日英同盟召喚   作:東海鯰

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才能無き戦闘機パイロット

カナダ南方海域3000キロ沖合

 

キル・ラヴァーナル2号機

 

「・・・・・ふふふ、日本国に大英帝国よ。我が国に歯向かった事を後悔するが良い。ハハハ!!」

 

タルクリス総督府にてカムーラが日英両国からの降伏勧告であるタルクリス宣言を受け取ったのと同時刻、クルセイリース大聖王国の秘密兵器はカナダの首都オタワに向けて進軍を続けていた。

 

「事前情報によれば、日本国と大英帝国はまともな飛行艦を持たぬ弱き国。楽勝だな!!」

 

カナダ奇襲作戦の実行をイブリース大元帥から直々に命じられたキル・ラヴァーナル2号機パイロットのデット・グレファーは汚い笑みを浮かべる。

 

「カナダ奇襲作戦成功の暁には、現地の民を好きにしてよいとイブリース大元帥は仰せられた。金髪のマイクロミニスカートで腹出しの女子がいれば最高だがな!!」

 

筋骨隆々の男が操る秘密兵器は着実にカナダへと迫りつつあった。

 

 

カナダ オンタリオ州オタワ

サセックスドライブ24番地

 

「サナダ公国のスパイ集団、サナダ忍軍が仕掛けた発信器の位置情報の解析結果が此方になります」

 

G5の一角にして、最大の面積を有する大国カナダ。その政治の中心であるサセックスドライブ24番地。その首相執務室では、同国首相のマイケル・カーニーが各方面からの報告を受けていた。

 

「して、クルセイリースの秘密兵器とやらは間違いなく我が国の首都を狙うのだな?」

 

鋭い目つきで官僚らを睨むカーニー。無論、本人に悪気はないのだが、

 

「我が国並びにイギリスの担当者からも同様の報告が上がっております。また、敵地に潜伏するサナダ公国のサナダ忍軍が極秘情報を手に入れております。間違いないかと」

「して、どのように迎え撃つ?」

「それについては国防省から」

 

秘書官が国防省の官僚らに発言を促す。

 

「航空当局と協議し、既にオタワ周辺の空域にて民間機の飛行を禁止する緊急処置を発令。また日本とイギリスの精鋭中の精鋭、第零航空団のF-37がバゴットビル空軍基地に到着。機体整備とスクランブルに備えております」

「一体何機のF-37が来たのかね?」

「派遣されましたのは、予備機を含めて5機になります」

「たったの5機か・・・・」

 

カーニーは資料に目を通す。

 

「ん? F-37魔導回路試験機? どういう事だ?」

 

資料に書かれた見慣れないワードにカーニーは疑問を浮かべる。

 

「今回派遣されたF-37は最新鋭の技術を詰め込んだ試験機仕様になります。航空機用高純度オリハルコンを活用し、既存の機関砲に加えてレーザー兵器を搭載しております。またオリハルコンを活用した新型エンジンを搭載。これにより、既存の戦闘機には不可能な機動性を実現するとの事ですが・・・」

「? どうした? まだ何かあるのか?」

「あまりにも既存の戦闘機には不可能な機動性過ぎて、まともに操縦出来るパイロットが4名、民間を含めても4名しかいないとの事で、実質的には彼らの専用機だそうで」

「民間? 何故民間人に適合者がいるのだ? 一体何者なんだ?」

「それが此方になります」

 

国防省の官僚らは数枚の資料をカーニー首相に提示する。

 

「・・・・・・ああ、納得した・・・」

 

名前を見ただけでカーニー首相は理由を察した。

 

「して、その民間人は今はANAのパイロットとして勤務すると共に、予備自衛官として登録されています。既に日本政府からは予備自衛官として緊急招集する事を決定し、バゴットビル空軍基地へ向かうよう指示を出したと連絡が入っております」

「そうか。では、先陣は彼等に任せるとしよう。同時にオタワに被害を絶対に出さぬよう、部隊を展開せよ!!」

「ははっ!!」

 

 

カナダケベック州サグネ

カナダ空軍バゴットビル空軍基地へ向かう道路を進むプリ◯スミサイル

 

「暇がある時に横田には何度も行っていたが、まさか本当に戦線復帰しちまうなんてな」

「オグリもウッチーも、戦場からは逃れられない運命にあるみてえだな」

「しかし、ハイネと一緒というのも珍しいものだな」

 

後部座席でふんぞり返るオグリ。オタワ周辺空域が封鎖され、臨時の休暇となってしまった彼女の服装は非常に雑な物だった。とても今から軍事基地に行く恰好ではない。だが、ハイネはそれを気にせずに話を続ける。

 

「何時もなら、ウッチーかラスティだもんな。まあ、たまには俺が迎えに行けってウッチーに言われたんだがな」

 

ハイネが運転するミサイルは只管に道路を進む。

 

「大変申し訳ないが、生憎今は予備自衛官の軍服を持ってきていないんだが、どうしたら良いんだ?」

「カナダ軍からは緊急的にカナダ空軍の制服を貸与するってさ」

「まあ、無いものはねえから仕方ねえか」

 

徐にポケットからアルタラス王国産のタバコを取り出し、ライターで火をつけるオグリ。

 

「そういえば、オグリもウッチーも愛煙家だったな」

 

嫌そうな顔一つしないハイネ。ちなみに彼はタバコも酒もやらないイケメンである。

 

「まあな・・・・ぷか〜。まあまあな味だな」

「俺は吸わねえから分からねえが、タバコにも味という概念があるのか?」

「分かるやつには分かる。パーパルディア皇国との戦争が終わった時、アルタラス王国国王から下賜された物だ」

「アルタラス王国・・・・ああ、オグリはウッチーとアルタラス国際空港に配置されてたもんな」

「改めて思うが、出撃命令でジェットエンジンが唸り出す度に耳に拳を詰め込みたくなったものだ・・・イーグル隊は、エストシラントで歴史を作っている。そう思ってオレは泣いた。泣いて、拳を壁にぶつけ、ロッカーを蹴り飛ばした・・・完膚なきまでに蹴り飛ばした」

 

 

エストシラント空襲決行日

アルタラス国際空港イギリス空軍エリア

基地要員官舎

 

「クソ! クソ! クソー!!」

 

当初は日英連合軍の一大反攻作戦、エストシラント空襲。オグリはその爆撃隊の護衛部隊に選ばれており、愛機のイーグルと共に出撃する予定であった。しかし、運の悪い事に女子の日と重なってしまった。本人は出撃する気満々だったが、基地司令は出撃命令を取消。予備パイロットとして待機していたウッチーに出撃を命じた。その為に彼女はロッカーをボッコボコに蹴り飛ばす事でイライラを晴らそうとしていたのだ。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ」

 

 

「あの時のオグリは誰も手が付けられないレベルに暴れたらしいな」

「まあな。そのせいで右手を1回ぶっ壊したがな」

「よく処分されなかったな」

「戦闘機パイロットは常に足りていないからな。リストラしたら部隊が回らなくなるしな。まあ散発的にやってくるパーパルディア皇国のワイバーン部隊を迎撃したりと、出番が全くなかった訳では無いのだがな」

「まあ、流石に全滅はしないからな」

「お陰様で1回の出撃で20騎のワイバーン部隊を撃墜した事もあるしな」

「化け物だな。そのワイバーン部隊は竜母か何かから出撃して来たのか?」

「竜母ではなかったが、あれは休戦協定が締結された後の事だな」

「明らかにアカン奴でヤバいな」

「あの日はアルタラス王国国王の招待で、アテノール城に行ってた日でな・・・」

 

 

日英両国とパーパルディア皇国による休戦協定締結から1週間後

アルタラス王国王都ル・ブリアス

王城アテノール城練兵場

 

「これが貴国の戦闘騎か・・・実に鋭い形・・・まさに槍だな・・・」

 

日英連合軍とパーパルディア皇国による休戦協定が締結され、平和を取り戻したアルタラス王国。この日、同国の政治の中枢であるアテノール城では、日本国とアルタラス王国による軍事交流が開催されていた。

 

「小栗殿、これがそなたの愛騎のイーグルとやらなのだな?」

 

ターラ14世は傍らに控えるオグリにそう尋ねる。

 

「はい。イーグルはあくまで愛称であり、F-15が正式名になりますが」

 

この日の軍事交流の目玉は何と言っても、航空自衛隊の戦闘機だった。アルタラス王国はイギリスと軍事同盟を締結している事から、同国製の戦闘機ユーロファイタータイフーンの購入を決定すると共に、同国の空軍部隊が駐留している。一方で、日本の航空自衛隊のF-15戦闘機は馴染みがなく、国王自らが持ってきて欲しいと懇願。アルタラス王国との友好関係強化を図りたい日本政府は、オグリが搭乗するイーグルを展示する事に決定。同時に彼女とその目付役のウッチーを案内役に命じたのである。

 

「ん? 日本国もイギリスの戦闘機を導入しているのか?」

 

ターラ14世は並んで展示されている航空自衛隊仕様のユーロファイタータイフーンに気が付く。

 

「はい。元々は別の戦闘機を配備する予定だったのですが、異世界転移により調達が不可能になりまして・・・代替として同盟国イギリスの戦闘機を購入する事になったのです」

「う〜む。航空自衛隊仕様のユーロファイタータイフーンは、イギリス空軍仕様とはかなり色合いが違うのお」

「洋上迷彩を施しておりますので」

「洋上迷彩?」

「要するに、敵に見つかりにくくする塗装に御座います」

 

ちなみにこの時のオグリは失礼のないよう、必死に自我を抑えており、出そうになるとウッチーが釘を差すかのように小突いたりしている。

 

「成る程・・・・うむ! 実に為になった!! 感謝致すぞ!!」

 

ターラ14世を笑顔で見送るオグリとウッチー。やがて国王は展示されている陸上自衛隊の10式戦車に興味が移る。

 

「・・・・・はあ、何でオレがこんな事を」

「パイロットスーツ以外のオグリという、貴重なサービスシーンじゃね〜?」

「サービスシーンって、ただの制服じゃねえかよ」

「まあ、そうだけどね〜」

 

ウー! ウー! ウー! ウー!

 

城内に緊急を知らせるサイレンが鳴り響く。

 

「これは・・・・空襲警報!?」

「一体何処の国が!? レーダーサイトは何をしていたんだ?!」

 

城内にいた日本とアルタラスの関係者は急いで近隣の防空壕へと避難していく。

 

「・・・・ウッチー!!」

「おうよ!!」

 

オグリとウッチーは避難する関係者らとは逆の方向に走り出す。

 

「あの馬鹿共、一体何をする気だ!?」

「まさか・・・・ここから飛び立とうって言うんじゃ・・・」

「まさか!? 小栗のイーグルはともかく、内はユーロファイタータイフーンの経験はまだないんだぞ!! ぶっつけ本番で乗りこなせる理由がない!!」

「しかもパイロットスーツすら着ていない!!」

 

関係者はオグリとウッチーに対して、防空壕へ避難するよう促す。しかし、常人離れした彼等は止まらない。

 

「ウッチー! お前がイーグルに乗れ!! オレがタイフーンに乗る!!」

「はいよ〜。まあ、離陸する前に墜落するんじゃねえぞ〜」

 

軽口を叩きながら戦闘機に乗り込むウッチー。ヘルメットを被ると、キャノピーを閉じ、直ぐ様離陸に向けて動き出す。

 

「フーヤンが有事の際には練兵場から離陸出来るように配置したとか、整備したとか言っていたけど、まさか本当に離陸するハメになるとはね〜」

 

慣れた手付きで離陸の準備を完了するウッチー。避難する関係者を他所に、まずはウッチーが操縦するF-15Jが離陸する。  

 

「聞こえるか、管制塔。此方、航空自衛隊内二等空佐。アテノール城練兵場から緊急発進した!! これより敵機の迎撃に向かう!! 誘導されたし!!」

 

 

「初めて触るが、流石は西側の戦闘機。言われなくても使い方が分かる」

 

お前本当に乗ったことがないのか?と疑うスピードで離陸準備を完了させるオグリ。ウッチーの離陸を見送ると、続けて離陸した。

 

「管制塔、オレは航空自衛隊小栗二等空佐だ。アテノール城より離陸した。敵の位置を知らせてくれ!!」

 

そう言うと、オグリが操縦するユーロファイタータイフーンも離陸する。両機共に練兵場の長さギリギリで離陸し、ル・ブリアスの空を舞う。

 

 

アルタラス国際空港管制塔

 

「クソ! 休戦協定締結でようやく暇になると思ってたのによ!!」

 

管制塔では日英の関係者らが対応に追われていた。かつては対パーパルディア皇国戦の最前線であり、ひっきりなしに戦闘機や輸送機が出入りしていたアルタラス国際空港。しかし、休戦協定締結後、アルタラス王国に駐留していた日英軍は続々と撤退を開始。既に派遣した部隊の9割が同国を離れ、帰路についていた。残っているのは開戦前から展開している大英帝国アルタラス王国派遣軍と、数日後には撤退する自衛隊の部隊のみである。大規模な戦闘は終結し、各員リラックスしていた矢先でのアンノウンの出現。戦闘機部隊はスクランブル態勢を整えていたが、肝心の管制塔が混乱した事により、全く離陸許可が下りず、誘導路で待機を強いられる等、後に関係者が処分されるぐらいである。

 

「大尉! 離陸する物体を確認! アテノール城の方角からです!!」

 

レーダー監視を行なっていた隊員が更なる異変に気付く。

 

「離陸だと?! アルタラス王国上空の航空管制は我々英国王立空軍の管轄だ!! アルタラス王国空軍のスクランブルだろうが、差し止めさせよ!! 当基地の戦闘機部隊を先にスクランブルさせるのだ!!」

「し、しかし、あまりにも速すぎます!! この速度、アルタラス王国空軍のワイバーンではありません!! 明らかにジェット機の速度です!!」

「しかし、アテノール城に戦闘機は・・・・まさか!?」

 

その直後である。

 

「聞こえるか、管制塔。此方、航空自衛隊内二等空佐。アテノール城練兵場から緊急発進した!! これより敵機の迎撃に向かう!! 誘導されたし!!」

 

その件の物体は日本語で管制塔の管制官に話しかけてくる。しかし、管制官は日本語に不慣れであり、内容が理解出来ず、まともに返信出来ないでいた。

 

「・・・・aa、what?」

「...Oh, right, the air traffic controller was British, my apologies. This is Lieutenant Colonel Uchi of the Japan Air Self-Defense Force. I am now heading to intercept enemy aircraft, requesting guidance!

(・・・・ああ、そうか管制官はイギリス人だったか、失礼。此方、航空自衛隊の内二等空佐だ。これより敵機の迎撃に向かう故、誘導を要求する!!)」

 

日本語が通じていない事に気付いたウッチーが流暢な英語で話しかけて来た為、ようやく管制官は応答が出来るようになる。

 

「A scramble from the training grounds of Athenor Castle?! Are the Japanese monsters or something?! I'm surprised they had enough takeoff distance...

(アテノール城の練兵場からスクランブルだと!? 日本人は化け物かよ!! よく離陸距離が足りたものだ・・・)」

 

呆れと驚愕が混じる管制官。そこに小栗が乱入してくる。

 

「管制塔、オレは航空自衛隊小栗二等空佐だ。アテノール城より離陸した。敵の位置を知らせてくれ!!」

「オグリ、相手はイギリス人。日本語は通じないんだよな〜」

「...Then just tell us the enemy's location without saying anything. Uchi and I will wipe them all out. Hurry up, tell us immediately.

(・・・なら、黙って敵の位置を教えろ。オレとウッチーで全滅させてきてやる。早くしろ、すぐに言え)」

 

その後、管制官はオグリとウッチーに対して、アンノウンの位置を指示。まさかパイロットスーツ無しで離陸している等とは知らずに迎撃命令を出したのである。

 

「・・・了解。直ちに迎撃行動に出る!! ウッチー、着いてこい!!」

「はいよ〜」

 

平然とパイロットスーツなしで戦闘機を操るオグリとウッチー。オグリに至っては事前訓練なしの戦闘機を操縦しており、自身の操縦技術の高さ、身体の頑丈さ、そして適応力の高さを知らしめていた。後にこれらを知った防衛省の幹部らは、

 

「何しての? 何四天王!?」

 

と白目を剥き、

 

「葵ちゃ〜ん、空自にはパイロットスーツなしで平然と生還したパイロットがいるらしいよ?」

「ええ? パイロットスーツ無しですか? 何で失神しないんですかね? どんな身体してるんでしょうか?」

「気になるよね〜」

 

医官組(主に横須賀組)はどんな身体をしているのか興味津々だったと言う。

 

「・・・・かなりのGだな・・・オレより先に失神すんじゃねえぞ!!」

「ん〜? そんな簡単に失神するようなタマじゃないけどね〜」

 

かなりのGがかかっているにも関わらず、冷静を保つオグリとウッチー。やがて領空を侵犯する敵騎をレーダーで視認する。

 

「ざっと40・・・・近くに竜母がいると言う情報はない・・・・」

「もしかすると、謎の漁船群がいたりしてね〜」

「やれやれ・・・・領海警備はアルタラス王国側の受け持ちの筈だが・・・まあ、改革中で手が回らないのだろうな。英軍の哨戒機部隊も全てを監視出来る訳ではないしな」

 

そう言うとオグリとウッチーは速度を上げ、敵騎の編隊へ突入する。高価なミサイルは使用せず、機関砲で血祭りに上げる事にしたのである。

 

「・・・・・仲間達はエストシラントで歴史を創った。オレはアルタラスで歴史を創ってやる!!」

 

怒りを込めながらオグリは引き金を引く。急に現れた戦闘機を前に回避行動が遅れた2騎が一瞬にして血祭りに上げられる。

 

「それじゃあ、行くとしますか〜」

 

何も言わずに担当エリアを分けるオグリとウッチー。別れても2人は姉弟。息の合った連携で今までキツイ訓練を潜り抜けてきた。

 

「クソ! アルタラスの連中め、鉄竜を味方にしていやがったのか!!」

「うわあああ!!」

 

次々と機関砲で血祭りに上げられるパーパルディア皇国軍戦争継続派のワイバーン部隊。

 

「あの青っぽい鉄竜を先に落とすぞ!! 包囲して・・・なんだ!?」

 

 

オグリが操縦するユーロファイタータイフーンを包囲しようとするパーパルディア皇国軍のワイバーン5騎。しかし、それはオグリとウッチーの仕掛けた罠であった。

 

「灰色の鉄竜! 我らの頭上・・・・ぎゃあああ!!」

 

ウッチーが操縦するF-15Jがオグリのユーロファイタータイフーンを包囲しようとする敵騎を次々と機関砲で葬っていく。気が付けば40騎以上いたワイバーン部隊は全滅し、海上には肉片と化した人やワイバーンだった物の成れの果てが漂い、鮫が集まる等地獄絵図と化していた。

 

「ウッチー! 我先に逃げようとする不審船団だ!!」

 

オグリは慌ててパーパルディア皇国方面へ引き返そうとする小型船の船団を発見する。

 

「成る程ね〜。ざっと50はいるね〜」

「まだ弾はあるか?」

「勿論!」

「・・・・・やっちまうか?」

「やっちまおう!!」

 

その後オグリとウッチーは、アルタラス国際空港からスクランブル発進したイギリス空軍アルタラス王国派遣軍のユーロファイタータイフーン並びにアルタラス王国海軍の哨戒艦や駆逐艦ガリアル(旧護衛艦ちくま)が到着するまで暴れ続け、敵船団を一方的に攻撃。増援到着後、管制塔からの指示で離脱した後にアルタラス国際空港へ着陸した。

 

 

「パイロットスーツ無しで離陸に加えて戦闘か・・・絶対Gがヤバかっただろ?」

「その程度のGでオレが死ぬと思っているのか?」

「死んでたらここにいねえだろ」

「まあな。周りの奴等は、パイロットスーツ無しで行った事に驚いていたが、オレやウッチーからしたら大した事ではねえからな。ちなみに敵は殲滅したし、ワイバーンを離陸させた漁船に偽装した戦争継続派の艦艇を蜂の巣にしてやった。まあ、討ち漏らした敵は他の奴らにくれてやったがな」

「あははは! 流石はバーニングクイーンだな。さて、着いたぜ」

 

車は無事にバゴットビル空軍基地に到着。ハイネが必要な手続きを行い、オグリは無事基地内へ。その後担当者からカナダ空軍の制服を渡され、着替えた後にウッチーらが待機する作戦室へと移った。

 

 

カナダ空軍バゴットビル空軍基地

作戦室 

 

「よっ! 御無沙汰だね〜、オグリ〜。やっぱりオグリには民間の制服は似合わねえな〜。オグリのような武人は武人の恰好が相応しいな」

 

オグリを見つけ、嬉しそうな笑顔を見せるウッチー。それを見たオグリは少し表情を柔らかくする。

 

「やっぱりそう思うか? オレもこっちの方が似合っていると思う」

 

笑顔で肩を叩き合いながら再会を喜ぶ両者。

 

「最近、ムーの首都オタハイトで起きた全日空1550便無事着水事故で副操縦士として乗客乗員全員を生還させたんだって?」

「皮肉なもんだよな。行きは1549便としてやって来て、帰りで事故。数字に引き寄せられるのかもな」

「しかもあれだろ? その便にはラスティの親父さんも乗ってたんだろ? ラスティはますますオグリに頭が上がらねえな!!」

 

ハイネが話に割り込む。同時に淹れたてのアイスコーヒーをオグリに手渡す。

 

「砂糖とか、ミルクとか、ガムシロップは無しで良かったか?」

「余計な物はいらない主義だ」

 

オグリはハイネからアイスコーヒーを受け取ると、それをグビグビと飲み干していく。

 

「ラスティも元気にしてたか? 最近中々会えなかったから、心配したぞ」

 

作戦室の中には、オグリの配偶者であるラスティの姿もあった。アイスコーヒーを飲み干したオグリはラスティを見つけると頭を撫で始める。

 

「こ、子供扱いしないで下さい!!」

「オレとウッチーに比べたら、パイロットとしては子供だろ?」

「ハハハ! 違いねえな!!」

「オストフルス中佐あ!!」

 

何時ものように触れ合うオグリ、ウッチー、ハイネ、ラスティ。そんな4人の尻目に半ば仲間外れのような若い男性パイロットがいた。

 

「・・・・・・あの人達に比べたら、僕は大した事ないよな・・・」

 

オレンジに近い茶髪と顎ね右側にある大きめのホクロが特徴的な美青年が寂しそうな表情で4人を見つめる。彼の名前は、「イグザべ・オリバ」。王立オーストラリア連邦空軍所属の軍人であり、階級は少尉の23歳。しかし出身は南の文明圏外の島国旧バルーサ王国であり、旧地球人ではない。

 

「・・・・・・特にあのオグリという女性・・・あの人は・・・・強い。話をしなくても何かを感じる・・・・」

 

イグザべは独り言を呟きながら熱々のブラックコーヒーを口に運ぶ。

 

「・・・・・・あの人達は羨ましいよ。僕には友人も、家族も、祖国もないに等しいんだから・・・」

 

思い出すのは祖国が消滅したという記憶。

 

「今思えば、あの日船に乗せられたのも、祖国が滅ぶ事をお父さんは分かっていたんだな・・・・」

「ん? 見慣れない顔だな」

 

オグリがイグザべの存在に気付く。

 

「彼奴か? 彼奴はイグザべ・オリバ少尉。オーストラリア空軍のパイロットで、俺達と同じイカれた戦闘機乗りさ。イグザべ!!」

 

ハイネが1人離れたところに突っ立っているイグザべに話し掛ける。

 

「オストフルス中佐、どうされましたか?」

「そんなところで1人寂しく立ってないで、此方に来な。同じイカれた戦闘機乗り同士、仲良くしようぜ!」

 

と言い、彼を呼び寄せる。上官の命令に従い、イグザべはハイネの隣に向かう。

 

「イグザべ、このイカれた女が今回の迎撃作戦の現場指揮官になる、小栗闘子一等空佐だ。大佐と同等と考えてくれ」

「イグザべと言ったか? 始めましてだな。オレがそのイカれた女、かつては空自のエースパイロット、今はANAの中堅パイロットにして予備自衛官の小栗闘子だ。皆からはバーニングクイーンと呼ばれている。たまたまカナダにいたら現場指揮を執ることになった。よろしく頼むぞ」 

 

オグリが敬礼する。これに動じることなくイグザべも敬礼し、自己紹介をする。

 

「この度、F-37魔導回路試験機5号機のパイロットを拝命しました、王立オーストラリア連邦空軍少尉のイグザべ・オリバです。祖国の為、同盟国の為、国際平和活動の為、全力を尽くします」

 

淡々と社交辞令を述べるイグザべ。しかし、そんな社交辞令がオグリの気に触った。

 

「・・・・・嘘だな」

「・・・・・嘘とは?」

「同盟国の為、国際平和活動の為。その言葉には1ミリも嘘偽りはないだろう。だが、祖国の為。そこが違うように感じたところだ」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

暫しの沈黙。

 

「・・・・やはりオグリ一等空佐。貴方は強い人だ。初めて会ったにも関わらず、僕が何者なのかを薄っすらと見抜いてくる。オストフルス中佐、ラスティ少佐。僕の話を彼女にはしましたか?」

「1ミリもしてねえ」

「中佐と同じです」

「そうですか」

「・・・・悲惨な過去を抱え込んでいる、違うか?」

「・・・・なんで分かるんですか?」

「オレの勘がそう告げている。同時に、自分は才能を持たない存在だと思っているな」

「・・・・だってそうじゃないですか。僕はたまたま運が良かっただけです。祖国が消滅してしまう前に船に乗せられ、オーストラリア連邦に辿り着いて、たまたま出会った公爵家の長女に気に入られ、たまたまその公爵家の跡取りにして次男の資金援助を受けて、勢いでオーストラリア国防軍士官学校に入ってしまっただけです」

「本物の才能には理由がない。理由をつけたがるのは才能がない者だけ。とかイグザべ少尉は言ってるけど、そのオーストラリア国防軍士官学校を首席で卒業して、卒業して割と直ぐにこんなイカれた戦闘機乗りに抜擢されてるんだけどね」

 

ラスティが半ば呆れながら彼について補足する。

 

「・・・・・折角だから聞かせて貰おうか。才能のない男が歩んできた人生とやらを」

 

(続く)

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