日英同盟召喚   作:東海鯰

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予定された決裂

翌朝シルカーク王国王都タカク

サルカ城国連軍作戦会議室

 

「いよいよ国連軍最高司令官としての重責を担う事になるのか・・・・」

 

シルカーク王国の首都タカクに聳え立つ立派な城、サルカ城内に設置された国連軍最高司令部。その一室である作戦会議室には、国連軍に参加する主要国の中の更に一握り高級将校達が集まりつつあった。彼らこそが国連軍の頭脳であり、ここで決められた作戦に従い、各国の軍隊に指示を出す事になる。

 

「浮かない顔だな、羽田国連軍最高司令官殿」

「ああ、長命國男陸将補、おはようございます。そりゃあそうですよ。この国連軍の最高司令部に属する高級将校の中で一番歳下かつ、経験も少ない自分が何で最高司令官に抜擢されてしまったのか・・・・そしてどうせ参謀長のアキラが全部作戦を決めて、俺はただ判子を押すだけなんだろうな・・・と思うと、何のためにいるのかが分からないんです・・・」

「だが、羽田海将補はオラパ諸島攻略作戦においては練習艦隊を率い、グラ・バルカス帝国との交渉では外交官を護送し、観艦式では御召艦の艦長を務めたではないか。これを経験している者は他におらぬ。それに、羽田海将補は我が弟子アキラと同じく飛び級で昇進した身。市ヶ谷からは期待されているそうだぞ? 私みたいなもうすぐ引退するような老いぼれとは違うのだ。自信を持つがよい」

 

現場叩き上げの歴戦の自衛官、長命國男陸将補はヒロシの肩を強く叩く。

 

「ですが、それも隣にアキラやケントが、時にはアキコやシン、それにアイが居てくれたから上手く行ったのであって・・・・」

「羽田海将補は優しく、そして考え過ぎる。故に己の魅力に気付けていない。私にはそう見えるがな」

「魅力・・・・ですか」

「左様。何故我が弟子アキラやその友人達がそなたの周りに集まってきてくれるのか。それは羽田海将補、そなたが上に立つに相応しい器である。皆が認めているから、私はそう思う」

「お、俺が??」

「確かに、作戦立案や実行力は我が弟子アキラの方が圧倒的に上だ。他国の外交官の懐に潜り込み、本音を引き出す力は根部さんが、好きな人の近くに誰よりも深く入り込み、支える力は大川さんが、親類を支える力は夢野さんが、医官としも戦闘員としも戦えるケントも。皆それぞれ違う得意分野を持つ。羽田海将補、私はそなたは色んな人を惹きつけ、そなたの元で盛り立てよう。そう思わせる力がある。そう見える」

 

歴戦の猛者である長命國男陸将補の言葉にヒロシは圧倒される。

 

「あとは、羽田海将補が殻を破れるかだ。今まで決断をアキラに任せ、逃げてきたそなたが・・・・」

「・・・・・・・」

 

やがて国連軍の首脳陣が続々と入室する。そして・・・

 

「・・・・・アキラ、作戦は立案出来たのか?」

「ああ。とびっきり凄い作戦をな!!」

 

国連軍参謀長のアキラも入室する。最後に国連軍副司令官であるアオイが入室し、全員が揃う。

 

「では、作戦会議を開催しよう」

 

司会進行役の長命國男陸将補の号令で会議が始まる。

 

「まずは此方の資料を見て頂きたい」

 

アオイの指示でイギリス軍関係者らが幕僚らに㊙と書かれた資料を配布する。

 

「我が国はクルセイリース大聖王国本国に諜報員を派遣しており、何かしらの秘密兵器が存在している事には気付いておりました。しかし、確証は掴めず、Xという仮称で皆様方には秘密兵器の存在をお伝えしていました」

 

各国の軍関係者は配布された資料に食い入るように見つめる。

 

「サナダ公国からの情報提供により、敵本国に秘密兵器が存在する事が確定。偵察衛星では掴めない詳細な軍事機密を奪取致しました」

「何だよこれ・・・・モビルアーマーみたいだな・・・・」

 

ヒロシは㊙資料に掲載されている秘密兵器を見てそう呟いた。

 

「いや、スター・ウ◯ーズに出てくる類の兵器ではないのか?」

「長命陸将補、ここはスター・トレッ◯ではないか?」

 

日本側の幕僚らは機動戦士ガ◯ダムやスター・ウォ◯ズ、スター・トレ◯クを連想する。

 

「この秘密兵器に正式な名称は付けたのか? 我々国連軍側のだ」

「羽田海将補、ここはビ◯ザムを提案するぜ」

「いや、ここはウォー◯ーが良いと思う」

「師匠、ここは譲れないンだよなあ」

「私も譲るつもりはない」

「くだらない議論はやめろ。話が進まない」

 

流石のヒロシも無駄な茶番劇を止めるように指示を出す。

 

「で、バイオレット准将はこの兵器をどう考える?」

「これまで隠ぺいされてきた秘密兵器が察知出来た事を考えると、敵はこの秘密兵器を用いた奇襲作戦を立案しているものと推測します」

「奇襲作戦? それはここシルカークに対してか? あるいはソロモンやツバルか?」

「シルカーク、ソロモン、ツバル、そして周辺諸島やパラディオン、ニュージーランド、オーストラリアは我々国連軍が防衛態勢を強化しています。更に大英帝国本国や貴国は更に強い防衛態勢が取られており、現実的ではありません。敵が狙うのはここです」

 

アオイが指さした場所はカナダの首都オタワ。101万人の人口を抱えるカナダ有数の大都市である。

 

「・・・・・成る程。確かに、カナダはこれまでの戦争では一番最後方にあり、本土を攻撃される可能性は極めて低かった。今回の国連軍結成においても、カナダはかなりの兵を出しており、相対的に本土が手薄となる訳か」

「されどバイオレット准将、幾らカナダが手薄とは言えど、それは我々基準であり、留守居組でも充分に守り切れるのでは?」

 

国連軍に参加するクワ・トイネ公国陸軍を率いるモイジが発言する。

 

「されど、我々の常識が通用しない事は多々あります。ここはカナダ本土の防衛態勢強化の時間稼ぎとして、大陸間弾道ミサイルを用いてクルセイリース大聖王国本国への直接攻撃を行うべきではありませんか?」

「ミスター・ウミバ、それでは生温い。ここは敵の本丸に核を撃ち込んでやってはどうだ?」

 

イギリス陸軍の幕僚の1人が物騒な発言をする。この発言にヒロシは机を強く叩いて怒りを顕にする。

 

「愚か者!!」

「シュワット!?」

 

国連軍最高司令官からのいきなりの叱責。全員の視線がヒロシに向けられる。

 

「そなたは一つ心得違いをされている。我々の目的はあくまでクルセイリース大聖王国による侵略行為の阻止、植民地支配を受ける属領の解放と独立、そしてクルセイリース大聖王国の民主化と国際社会への参入に向けた改革。違うか?」

「それはあくまで建前では?」

「建前? 舐めた事を言うな!! 此方から核を使う正当な理由がないまま使ってしまえば、国内世論は沸騰する。そして目先の戦争に勝利しても、現地人に恨まれ、何れまた戦争になる。パーパルディア皇国やグラ・バルカス帝国は自らの意思で核を使われても仕方ない道に進んだが、クルセイリースはまだそうではない。それにクルセイリース本国には、此方の味方になりそうな勢力もいると聞いている。利用出来る人材毎消し飛ばすつもりか?!」

 

かつて占領軍としてオラパ諸島の統治を担った経験のあるヒロシは、無駄な恨みを買う核兵器の使用に強く反対した。

 

「目先の利益ではなく、長期的な視点での作戦・・・国連軍参謀長として、最高司令官の意見に強く賛同するぜ!」

「うむ。核兵器はあくまで最終手段であり、使って楽しい玩具ではない。私も賛同する」

 

アキラとアオイがヒロシの意見に賛同し、核兵器の使用は見送られた。

 

「羽田海将補に対しては事後報告になるンだが、既にオーストラリアに展開していたF-37をカナダに転進するように命令を出している。今頃経由地のイギリスに着いた頃だろう。同時にイギリス本国からもカナダへ増援を派遣中だ。カナダ本土防衛は万全だ。これはバイオレット准将も承認している」

 

静かに頷くアオイ。

 

(・・・・・謀られたな・・・・俺が自己肯定感が壊滅している事を知っていて、威厳があるよう見せる為に仕組んだな・・・)

 

ヒロシはアキラの表情を見てそう悟った。

 

(そうでもしないと、お前の事を軽んじる輩が出てきてしまうからな。感謝してくれよ?)

 

こうしてクルセイリース本国への核兵器使用は見送り、代替として最新鋭ステルス戦闘機部隊とイギリス軍のカナダ派兵で決着した。そしていよいよ本題は迫りくるクルセイリース大聖王国軍に移る。

 

「衛星画像の解析から、敵は属領タルクリスに部隊を結集。更にその数は増えつつある。これに対して、我々国連軍はグラメウス大陸に配備している大陸間弾道ミサイル「マサカド」の通常弾頭仕様にて、一気に殲滅する」

 

ここからは作戦を立案するアキラの独壇場である。国連軍の幕僚達は静かに作戦内容に耳を傾ける。

 

「その後、艦隊を二手に分ける。日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、クワ・トイネ、クイラ、ロウリアの艦隊はクルセイリース大聖王国本土方面へ、パーパルディア皇国を中心とするフィルアデス大陸条約機構軍に、新生グラ・バルカス帝国海軍とムー海軍を加えた部隊は属領タルクリス攻略へ向かわせる」

 

作戦内容は更に続く。

 

「幾ら大陸間弾道ミサイルと言えども、全ての敵を殲滅する事は出来ねえ。必ず撃ち漏らしがある。それを新生グラ・バルカス帝国海軍の戦艦「グレート・ガルマ」とムー海軍の戦艦「ラ・カサミ」の艦砲射撃にてトドメを刺す」

 

当初はムー海軍は駆逐艦のみの派遣を予定していたが、親善訪問の為にニュージーランドへ寄港していた戦艦「ラ・カサミ」を急遽参加させる事を決定。これには国連軍への参加で国際的地位向上を図りたいムー政府と陳腐化している戦艦「ラ・カサミ」の代替艦建造の予算をムー財務省に認めさせたいムー海軍省の思惑があった。

 

「敵艦隊殲滅後、パーパルディア皇国海軍の強襲揚陸艦に搭載するオーストラリア空軍のF-35Bの直掩を受けつつ、上陸作戦を開始。同時にタルクリス解放戦線と協力してタルクリスを解放。タルクリス共和国として独立させ、国連軍を一時的に駐留させる」

「上陸作戦は我軍の精鋭にお任せください。必ずや国連軍の一員として、戦果を挙げてご覧に入れましょう!!」

 

フィルアデス大陸条約機構軍の陸軍部隊を率いるパーパルディア皇国陸軍パラガス大将が発言する。

 

「パラガス大将、間違っても大人のお姉さんを見つけても余計なことをするなよ!!」

「ぶっ!!」

 

アキラの発言にヒロシが思わず笑ってしまう。

 

「そ、そのような事があろうはずがございません!!(何故大人のお姉さんが好みなのがバレたのだ!?)」

「作戦を続ける。タルクリス解放後は速やかに飛行場を整備。日英の戦闘機部隊と新生グラ・バルカス帝国空軍のグティマウン2を進出させ、敵工業地帯への長距離爆撃を行う」

 

グラ・バルカス帝国時代に設計・製造されたグティマウン。日英は長距離爆撃機を保有していない事から、新生グラ・バルカス帝国に技術支援を実施し、新型の長距離爆撃機を製造させる事に決定。日英側からは先進的な技術に加え、米軍が運用していたB-52 爆撃機に関するデータが提供された。これらを組み合わせた新型の長距離爆撃機グティマウン2が完成。既存のグティマウンを置き換え始めていたのである。また並行して日英両国はムー、新生グラ・バルカス帝国と核共有に関する協定を締結。無論、グティマウン2は核兵器の搭載が可能であり、有事の際にはニューアークの空軍基地に配備されている核兵器を搭載する事になっている。

 

「更に潜水艦部隊を敵本土周辺海域に配置。敵の資源輸送艦を根こそぎ沈める。既に新生グラ・バルカス帝国海軍の潜水艦部隊が展開中であり、間もなく通商破壊戦を開始する」

 

日英の潜水艦部隊が展開する間の繋ぎと練度向上を兼ねて新生グラ・バルカス帝国海軍は潜水艦を展開。日英から見れば第二次大戦レベルの旧式艦であるが、潜水艦という概念が存在しないクルセイリース大聖王国からすれば脅威でしかない。

 

「また明日にはクルセイリースの連中が最後通牒を突き付けにくる。無論、我々は応じる事はない為、戦争になるだろう。それに備え、既に出港した部隊を除き、今から3時間後に作戦を開始する。敢えて港から艦艇を出撃させ、ガラ空きにする」

「・・・・・成る程。敢えて港をガラ空きにする事で、敵に我々国連軍は大した事はない、そう誤認させるという訳か!!」

「パラガス、そういう事だ。司令官、如何でしょうか?」

 

完璧に組み立てられた作戦。細かい部分については説明はなかったものの、資料には書かれており、緻密な作戦である事が伺えた。

 

「うむ。作戦を許可する。ただし!! 外交的解決が第一だ!! 追加の指示があるまで一切の攻撃を禁止する!! 良いな!!」

 

国連軍最高司令官の命令が伝わると、幕僚らは一斉に敬礼する。そして各部隊配置につくと、慌ただしく動き始めるのである。

 

 

同時刻

クルセイリース大聖王国 属領タルクリス

 

 

菱形の卓上に各艦長および軍幹部、作戦参謀が着座する。後ろの円形状の机には中堅幹部が並んだ。

 

「まずは新飛空艦隊司令長官ターコルイズ様から挨拶をしていただきます」

 

各人が直立不動となって、ターコルイズを見る。彼が手で合図をすると、一斉に着席した。旧飛空艦隊長シエドロンは、日本国の幻惑魔法にかかった可能性があるとされ、軍王ミネートの力が働き、司令を外されていた。眉毛が太く、がっちりとした体型のターコルイズはゆっくりと話す。

 

「諸君、栄えあるクルセイリース大聖王国はこれより新世界の開拓に乗り出す。圧倒的なる技術と富を持つ我がクルセイリース大聖王国によって支配される国々の民は生活水準が上がる。支配されし国の民達に幸せをもたらす事が出来る。圧倒的なる軍事力をもって、支配領域を拡大し、新世界を統合して永遠の繁栄を築く、その第1撃目に我らは選ばれた。我らが名は歴史に大きく刻まれるであろう。今回の攻略対象国はシルカーク王国と呼ばれる国だ。我が国の主戦力たる飛空艦隊の半数が投入され、その数は100隻を超える。これほどの大戦力が投入されれば、鎧袖一触、相手にもならん。それでは諸君、新世界開拓を始めよう!!」

『おぉぉぉぉぉっぉぉ』

 

熱気をもって会議が始まった。

 

「しかし、今回すさまじい戦力の投入ですな、過去1会戦にこれほどまでの大戦力を投入した事がありましょうか・・・・」

 

新世界開拓軍飛空艦隊旗艦100門級飛空戦艦ダルイアの艦長、タンソーが感想を述べる。

 

「それほど国の期待が大きいという事だ。100隻・・・・実に王国所有艦の半数というすさまじい数だ。シルカーク王国の国力は低いが、新世界の東部の雄たる列強パーパルディア皇国が出てくる可能性が高い。また・・・・まあこれは幻惑魔法にかけられた可能性が高く、強さも怪しいところだが、日本国、そして英連邦王国という強国が出てくる事も想定している。日本国は我が国の旧式飛空艦のようなものを運用していたという目撃情報もあり、英連邦王国も同等であろう。故に彼らが本当に強かった場合をも想定した大艦隊だ」

「過剰とも言える戦力投入ですが、これは軍王ミネート様のご指示でしょうか?」

「そうだ」

「微かな懸念すらも、大きく想定して事を動かす。さすがミネート様ですね」

 

これより大戦争が行われ、大艦隊が衝突する事を前提に話が進む。軍外交官カムーラは苦笑いしながら手を上げた。

 

「皆様、コンピューターが弾き出しました結果によりますと、99.9%以上の確率で我が国と新世界は衝突するでしょう。しかし微かな可能性として、シルカーク王国が外交で属国となる可能性もございます」

 

ターコルイズ司令は豪快に笑う。

 

「おお、そうであったそうであった。そろそろ期限の2ヶ月が来るのであったな。まあ衝突回避の可能性は限りなく低いが・・・・外交が失敗した場合、飛空艦で飛び立ったらすぐに通信を送れよ。出撃準備は整えておくのでな」

「はっ!!もちろんすぐにご報告いたします」

「カムーラ、もうすぐにシルカークへ行って良いぞ」

「では、私は先にシルカークへ意思確認のために行って参ります」

 

軍外交のカムーラは退室してシルカークへ向かう。侵攻会議は進み、滞りなく終了した。この間、国連軍は続々とシルカーク王国を出撃。増援部隊も続々と移動を開始。更にグラメウス大陸の大陸間弾道ミサイル発射基地も命令を待っていたのである。

 

 

 

シルカーク王国 王都タカク サルカ城

 

 

小高い丘に作られたサルカ城。2重防壁に囲まれ、鎧を着た兵達が走り回る。まもなく訪れる可能性のある『戦争』に、兵達は緊張感をもって準備を進める。同城の来賓室、同部屋の窓から空飛ぶ船が見えた。

 

「皆様、クルセイリース聖王国が来ました。あれが彼らの飛空艦です」

 

シルカーク王国外務担当のトップ、外務郷カルクは来賓室で、事前に座っていた者達に説明する。当初、砲艦外交で従属を迫られ、2ヶ月の猶予を言い渡された。相手国は日本国や大英帝国のヘリコプターよりも大きな乗り物でやってきた。高度文明を持つ事は明らかであり、それほどの文明を有しているにも関わらず、どの文明圏にも属していなかった。小国たるシルカーク王国はこのままでは蹂躙されてしまう。たったの2ヶ月の間、彼は愛する国を守るために奔走する。国連安全保障理事会へ圏外文明国侵攻を訴え、大英帝国が即座に動き、その同盟国である日本国が重い腰を上げる事となった。

 

日本国と大英帝国・・・・恐怖のグラ・バルカス帝国大艦隊を葬り、ムー大陸から帝国陸軍を叩き出した国。カルクは日英両国を中心とする国連軍派遣の決定を聞いた瞬間、国が救われたと歓喜し、涙を流した。今、当初は恐怖で迎えたクルセイリースの大使を、今は余裕をもって出迎える事が出来る。彼はとてつもなく長く感じた2ヶ月を振り返りながら、来賓室の者達を見渡す。日本製のフカフカのソファーには、

 

 

○日本国外務省シルカーク王国大使∶朝田泰司

 

◯日本国外務省英連邦パラディオン王国大使∶根部昭子

 

◯日本国英連邦パラディオン王国大使秘書官∶根部真

 

○海上自衛隊第1護衛隊群兼国連軍最高司令長官∶羽田弘海将補

 

◯海上自衛隊護衛艦「いずも」艦長兼国連軍参謀長∶栄彰海将補

 

◯英国王立陸軍シルカーク派遣軍団長兼国連軍副司令官∶アオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン准将

 

◯英国外務・英連邦・開発省シルカーク王国大使∶カルム・フレンチ・ホワイト

 

他、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの軍人が城内に展開。防衛の要となる我が国を救うであろう者達がいる。本来であれば、シルカーク王国のみで相手に対応するところではあるが、未知なる国の砲艦外交という事もあり、連合国で対応する事としていた。その代表として、日本とイギリスの外交官が同席している。

 

「・・・・・来たみたいね」

 

窓から外を眺めていた日本の外交官が呟く。やがて飛空艦が練兵場に着陸する。部下を引き連れ、軍外交官のカムーラはサルカ城へ向かうのだった。

 

 

サルカ城 迎賓室

 

会議参加者達は、迎賓室へ移動し、会議が始まる。

 

「これより、シルカーク王国の意思決定に関する会議を開催します」

 

司会の挨拶により、会議が始まる。クルセイリース大聖王国の軍外交カムーラは会議相手の多さに片眉をつり上げた。

 

「ふん・・・・・弱者連合か」

 

朝田は今まで何度も体験してきたタイプの相手であり、うんざりする。彼の隣に座るアキコは心の中でクルセイリース大聖王国の者らを憐れむ。

 

「まあ良い」

 

カムーラはかまわずに続ける。

 

「で、シルカーク王国の代表よ・・・・我らが栄光の支配を受け入れ、国繁栄する道を選ぶか? それとも、愚かにも反抗し、国滅ぶ道を選ぶのか。聞かせてもらおう」

 

カルクはカムーラを睨みつけてゆっくりと話す。

 

「我らが答えは決まっている」

 

沈黙。

 

「ほう、では聞こう」

「我が国、シルカーク王国は無礼で品が無い愚か者による支配を受け入れるつもりは全く無い!!! 尻尾を巻いて帰られよ!!!!」

 

カルクは声を荒げる。迫力のある声に、場に緊張が走る。

 

「バカめ!! レベルの低い北西世界の弱小国がどれだけ徒党を組もうと、我がクルセイリース大聖王国の歩みを止められるものではない!!! おまえ達の行動は全く合理性が無い。自分たちの無知が国民を滅ぼす事になるという事を理解しているのかっ!!」

 

カムーラも語気が強まる。彼は日本国と大英帝国の使者を見渡した。

 

「おまえ達の決定も、我が国の力を知らない無知が故による行動だ。シルカーク王国に協力するという事は、我がクルセイリース大聖王国にたてつくという事だぞっ!!! 我らが陸兵は魔力増幅機により、1人1人が強力な魔法を使える力を有する。圧倒的な航空戦力たる大飛空艦隊がおまえ達の首都の空をも埋め尽くす事になる。それを知っての決定か!!」

 

カムーラの発言にアキラがニヤリとほくそ笑む。

 

「・・・・ヒロシ、時間だな」

「ああ」

 

次の瞬間、練兵場に待機していた飛行艦が爆発、炎上する。

 

「な、何だ!? 事故か?!」

「飛行艦を使えるのが、自分達だけだとは思わないことね」

 

アオイが指さした先には、大英帝国海軍の空中戦艦「プリンス・オブ・フィリップ」の姿があった。クルセイリース大聖王国の有するどの飛行艦よりも大きく、洗練されていた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

場が静まる。カルクは言葉が出ないカムーラに現実を突きつける。

 

「貴方達は世界を知らなさ過ぎる! 我らが世界は3つの大文明圏が存在する。文明圏は文明圏外国家に比べ、遙かに繁栄しているのだっ!! その文明圏の中でも列強国は別格。比較にならないほど繁栄している。貴様が今いる国、シルカーク王国は文明圏外国の中でも後進国だ」

 

彼は続ける。

 

「そしておまえの前にいるのは、第3文明圏の影響範囲の国。今や世界情勢の全てを左右する超大国グループG5の盟主、日本国と大英帝国だ!! おまえ達程度のG5からすれば遥か彼方の旧式魔導戦列艦を空に飛ばした程度の戦力で、世界を支配出来るものではないわっ!! この無知なる蛮族があっ!!」

(虎の威を借る狐とはこの事か・・・)

 

朝田は内心呆れながら会談の様子を見守っていた。

 

「日本国や大英帝国の方々も、彼らに何か言う事があるのではないですか?」

 

カルクは朝田とアキコに目を向けた。2人は互いに顔を見合うと、アキコは朝田が答えるように促した。

 

「えーおほん・・・・では」

 

朝田はクルセイリース大聖王国の大使へ向く。

 

「軍事的圧力をかけ、シルカーク王国を一方的に攻撃するという行いは、シルカーク王国のみではなく、周辺国家に対して多大な影響を与え、周辺地域を不安定化させる行為です。あなた方にはシルカーク王国を侵攻し、さらに他国をも攻め落とさんとする、領土拡大の野心がはっきりと見える」

 

朝田は続ける。

 

「日本国としましては、このような行為は誠に遺憾であると言わざるを得ません」

 

カムーラは怪訝な顔をし、大英帝国の者らは笑いを堪えるのに必死である。

 

「おおぉ・・・・誠に遺憾・・・・誠に、がついたわね」

「やはり日本は遺憾砲を使ってこそだな」

 

アオイとカルムは小さくつぶやいた。

 

「はん! 笑わせてくれるわ!! 誠に遺憾だと?その意思表明をしたからといって、現実が何か変わるのか? 低文明国の意思表明など、我らには何の意味も無いわ、この弱小国がっ!! よろしい、止められるものなら止めてみるがいい!」

「でも、あんたが乗ってきた飛行艦・・・・なくなっちゃったけど?」

 

目の前で自分達の兵器が破壊されたんだが?という顔をしながらアキコ指摘する。彼女が指差した先では、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの陸軍部隊により、生存者の捜索と拘束、負傷者の搬送、戦死者の処理と技術情報の解析が開始されていた。

 

「なんて愚かな人達だ。我々大英帝国と盟友日本国にまだ歯向かうつもりなのか・・・・」

「国連軍最高司令官様の御慈悲で核兵器は使用しない事になった事を今ここで感謝するべきじゃない?」

「先ほどから何を訳のわからない事を言ってる! フン、まあ良い。お前たちに教えておいてやろう、どうあがいても変わることの無い未来・・・・絶望的な未来をな!!」

「いや、現実逃避やめろって」

 

発言する予定のなかったシンにすら現実逃避と指摘されるも、カムーラは止まらない。

 

「我らは漂流物からお前たちの文明レベルをすでに特定している。列強パーパルディア皇国の主力兵器ワイバーンロードは、我が国の飛空艦隊の前では無力に近いぞ。すでにこの時点で制空権は我々にあるも同然なのだ。上空より打ち下ろされる魔導砲をお前たちは止める事が出来まい」

「え?」

 

次の瞬間、轟音が響き渡る。パーパルディア皇国空軍の主力戦闘機、ユーロファイタータイフーン3機が飛来したのである。どう見てもワイバーンではない飛行物体にカムーラは一瞬目を丸くする。

 

「・・・・・・今回の会議において、我らが指示に従わなかったという事はしっかりと記録しておく。そ、その時が来れば、お前たちは相手の力も見抜けずに我が国にたてついた事を大きく後悔するだろう。本日の会議内容は、自分の国を大きく損なうという事を知れ!! これより、クルセイリース大聖王国はシルカーク王国に対して宣戦を布告する。シルカーク王国半径500kmの空域および海域は立ち入り禁止区域に指定、航行するすべての者は標的になると思え!! そして日本国に大英帝国よ!! 邪魔立てする艦隊は我らがすべて消滅させる。す・べ・て・な」

 

カムーラはイヤらしく笑った。しかし、同時にアキラも笑う。

 

「ヒロシ、賽は投げられた。作戦を開始しようぜ」

「ああ。外交的解決を我が国は願ったが、致し方ない。朝田さん、そしてアキコ。良いな?」

「・・・・・・はい」

「あとは軍人さんにお任せするわ。頼りにしてるわよ、ヒロシ」

「・・・・・分かった。やれ」

 

次の瞬間、迎賓室の扉が開き、完全武装したイギリス陸軍ニュー・ホンコン総督府護衛隊の兵士が乱入してくる。

 

「な、何をする!! 偉大なるクルセイリース大聖王国の使者である私を!!」

「カムーラ殿には、特等席で祖国が無残に惨敗する様をご覧頂こうと思います。連れていきなさい!!」

 

こうして大英帝国はクルセイリース大聖王国の使者を拘束。会談は完全に破談となる。この会議をもって、外交での戦争回避の眼は絶たれた。国と国の衝突は多くの悲劇を生む。国連軍最高司令官羽田弘海将補は無線で一斉に指示を飛ばす。彼らは衝突へと運命の舵を切るのだった。

 

「全軍に通達。賽は投げられた。作戦を開始しろ!!」

 

(続く)

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