼は誰にも聞こえぬ小声でつぶやいた。

 

『それに「・・・黒月族と我が国の技術融合と、伝説の国宝、古代アーティファクトを組み合わせた超魔法があれば、仮にラヴァーナルが攻めてきたとしても、1回であれば、必ず艦隊を消滅させる事が出来る・・・・とイブリース大元帥は仰られた』

 

ミネートは絶対の自信をもって宣言する。

 

「この戦いは決して負けません。クルセイリース大聖王国は更なる栄華を極め、1000年以上に渡って繁栄し続ける事となるでしょう。皆さん、異論はありませんな?」

「我が国の更なる繁栄が約束されているのに、異論などあるはずが無い!!!」

 

総務郷のワイデスが賛成する。

 

「全く、ミネート殿の手腕は素晴らしい」

 

外務郷サトシルも満足して頷く。

 

「ま・・・・待ってください!!!」

 

このままでは亡国の道をたどる。聖王女ニースは立ち上がる。日本国や大英帝国の国力を知る者として、愛する国が滅びへ向かう事を見過せない。

 

「日本国並びに大英帝国の国力は規格外です。このままでは取り返しのつかない事になります。仮に、相手に時間を与えたとしても、攻め難くなったとしても、日本国や大英帝国の国力を確認してから事を運ぶべきです!!」

 

ニースは食い下がった。しかし・・・・

 

「ニースさん!!!」

 

聖母ラミスはニースを睨みつける。

 

「軍王ミネートは、事前に新世界漂流者からの調査により、日本国や大英帝国などと言う国の影響力は新世界には無いとの調査結果が出ている。新興国とするならば、短期間にそこまで国力を上げることは出来ない。それは理解出来ますね?」

 

聖母ラミスはニースに問う。

 

「・・・・・はい」

「で、あるならばシルカーク王国の発言は、強力な後ろ盾があるように見せようとする小国の足掻きです。そして、これ以上調査期間を長引かせ、敵の戦力が上がると我が国の兵の被害が大きくなる。これも解りますね?」

「・・・・・はい」

「あなたの調査団は幻惑魔法にかけられた可能性が高い。もしも貴女の意見を取り入れ、その結果我が国の兵の被害が増大し、死ぬことになった者達の家族、妻や子供に貴女は何と説明するつもりですか!? 国民の命は単に数字で表すべきものではありません。1つ1つが意思を持ち、家族を持っているのです!! 貴女の意見は不幸の増大にしかなりません!!!」

「しかしっ!!!」

「くどいっ!!!」

 

聖母の一括に、場が静まった。

 

「軍王ミネートの今までの数々の実績は、今更言うまでもありません。ミネートには絶対の信頼を置いています。私は今回の新世界への侵・・・・開拓に賛成いたします。聖王子様もよろしいですか?」

「はい、母様」

 

会議は難航したが、暫定的に実権を握る5歳の聖王子ヤリスラの決定により、クルセイリース大聖王国は北西新世界への侵攻を決定、文明圏外国家シルカーク王国へ軍を派遣する事となった。

 

 

同時刻シルカーク王国王都タカク

イギリス大使館大使執務室

 

「・・・・・・クルセイリース、終わったわね」

 

かつてはカーレッジ大使が使用していた執務室は今や国連軍副司令官の私室となっていた。そんな部屋でカルトアルパス総督であり、世界的に有名な外交官ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンを兄に持ち、自身はニュー・ホンコン総督を勤める陸軍軍人、アオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン准将はそう呟いた。国連軍副司令官を拝命した彼女は、MI6がクルセイリース大聖王国の政治の中枢テンジー城に仕掛けた盗聴器を用いて会議の様子を全て聞いていたのである。

 

「既に我が大英帝国の諜報網はクルセイリース一帯にネットワークを構築している。職員の派遣、現地人の調略、そして・・・」

 

アオイはある資料を手に取る。そこには大英帝国に協力するとある国の諜報部隊隊員の個人情報を纏めた資料があった。

 

「サナダ公国。四方をパーパルディア皇国、メスマン帝国、イキスギ帝国に囲まれた山岳地帯に位置する小国。今回の国連軍結成においては、正規軍の派遣を行わない代わりに、サナダ御自慢のスパイ集団を派遣・・・・むしろ他国の正規軍の何百倍も心強いわね」

 

「サナダ公国」

 

かつては中小国が乱立していたフィルアデス大陸。しかしやがて第三文明圏として確立し始めると、小国は次々と征服、または臣従を余儀なくされ、国家が整理され始める。その結果、南はパーパルディア皇国、北西にはメスマン帝国、北東にはイキスギ帝国が地域大国としての地位を確立して行った。第三文明圏において圧倒的な技術力と国力を有するパーパルディア皇国が優勢ではあったが、不毛な砂漠地帯が広がるメスマン帝国は地の利を活かして逆襲した為、完全に屈服させるには至らず。またイキスギ帝国は自国内に豊富な金山や銀山を有し、これを活かして神聖ミリシアル帝国やムー国と強力なパイプを構築。両国の富裕層の資産の隠し先としての役割から、

 

「イキスギ帝国には手を出すな」

 

と、無言の圧力がパーパルディア皇国にかけられる。これには流石のパーパルディア皇国も逆らえず、パーパルディア皇国とイキスギ帝国は不可侵条約を締結し、両国軍による軍事衝突は避けられた。またメスマン帝国はパーパルディア皇国とイキスギ帝国による挟撃を避けるため、姫を嫁がせる等して縁戚関係を持ち、両国で戦争する事を回避していた。そんな複雑な事情が絡む三国に四方を囲まれた山岳地帯。そこには国とも言えない小勢力が多数存在する国衆の集まりがあった。その中の一つがサナダ氏であった。

 

「国衆の中で我が大英帝国に真っ先に臣従したサナダ氏を我が国は国家として承認。同時に大英帝国国王チャールズ三世に忠誠を誓う貴族としても認定した。今の当主は謀略に長けた将と聞いているが・・・」

「バイオレット准将!! 入ります!!」

 

ノックがされた後に伝令の将校が入室する。

 

「バイオレット准将、サナダ公国のマサユキ・サナダ殿が謁見を求めております」

「おお、そうか。早速会おう。応接室に通しておきなさい」

「ははっ!」

 

 

イギリス大使館応接室

 

「・・・・・・どうしたノブユキ? 緊張しているのか?」

 

サナダ公国当主マサユキ・サナダは隣に座る嫡男ノブユキに話し掛ける。日本の武士を彷彿とさせる髭を蓄え、髪は黒髪が基本であるが、ところどころ白髪が目立つ。また日英側からすれば時代錯誤な鎧を身に着け、刀を帯刀している。齢は45であるが、それよりも老けて見え、長年の所領争いや大国の間で翻弄されながら、所領や領民を守り抜いてきた苦労が伺える。

 

「はい。国連軍とやらに我がサナダ・・・・いえ我が国はたった100の兵しか派遣しておりませぬ。あまりにも少なすぎる兵に不満を持たれているのではないか・・・・またアオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン殿はパーパルディア皇国崩壊のきっかけを作ったハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンの妹君にございます。どのような無理難題を言われることか・・・」

 

まだ20にも満たない青年は率直な想いを口にする。

 

「ノブユキは真っすぐじゃのお・・・・」

 

そこにアオイの旧友にしてMI6職員のボタンが入室する。

 

「あ、あの・・・・も、もうすぐ・・・アオイが来る・・・」

「相分かった。ボタン殿、ご苦労でござる」

 

マサユキはボタンを労う。戦慣れした武将にボタンは一瞬たじろぐ。

 

「・・・・・あ、ありがとう・・・・ございます」

 

ボタンが退室し、再び応接室にはマサユキとノブユキの2人が残される。

 

「・・・・父上、何故にボタン殿に威嚇を?」

「威嚇? そんな事儂はしとらんぞ」

「いや、あれは明らかに父上を恐れた態度にございます。まだ若き女子に・・・・」

「うるさいわ!」

「待たせたな」

 

突然扉が開き、アオイが応接室に入室する。

 

「そなたがサナダ公国の主、マサユキ・サナダであるか?」

「如何にも」

「・・・・・ふむ、実に謀略に長けた武士のようだな」

「謀略とはほど遠い、その場しのぎにございまする」

 

互いに腹の探り合い。ノブユキはついて行けずに2人の顔を交互に見つめる。

 

「・・・・・流石は真田安房守の末裔だけあるわね」

 

サナダ公国。如何にも日本人にしか見えない名前を国名に付けているこの国だが、それもそう。サナダ公国の初代当主はかの有名な日ノ本一の兵、真田幸村なのである。

 

「我が兄、ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンは父上譲りの大の日本好きでね・・・・ケンブリッジ大学で知り合った日本人を通じて日本の歴史を詳しく調べ、時々私や弟カーレッジに語りかけてきた。その中に、真田幸村は豊臣秀頼を連れて大坂城を脱出し、薩摩に逃れたという伝説があって・・・・まさかかとは思ったけど、会ってみれば本当だと、信じるほかないわね」

「バイオレット准将の名の一つ、アオイが如何にも我々と似てるなあとは思っておりましたが、やはり」

「ええ。我が兄ハルトと私アオイ。二人合わせて青春、だそうよ」

「父君には、大変良い名前をつけていただけたようですなあ」

「ええ。この名には誇りを持っているわ」

 

一連の腹の探り合いの末、ようやくアオイが着席する。

 

「して、要件は何であるか?」

「ははっ。我が国の忍がある情報を掴みまして・・・それも緊急性の高い内容でして・・・」

「・・・・・そこまで申されるか・・・・して、内容は?」

「ノブユキ」

 

マサユキは嫡男ノブユキに用意した地図を示すように促す。その後マサユキが説明を開始する。

 

「敵の主力はタルクリスを経由し、ここシルカーク王国へ向かう事、陽動として一部の部隊はソロモン諸島とツバルに向かう。ここまでは確定した」

「うむ。我が国の諜報部と一致しているな。だが、他にも何かあるのだろう?」

「ええ。我が国の忍が、敵の秘密兵器に関する資料の回収に成功致しました」

 

サナダ公国の諜報部隊、通称サナダ忍軍。その能力の高さはイギリスが認める程であり、イギリスに次ぐ能力を持っていると高く評価されている。サナダ公国が非常に小さな国力の低い小国であるにも関わらず、大英帝国が重用しているのは、この優れた諜報部にあった。

 

「これが昨日届けられた、キル・ラヴァーナルなる、彼の国の秘密兵器の詳細にございます」

 

机の上にサナダ忍軍が手に入れた敵の秘密兵器に関する資料が並べられる。そこには、秘密兵器の外観を写した写真や盗み出したカタログスペックが記されていた。

 

「よくもこれだけの資料を盗み出せたものね。我が国も秘密兵器の存在自体は把握していたが、詳細を盗み出すまでには至らなかった。いや、手がまわらなかった。感謝するわ」

「感謝も何も、我が国は国連軍の一員として、最低限の働きをしたまでにございます。ちなみに派遣した忍は皆無事、貴国の原子力潜水艦にて脱出しております」

 

アオイはサナダ公国から提供されたクルセイリース大聖王国の秘密兵器キル・ラヴァナールについての資料に目を通す。

 

「キル・ラヴァナール」

全高 200m~300m

兵装 魔導砲 700門

操縦者が把握する魔法を行使可能

乗員 1名

 

「派遣した忍によれば、その姿は城に二本足がついた奇怪な見た目であり、全長は200~300mに及ぶ巨体である。移動は二本足による歩行で速度はかなり速いとのこと。最大の特徴として巨体にもかかわらず1人で操作することが可能。さらに起動時に脳内に直接運用方法が流れ込むことで事前知識がなくても戦闘をすることができる。また訓練中の様子から、日本国が有する3Dプリンターのような機能があり、必要に応じて形状を変化し、魔導砲等の武装を増設することが可能だと思われまする」

「実に奇妙な兵器だ。合理性の欠片もなければ、美しさの欠片もない。非常に醜い兵器だ。インド人が設計したに違いない」

「インド人? インドなる国は御座いませんが・・・」

 

真面目で真っすぐな性格なノブユキは聞き慣れない国に?という表情を浮かべる。

 

「・・・・・まあ、昔そういう国が存在したのだ。既にないがな。気にする程ではない。忘れよ」

「は、ははっ・・・・?」

「・・・・・やはり血には抗えぬか(私はハル兄の妹。ハル兄よりは失言が少ないと自負しているが、全くない訳では無い)」

「血・・・・ですか?」

「黙れ小童!! 話が進まんわ!!」

「も、申し訳ありませぬ」

「ははは! 何故か懐かしく思いますな」

 

無邪気に笑うマサユキと理不尽に怒鳴られるノブユキ。

 

「バイオレット准将、そなたはこの兵器はどう使われると予想致しまする?」

「・・・・・私が敵の司令官なら・・・・」

 

秘密兵器に模した駒を置くと、それをある方向へと動かした。

 

「・・・・・やはり、そう考えますか」

「ええ。敵はシルカーク、パラディオン、ソロモン、ツバル、ニュージーランド、オーストラリアの防衛網が固い事は理解しているでしょう。ならば、敵は守りが比較的手薄かつ近く、そして成功すれば効果的な場所を狙うでしょう。それがここ・・・・よ」

 

アオイは世界地図のとある場所に丸を付けた。そこにはそう記されていた。

 

CANADA OTTAWA

 

 

「直ちにカナダ政府に速報すると共に、国連軍の一部を振り向ける。サナダ公国は再度シルカーク王国本土へ諜報部隊を派遣するように。既に港には我が国の同盟国日本国の原子力潜水艦「やまと」が停泊している。本艦にて諜報部を派遣し、MI6とは緊密な連携の上で盗める限りの情報を送るように。以上だ」

「ははっ!! では、これにて!!」

 

報告が終わると、サナダ公国の一行はイギリス大使館を去っていく。

 

「さて、明日は国連軍の作戦会議。日本側はどんな作戦を立てるのか・・・まあ、既に緊急の指示は出しているのだがな」

 

アオイはオーストラリアの方角を見つめる。

 

「カナダ防衛は任せたわよ、フラッグファイター!!」

 

 

その日の夜

国連軍クルセイリース大聖王国海中封鎖艦隊

海上自衛隊原子力潜水艦「やまと」艦橋

 

「イギリス及びサナダ公国の方々の乗艦、完了致しました!!」

「うむ。本艦はこれより出港する。先導役の掃海艦「けらま」に続け」

 

日本発の原子力潜水艦「やまと」艦長の海江田次郎一等海佐は落ち着いた様子で指示を出す。国連軍に参加する各国艦艇が所狭しと停泊する港をゆっくりと進む。

 

「艦長、潜水艦なのに皆の視線を集めているみたいですな」

「全くだな」

 

新月の闇夜に紛れるように出港していく「やまと」に気付いた異世界国家の海軍艦艇乗組員は皆双眼鏡片手に本艦の事を凝視していた。

 

「掃海艦「けらま」より発光信号です。貴艦の任務完遂と無事の帰還を心から祈る、とのこと」

「丁寧に発光信号か。どうやら新型の掃海艦の艦長は相当礼儀正しい人のようだな」

「何か返信しますか?」

「してやりたいが、暇が無い。沖合に出た後、潜航する。潜航用意!!」

 

掃海艦「けらま」に先導され、安全に沖合まで進出した原子力潜水艦「やまと」は予定通り潜航し、海中に消えていった。この他、日本、イギリス、カナダ、オーストラリアの潜水艦と潜水艦救難母艦、補給艦、護衛のフリゲート艦が続々と出港。内訳は以下の通りである。

 

日本国海上自衛隊 

 

弾道ミサイル原子力潜水艦「やまと」

通常動力潜水艦「はくげい」、「じんげい」、「そうりゅう」、「うんりゅう」、「はくりゅう」、「とうりゅう」

潜水艦救難母艦「ちよだ」

 

 

王立英国海軍王国海軍

 

弾道ミサイル原子力潜水艦「ヴィクトリアス」

攻撃型原子力潜水艦「アスチュート」、「アキリーズ」

 

 

カナダ海軍

 

通常動力潜水艦「レインボー」(たいげい型潜水艦のカナダ海軍仕様・一番艦のみ日本で建造し、二番艦以降はカナダで建造予定)

フリゲート艦「ユーコン」、「アサバスカン」(もがみ型護衛艦のカナダ海軍仕様)

 

 

王立オーストラリア海軍

 

攻撃原子力潜水艦「アタック」(やまと型原子力潜水艦のオーストラリア海軍仕様・一番艦アタックのみ日本で建造し、二番艦以降はオーストラリアで建造予定)

フリゲート艦「ダッチェス」、「ホークスベリー」(改もがみ型護衛艦のオーストラリア海軍仕様・オーストラリア国内にて建造)

 

 

ニュージーランド海軍

補給艦「アオテアロア」

 

他∶ミカドアイHD所有の輸送用原子力潜水艦「カズタカ」

 

 

潜水艦部隊は途中までは潜水艦救難母艦や補給艦、護衛のフリゲート艦と作戦海域まで同行。作戦海域直前で最後の補給を実施し、クルセイリース大聖王国本土を包囲。通商破壊戦を展開し、補給線を寸断する。また、原子力潜水艦「やまと」は諜報員を上陸させ、スパイ活動を実施させる。ミカドアイHDの原子力潜水艦「カズタカ」は作戦海域内での展開中の各艦への補給を担う。

 

 

シルカーク王国日本大使館

空き部屋

 

「・・・・・・・う〜ン・・・・作戦としては申し分ないンだが、艦隊配列が良くねえンだよなあ・・・・」

 

国連軍の参謀長、アキラは一人日本大使館で作戦の立案を行っていた。

 

「アキラ、入るわよ」

「アキコか。何かあったンか?」

 

幾ら親友であるとは言え、外部の人間であるアキコに軍事機密を見せるわけには行かない為、立案中の作戦案を記した紙を裏返す。

 

「イギリス大使館から貴方宛に機密書類が届いたわ」

「・・・・・このタイミングでの機密書類か・・・・」

 

アキラはアキコから封がされた茶封筒を受けてる。

 

「じゃ、私はこれで。ヒロシが駄々を捏ねていて困っているってシンが言ってきてるから」

「やれやれ・・・国連軍最高司令官様がそんな態度か・・・・まあ、良いや。ありがとな」

 

アキコが退出したのを確認し、アキラは機密書類を閲覧する。そこにはサナダ公国が掴んだクルセイリース大聖王国の秘密兵器に関する資料があった。

 

「・・・・・なンだこれ? ビクザ◯? いや、まンまビ◯ザムだよな? これがカナダの首都オタワへ攻め込んでくる・・・・か。戦力の再配置を考えねえとなあ・・・・・」

 

若き海将補は頭をフル回転させ、最善手を考え続ける。

 

 

シルカーク王国日本大使館

食堂

 

「・・・・・俺は何のための司令官なんだ・・・・所詮はアキラなしじゃ何も出来ないポンコツ自衛官さ」

「そう不貞腐れても困るんだが・・・・」

 

この日の深夜の食堂には男が2人。初恋の相手を奪われた男と初恋の相手に拾われた男。相反する2人が対面しながらジュースを煽っていた(主にヒロシが)

 

「そりゃあ、初恋の相手に拾われて、常に一緒に暮らして、一緒の高校大学職業でゴールインして子供も産まれたお前には困るよな!! 何も獲られなかった俺なんか!!」

「落ち着け落ち着け。暴走してる」

 

大使館のジュースを全て飲み干す勢いで泣きながら飲むヒロシ。シンは宥めようとしているが、上手く行かず右往左往している。

 

「暴走しないでいられるかよ!! アキラは作戦を考えるからと部屋に引き籠もって出てこないし、ケントは原子力潜水艦「やまと」に乗艦して出撃しちゃったし、他人の女になったアキコに手を出すのは人として許されないし・・・」

「ちゃんと他人の女になったという自覚あったんだな」

「なあシン・・・・俺には何が足りないんだよ・・・・アキコの事は俺が先に好きだった。アキコも俺に好意を抱いていたし、お前が現れるまでは一番彼女に近い男だった」

「それに関しては否定出来ない。アキコ自身も認めてたし、少なからずアキコもヒロシに好意を抱いていたらしいしな」

「それなのに!!」

「うっせえ!! いい加減帰るか寝やがれこのポンコツ残念イケメン独身司令官!!」

「何だと!? アキコを俺から奪ったからって良い気になりやがって!!」

 

取っ組み合いの喧嘩を始めてしまうヒロシとシン。互いに好きな人は同じ、同い年、全く違う境遇、持つ者と持たざる者。親友であるからこそ、互いに相容れない物がある。

 

「僕はアキコを奪い取ったんじゃない!! アキコが僕を選んでくれたんだ!!」

「同じだ!! お前が来たから俺は全部喪った!!」

「アキコと出会うまで僕が如何に苦しんだか・・・わからねえ癖に!! 僕にとってアキコは女神なんだよ!!」

 

いい歳して子供みたいに取っ組み合いの喧嘩をする男2人。彼等は互いが好きな女性が般若の顔で無言の圧をかけていた事に気付かなかった。

 

「いい加減にしろクソガキ共がー!!」

「「ぎゃあああああ!!」」

 

※無事に制裁されました

 

「結局制裁したンか?」

「した。まあ、彼奴等からしたら御褒美みたいなもんでしょ」

「ははは! 違いねえな!!」

「あんたでさえ、私の従妹のアイと結婚したんだし、ヒロシもそろそろ私への未練を捨てて欲しいんだけどね・・・」

「まあ、俺もお前の事、結構好きだったぜ。だが、ヒロシみたいに恋愛感情は生まれなかったがな」

「良くも悪くも友達以上親友未満だからね。ヒロシの場合は親友以上恋人未満、シンの場合は内密の婚約者だから面倒なのだけど・・・・」

 

アキコとアキラはヒロシとシンが飲み残した瓶ジュースで酌を交わす。

 

「酒はないンか?」

「仕事に障るわよ?」

「違いねえな」

「作戦は立てられた?」

「無論だ。それも敵の出鼻を徹底的に挫く作戦をな。確か、近日中にクルセイリースの外交官が来るンだったな」

「ええ。まあ、第一陣がイギリスにより全員始末されたのを知らずにやって来るのだけどね」

「その第一陣、外交官のフリをしたスパイ集団だったンだけどな」

「じゃあ、予定調和ね。飲みなさい、甘党の元帥閣下」

「元帥か・・・・なれると良いなぁ・・・」

 

アキラに砂糖をたっぷり入れたオレンジジュースを手渡すアキコ。

 

「さて、外交官が来る前に貴方の作戦、見せてもらうわよ」

「ああ。度肝が抜かれるぜ? 既に攻撃命令をバイオレット准将こと、アオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン国連軍副司令官から出して貰った。今頃奴等は大慌てだぜ?」

「それは楽しみね」

 

一方、その頃クルセイリース大聖王国側では・・・・

 

 

クルセイリース大聖王国 属領 タルクリス

 

本国から北西方向約1000kmの位置に、四国の四分の一ほどの面積を持つ菱形の島、タルクリスがある。同島に新設された北西世界開拓用の総合基地セキトメイは、クルセイリース大聖王国の基地の中でも2番目に大きく、本土以外の基地としては1番大きい。

 

「美しい。実に美しい」

 

ある兵士はそう呟いた。基地を見渡すと、王国の誇る最新鋭の100門級魔導飛空戦艦ダルイアを始めとし、多くの飛空艦が見える。その数は100隻を超え、飛行場に入れなかった船は海上にも浮かんでいる。聖王国の北西世界開拓の圧倒的意思が伝わってくる。同基地において、シルカーク王国侵攻計画作戦会議が始まろうとしていた。自らの死が近づいている事を知らないまま・・・

 

(続く)

 

 

 

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