カナダ空軍バゴットビル空軍基地
作戦室
「今から20年以上前。南方の島国バルーサ王国にて僕、イグザべ・オリバは生を受けた。正確には、父の名もイグザべだから、僕はイグザべ・オリバ・2世が正しい。父親は国王に仕える中流貴族だった。容姿はあまり良いとは言えなかったが、政においては困った時のオリバ家。と称される程の才覚を持ち合わせていた。本来政は国王とその一族並びに上流貴族が仕切るものだったが、皆が認める程、政においては右に出る者はいなかったと聞いている。故に幾度となく追加の知行を提案されていたが全て固辞し、生涯中流階級に留まっていた。母親は平民出身の美しい女性だった。当初は平民出身の者との婚姻に反対する声が多かったが、父は伝統ではなく、愛を選択した」
自身の生い立ちについて語り始めるイグザべ。オグリらは静かに彼の話に耳を傾ける。
「次男であった僕は、家督争いになる事を避ける為に比較的自由に過ごす事が出来た。兄は家督継承者としてのあるべき姿を身につけるために幼くして王の傍に仕えていた為、実は一度も会ったことはない」
「戦国時代には我が国でも、家臣の子を小姓として仕えさせる事はあったが、次男や三男等の家督継承者ではない立場の者が小姓として、謂わば人質だった。その辺は文化の違いということか」
オグリは戦国時代の小姓と似ているが、異なる点を指摘する。
「祖国バルーサでは、王の傍に仕えた者しか家督継承出来ないという規則があり、兄は正しくその為に王宮へ送られました」
「あれだね〜、人質としての役割に加えて、王の都合の良い人材に教育し、反乱を防ぐって感じだね〜」
ウッチーはバルーサ王国の狙いに気付く。
「兄とは違い、自領ですくすくと育った僕は、平和を謳歌していました。毎日変わらない日々が続く。そう思っていました。ですが・・・・」
バルーサ王国
在りし日の深夜のオリバ家邸宅
「・・・・・アナタ、本当なの?」
「・・・・・ああ、本当だ・・・」
この日、深夜のオリバ家邸宅の一室ではイグザべの両親による密談が開かれていた。トイレに起きた僕はこっそり話を聞いていた。
「第三文明圏の列強、パーパルディア皇国は我が国に対して、奴隷の供出、主権放棄、領土割譲、王族の引き渡しを要求して来た。断ればパーパルディア皇国監察軍が侵攻すると・・・・」
前日の事に遡る。バルーサ王国王宮に対して、パーパルディア皇国のバルーサ出張所からの命令が出たのである。
前日のバルーサ王国王宮
国王執務室
「陛下! 緊急事態に御座います!!」
イグザべの父はノックもせずに国王執務室に入室する。その様子から、近習の者らは良からぬことが起きたと察し、彼に手を差し伸べる。
「ん? なんだ、オリバではないか。そなたであれば、先の無礼を許す。要件を伝えよ」
「ははっ! 先程、外務局に対して、パーパルディア皇国のバルーサ出張所より、こんな外交文書が送りつけられました!!」
イグザべの父は急ぎ国王に対し、パーパルディア皇国からの外交文書を手渡す。日英から見れば質が悪過ぎる外交文書が手渡され、国王がそれを拝見する。
「・・・・・・・・オリバ、これは誠か?」
静かに国王バルーサ9世は問う。
「・・・・・・・・はい・・・・」
「・・・・・・・・そなたが嘘を付くことはあるまい。それに、奴等が用いる捺印もされておる。読んでみるがよい」
バルーサ9世は近習の者らに外交文書を読ませる。そこに書かれていた内容は・・・・
偉大なるパーパルディア皇国皇帝の代理人である、パーパルディア皇国バルーサ出張所より、バルーサ王国側に以下の要請を行う。
1.バルーサ王国の王は、皇国人とし、皇国から派遣された者を置くこと。
2.バルーサ王国国内の法を皇国が監査し、皇国が必要に応じ、改正できるものとする
3.バルーサ王国軍は皇国の求めに応じ、必要数を指定箇所に投入できることとすること
4.バルーサ王国は皇国の求めに応じ、毎年指定数の奴隷を差し出すこと
5.バルーサ王国は今後外交において、皇国の許可無くしてあたらな国と国交を結ぶことを禁ず
6.バルーサ王国は現在把握している資源の全てを皇国に開示し、皇国の求めに応じてその資源を差し出すこと
7.バルーサ王国は現在知りえている魔法技術のすべてを皇国に開示すること
8.パーパルディア皇国の民は皇帝陛下の名において、バルーサ王国国民の生殺与奪権利を有する事とする
9.バルーサ王国の王族並びにその臣下である貴族は皆、一族郎党共にエストシラントへ移住すること
10.バルーサ王国は南部の港町をパーパルディア皇国の永久領土として割譲すること
11.バルーサ王国は南部の港町に隣接する2つの地域を99ヵ年パーパルディア皇国に租借すること。租借期限の延長の是非はパーパルディア皇国側にのみ決定権がある事も併せて認めること
「・・・・・なんという侮辱!!」
「パーパルディア皇国は戦争するつもりではないか!!」
「始めから戦争を仕掛けるための見せかけの外交文書だ!! 我々は外交交渉を望んだが、バルーサが拒否したと国際社会に見せるつもりだ!!」
外交文書を読んだ近習らは口々にパーパルディア皇国への不満をぶちまける。そもそも、パーパルディア皇国は昔からバルーサ王国に対して高圧的であった。常に見下す態度を示し、滞在する邦人は傲慢で、バルーサ王国国民に対しても無法を働く。不平等条約により、領事裁判権が認められ、関税自主権を放棄させられているバルーサ王国は、常にパーパルディア皇国に馬鹿にされている。国民は常に不満を募らせており、昨日にはパーパルディア皇国の邦人がバルーサ王国人により斬り殺される事件も起きている。
「オリバよ、そなたは如何すべきと考える」
国王バルーサ9世はイグザべの父、イグザべ・オリバ・1世に問う。
「・・・・・選択肢は2つございます」
「2つ・・・・・構わぬ。そなたの考える選択肢を述べよ」
「一つは、戦わずしてパーパルディア皇国に降伏する事にございます。まともに戦えば、万が一に勝ちなどありませぬ」
その場にいる者の脳裏には、一方的に祖国を蹂躙し、我が物顔で歩き回るパーパルディア皇国軍の姿が過る。兵力、国力、装備。あらゆる要素で勝てる可能性はない。それは皆分かっている。
「もう一つは・・・・大英帝国の後ろ盾の元、徹底抗戦するという事にございます」
「大英帝国・・・・確か、正式名はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国と言い、先週正式に国交を樹立した新興国であったか?」
「はい。先のパーパルディア皇国からの文書が送付された直後、大英帝国の連絡所からも文書が送付されました。それが此方になります」
イグザべ・オリバ・1世はイギリスからの外交文書を国王へ手渡す。先のパーパルディア皇国からの文書に比べ、圧倒的に質がよく、肌触りの良い紙が手渡される。
拝啓
バルーササンタンカが美しい季節となりました。バルーサ王国国王バルーサ9世陛下におかれましては、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
この度は、両国の国交樹立のお祝いに連絡所職員全員に素晴らしいお品をお贈りくださいまして、誠にありがとうございました。
我が国の情報機関並びに同盟国からの情報提供より、自称第三文明圏列強パーパルディア皇国が、貴国バルーサ王国への不当な従属要求を突き付け、事実上の最後通牒を受け取ったと伺っております。我が国は同盟国と共に、
・自由で開かれた第三文明圏
・国際法の遵守と普及による法の支配の徹底
・主権国家平等の原則
・大英帝国並びに日本国を中心とした核の傘の各国への提供
を推進しており、貴国も強く賛同してくださいました。国交を樹立したばかりであり、両国間に正式な軍事支援に関する協定は締結されていませんが、我が国並びに同盟国は、
「貴国が独立を守る為、国民国家の為、最後まで戦う覚悟を示されるのであればではありますが」
・武器並びに訓練の供与
・義勇兵の派遣
・軍艦並びに航空機のバルーサ王国領海領空の航行並びに飛行
等の支援を行う用意がございます。緊急事態でございますでしょうが、ぜひ一度、大英帝国のバルーサ王国連絡所へ足をお運びいただけたら幸甚でございます。領事館を設置したばかりで、今はまだ何もないところではございますが、精一杯のおもてなしをさせて頂きます。
末筆ながら、バルーサ王国国王バルーサ9世陛下のいっそうのご活躍を心よりお祈りいたしております。季節の変わり目ゆえ、くれぐれもご自愛くださいませ。
敬具
駐アルタラス王国大英帝国大使(バルーサ王国を含めた南方諸国の大使を兼務)
ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン
「・・・・・グレートブリテン及び北アイルランド連合王国・・・・確か、ロウリア王国を瞬く間に降伏させ、従属国にした国・・・・その国の後ろ盾を得る・・・・」
バルーサ9世は悩む。このまま戦えば、間違いなくバルーサ王国は敗北する。そうなる前に速やかに降伏すれば、大多数の国民の命は助かる。だが、それは一次的なものに過ぎず、やがて苛烈な統治になるのは想像に難くない。しかし、大英帝国が本当にパーパルディア皇国に勝る国であるという証拠をバルーサ王国は持ち合わせていない。
「どうするべきか・・・・」
悩む国王。この日結論は出せず、翌日に諸侯を緊急招集し、判断を下す事に決まった。しかし、パーパルディア皇国は外交文書の返答を待つことなく、レミールの指示により監察軍が既に出撃済みであり、明日にもオリバ家が治める所領の沖合に到着する見込みであった。この情報は無論、バルーサ王国側は知らないが、大英帝国並びに日本国政府は把握している。
「貴方、我が国はどうなるの?」
「・・・・・恐らく、我が国はパーパルディア皇国に蹂躙される。そして、真っ先に我らの所領が蹂躙されるだろう。我らの所領は天然の良港があり、そしてパーパルディア皇国に一番近い・・・」
その後、イグザべ・オリバ・1世はある事を決断する。
「我が所領の民を逃がす。大英帝国の支配領域に女子供を優先的に逃がす。直ちに触れを出せ。大至急だ」
翌朝、僕は母親に連れられて港町に向かった。既に港には多数の領民が集まっており、一部では乗船が開始されていた。またそんな中、一際目立つ大きい船が港町に向かって来ていた。
「あれは何だ?」
「どこの国の船だ?」
「しかし・・・・デカいな・・・・」
大人たちが口々に突如として現れた巨大船に目を奪われる中、イグザべはその巨大船に掲げられている旗に目をやる。
「・・・・・見たことのない旗だな」
だんだんと近付いてくる巨大船。その船にはパーパルディア皇国海軍の旗ではなく、見たことのない絵柄が描かれた旗を掲げていた。
「・・・・・凄く大きい船だな・・・我が国のどの船よりも大きいな・・・・ん?」
灰色の船をイグザべは見つめる。灰色の船は港へ徐々に近付いてきており、その船にはパーパルディア皇国海軍の旗ではなく、白地に紺に近い青の星と特徴的なデザインを左上に描いた旗が掲げられていた。
「・・・・・凄く大きい船だな・・・我が国のどの船よりも大きい・・・・」
やがて2隻の船は沖合に停泊する。灰色の船からは3隻、巨大船からは1隻の内火艇が発進し、此方へと向かってくる。
「We are the Royal Australian Navy Arunta. We have been dispatched to evacuate Japanese nationals. Clear the way immediately for the evacuation of Japanese nationals from our country and friendly nations currently residing in the Kingdom of Balusa!(我々は王立オーストラリア海軍アランタである。邦人退避の為に派遣された次第である。速やかにバルーサ王国に滞在する我が国並びに友好国の邦人退避の為、道を空けられよ!!)」
「王立オーストラリア海軍? よく分からないが、あれはオーストラリアという国の船なのか。王立って事は、国王がいるのか」
沖合に現れたのはオーストラリア海軍の駆逐艦「アランタ」。実はイギリス政府はオーストラリア政府に対して、邦人退避への協力を要請していた。バルーサ王国には、イギリス国籍が10名、カナダ国籍が6名、オーストラリア国籍が3名、日本国籍、ニュージーランド国籍がそれぞれ2名、その他友好国の邦人50名が滞在していた。G5各国政府は邦人に対して、オーストラリア海軍の艦艇で退避するよう指示を出しており、間もなく退避が開始される見込みであった。
「頼む! 俺達も乗せてくれ!!」
「このままじゃパーパルディア皇国に殺されるんだ!!」
「我が子だけでも!!」
市民達は口々にオーストラリア海軍の兵士らに助けを求める。密かに原子力潜水艦で派遣されていたイギリス陸軍が邦人らを護衛しており、不用意な衝突が起きぬよう展開する。
「・・・・・バイオレット少佐、如何しましょうか?」
16歳の頃からイギリス陸軍に入隊し、現場叩き上げの軍人であるアオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン少佐。アルタラス王国へは駐在武官として兄ハルトと共に派遣されていた。今回、バルーサ王国に滞在する邦人退避を支援する為、アルタラス王国に駐留している部隊を率いてバルーサ王国に展開したのである。
「どうするとは?」
「あの者らの事です」
副官は口々に退避させて欲しいと訴える市民らを指さす。市民らは完全武装をしている英国王立陸軍駐アルタラス王国英国大使館護衛部隊に対して必死に懇願する。時折兵士に泣きつこうとして力づくで排除されたり、退避中の邦人が乗る車両に乗り込もうとして威嚇射撃を受ける場面もあった。
「・・・・可哀想だが、彼らを我々は収容する事は出来ない。それに、諜報部からの報せでは、バルーサ王国は我が国からの支援の申し出を断ったそうじゃない。戦う覚悟を示さぬ国を大英帝国は助けないわ」
この頃、バルーサ王国王宮ではパーパルディア皇国に対する返答を決める緊急会議が開催されていた。参加者らは、パーパルディア皇国との圧倒的国力差、大英帝国の強さが不透明である事から降伏する事を決定。一方で、戦う事を希望する者については戦う為に武器を惜しみなく供与する事も併せて決定。上陸が予想される港町に向けて部隊を前進させる事になった。また同時に国内に滞在する英国を始めとする各国邦人退避の為に英国軍の一時的駐留を認めた。返信を確認した英国領事館は職員を退避。既にオーストラリア海軍駆逐艦アランタより発艦したヘリコプターが向かっており、間もなく領事館職員の収容が完了する見込みである。
「・・・・・とは言え、彼らを将来的に戦力としても使えそうではある。ただ、収容する船がない」
その時だった。汽笛が港内に響き渡ったのは。
ボー! ボー! ボー!
「ん? あれは・・・・」
「・・・・日本の貨物船か。これは彼等を助けられるかもしれないわね」
沖合に現れた巨大船。それは日本の貨物船「東慶丸」であった。後にメルアニアにて難民を多数収容する事になる「東郷丸」の姉妹船である。東慶丸はマール王国の港を出港し、日本の神戸港へ向かっていた。道中、パーパルディア皇国によるバルーサ王国侵攻が確実な情勢になった事を知り、同国による拿捕を避ける為、邦人退避の為にバルーサ王国へ向かっていたオーストラリア海軍駆逐艦アランタと合流するよう本社から指示を受けていた。この汽笛は、アランタに対して自船の存在を報せる為であった。
「・・・・・そう、日本人は本当に御人好し、そう思わない?」
「・・・・・我々にはない、武士道というものなのでしょうか」
程なくして、バルーサ王国からの脱出の為に停泊していた亡命船は次々と出港し、沖合に停泊する貨物船東慶丸に向かっていく。東慶丸はバルーサ王国からの脱出を希望する難民を受け入れる意思を示したのである。水深の関係で直接港に横付け出来ない為、亡命船が幾度となく往復し、人々を収容する。
「な、な、な、なんて大きい船なんだ!!」
イグザべは巨大な鉄の塊に驚く事しか出来なかった。やがて彼も貨物船に収容され、数時間後には脱出を希望する難民3000人を収容。邦人や領事館職員の退避も完了し、アランタと東慶丸は出港した。途中、補給の為にニュージーランド海軍の輸送艦アオテアロアと合流し、3隻で一路オーストラリア領クリスマス島へ向かう。
「クリスマス島か・・・確か蟹で有名な島だったな」
「しかし、オーストラリア政府もよく受け入れたものだよね〜。まあ、労働力として使う思惑はあっただろうけど」
「・・・・・まあ、僕は兵士になったけどな。クリスマス島に収容された後、僕は祖国の悲惨な末路を知ることになった」
オーストラリア連邦クリスマス島
臨時難民収容施設
「あんな巨大船をこんな小さな島で作れるのか?」
ここがオーストラリア連邦本国ではない事を知らないイグザべ。彼は収容された難民収容施設で置かれていた雑誌を読んだ。英語は分からなかったが、クリスマス島はオーストラリア本国から遥か彼方の場所である事、そして祖国バルーサからも遥か彼方の場所である事を悟った。
「何だこれは? 神聖ミリシアル帝国やムー、パーパルディア皇国でしか実用化されていないはずの代物が何でここに?」
部屋にあったテレビを見てイグザべはそう呟く。感覚でリモコンを操作し、テレビを点ける。たまたまニュースチャンネルに設定されていた為、彼は世界情勢を知ることが出来た。知りたくなかった事実も・・・・・
「・・・・・嘘だろ・・・・」
ニュースはオーストラリア放送協会によるもので、内容は
「This is news that just came in. The Papaldia Empire, which claims to be the leader and great power of the Third Civilization Sphere, appears to have begun an invasion of the southern island nation of the Balusa Kingdom.
(先程入ったニュースです。自称第三文明圏の盟主にして列強、パーパルディア皇国が南方の島国バルーサ王国へ侵略を開始した模様です)」
列強による祖国への侵略を報せるニュースだった。
「According to sources within the British Foreign Office, Commonwealth and Development Department, the Papaldia Empire made a unilateral demand for subjugation from the Barusa Kingdom, and when the Barusa Kingdom refused, Papaldia launched an invasion as a pretext.
(イギリスの外務・英連邦・開発省の関係筋によると、パーパルディア皇国はバルーサ王国に対して、一方的な従属要求を突きつけ、バルーサ側がこれを拒否した事を口実に侵略を開始したとの事です)」
「嘘だろ・・・・嘘・・・・だろ?」
しかし、彼の眼前には列強による祖国の侵略を淡々と伝えるアナウンサーの姿が映し出されている。
「Here is the federal government's response. The Australian Federal Government has issued a statement condemning the aggression committed by the Papaldia Empire through a third country. At the same time, it has announced that it has taken in a boat carrying refugees from the Barusa Kingdom to Christmas Island.
(連邦政府の反応です。オーストラリア連邦政府は、今回のパーパルディア皇国による侵略行為を第三国を通じ、断固非難するとの声明を発表。また同時にバルーサ王国からの難民を乗せた船をクリスマス島に収容したと発表しました)」
ニュースは更に続き、イギリス人男性の顔が表示される。
「Furthermore, tensions are rising regarding the recent act of aggression by the Papaldia Empire, with British Ambassador to the Kingdom of Altaras, Haruto Scarlett Arthur Hamilton, posting on his social media, "The Papaldia Empire's act of aggression is absolutely unacceptable. It has been proven that the British Empire is the leader that will bring peace and stability to the Third Civilization Sphere. The Papaldia Empire will one day be burned by the fires of Megiddo!!"
(また、今回のパーパルディア皇国による侵略行為について、イギリスの駐アルタラス王国大使、ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン氏は自身のSNSにて、「パーパルディア皇国による侵略行為は断固として許されない。大英帝国こそが第三文明圏を平和と安定に導く盟主である事が証明された。パーパルディア皇国は何れメギドの火に焼かれる事になるだろう!!」と投稿する等、緊張が高まっています)」
ちなみにパーパルディア皇国は実際にイギリスの核兵器により、デュロが焼かれた為、ハルトの発言は実現した事になる。
「暫くは失意の中で淡々と日々を過ごしていた。そんな中、悪魔が僕の元に舞い降りた」
「ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンか? 彼奴は悪魔という言葉で片付けられる存在ではないが・・・」
「・・・・・気に入られちゃったんだね〜」
「ああ。難民らの慰問目的で収容施設を訪れたハルト大使は、僕に会うなり、こう言って来た」
「君、軍人としての素質がある。祖国を踏み躙った悪党を滅ぼす為に、軍人にならないか?」
「それでYESと言ってしまったと・・・」
「当時は何も考えられなかったし、何れは働かなきゃいけなかったし、後は資金面生活面で支援するとまで言われたから・・・」
その後、ハルトの支援を受けたイグザべはオーストラリア国防軍士官学校に入学。優秀過ぎる成績を残し、首席で士官学校を卒業。卒業後はオーストラリア空軍に配属。パーパルディア皇国との戦争には間に合わず、更に対グラ・バルカス帝国戦争ではオーストラリア本土防衛の為に残留した。この為に戦闘実績はなかったものの、非常に卓越した操縦技術を持っており、事故での戦死を恐れた政府や国防省が出撃を認めなかったのが理由だとされている。
「卓越した操縦技術か・・・・まあ、あのF-37を操れるんだ。俺とウッチーに着いてこれるだけの腕前はあるって事だな」
オグリはイグザべの隣に座ると煙草をすすめた。
「出撃前に一服どうだ?」
「すみませんが、禁煙してるので」
「釣れないな。ウッチー、吸おうぜ!!」
「はいよ〜。イグザべ君? オグリはあんな感じだけど、悪い奴じゃないからね〜」
オグリはイグザべの隣から離れ、ウッチーと煙草を吸い始める。ちなみにこの部屋は喫煙ルームではない。慌てて煙草を消させようとするラスティ、笑いまくるハイネの姿がイグザべの目に入る。何処となく疎外感を感じながら。
「・・・・・・・・・祖国は結局、滅んだままだからね」
パーパルディア皇国からの支配を脱却した後、バルーサ王国は再建する事は出来なかった。第三文明圏と第一文明圏を結ぶチョークポイントに位置するバルーサ島を大英帝国は手放すつもりはなかった。またパーパルディア皇国による苛烈な統治により、国王以下指導者、知識人は壊滅。とても国としてやっていくことは不可能であった。終戦後、バルーサはパーパルディア皇国が支配した属領で唯一、独立の賛否を問う国民投票が実施されず、オーストラリアの委任統治領となった。その後バルーサは、オーストラリア連邦バルーサ島として、同国の海外領土となり、オーストラリア式の統治機構に組み込まれた。バルーサ人はオーストラリア国籍を有する、バルーサ系オーストラリア人となった。
「支配者がパーパルディア皇国からオーストラリア連邦に代わった。しかし、民の暮らしは大幅に改善され、若年層を中心にオーストラリア連邦への帰属を支持する声が高く、独立を主張する高齢層と対立。どうなるんだろうか」
やがてカナダ空軍の関係者が入室する。作戦会議は始まろうとしていた。
(続く)