日英同盟召喚   作:東海鯰

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グレナダ島沖海戦

「なんてことだ・・・やってしまった・・・・」

 

外務省職員の島田は、海上自衛隊及びオーストラリア海軍がフェン王国に攻撃に現れた正体不明の部隊を見事に殲滅する様子を見て、多少混乱する。

 

「国と国との争いに巻き込まれてしまった・・・運が悪すぎるとしか言いようがない・・・」

 

頭を抱える島田に対して、旧カリブ海諸国の仲介で先にフェン王国と国交を結んでいたイギリスの駐フェン王国大使が話し掛けてくる。

 

「ミスターシマダ、お顔が優れないようですが?」

「こ、これはこれはヴィクター駐フェン王国イギリス大使・・・」

「ミスターシマダ、これは現実です。フェン王国は他国の攻撃を受けた。我が国の諜報機関からはパーパルディア皇国による攻撃であるとの情報が入っておりましてな」

 

嫌な予感がする。

 

「まさか貴国は始めからパーパルディア皇国が軍祭に奇襲してくると知っていたのか!?」

「ええ、勿論。ですから、オーストラリア海軍の駆逐艦を一番外側、一番最初に攻撃出来る位置に配置したのです」

 

イギリスの大使は、何か問題か? と言わんばかりの表情だ。

 

「それにミスターシマダ、パーパルディア皇国の部隊は明らかに海上保安庁の巡視艇に先制攻撃を加えようとした。もし攻撃を許せば次は自らが攻撃を受ける可能性があった。ロックオンした時点で反撃されても文句は言えない。これを受けてオーストラリア海軍は集団的自衛権を行使した。どう見ても正当防衛射撃であり、オーストラリア海軍が責められる言われも、我が国が責められる理由もない。違いますか?」

「・・・そ、それは・・・・」

「更にパーパルディア皇国の航空隊の数は多く、オーストラリア海軍と海上自衛隊が参戦しなければ撃退は難しく、王城近くにいた我々も死の危険があった。違いますか?」

「ぐっ!」

 

このタイミングでこんなことが起こるなんて、本当についていない・・・・島田は自分の運命を呪った。外務省は事態の悪化を防ぐため、情報収集を行ったところ下記の事項が判明した。

 

・イギリス政府並びにフェン王国及び各国武官の反応から、襲ってきた部隊は、フェン王国西側約500kmにあるフィルアデス大陸の第三文明圏に属する世界5列強国の一つ、パーパルディア皇国で間違いない

 

・パーパルディア皇国の皇国監査軍と呼ばれる部隊であり、文明圏外の国を対象とする第3外務局の影響により動く部隊である。

 

・フェン王国に対する懲罰的攻撃を、各国関係者の集まる軍祭に合わせ、自己の権威を高め、他国を従わせるために行われた、いわゆる砲艦外交のような攻撃と思われる。

 

・イギリス並びにグレナダの情報によれば、グレナダ島西側約200kmの位置を、速力15ノット程度の速度で東へ向かう22隻の艦隊が確認されている。

 

・これを撃退するべく、イギリス、カナダ、オーストラリアの艦艇4隻が既に向かっており、海戦は避けられない

 

事態は切迫していた。本日の夕方、フェン王国側との会議が予定されていたが、外務省は急遽フェン王国外交部署に連絡を求める。フェン王国側は、即時会談に応じた。更にイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの駐フェン王国大使も参加した。

 

 

「パーパルディア皇国の奴等、本当に命知らずだな」

「ああ。我々に刃を向けるとは・・・本当に愚かだ」

「どうやらパーパルディア皇国は自ら死刑宣告されに行くとは・・・」

「核を落としてみるか? 久々に核実験をやってみたくないか?」

 

イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはフェン王国と安全保障条約を結んでいる。彼らは日本をパーパルディア皇国との戦争に引きずり込む気しかないのがわかる。

 

「・・・・・・・・・」

 

来賓室で待つ日本国外務省の一団、フェン王国は貧しい国ではあるが外交のための来賓室は、豪華さは無い。しかしおくゆかしさ、趣のある部屋であり、非常に質が高い。一時して、フェン王国騎士長マグレブが現れた。

 

「日本の皆様、イギリス連邦王国を代表して来られたオーストラリアの皆様。今回フェン王国を不意打ちしてきた者たちを、真に見事な武技で退治していただいたことに、まずは謝意を申し上げます」

 

騎士長は深々と頭を下げる。

 

「いえ我々は、貴国への攻撃を追い払ったのではありません。我々に攻撃が及んだので、振り払っただけでありあます」

 

日本国外務省は牽制する。

 

「さっそく、国交開設の事前協議を・・・実務者協議の準備をしたいのですが・・・」

 

フェン王国はもう日本も味方に引き入れたくて、たまらないようである。

 

「貴国は、もう戦争状態にあるのではないですか? 状況が変わりましたので我々の権限だけでは戦争状態にある貴国と現時点で国交開設の交渉が出来ません。事態の重みを考えるに、一度帰国し、内容を詰めてから再度ご連絡いたしたいと思います」

 

外務省はイギリスの大使が何かを言い出す前に一刻も早くこの場から引き上げたかった。

 

「国交開設をしなくても貴殿方は帰れませんよ? ミスターシマダ。日英同盟をお忘れか?」

「そ、それは・・・」

「日英同盟は貴国並びにイギリス連邦王国の何れかが紛争状態に突入した場合、参戦する権利と義務を有する。イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはフェン王国と安全保障条約を締結している。今回のパーパルディア皇国による領空侵犯並びに武力行使は安全保障条約発動要件を満たしている。我々大英帝国がフェン王国防衛の為に参戦することになる。それ即ち日本国も日英同盟に基づき参戦しなくてはならない」

 

ヴィクター大使が日本国外務省を逆に牽制する。要は逃げるなということだ。

 

「ヴィクター大使殿、そこまでにしてください。とりあえず安全保障条約発動の要請はまだしないつもりですから」

「これは無礼な真似をしてしまい、申し訳ありません」

 

ヴィクター大使が引き下がる。

 

「シマダ殿のお気持ちはよく解りました。良い返事を期待しています。ただ1つ。これだけは心に留めおいて下さい。あなた方があっさりと片付けた部隊は第3文明圏の国。しかも列強パーパルディア皇国です。我が国はパーパルディアから土地の献上という一方的な要求をされ、それを拒否しました。それだけで襲って来たような国です。過去に我々のようにパーパルディアに懲罰的攻撃を加えられた国がありました。その国は敵のワイバーンロードに対し、不意打ちで竜騎士を狙い殺しました。かの国はパーパルディア皇国に攻め滅ぼされ、国民は反抗的な者はすべて処刑し、その他の全ての国民は奴隷として各国に売られていきました。王族は親戚縁者すべて皆殺しとなり、王城前に串刺しでさらされました。パーパルディア皇国、列強というのは強いプライドを持った国というのを、お忘れなさらぬようお願いいたします」

 

ぞっとするような話を聞いた後、外務省の一団は、王城から港に向かった。

 

「・・・・やれやれ、日本はいつまでも外交が下手くそ過ぎますな」

 

日本の使節団が去った後、ヴィクター大使がタメ息をつく。

 

「ではフェン王国の皆様。これよりパーパルディア皇国の艦隊が全滅する様子を御見せ致します」

 

その後イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの大使館職員がプロジェクターの準備を開始する。

 

「おお! 壁に絵が出ておる!」

 

日本の使節団と入れ替りで入って来た剣王シハンはプロジェクターに映し出される画像に驚く。

 

「現在グレナダ島西の沖合い200キロ付近にパーパルディア皇国の艦船が現れました。先のグレナダに対する従属要求拒絶に対する蛮族なりの答えだと思われます」

「なんと! 皇国はグレナダにも要求を!?」

「命知らずな蛮族ですから仕方ありません。また我が国の諜報機関によれば、グレナダ懲罰後にフェン王国へ転進するとのこと。我が国はグレナダ防衛並びにフェン王国との安全保障条約に基づき懲罰艦隊を全滅させます」

 

直後、先頭を航行していた皇国の軍艦が爆発炎上し、一瞬にして沈んでいく。

 

「おやおや・・・当たりどころが悪かったようですなあ。まあ、一瞬であの世に逝けたのでしたら、不幸中の幸いでしょう」

 

轟音と共に皇国の軍艦は射撃演習の的と言わんばかりに沈められていく。オーストラリア海軍の駆逐艦ホバートに設置されたカメラはリアルタイムで海戦の様子をフェン王国の面々に見せ付ける。

 

「さてさて、残り1隻になってしまったようです。シハン陛下、あの輩に降伏の二文字はあるのですか?」

「ない」

「即答ですね」

 

直後、ホバートの画像が切り替わる。主砲をグレナダ懲罰艦隊最後の艦船に向ける。直後にホバートから砲撃が行われ、グレナダ懲罰艦隊は海の藻屑となった。

 

「・・・・すごいものだな・・・貴国らの船は・・・」

 

フェン王国の面々はイギリス連邦王国と安全保障条約を締結したことに深く安堵した。

 

「もう二度と皇国に頭を下げる必要はない・・・・第三文明圏の歴史が変わる・・・」

 

剣王シハンはイギリスとの関係強化と日本との国交樹立を深く決意するのであった。

 

 

パーパルディア皇国皇国監査軍東洋艦隊

 

「・・・・・あり得ない・・・あり得ない!!」

 

旗艦をオーストラリア海軍の駆逐艦ホバートに沈められた提督ポクトアールは救命筏の上で海を漂っていた。イギリス連邦王国海軍艦隊の砲撃により1時間も経たずして全ての艦船を沈められた。たった一門の砲で何が出来る! 最初はそう思っていた。しかし現実は違う。たった一門で充分なのだ! たった一門の砲は我が国のあらゆる砲を凌駕している。射程、威力、速射性、命中率。砲だけではない! 鉄の塊を海に浮かべ、我が国のあらゆる艦船より速く移動する。それが4隻だ。我が国が400隻で挑んでも敗北すると言ってよいだろう。灰色の船が此方に向かって来る。筏に乗る者、破壊された軍艦の破片や仲間の亡骸にしがみつきながら漂う者らは最期の時が来たと悟った。

 

「これまでか・・・」

 

自決の意思を決めた直後、イギリス連邦王国艦隊は漂流者救助の為にヘリコプターや内火艇を発進。次々にイギリス、カナダ、オーストラリアの艦艇に収容されていく。やがてポクトアールの乗る救命筏にイギリス海軍の内火艇が接近する。念のためか、銃で武装した乗員の姿もある。

 

「漂流している我々を殺すつもりはないということか・・・」

 

ポクトアールはイギリス海軍により救助された。救助後に亡くなった者らを含め150名が海戦後救助され、イギリス連邦王国とパーパルディア皇国初の艦隊決戦は幕を閉じた。後にグレナダ沖海戦と称された軍事衝突はイギリス連邦王国の圧勝に終わり、パーパルディア皇国による支配崩壊の序曲となるのであるが、パーパルディア皇国は引き返すことなく、皇国崩壊の道を突き進んでしまうのである。

 

(続く)

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