日英同盟召喚   作:東海鯰

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タルクリス攻略作戦

クルセイリース大聖王国本土南方30キロ沖合

新生グラ・バルカス帝国海軍潜水艦プラスケット

 

「艦長! 敵輸送船を確認!! 此方に警戒する様子は全くありません!!」

「引き続き監視を続けろ。同時に魚雷を何時でも撃てるようにしておけ。国連軍最高司令部からの命令が出次第、直ぐに攻撃を開始する!!」

 

国連軍の一員としてクルセイリース大聖王国本土南方海域に展開している新生グラ・バルカス帝国海軍の潜水艦プラスケット。同国最新鋭の大型潜水艦E-400型の二番艦であり、長大な航続距離と航空機運用能力が特徴的な潜水艦である。近代化改修により、日英の部隊とのデータリンクを可能としており、日本の18式魚雷が運用可能となっている。

 

「しかし、敵さんも呑気なものですなあ。堂々と浮上航行をしているにも関わらず回避はおろか、少しずつ近づいて来ていますよ」

「此方の事を新種の鯨程度に思っているのかもな」

 

やがて、彼らの元に国連軍最高司令部より作戦開始の命令が伝えられる。

 

「よし! 急速潜航をした後に魚雷攻撃を実施し、敵輸送船を血祭りに上げる!!」

 

潜水艦プラスケットは急速潜航を開始。

 

「照準よし! 何時でもどうぞ!!」

 

艦長は潜望鏡で敵輸送船の様子を視認する。

 

「・・・・我々が国連軍の先駆けとならん! 18式魚雷、発射ー!!」

 

魚雷発射管より日本から輸入された18式魚雷が2発放たれる。避ける事の出来ない一撃が着実にクルセイリース大聖王国に迫りつつあった。

 

 

クルセイリース大聖王国

資源運搬船イドリース

 

「珍しい鯨ですなあ」

「ああ。まるで鉄のような身体を持つようだ。もしかしたら新種かもしれんな」

 

まさかそれが鉄の鯨、それも敵国のものであり、自分達を狙っているとは夢にも思わないクルセイリース大聖王国の資源運搬船イドリースの見張員達は悠長に煙草を吸う余裕さえ見せていた。自分達の死が近付いている事を知らないまま。

 

「しかし、飛行艦が実用化されてから俺達もお役御免かと思いきや、そんな事はなかったな」

「飛行艦は重たい天然資源の運搬には適していないからな」

 

飛行艦を実用化したクルセイリース大聖王国。飛行艦は付加価値の高い商品や兵士を高速で輸送する事には適しているものの、商品そのものの付加価値が低く、重たく、大量輸送が求められる資源の輸送には適していなかった。地球世界で石油を飛行機で輸送しないが、タンカーでは輸送するのと同じである。

 

「ん?」

 

見張員が変化に気付く。

 

「鉄の鯨の奴、海に潜るみてえだな」

「鯨だからな。いつかは潜るさ。さあさ! 入港に向けた準備を・・・」

 

次の瞬間、資源運搬船イドリース号の水面下で大爆発が起きる。新生グラ・バルカス帝国海軍の潜水艦プラスケットが放った18式魚雷が炸裂したのである。

 

「な、な・・・・何が起きたんだ!?」

 

クルセイリース大聖王国には魚雷という概念が存在しない為、それが何であるかを理解する事は出来なかった。やがて資源運搬船イドリース号は火災に包まれ、積載していた資源に引火。大爆発を起こして沈没した。救難信号を発する間もなく轟沈した為、クルセイリース大聖王国側がイドリース号の遭難に気付くのは攻撃を受けて3日後の事であった。また、国連軍最高司令部は制海権・制空権を確保するまでは敵兵の救助を固く禁じていた事もあり、クルセイリース大聖王国側の船員の死傷者が急増する事になるのである。そして、その悲劇は現実のものとなる。

 

 

クルセイリース大聖王国本土西方50キロ沖合

豪華客船トロイメア

 

「長旅ももうすぐ終わりか・・・寂しい限りだな」

 

クルセイリース大聖王国の豪華客船トロイメア号。飛行艦が普及した事により、官民問わず人々の主な移動手段は飛行艦へと置き換わった。その結果、旧来の水上船舶は貨物用または富裕層向けの豪華客船のみが生き残る事になった。トロイメア号はその中で最も優れた設備を有しており、誰もが憧れる豪華客船であった。この船はクルセイリース大聖王国が保有する全ての属領を周遊するツアーの最終段階にあり、あと数時間後には出発地の港へと到着する・・・・・予定であった。

 

「パラディオン島は少々残念だったな。巫女とやらが不在でな」 「何でもニュージーランドとか言う新興国に逃げ込んだとか聞いたがな」

「まあ、ニュージーランドもいずれは我が国の勢力圏に組み込まれるだろうがな!」

「ガハハハ! 違いねえな!!」

「船旅の最後に相応しい酒を呑み交わそうぜ!!」

 

豪華客船の船内は活気に溢れていた。老若男女問わず、人々は生き生きとしていた。しかし、戦争は彼等だけを見逃したりはしない。平等に悲劇を与えるのである。

 

 

イギリス海軍

攻撃型原子力潜水艦アートフル艦橋

 

「・・・・・民間の客船か。攻撃するのは、あまり気乗りせんな・・・・」

 

西方海域を哨戒中の原子力潜水艦アートフルは巨大な客船を発見。直ちに追跡を開始し、程なくして魚雷の射程圏内に収めた。艦長のダンテ・アーロン・エバンスは少々嫌そうな表情を浮かべた。

 

「しかし国連安全保障理事会にて、国連軍並びに認められた船舶及び航空機を除き、クルセイリース大聖王国本土周辺海域とその上空を航行・飛行する事を禁止する事が決まりました。あの客船は航行禁止海域を航行しており、正当な攻撃目標です」

「いやあ、それは分かるんだけどさ・・・・明らかに非武装の民間船。これを攻撃するのは・・・・虐殺というか、戦争犯罪になるのではないかな?」

「艦長、御言葉ですが戦争犯罪であるかを決めるのは勝った側のみにございます。敗者には何も言う権利はありません。艦長の弟君、ホップ領事は先の・・・」

「それ以上は言うな・・・・彼奴を守れなかったことを未だに悔やんでいる・・・・」

 

パーパルディア皇国にて首を切られた大英帝国の外交官ホップはダンテの弟であり、同国の大使であったグローリアとの仲人を担ったのもダンテであった。

 

「艦長! 撃たなければやられます!! 彼らを見逃せば、何かしらの形で我々に牙を剥くでしょう!! 御気持ちは察しますが、ここは・・・・」

「・・・・分かった。ただし、一発だけだぞ。余計な攻撃はいらない。魚雷の無駄だ」

「・・・・了解しました・・・・」

 

艦長と副長の間で暫し沈黙の時が流れる。2人とも帽子を取り、その場で十字を切る。そして・・・・

 

「・・・・魚雷発射!!」

「魚雷発射!!」

 

1番発射管からスピアフィッシュ魚雷が放たれる。

 

「手空き要員は黙祷だ」

「・・・・・はい」

 

艦橋要員は一部の要員を除き、皆黙祷を捧げる。

 

「Our Father, who art in Heaven,

hallowed be Thy name.

Thy kingdom come,

Thy will be done on earth as it is in Heaven

 

Give us this day our daily bread.

And forgive us our trespasses

as we forgive those who trespass against us;

And lead us not into temptation,

But deliver us from evil;

 

For the Kingdom, the power,

and the glory are Yours.

Now and forever.

Amen」

 

艦長のダンテと副長は共にプロテスタント式の祈りを捧げる。これから無残にも奪われるであろう無辜の民にせめてもの救いがあらん事を願う。

 

 

豪華客船トロイメア号艦橋

 

「ようやく帰国だな」

「やっと休みが手に入りますな」

 

出港以来ずっと船の上で仕事仕事仕事であった船員達は上陸後に与えられる休みの事を考えていた。

 

「俺、上陸したら彼女に告白するんだ」

「やめろよwww死亡フラグじゃねえかよwww」

「さて、そろそろ船内放送を・・・」

 

次の瞬間、豪華客船トロイメア号の真下で魚雷が炸裂。巡洋艦でさえ一撃で葬る魚雷の直撃を民間船が耐えられるはずも無い。

 

「な、何事だ!?」

「わ、分かりません!!」

「機械室が浸水!! 動力が完全に喪われました!!」

 

あっという間に浸水が進み、豪華客船は急速に傾いていく。

 

「た、立て直せ!!」

「駄目です!! 排水出来ません!! 制御不能!!」

「非常電源も作動しません!! 終わりだあああ!!」

 

 

イギリス海軍

攻撃型原子力潜水艦アートフル艦橋

 

「・・・・・・魚雷、目標に命中。浸水が激しくなり、急速に沈下して行きます・・・・」

 

潜望鏡で目標を監視していた要員が静かに、淡々と報告をあげる。

 

「・・・・・そうか・・・国連軍最高司令部より、制海権並びに制空権を確保するまでは敵兵の救助は固く禁じられている。我々は速やかに現場海域を離脱し、哨戒を再開する・・・・」

「・・・・・承知致しました」

「副長、暫く任せてよいか?」

「我々の事はお気になさらず・・・」

 

開戦初日、国連軍は資源運搬船1隻、豪華客船1隻の他にクルセイリース大聖王国海上警備隊の巡視船2隻、水上航行中の小型飛行艦1隻を撃沈した。豪華客船トロイメア号の悲劇が戦後明るみになると、日本の左翼勢力が激怒。裁判によらない死刑であると同時に、ジェノサイドであるとして、国連軍最高司令官羽田弘海将補、副司令官アオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン准将、参謀長栄彰海将補の3名を殺人罪で東京地検に告訴。更に左翼政党「中道革新連盟(中革連)」小川淳冶代表が国会内にてこのように政府を問いただした。

 

「高市総理にお聞き致します。何故、あからさまに民間船と分かる船を国連軍が沈める必要があったのでしょうか?」

 

これに対して、大泉防衛相が挙手。野党議員からは、

 

「出しゃばるな!!」

「呼んでねえーぞ!!」

 

と罵声が飛ぶものの、大臣は構わず回答する。

 

「まず大前提と致しまして、国連安全保障理事会におきまして、クルセイリース大聖王国本土周辺海域並びにその上空をですね、航行禁止区域並びに飛行禁止区域に設定した訳です。これが何を意味するかと言えばですね、国連軍並びにそれが認めた船舶や航空機以外は正当な攻撃対象である。そう通告した訳です。また、小川先生はあからさまな民間船であるとおっしゃいましたが、何を以てそれが完全な民間船であると証明するのでしょうか? 我々国連加盟国とクルセイリース大聖王国との間では、病院船や赤十字に関する協定が締結されていませんでした。民間船に扮して軍需物資や人員を輸送していた可能性も否定出来ない状況でもありました。我が国も第二次世界大戦にて、病院船で軍需物資や人員を輸送する違反行為をした過去があり、見た目で判断するべきではありません。防衛省として、そして高市内閣としては今回の攻撃は正当なものであった。そう確信しております」

 

納得出来ない小川議員は再度挙手をする。

 

「そんなふざけた回答が許されるわけないじゃないですか!! しかもあからさまな民間船を攻撃しておきながら救助もしない!! 高市総理、国連軍最高司令官羽田弘海将補と参謀長栄彰海将補を即刻罷免すべきではありませんか?!」

 

高市総理と大泉防衛相が互いに顔を見つめ合った後、高市総理が回答する。

 

「罷免致しません。それだけでございます」

「総理! 総理は戦争犯罪人として国際司法裁判所に行く用意がある、そう見なさざるを得ません!! 今ならまだ2人を罷免すれば・・・」

 

議論は平行線のまま時間切れとなる。後に左翼勢力は、高市総理と大泉防衛相を人道に対する罪を犯したとして、カナダのオタワに設置された国際司法裁判所に提訴。此方は案の定門前払いを食らうことになるのだが、東京地検に告訴した国連軍首脳陣3名については面倒な事になるのである。

 

グラメウス大陸日本領区域

日英合同弾道ミサイル部隊基地

 

「・・・・・そろそろじゃないか?」

 

日英唯一の陸上発射型大陸間弾道ミサイル部隊が配置されているグラメウス大陸。魔物が住まう手つかずの無主地は今や日英の兵器試験場と化していた。非常に寒く過酷な環境は試作兵器のテストにはうってつけであり、まともに人が住んでいない事から騒音問題を気にする必要もない。更に調査により、レアアースの埋蔵が確認され、既に僅かながら採掘と精錬も開始されていた。しかし、それでも殆どの地域は手つかずであり、未だに手探りの開発が続いていた。

 

「グラメウス大陸に住むのは、せいぜい3000人程度。エスペラント王国やヘイスカネンを加えても35万人程度。大陸の広さに大して、人口密度が恐ろしく低いよな」

 

大陸間弾道ミサイル発射基地の司令員達はそんな事を言いながら指示を待つ。そして・・・

 

『此方、国連軍最高司令部。賽は投げられた。繰り返す。賽は投げられた!!』

 

国連軍最高司令部では、戦争開始の合図として「賽は投げられた」、戦争回避の合図として「本日は晴天ナリ」を出すとしていた。

 

「国連軍最高司令部の命令を確認致しました!!」

「攻撃を許可する。大陸間弾道ミサイル200発を順次発射!!」

 

国連軍最高司令部からの攻撃命令に基づき、前線から遥か彼方のグラメウス大陸の基地より大陸間弾道ミサイル「マサカド」が放たれる。約束された破滅への道へ向けて寸分の狂いなく、誘導弾は突き進む。クルセイリース大聖王国側にこれを防ぐ力は・・・・ない。

 

 

国連軍属領タルクリス攻略艦隊旗艦

新生グラ・バルカス帝国海軍戦艦「グレート・ガルマ」艦橋

 

「間もなく作戦開始だな」

 

攻略艦隊司令官として旗艦に座乗する新生グラ・バルカス帝国皇太子グラ・ガルマはそう呟いた。観艦式に出席すると共に、天皇皇后両陛下に謁見したガルマ。当初は輸送機で先に帰国予定であったが、本人が戦闘への参加を強く志願した事でお流れに。属領タルクリス攻略の指揮を執る事になり、国連軍艦隊を率いて前進していた。

 

「さて、カムーラ殿。もうすぐ始まりますよ。我々国連軍による懲罰・・・がね」

 

手錠をはめられ、屈強な兵士に脇を固められたクルセイリース大聖王国の使者カムーラ。

 

「フン! 少しはでかい船を作れるみたいだが、飛ばすことの出来ない船等、単なる的にしかならぬわ!!」

「やれやれ・・・・呆れたものだな」

 

 

シルカーク王国王都タカク

サルカ城国連軍作戦司令室

 

「・・・・・・上手くいくだろうか・・・・」

 

国連軍最高司令官であるヒロシはシルカーク王国王都タカクの作戦司令室にて部下からの報告を待つ。

 

「・・・・・・こんな時アキラがいてくれたら・・・・な」

 

参謀長であり、盟友のアキラは護衛艦「いずも」艦長として戦場に赴いている。副司令官であるアオイは隣に座っているが、御世辞にも仲が良くなく(悪いわけでもない)、互いに言葉をあまりかわそうとしない。アキコが間に入ってくれたらまた話は違うのだが、外部の人間を入れるわけにはいかない。もどかしい時間が続く。

 

「衛星画像、出ます!!」

 

JAXAの協力により、陸域観測技術衛星「だいち」が今回の作戦に投入されている。早速結果が出たようである。

 

「・・・・・作戦は成功したみたいだな・・・・よし!!」

 

ヒロシは直ちに次の指示を出す。

 

「タルクリス攻略作戦を開始せよ!! 海の王者、前へ!!」

 

 

クルセイリース大聖王国属領タルクリス 

総合基地セキトメイ

 

 

巨大な飛行物体が停泊する。一度飛び立てば空を覆いつくさんばかりの飛空戦艦の大艦隊は圧巻であり、何者にも負けない力強さを持つ。その数100隻。王国の実に半数にも及ぶ大兵力の投入、飛び立つべく最終段階に移行する飛空戦艦の圧倒的なる姿に大聖王国の期待を感じ取り、新世界開拓軍の飛空艦隊司令長官ターコルイズの気分は高揚する。

 

「明日早朝、統合基地セキトメイを飛び立った後、艦隊は北西へ進路をとる。その道中で遭遇した敵を蹴散らしながら前進し、我が国を忠告を無視したシルカーク王国を攻略する!!」

 

ターコルイズが興奮する中、破滅の光は刻一刻と近づいていた。

 

 

100門級飛空戦艦ダルイア

 

「明日には出撃する!! 総員、確認作業急げ!!」

 

少しずつ近づく出撃の時。乗員らは徐々に緊張感が高まっていった。

 

「ん?」

 

魔導レーダーを監視していた乗員が異変に気付く。

 

「タンソー艦長、魔導レーダーに感あり、北方向から強い魔導反応が多数上がっています!!」

「北方向? 本国からの更なる増援か? それとも輸送艦か?」

 

タンソーも魔導レーダー画面を視認する。

 

「そ、総数47・・・・いや、どんどん増えています!! 速度・・・・は、速すぎて計測不能!!」

 

レーダー画面を監視していた乗員が絶叫する。

 

「な、なんだと!? 想定より遥かに速すぎるではないか?!」

 

クルセイリース大聖王国の想定ではパーパルディア皇国のワイバーンロードは速くても時速300km程度であると考えられていた。これは他の文明圏外国の聞き取りと、ワイバーンの生態から想定された数値である。この想定を上回る敵の速度に、艦橋はざわついた。

 

「さすがは列強国といったところでしょうか。今まで戦ったどの国よりも速い!!」

 

タンソーは敵の速さを褒める。

 

「対空戦闘員に情報を共有させろ、今までで一番速い奴が来るとな!!」

「しかし・・・・我らの優位は揺るがない」

 

司令ターコルイズは魔信を手に取った。

 

「総員につぐ、これより新世界の列強と会敵する。我らが新世界を開拓する上で、重要な1戦となろう!! 各自気をしっかりと持ち、日頃の訓練の成果を発揮せよ、総員戦闘配備!!」

 

けたたましく各艦にサイレンが鳴り響く、兵達は走り回り、迅速に配置についた。一部の飛行艦は離陸が完了し、速やかに隊列を整える。駆け出す兵達を見ながら、タンソーはターコルイズに話しかける。

 

「司令、新世界の軍と初の会敵ですが、極大魔法の使用はどうされますか?」

「あれは魔力を食い過ぎる。航続距離が不足してもいかんだろう。まだこの程度の敵で使用しない」

「はっ、承知いたしました」

 

ターコルイズが座乗するダルイアが離陸しようとした時だった。

 

「な?! あれは・・・・飛行艦でも、ワイバーンでもない!? ああっ!!」

 

一瞬だけ見えた飛翔体。それは日英軍が放った最初の矢、大陸間弾道ミサイルマサカドであった。

 

「た、対空戦闘!!」

「駄目です! 速すぎ手間に合いません!!」

 

各艦独自の判断で対空砲による迎撃を開始する。しかし、ワイバーンならまだしも、大陸間弾道ミサイルを迎撃出来る性能は有していない。易々と対空網を破られ、ミサイルが次々と着弾していく。離陸中にミサイルが直撃し轟沈した艦、操縦不能となり、艦そのものが爆弾となって友軍艦や地上施設に衝突する艦、地上施設に着弾し、誘爆に巻き込まれて爆沈する艦等、凄惨たる状況であった。ターコルイズやタンソーは目の前の光景が信じられない。

 

「ば、馬鹿な!! 我々クルセイリース大聖王国がなすすべなくやられる等、そのような事があろう筈がない!!」

「タンソー艦長!! 敵水上艦2隻を確認!! 敵艦が我が方へ攻撃を開始しています!!」

 

 

国連軍属領タルクリス攻略艦隊旗艦

新生グラ・バルカス帝国海軍戦艦「グレート・ガルマ」艦橋

 

「測敵よし、照準よし、艦対地ミサイル発射準備よし!!」

「撃ち方始め!!」

 

ガルマの号令により、戦艦「グレート・ガルマ」と「ラ・カサミ」が砲撃を開始。副砲を撤去し、VLSを搭載した「グレート・ガルマ」からはトマホーク巡航ミサイル(日本製)が発射され、かろうじて生き残っていた飛行艦や地上施設にトドメの一撃を与える。

 

「痛いのぶっ喰らわせてやれ!!」

「撃てー!!」

 

46cm砲による地上攻撃。その圧倒的火力は凄まじく、タルクリスの軍事施設を次々と更地に変えていく。

 

「敵飛行艦4隻を確認!! 離脱して行きます!!」

 

レーダーにはかろうじて離陸し、生き残った飛行艦4隻が映る。

 

「追撃する!! ラ・カサミは砲撃を続行し、本艦は敵飛行艦に照準を向ける!! 27式弾装填!!」

 

対空用の対艦砲弾という一見するとまるで意味が分からない27式弾。日本と新生グラ・バルカス帝国が共同開発した新型の砲弾であり、イギリスの空中戦艦にも搭載されている。

 

「発射!!」

 

一定距離を飛翔すると、砲弾が無数の球になり炸裂する。瞬く間に飛行艦2隻が27式弾の餌食となり、コントロールを喪って墜落していく。

 

「次弾装填よし!! 何時でもどうぞ!!」

「国連軍に歯向かった事を後悔させてやれ!!」

 

 

100門級飛空戦艦ダルイア

 

「本国へ撤退だ!! 全速力だ!!」

 

形勢不利どころか、完全な惨敗を確信したターコルイズは本国への撤退を命令。何とか4隻の飛行艦が離陸に成功していたが、既に2隻が撃ち落とされてしまった。

 

「ターコルイズ司令!! デストロイヤーから通信!! ここは我らが盾になる故、全速力で離脱されたし!!」

「・・・・・・・馬鹿者が!!」

 

 

100門級飛空戦艦デストロイヤー

 

「行かせはせん!! 行かせはせんぞー!!」

 

デストロイヤーはグレート・ガルマに対して、反転。捨て身の特攻を開始する。

 

「敵艦発砲!!」

 

次の瞬間、グレート・ガルマの砲弾がデストロイヤーを襲う。直撃を受けたデストロイヤーは轟沈した。しかし、この捨て身の特攻により、ダルイアはギリギリ逃げ切りに成功。クルセイリース大聖王国本土へ国連軍に敗北した事とその戦力の報告に成功するのである。

 

 

国連軍属領タルクリス攻略艦隊旗艦

新生グラ・バルカス帝国海軍戦艦「グレート・ガルマ」艦橋

 

「・・・・・・・・・・・」

 

カムーラは言葉が出なかった。水上艦等、貨物用や豪華客船を除き過去の遺物だと思っていた。如何に馬鹿でかい船を作り、馬鹿でかい砲を載せたところで意味はない。そう思っていた。しかし、それは今この瞬間、完全に否定された。祖国は国連軍に手も足も出なかった。何を使ったのか、まるで見当がつかなかった。ただ確実に言えるのは敗北したという事実。

 

「・・・・こ、このままでは!!」

 

幻惑魔法であるならそうであってくれ。彼はそう思いながらただ指をくわえて見ている事しか出来なかった。

 

「これよりタルクリス攻略作戦の第二段階へと移行する!! 上陸作戦開始!!」

 

国連軍の先制攻撃により、甚大な被害を被っていたクルセイリース大聖王国属領タルクリス防衛隊やセキトメイ基地駐留軍。上陸してくる国連軍に対して、何の成果も得られないまま後退を続け、基地の一角に追い詰められた後に玉砕。降伏の意思を示したものの、国連軍が定める白旗を掲げなかった事から、降伏の意思であるとは気付けずに掃討戦を展開。結果、クルセイリース大聖王国の駐留軍はたまたま白いテーブルクロスやシーツを振り回した給仕担当や医官を除き全滅した。敵軍を殲滅した国連軍は直ちに破壊された飛行場の再建に着手。タルクリス共和国準備政府と協力し、同国の再建に向けて走り始めるのである。

 

 

シルカーク王国日本大使館

空き部屋(応援要員執務室)

 

「作戦は成功。タルクリスは解放され、飛行場の整備を開始・・・ねえ」

「一応、再度交渉するんだよな?」

 

アキコとシンは再度の交渉に向け、必要な書類の取りまとめを急いでいた。日英両政府は、シルカーク王国やソロモン諸島、ツバルへの脅威を取り除く為にまずは属領タルクリス攻略作戦を行い、タルクリス共和国として解放。同国を交渉の舞台として、再度クルセイリース大聖王国側に対して、国連安全保障理事会からの勧告を突き付けるつもりであった。

 

「でも、交渉になるのか? 奴等が来ないかもしれない」

「来ないなら来ないで良いのよ。礼節は尽くしたが、相手はそれを踏み躙ったという事実が残るわ。私の予想では、奴等は来る。だだし!!」

「・・・・カナダ奇襲作戦を並行して進める、か?」

「イグザクトリー」

 

 

カナダ首都オタワ

オタワ・マクドナルド・カルティエ国際空港

 

「やれやれ。折り返し便が欠航。それどころか、全ての民間機の発着が中止か」

 

ANAのパイロット、オグリはつまらなさそうに呟いた。前日に東京羽田発オタワ行の機長として到着。しかし、到着して直ぐに民間機の発着が規制されてしまった事で帰国出来なくなり、事実上オタワに監禁されていた。

 

「はあ〜、暇すぎて退屈だな。久々に戦闘機に乗りてえ気分だ。かなり遠いが、バゴットビルの空軍基地にこんにちわしに行くか」

 

そう言ってオグリはオタワを後にした。

 

 

カナダケベック州サグネ

カナダ空軍バゴットビル空軍基地

 

「国連軍は作戦の第一段階、属領タルクリスの攻略が完了したらしいよ〜」

「ほう? それは朗報だな」

「タルクリスはクルセイリースにとっての重要拠点。ここが落とせたのは大きいですね」

 

F-37フラッグのパイロットに選ばれた精鋭中の精鋭。ウッチー、ハイネ、ラスティの3人はカナダへ派遣されていた。

 

「オーストラリアからカナダ。かなり遠かったな」

「まあね。でも、アプサラ◯みたいな化け物で奇襲作戦をしてくるらしいからね、仕方ないよ」

「しかし、F-37で勝てるんでしょうか? たった4機しかない上に、1機は予備機で動かさない予定ですし・・・」

「いや、予備機も動かすだろう」

「誰が搭乗するので?」

「・・・・・・彼奴がやって来る。今頃、戰場に飢えている彼奴がな・・・・」

「??」

 

はてなという表情のラスティに対して、ハイネはほほ〜、という表情を浮かべる。ウッチーは一度は別れた相方の到着を待つのである。

 

(早く来やがれオグリ。俺の背中を任せられるのは、お前しかいない)

 

 

(続く)

 

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