日本国 東京都福生市
航空自衛隊横田基地
「ではこれよりロウリア王国本土上陸攻略作戦について説明致します」
日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの将校らが集まり立案した今後の作戦計画の説明を開始する。
「まずはこれまでの戦闘の確認から入ります。昨日行われましたロデニウス沖海戦により、ロウリア王国海軍は保有する艦艇の半数以上を喪う大敗北を喫しました。これにより海上からのクワ・トイネ公国侵攻の可能性は排除されたと見てよいでしょう」
「陸上戦力については、ギムでの迎撃に成功したことで国境線から敵部隊は完全に退いています。また我が大英帝国に忠誠を誓うことを表明した諸侯がローデシア連邦を名乗り独立。既にロウリア王国側に味方する諸侯の領土を攻略し、王都ジンハークに向けて侵攻中。一部ではロウリア王国軍本隊との戦闘が開始された模様です」
「エジェイに展開する我が国航空隊はローデシア連邦支援の為に日英と共同で出撃し、ロウリア王国軍の飛龍隊と交戦。此方の損害はなく、一方的に撃墜しております。諜報員や現地人スパイの報告から、ロウリア王国の航空戦力は残り100程で全てが王都防衛の為に温存されているようですが、所在地は不明です」
クワ・トイネ公国やクイラ王国とは違い、近代化されていないローデシア連邦諸侯がロウリア王国軍本隊とまともに戦えば蹂躙されてしまう可能性がある。イギリスは宣戦布告しているとは言え、クワ・トイネ公国からロウリア王国軍を追放しており戦争継続の大義にいまいち欠けるところがあった。そこでイギリスはロウリア一族に不満を抱く南西諸侯を扇動し独立させ、現在はローデシア連邦からの支援要請を受け、ローデシアの独立運動を支援する為に戦争を継続する。ということになった。これを受けて航空支援を実施し、制空権を確保。基本的には現地人に闘わせて勝手に国力をすりつぶして貰い、疲弊したところを経済的に支配する腹積もりである。
「まずギムからクワ・トイネ公国陸軍を主力とする陸上部隊をロウリア王国の工業都市ビーズルに向けて進軍させ、ビーズルに駐留する部隊を釘付けにします。また既にローデシア連邦諸侯による連合軍がジンハークから南30キロ地点まで進軍しており、諜報員や現地人スパイから本隊主力を南側に集めていることが確認されています。それでも充分過ぎる部隊がジンハーク中心には残っていることから、マイハークで補給中の艦隊を出撃させ、港に停泊している残存艦隊に向けて砲撃を行います。その後陸上部隊1000を上陸させ、橋頭堡を確保。港はロウリア王国を支援するパーパルディア皇国と呼ばれるこの世界の列強国との連絡や中立国との交易の拠点でもある為、港を奪還するべくに北にも兵を振り向けざるを得なくなるでしょう」
「また航空隊は王都防空の為出てくるであろう、ロウリア王国軍なけなしの航空戦力排除とローデシア連邦諸侯支援の為に展開。ジン・ハークを囲む城壁の一部を破壊します」
「城壁を破壊されれば、ローデシア連邦諸侯が王都に侵入する可能性が高まることから、部隊を振り向けなくてはならずより一層中心の守りは薄くなります。敵部隊の移動確認後特殊部隊を王城に突入させ、首謀者ハーク・ロウリア34世を捕縛します」
作戦の詳細が詰められると、各地の部隊に指示が飛ぶ。ギムからはクワ・トイネ公国、オーストラリア、ニュージーランドの陸上部隊がビーズルに向けて進軍を開始。敵に見付けて貰う必要があることから、堂々と開けた道を進む。並行してロウリア王国中に展開しているMI6や現地人スパイの手により、日英連合軍はビーズルに向けて主力部隊を進軍中という嘘の中に僅かな真実を混ぜた情報を流布した。これを受け、ロウリア王国はビーズルの防衛力強化の為、ジン・ハークから100000の兵と50騎のワイバーンを援軍として派遣。ビーズルの兵力は150000まで膨れ上がった。ビーズルはロウリア王国皇太子ハーク・ビーズル・ロウリアが基地司令を勤めていることから、流石の大王も息子を見捨てる訳には行かず、王都から援軍を出したのである。
「港が艦隊の射程圏内に入りました!!」
「射撃を許可する。撃ち方ー、始め!!」
港に到着した日英連合艦隊は停泊中の帆船や陸上基地に向けて猛烈な砲撃を開始。空母プリンス・オブ・ウェールズや護衛艦いずもから発艦したF35Bが王都上空に到達すると、各地から迎撃のワイバーンが飛来する。これを空対空ミサイルで叩き落とし、航空戦力を完全に排除。F35Bに注意が行っている隙を突いてエジェイから飛来した日英加の航空隊が空爆を行い、城壁を破壊。城壁の破壊を確認したローデシア連邦諸侯が一斉に内部に突入し、ロウリア王国軍は大混乱に陥る。ジン・ハークに潜伏している諜報員により、日英の陸上部隊が東から出現。破壊された東側の城壁からも敵が侵入したという偽情報が流れると、中心部にいた兵が次々と分散していく。航空隊は西側の城壁も破壊すると、西側からも敵が来ていると勘違いした司令部が西側にも部隊を差し向けた為、ハーク城には僅か50の近衛兵しか残っていない有り様であった。
ロウリア王国王都ジン・ハーク ハーク城
6年もの歳月をかけ、列強の支援と服従と言っていいほどの屈辱的なまでの条件を飲み、ようやく実現したロデニウス大陸を統一するための軍隊、錬度も列強式兵隊教育により上げてきた。資材も国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をしてようやく作った軍。念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのごとく軍事力に差をつけた。
「圧倒的じゃないか・・・我軍は・・・勝利で勝つはずだった。勝つはずだったのだ!!」
これが日本とイギリス連邦王国とかいうデタラメな強さを持つ国の参戦により、保有している軍事力のほとんどを失った。当初、国交を結ぶために訪れた日本とイギリスの使者を丁重に扱えば良かった。もっとあの国を調べておくべきだった。
「ワイバーンのいない蛮国? とんでもない。ワイバーンが全く必要の無いほどの超文明を持った国家ではないか! 軍のほとんどを失った。残っていたはずの船団も夜間停泊中に海と空からの猛烈な攻撃を受け港ごと灰燼に帰した。こちらの軍は壊滅的被害を受けているのに、相手は、日本人やイギリス人は1人も死んでいない。とてつもないキルレシオ、文明圏の列強国を相手にしても、ここまで酷い結果にはならないだろう。もっと最初にきちんとした対応をとるべきだった。くやんでも、くやんでも、くやみきれない。敵は、もうそこまで来ている。首都上空を我が物顔で、羽虫のような機械が飛びまわっている。ワイバーン部隊も全滅した。もう、どうしようもない・・・・」
「父上・・・・」
力なく座るハーク・ロウリア34世の傍らにはかつては皇太子として寵愛を受けるも、亜人に対する考え方の違いから皇位継承権を剥奪し、幽閉していた長男ハーク・オーラフ・ロウリアが控える。ちなみにハーク・ビーズル・ロウリアは次男である。
「どうやらオーラフ、そなたが正しかったようだ。にも関わらず余は・・・父である余は皇太子であったそなたが怖く、自分の存在意義を否定されているかのようで身分を剥奪し、教会に預けた。そなたの言う通りに、亜人とは友好関係を築くべきだった」
「父上、それは結果論にございます。此度の敗戦は日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の参戦によるもの。もしそれらの国々が存在しなければ、間違っていたのは私でしょう。父上、顔を上げてください。まだ父上にはやらねばならぬことがあります」
タタタタ・・・タタタタ・・・
連続した聞きなれない音が王城の中で聞こえる。近衛兵の悲鳴が聞こえる。敵は直ぐそこまで迫っている。
「父上、実は私はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国から接触を受けておりました。ロウリア王国は私が国王となり、父上と弟ビーズル公にはカナダへ移住。日英による民主化政策の実施とクワ・トイネ公国への賠償、ローデシア連邦の独立承認。他にも色々ありますが、それらを認めることでロウリア王国は存続出来るのです。父上には、ビーズルにいる弟の説得が残っています。まだこの国の為に、民の為にやらねばならぬことがあります!!」
ドン!
王の謁見の間に、緑色のマダラ模様の変な軍がなだれ込んでくる。手には、魔法の杖のような物を持っている。剣は帯剣していない。どうやら全員魔術師のようだ。大王の脳裏に古の魔法帝国軍、魔帝軍のおとぎ話が浮かぶ。
「ま・・・まさか・・・魔帝軍か!?」
ハーク・ロウリアは恐怖に慄き、尋ねる。彼らの代表が答える。
「魔帝軍というのは、よく解りませんが・・・我々は日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの精鋭部隊です。オーラフ殿から話は聞いたでしょう。さて、如何しますか?」
銃口をハーク・ロウリアに向ける精鋭部隊。
「・・・・分かった。そなたらの申す通りにしよう」
ハーク・ロウリアの両手に手錠がかけられ、ハーク城には日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの国旗が掲げられると共に、ハーク・ロウリア34世が全軍に戦闘の停止と武装解除を命令。これを受けて日英もクワ・トイネ公国とローデシア連邦に対して戦闘停止を通達。ロウリア王国は降伏し、徹底抗戦派は皇太子のいるビーズルへと逃走した。その後の戦後処理により、ロウリア王国の領土は縮小。新たにロウリア王国国王に就任したハーク・ロウリア35世を首班とする親日英派の西ロウリア王国と、皇太子であったハーク・ビーズル・ロウリアを首班とし、徹底抗戦並びに亜人絶滅、ロデニウス大陸統一を掲げ、正統な後継者を主張する東ロウリア王国、戦争中に独立を宣言し、イギリス連邦王国に加盟したローデシア連邦に分裂。日本とイギリス連邦王国、クワ・トイネ公国、クイラ王国、ローデシア連邦は西ロウリア王国を国家承認し、かつてのGHQに習った国内改革が進められることに決定。人口の多い西ロウリア王国には日英の資本が集まり、急速な経済成長と戦後復興が成し遂げられることになる。一方の東ロウリア王国は国民の西ロウリア流出を阻止するべく、壁の建設に着手。後にビーズルの壁と呼ばれ、東西ロウリア分断の象徴となる。また更なる経済成長の為にクワ・トイネ公国、クイラ王国、西ロウリア王国、ローデシア連邦は東ロウリア王国の脅威に対抗するべく、ロデニウス連合を結成。地球世界のEUを模範とした組織となり、初代ロデニウス連合大統領にはクワ・トイネ公国の首相カナタが、初代委員長には西ロウリア王国の宰相マオスが選出された。加盟国間のヒト、モノ、カネの移動が活発になり、かつてハーク・ロウリア34世が夢見たロデニウス大陸の統一は平和的に成し遂げられたのである。結果、東ロウリア王国はますます困窮することになるのは、後の話である。
(続く)