クルセイリース大聖王国
聖都セイダー
薄暗い部屋でロウソクの炎が揺れる。
「ぬううぅぅ・・・・・ぬぅぅぅぅっ!!」
軍王ミネートは揺らぐ炎を見つめながら苦悶の表情を浮かべていた。ミネートの横にはイブリース大元帥の腹心、メナスと呼ばれる男が立つ。いつもは白いローブを着る彼は、今日は黒色のローブに身を包んでいた。メナスはミネートを見てイヤラシく笑う。
「ミネート殿、何を悩んでいる。我らには「あれ」があるだろう?今なら沖合150kmに集中している敵艦隊を・・・・国連軍の上陸艦隊を一撃で殲滅出来るのだ。期を逸すると、悩む贅沢すら与えてもらえませんよぉ。最悪の想定を気にしておられるのか? 大事を成し遂げるためには、多少の犠牲は致し方ない事だ」
「簡単に言いおるわ! メナス!!」
ミネートの頭に「国家級敵国殲滅魔法」の文字が浮かぶ。星の世界より星の欠片を引き寄せるこの古代魔法は、誤差150m程度ではあるが、威力があまりにも凄まじく、周辺ごと消滅させる「艦隊」に使用した場合、敵艦隊は殲滅出来るだろうが、引き寄せる星の欠片は1発とは限らない。多くの欠片のうち、1発は命中誤差150mとなるが、他の欠片は周辺に散らばる可能性もあり、もしも引き寄せたメインの欠片が空中分裂してしまえば、魔力誘導線から外れ、数百キロ離れた場所に落ちる可能性もあった。つまり、自国民に犠牲が出る可能性すらあったのだ。
「ぬううう!!」
軍王は大きな声を出すが、メナスに動じる気配はない。軍王は続けた。
「ただ発言するだけの者とは違う。責任ある立場は違うのだ・・・少し一人にしてくれ」
一瞬の重き沈黙が流れる。
「・・・・・解りました、ただ時間は残されていない。敵は待ってはくれないのだから。隣室で待機する。準備が出来たら声をおかけ下さい・・・・・フフフ」
メナスは退室した。
「まあ、間違いなく使うだろう。コレでイブリース大元帥・・・我々の悲願は達成される・・・・」
一方で一人部屋に残された軍王ミネートは思考を巡らせる。当初の日本国や大英帝国に対する報告書はすべて間違っていた。 軍の想定を遙かに上回る日本国と大英帝国の強さは「尋常では無い」という言葉が正しい。そんな2カ国が強固な軍事同盟を締結しており、その結束は揺るぐことはあり得ない。
「く、くそおおぉ!!」
多少想定を上回る事は考えていたが、あまりにも強さがかけ離れていた。軍の中核たる飛空艦艦隊も効果が無く、あっさりと撃滅させられた報告を聞いた時、衝撃が体を駆け抜けた。そんな中、聖王家直轄の軍、空中戦艦が出撃すると聞いて、内心安堵したものだ。 いかな国の軍であろうとも、古の魔法帝国の遺産には勝てない。勝てるはずがない。別格、いや、次元そのものが違う。はずだった。
「日本国と大英帝国は・・・・まさか、古の魔法帝国より強いのか?!」
歴史上最強の強さを誇り、神々でさえも手を焼いた最強にして最悪な帝国、古の魔法帝国の空中戦艦は1回の出撃で1国を制圧出来るほどの強さがあり、しかもその戦艦稼働率は90%を超える。古の魔法帝国の遺産は解析技術や劣化によって、稼働率(本来の戦力における稼働可能兵器率)が低いものが多い。事実、二番艦は45%程度であった。しかし、王家の空中戦艦は90%を超える。ここまで来れば、ほぼ完全体と言ってもよい。いかに未知の国とはいえ、勝てるはずがあろうか。いや、無い。確信的な思いだった。しかし日英両国を中心とする国連軍によって・・・・しかもたったの2隻の飛行戦艦によってその考えは粉砕されてしまう。今思えば聖王女による荒唐無稽な報告が正しいのだろう。報告書の備考欄にあった「国ごとこの世界へ転移してきたと申し立てた」との文字を見て、頭がおかしくなった、もしくは幻惑魔法にかけられた可能性が極めて高いと判断したのは間違いだったというのか?
「・・・いや、そんなずはない。国ごと転移など、そんな事が起こりうるはずが無いではないか。いったい何が起きている・・・」
軍王の額を汗が伝う。日本国並びに大英帝国という国は全く意味がわからない。しかし、いくら後悔しても現実の時間は遡らない。彼らは何れは聖都へ駒を進めるだろう。
「・・・・・『あれ』を使用すれば、確かに敵は殲滅出来る。古の魔法帝国の海上要塞でさえ、一撃で葬る事が出来るだろう。メナスの持ち込んだ魔導技術は神通力の使用を可能とした。画期的な技法ではあるが、微かな出力しか出ず、魔法に比べて効率が極めて悪いと言わざるを得なかった。しかし、「天才」達の活躍により、この技術は神の遺産たる「王家の秘宝」と代々の軍王に貸与される「軍神の指輪」と組み合わせる事により、神通力を大量に使用する事が可能となる。よって、神通力を大量に消費する魔法・・・・・神の魔法とも言える国家級敵国殲滅魔法が理論上使用可能となった。この神通力を使用した魔法・・・・いや、魔法ではなく神法とでも言えばいいのだろうか、これは神通力を使用し、最新の技法により成功に至る。微細実験でも成功しているため使用可能だろう。
「しかし、建国時に刻まれた「不破の石板」の中には・・・・」
大地よりあふれ出る神通力の使用は厳禁とする
「・・・・という不可解な文字が刻まれている。この国宝に刻まれた文字の意味は重く、相議をとるならば聖王家は神通力の大量使用に反対するだろう。聖王子ヤリスラはまだ5歳であり、実質的に権力を握っているのは聖母ラミスである。ラミスからの私に対する信頼は厚く、古代魔法に必要な神器は決戦前に拝借していたため、すでに「王家の秘宝」と「軍神の指輪」は手元にある。聖王家は無理だが、聖王子のみの承認であるならば、最悪事後承認でも降りるだろう・・・・・」
実際には主君は既に日英陣営に亡命している事をミネートは知らない。したがって、事後承認等有り得ず、実行すれば日英陣営に恰好の口実を与えてしまう事になるという事実も。
「しかし、何かが引っかかる。 まず、この国は何故大地から神通力があふれ出ているのか。イブリース大元帥のお力か? まさか・・・・建国神話が本当だというのか?」
ミネートの考えは巡る。
建国神話2章1項
かつて世界に大きな災厄が訪れた。突如として現れし8つの首と、8つの尾を持つ山よりも巨大な邪竜は人々を襲い、多くの街を飲み込んで人類を恐怖のどん底に陥る。人々が絶望したとき、北西より神の化身が現れ、十字の地にこれを封印す。神の化身、多くの英知と力を我らに授けん。我らは選ばれし民、クルセイリース..この大いなる力は人類の為に使用し、いつの日か復活する邪竜討伐のため、「さらなる力」を手に入れなければならない。
「・・・・魔法とは根本的に力の種類が異なる神通力があふれ出しているのは、本当に神の化身からの英知なのかもしれない。聖都と国土の端には、「神の棟」と呼ばれるいつ作られたのかも解らないアーティファクトがあり、神通力があふれ出ている。そして聖都の中心部には「軍神の棟」と呼ばれる一際大きな棟があり、神通力の濃度が高い。では、何故あふれ出る力の使用を禁止するのか。何故今は神通力が使用が出来ず、神通力に関する使用法は後世に語り継がれなかったのか・・・・謎は謎を呼ぶが、今は謎解きをしている場合ではない・・・・古代兵器すら倒してしまう悪魔が我が国に迫っているのだ・・・・」
ミネートは悩んだ末に、決断した。
「決断するしかあるまい」
軍王は思考を止めて目を瞑った。神通力の使用を先祖に詫びる。拳を天に向けた。上を向く軍王の顔は晴々としていた。
「古代の掟よりも、眼前の脅威を取り除く。それが軍王たる私に課せられた使命である!! 聖王国臣民を繁栄に導く使命が私にはある!!! すべては聖王家のために!! すべては臣民のために!! すべては公のために!!! 我が決定に一片の悔いなし!!」
軍王は誰もいない部屋で大声を張り上げる。そして強く拳を握りしめた。
「メナスはいるかっ!!!」
隣の部屋まで聞こえる大声に、メナスはやってきた。
「・・・・軍王様、ご決断を」
ローブの下にはイヤラシい顔があった。
「神通力の使用による副作用の可能性はどう考えている?」
「神通力は大地より無限にあふれ出ています。神々の大いなる遺産が地下に眠っているとしか思えません。無限の神通力は、文字通り無限。大量使用をしたとしても、すぐに次の大魔法が連発出来るでしょう。副作用など無い、まさに万能なる力なのです!!
クルセイリースは神に守護された国としか思えませぬ!!」
「・・・・そうか、ではこれより国家級敵国殲滅魔法を使用する。目標は沖合に展開中の国連軍艦隊だ!!!」
「承知しました。しかし、2発目として、日本国ないし大英帝国には使用しないので?」
「敵国の正確な座標が解らぬ」
「大英帝国の一部であるカナダであれば、グレファーのおかげで正確な座標が解りますが? オタワとやらを吹き飛ばしては?」
「・・・・・・それに、関係ない民を巻き込んで消滅させることもあるまい。私はそれを望まない」
「・・・・ふふ・・・・甘いですね。私は大魔法の補助につくよう、イブリース大元帥から仰せ使っております。この大いなる魔法は神の魔法。かつて名を馳せた古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国でさえもこの大魔法を防ぐ事は出来ず、国ごと尻尾を巻いて逃げ出した」
「今回あふれ出る神通力を使用するとはいえ、触媒となる「王家の秘宝」と「軍神の指輪」は相当に古く、補修に人の手も加えられている。使用される神通力の出力も、神の使用した星堕としに比べると遙かに低いため威力は相当に落ちる。しかし・・・・」
「はい、艦隊を全滅させるなど造作も無い事」
「・・・・儀式を開始する!!軍神の棟へ行くぞ!!!」
軍王ミネートは、聖王国を護るため、軍神の棟へ向かうのだった。しかし、その軍神の棟には、国連軍の放った矢が向かっていたのを彼等は知らない。
クルセイリース大聖王国北方100キロ沖合
海上自衛隊原子力潜水艦「やまと」
「・・・・・頃合いだな」
懐中時計を片手に、艦長の海江田はそう呟く。
「司令部からは、作戦中止の連絡はないか?」
海江田は通信員に最終確認を行わせる。もし上陸作戦を中止する場合、第二計画として核弾頭を搭載したトライデントⅲ(日英共同開発)による攻撃に切替わる為だ。更に目標も、軍事施設から民間人居住区に変更しなくてはならず、慎重に確認する必要がある。
「しかし、イギリスも悪質ですな。核保有国が日英・・・強いて言うならばラヴァーナル帝国やグラ・バルカス帝国を含めて4カ国しかないのを良いことに、通常弾頭仕様のトライデントを我が国に作らせるとは・・・・」
副長が呆れ顔を浮かべる。
「作れてしまうのが更に恐ろしいがな」
元々はアメリカ国防総省発案のトライデントの通常弾頭改修プログラム。世界規模の迅速打撃能力を開発するための非常に長期的な戦略の一環とされ、爆発物を搭載しない仕様と数千本のタングステン製のロッドを散布し、3000平方フィート(約280平方メートル)の領域を跡形なく粉砕する仕様が考えられた。これにより、警告時間および飛翔時間ほとんどなしでの精密な通常弾頭による攻撃が見込まれるようになるが、問題はレーダー警戒システムで核弾頭型弾道ミサイルを識別することがほとんど不可能になってまう事であった。これにより、他の核保有国が核攻撃と誤解して報復攻撃を誘発する可能性が生じうる。故に地球世界では、このプログラムは実現する事はなく、幻のプログラムになっていたのだが、異世界転移がそれを変えた。日英が弾道ミサイルや核兵器に関する最先端技術を独占している為である。アメリカ抜きでの国防の為には、手段は選ばぬ。選択肢のない両国は、主人ですら諦めた兵器を遂に手に入れた。そしてそれを撃ち込もうとしているのだ。
「司令部からは作戦中止の連絡なし。よって、作戦続行と判断されます!!」
「了解した。通常弾頭仕様のトライデントⅲを発射せよ!! 目標は「軍神の棟」!! 敵の悪足掻きを完全に無力化する!!」
厳重にロックされたトライデントⅲの発射システムを規定に従いながら解除していく海江田以下原子力潜水艦「やまと」乗員。そして遂にその時が来たのである。
「・・・・・・・・さて、どうなるかな」
艦全体が揺れる。後の結果は神のみぞ知る。トライデントⅲは一切の不具合を起こす事なく飛行し続ける。
クルセイリース大聖王国
軍神の棟南方30キロ上空
海上自衛隊飛行試験艦「むらさめ」
艦橋CIC
「間もなくトライデントⅲが着弾します」
日本国防衛省技術研究本部が自国での飛行艦建造、運用、量産に向けた技術開発の為、退役予定であった「護衛艦むらさめ」を改装する形で生まれ変わった飛行艦である。
「しかし、超ステルス技術は頭おかしいな。レーダーには映らず、肉眼で認識する事も出来ないとは・・・・」
飛行試験艦「むらさめ」には、イギリスの空中戦艦には搭載されていない新技術が搭載、試験されていた。その技術こそが「超ステルス」。F-35とは異なり、完全にレーダーに映らなくする事が出来るだけでなく、クリスタルシールドと併用する事で、今回のような弾着観測艦として運用する事が可能である。ただし、それらに要求されるエネルギー量が半端ではなく、現在試験艦「むらさめ」が作り出すエネルギーの98%を消費する有様である。
「今後の技術開発の進展に期待するしかない・・・・と言う感じか」
現場で運用する隊員達は粛々と作業を進める。そしてその様子は旗艦クイーン・エリザベス・2世に共有される。
国連軍クルセイリース大聖王国報復攻撃艦隊旗艦
イギリス海軍空中戦艦「クイーン・エリザベス・2世」
艦橋CIC
「・・・・・終わったな、アキラ」
飛行試験艦「むらさめ」が送ってきた画像には、対象物が完全に消滅し、クレーターが作り出された更地が映し出されていた。そこにいた生物は誰も生き残らなかったであろう。
「・・・・・ああ、ヒロシ。さて、航空隊を投入するか。辛うじて生き残っている敵地上部隊を爆撃させる」
国連軍はクルセイリース大聖王国本土上陸作戦に向けた最終段階に映る。予め上空で待機していた爆撃隊が突入を開始する。新生グラ・バルカス帝国空軍の新型爆撃機グティマウン2が日英の戦闘機部隊の護衛を受けて飛行する。グティマウン2には、日英が開発した28式地中貫通弾を搭載しており、辛うじて生き残っている地上部隊に息の根を止めるべく突き進む。
クルセイリース大聖王国ワカスーカルト南南東約70km
本土防衛秘匿航空基地コニア
「ど、どうする?!」
「どうするって・・・上級将校はいないんだぞ!!」
上級将校が根こそぎやられたクルセイリース大聖王国軍は大混乱の中にあった。
「え、沿岸砲台から支援要請!! 敵の小型飛行艦(グティマウン2)により猛烈な爆撃を受けており、竜騎士で追い払って欲しいと!!」
「ふざけんな!! 竜騎士は既に全滅してるんだぞ!!」
やがて混乱する彼らの頭上に国連軍の爆撃部隊が到着する。
「て、敵小型飛行艦が・・・・爆弾を多数投下!!」
斥候担当の兵が報告する。
「た、退避ー!!」
右往左往するクルセイリース大聖王国兵。次の瞬間、航空基地に猛烈な爆撃が襲う。一部ではエストシラント空襲の再来とも称される猛烈な爆撃により、クルセイリース大聖王国はワカスーカルト周辺における制空権、制海権を完全に喪失。地上部隊も壊滅し、遂に国連軍による本格的な本土上陸作戦が開始されるのである。
クルセイリース大聖王国北部地域
イブリース大元帥の邸宅
「な、何ですと!? メナスはしくじったのですか?!」
部下からの報告にイブリース大元帥は酷く狼狽する。
「八岐大蛇の復活、その後私が八岐大蛇と融合し、邪竜・・・・ゲフンゲフン、神竜ヤマタノリースとなり、パラディオンの巫女を喰らい、祭祀の杖の力を吸収し、来たるべく出現する他の大陸の秘宝や竜の力を取り込んで世界の絶対的支配者として君臨する。私の素晴らしい偉大な理想を成し遂げられないではありませんか!!」
クルセイリース大聖王国の民ではないイブリースには野心があった。世界各地に眠る古の魔法帝国に関する資料。それらは何れも、普通なら信じる事の出来ない神話ばかりであるが、幼い時から野心に溢れていた彼女は違った。
「私が神となり、古の魔法帝国復活の暁には、神である私が滅ぼす。そして私が新たな世界の神話とならなくてはならないのに!! それがこの世界を救う唯一の策であるのに!!」
イブリースは、神話について調べていくに連れ、古の魔法帝国に対する強い恐怖を抱き始めていた。そんな中、彼女はクルセイリース大聖王国、そして存在したとされる幻の国パラディオン共和国、そしてその他秘宝達。
「その為に私は・・・・私は!!」
自らの野心を満たすため、異国の地にやってきたイブリース。クルセイリース大聖王国に眠る八岐大蛇を日英に復活させ、それを鎮める。やがて日英を利用し、他の秘宝や竜の力を取り込み、日英を倒して世界を支配する。その為に彼女はミネートを支援し、彼を手駒にした。しかし、それも全て水泡に帰した。日英という、彼女の想像を超える実力を持った国家連合の存在が彼女の野心を打ち砕いた。
「既にワカスーカルトには戦力はなく、日英を中心とした国連軍が続々と上陸。斥候からの暗号通信では、国連軍は無抵抗でワカスーカルト市街地を占領。拠点化を進めていると!!」
「な・・・・なんと・・・・」
国連軍占領下
クルセイリース大聖王国ワカスーカルト
ワカスーカルト市役所
「ここを国連軍の現場司令部とする。必要な機材をここに運び込んでくれ」
陸上自衛隊陸将補である長命國男は、上陸後における国連軍地上部隊の最高司令官として作戦に参加。同時にワカスーカルト臨時総督に任じられた。
「長命総督!!」
「総督・・・・か。慣れないものだな。で、どうした?」
「調査の結果、ワカスーカルト市街地に住む民間人達は郊外の避難所に逃れている事が判明致しました。如何しましょうか?」
「彼等はここ(ワカスーカルト)に住む住民なのだろう? 今後の事もある。帰ってきて貰うんだ。無論、武器は取り上げる」
「畏まりました!!」
「それと施設科には我々が保護しているクルセイリース大聖王国王子ヤリスラと王女ニースを迎え入れる邸宅を作らせるんだ。あとは輸送機が離発着出来る滑走路も必要だ」
(イギリスの調略により、クルセイリース大聖王国国内では裏切り者で溢れている。だが、戦後のクルセイリース大聖王国統治の為には、王族の血と権威は必要だ。そしてそれらに従わない不穏分子を我々国連軍が、クルセイリース大聖王国正統政府の要請、という形で討伐。しかし、我が弟子アキラも恐ろしい策を考えるものよ)
クルセイリース大聖王国本土上陸に成功した国連軍。ワカスーカルト周辺では、国連軍の活動が活発化。敢えて破壊せずに放置していたワカスーカルト軍港を国連軍は接収。続々と補給整備部隊や資源が投入。一方のクルセイリース大聖王国軍は、更なる戦力喪失、そして聖都への本格的侵攻を酷く恐れ、国連軍には一切手を出さなかった事で、ワカスーカルト周辺の占領下が盤石となっていくのである。
「さて、クルセイリースはどうでるのであろうな?」
クルセイリース大聖王国聖都セイダー
テンジー城王の間
「ヤリスラ!! ヤリスラは何処に行ったのですか!?」
聖母ラミスは必死に聖王子ヤリスラを探す。
「ヤリスラ様!」
「何処にお隠れなのですか〜?」
お付きの従者や近衛兵達もいるはずの無い王子を探し続ける。
「せ、聖母ラミス様!! 緊急事態です!!」
「どうしたのです?! ヤリスラが見つかったのですか?」
「ヤリスラ様は見つかっておりません・・・ですが、それ以上に報告しなくてはならない事でして・・・」
「そ、そうなの・・・で、報告しなくてはならない事とは?」
「申し上げます!! ワカスーカルト周辺を占領する国連軍の長、長命國男とか申す者からです!! 読み上げます!!」
私は国連軍ワカスーカルト臨時総督長命國男と申します。陸上自衛隊にて、陸将補の地位にあります。さて、皆様方もご存じであるかと思われますが、ワカスーカルトは我々国連軍の占領下にあります。ワカスーカルト周辺の制空権、制海権は完全に国連軍が掌握しております。また、貴国の重要施設である「軍神の棟」も、国連軍が完全に破壊致しました。更に貴国の秘密兵器であるキル・ラヴァーナルも、飛行艦隊も我々が全滅させました。最早、貴国が更なる抵抗を行えば、徒に犠牲を増やすだけです。ですので、貴方方が探しているであろう、聖王子ヤリスラ殿についてお知らせ致します。
聖王子ヤリスラ殿は、聖王女ニース殿と共に、国連軍に投降致しました。
同時に両人共に、タルクリス宣言の受け入れを表明。後日、国連軍占領下のワカスーカルトにて、クルセイリース大聖王国が国連軍に対して降伏する旨を記した降伏文書に調印する見込みであります。また、ヤリスラ様は調印後ら国内のクルセイリース大聖王国全軍に対して、国連軍に対して武装解除し、抵抗する事を禁ずる。これに反する者は例え一族であっても、譜代の家臣であっても逆賊として、国連軍に容赦ない討伐を行う許可を与える事をお認めになると申されました。
ヤリスラ殿、ニース殿を悲しませぬ為にも、賢明な判断を御期待致します。拒否すれば、聖都セイダーには核兵器・・・貴方方の言うコア魔法が撃ち込まれる事でしょう。
「・・・・との事」
「な、なんと・・・・・」
王の間には静寂が包み込む。
「・・・・・イブリース大元帥を招集するのです!! イブリース大元帥なら!!」
クルセイリース大聖王国北部地域
人気の無い海岸
「クルセイリース大聖王国もあと数週間の命。八岐大蛇復活が阻止されてしまった以上、この国は私の足手まといになるだけ。野心の為とは言え、なんだかんだでこの国の為に尽くしてきたし、可哀想ではあるけれど、クルセイリース大聖王国。この国は日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合に滅ぼされるのよ」
八岐大蛇復活が阻止されてしまい、完全にこの国でやる事がなくなってしまったイブリース大元帥。
「パラディオン共和国も日英の手に落ちてしまった以上、私が神になる計画もおしまいね。だったら、何処かの辺境の島を改造し、気儘に暮らすとしようかしらね」
大元帥の地位を捨て、彼女は一人逃亡を図ろうとしていた。既に部下達には解雇通知を出した。部下達には資産を分け、皆が去っていった。
「・・・・・」
イブリースは脱出用の円形の飛行艦に乗り込む。とある人達が見れば、一人用のPODにしか見えないだろう。
「何処へ行くんだあ?」
「ええ?!」
「こ、国連軍がどうしてこんなところに?!」
彼女の眼前には、パーパルディア皇国陸軍の兵士達の一団が映っていた。
「祖国を見捨てるんですかあ? 大元帥ともあろう御方が?」
国連軍は、今回の戦争の黒幕であるイブリース大元帥の捕縛ないし殺害を試みていた。国連軍はワカスーカルト上陸作戦と同時に北部地域に少数の部隊による上陸作戦を実行。ミカドアイHDの輸送用原子力潜水艦「イチジョウ」で輸送され、ブロリー率いるパーパルディア皇国陸軍の小隊30名が、イブリース大元帥捕縛ないし殺害の為に秘密裏に上陸していたのである。
「え、援軍を他国に要請するじゅ、準備よ!!」
「味方になる国なんてないのに、かあ? 一人で逃げるの間違いではないんですかあ?」
「ち、違う!!」
埒が明かないと判断したブロリーは、一人用のPODを両手で掴む。そしてそれを人外のパワーで握り潰す。
「ふおおお!!」
一人用のPODこと、一人用小型飛行艦が圧縮されていく。ただし、ギリギリ殺害しないレベルに抑えながら圧縮する。これには、輸送用原子力潜水艦「イチジョウ」に一人用のPOD毎収容する為であったと言われている。
「簡単に殺して貰える。そう思っていたのか」
こうしてイブリース大元帥は国連軍に捕らえられた。彼女は辺境の大国カナダに送られ、生涯カナダ当局の監視下に置かれ、最終的には利用価値無しとして、始末される事になるのである。こうして、クルセイリース大聖王国は軍の指導者階級が軒並み壊滅。最高指導者であるヤリスラが国連軍側に寝返り、降伏を呼びかけた事により、多数の地方貴族や将軍、策士が投降。聖母ラミスだけは、正統クルセイリース政府を主張し、同士と共に山間部でゲリラ戦を展開。しかし、既に戦争の趨勢は喫しており、聖王子ヤリスラの呼びかけで投降。こうして、国連軍とクルセイリース大聖王国との間の戦争は終結した。ワカスーカルト総督を勤めた長命國男陸将補は、そのまま国連軍クルセイリース大聖王国占領部隊の長として、日英の文官の補佐を受けながら、聖王に即位したヤリスラからの委任を受けながら戦後改革や復興に務めていく事になるのである。
「ヒロシ、ちなみに国内では俺等、東京地検に刑事告訴されてるぜ!!」
「絶対お前とバイオレット准将発案の無制限潜水艦作戦のせいじゃん!」
「ちなみにバイオレット准将はイギリス人だから門前払いされたから、刑事告訴されてないぜ!!」
「・・・・・もしかして、俺等・・・・失職の危機?」
「それはない。ちなみにアキコは新大陸に行ったから、暫く帰って来ないぜ。あと、ヒロシは英連邦パラディオン王国で海軍教官として転属、俺はカルトアルパスに派遣だから」
「なんで!?」
「パラディオンでシンと仲良くやっときな」
次章、新大陸編へ
(続く)