日英同盟召喚   作:東海鯰

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砲艦外交の時間

フェン王国 首都アマノキ

 

話しは少し戻る。パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊をあっさりと片付けた海上自衛隊とオーストラリア海軍。その活躍を見て、文明圏に属さず軍祭に参加した各国武官は放心状態となっていた。

 

「な、なんだ!!! あの凄まじい魔導船は!!!」

「なんという恐ろしい力だ!! 常軌を逸しているぞ!!」

「あの列強ワイバーンロードをあっさりと叩き落とした!! いったい・・・何なのだ! あの船たちは!!」

「白地に赤い丸の旗が日本、複雑な旗がオーストラリアという新興国家らしいぞ」

「オーストラリアの旗の左上はイギリスという国の旗がモチーフらしい。ニュージーランドの旗にも入っているとも聞いた」

「まさか・・・古の魔帝の流れを汲む者たちでは!?」

 

海岸から海を眺めていた文明圏外の国々の武官たちは、自分たちの常識とかけ離れた力を持つ灰色の巨大船に恐怖を覚えると共に、味方に引き入れる事は出来ないかを考え始めていた。パーパルディア皇国を遥かに超える力を・・・もしかしたら、あの船の国々は持っているのかもしれない。フェン王国の軍祭に来たのであれば、フェンとは友好関係にあるという事だ。フェン王国と良好な関係を築き、あの船の国と仲良くなれば、もしかしたらパーパルディア皇国の属国化を防げるかもしれない。奴隷としての国民の差出や、領土の献上等、もしかしたら・・・フェン王国がパーパルディアの領土租借案を蹴った時は、フェンが焼き尽くされるのではないかとも思ったが、あの船の国と友好関係にあるのであれば、フェンが強気に出るのも理解できる。後にフェン沖海戦と言われた海戦後、日本は急激に多数の国と国交を結ぶ事となる。またイギリスは同君連合に加わることを希望する国や独自の君主を持つが庇護下に加わりたい国々をコモンウェルスに加盟させ、パーパルディア皇国に従属していた国々を日英陣営へと鞍替えさせていくことになる。

 

 

パーパルディア皇国第3外務局

 

「・・・・Huh?!・・・・・・・・・Huh!!」

 

局長カイオスはその報告を聞き、脳の血管が切れるのではないかと思われるほど激怒していた。事の始まりは、フェン王国が皇国の領土献上案を拒否した事からはじまる。498年間の租借案という慈悲も、双方に利があるにも関わらず拒否される(この時点で既にフェン王国はコモンウェルスに加盟しており、安全保障条約も締結済みなので当然)

 

「フェン王国は、皇国をなめている」

 

このような意見が第3外務局内で主流になった。数多の国々が存在するこの世界において、文明圏5カ国、文明圏外67カ国、国の大小はあるが、計72カ国もの属国を持つ列強パーパルディア皇国にとって、文明圏外の蛮国からなめられた態度をとられる事は、とても許容出来るものではない。他の国々の恐怖の楔が外れては困る。このような事情もあって、パーパルディア皇国第3外務局所属の皇国監察軍東洋艦隊22隻と、2個ワイバーンロード部隊が派遣されたのであった。ワイバーンロード部隊により、フェン王国首都アマノキに攻撃を行い、フェン人に恐怖を植え付け、軍祭に参加している文明圏外の蛮国武官に力を見せつける。そして艦隊による無慈悲な攻撃により、フェン王国首都アマノキを焼き払い、パーパルディア皇国に逆らったらどうなるのかを他国に見せつける・・・計画だった。

 

「なんなんだ! これは!!」

 

しかし結果は惨憺たるものだった。空襲に向かったワイバーンロード部隊は魔信を入れる間も無く消息を絶った。どうやったのかは不明だが、おそらく全滅したものと思われる。これについては当初ガハラ神国の風竜騎士団が参戦したのではないかと疑われた。しかし、風竜は確かに強いが数が少なく通信する間も無く全滅するのは考えにくい。その後に入ってきた情報、

 

「皇国監察軍東洋艦隊全滅」

 

第3外務局に激震が走った。しかも、提督は海戦の恐怖で頭がおかしくなったらしく、たったの4隻にやられたと、ありえない報告をしている。提督の言い分によれば、

 

・巨大な鉄龍1機が我が艦隊の上空を旋回した

・その後、入れ替わるようにして4隻から成る灰色の超巨大船と会敵した

・皇軍が攻撃を開始する前に敵巨大船は距離3kmで艦隊最前列に艦砲射撃を開始した

・敵巨大船は速く、こちらの射程距離にとらえることが出来なかった

・正確無比な艦砲射撃により艦隊は全滅した

 

この報告におかしい所は多々ある。まず船が我が方よりも大きいのに速いという部分。船が大きいと当然水の抵抗は強くなる。パーパルディア皇国の使用している風神の涙は、はっきり言って世界一であり、神聖ミリシアル帝国でもこれほどの風神の涙は作れない。我が国は高純度の魔石が取れる鉱山もあり、精製も一流だ。つまり、超巨大船で我が方よりも速い速度が出る訳がないのだ。そして3kmもの距離を置いての艦砲射撃。文明圏の列強でさえ、現在は2km飛翔する砲弾しか造れない。それを遥かに超える射程距離など、しかも文明圏外でありえるはずが無い。そして提督の頭が壊れたと判断される決定的な報告内容、

 

・正体不明の敵船は砲を合計22発放つ。それらは全弾命中し、しかもすべて船を撃沈させた

・敵は海上に漂う漂流者を救助し、提督自身も捕虜となった

 

よくもこんなふざけた報告書を出せたものだ。海上は揺れる。波がある。魔導砲の弾は1度でもずれたら着弾地点が大きくずれる。100発100中の砲など、古の魔帝でも無理だ。しかも海上に漂う敵兵を救助する等、提督はなんて想像力が豊かなのだろうと感心する。しかも・・・いや、もうやめよう。これらの報告は、完全に負けた言い訳だ。文明圏外の蛮国がそんな超高度な兵器を持っている訳が無い。提督以下の兵士たちは、敵の捕虜になっているという。提督なり、敵に脅されているのかもしれないため、今後どんな敵で何隻いたのか、詳細な調査が待たれるところである。皇国に泥を塗った敵がいるのは事実であり、ふざけた敵を殲滅する必要がある。しかし、敵が誰か知らなければ攻めようが無い。今回は負けている。皇帝の耳にも入るだろう。次は、監察軍ではなく、最新鋭の本国艦隊が動くこととなろう。どこかの列強がバックについている可能性も高い。第3外務局は「敵」を知るため、情報収集を開始した。

 

 

パーパルディア皇国第3外務局窓口

 

「もうしわけありませんが、今日課長と会う事は出来ません」

 

日本国外務省の職員は約束したパーパルディア皇国外務局の課長と会議のためやってきたが、窓口で再度足止めをくらう。

 

「何故ですか? 約束したではないですか!!」

「ちょっと込み入った事情が発生いたしまして・・・申し訳ありませんが、文明圏外の新興国と会議をしている状況ではないのです。予定は未定です。また1ヶ月以上後に連絡を下さい」

 

イギリス連邦王国と日本が原因で第3外務局は忙しくなっていたため、この日も重要人物とは面会できず、日本国外務省の職員は、この日もトボトボ帰ることになった。

 

 

パーパルディア皇国エストシラント沖南150キロ海上

哨戒艦エスト

 

「相変わらず代わり映えしねえ日々だなあ」

 

パーパルディア皇国首都エストシラント防衛の要として日々哨戒活動に従事している哨戒艦エスト。しかし、第3文明圏列強の首都に攻め込んでくる蛮族等いない為、基本的に哨戒艦に配属されるのは海軍の落第生ばかりで、軍規違反は日常茶飯事であった。

 

「艦長、一杯如何ですか?」

 

航海長が艦長に酒を勧める。勤務中であり、本来なら拒否しなくてはならないが軍規違反が当たり前の哨戒艦部隊では誰も注意しない。

 

「おお航海長! 気が利くな! 一杯貰おうか!!」

 

コップに酒が並々に注がれる。更には副長が勤務中に釣り上げた魚で作った塩焼きがつまみとして出され、完全に宴会モードであった。

 

「う~ん、旨い! 航海長の実家の酒はやはり最高だな!」

「父が喜びますぜ艦長! 副長は釣りのセンスがありますな! 私がやったらボウズでしたのに副長はバンバン釣り上げる!!」

「女は釣れないがな・・・もう一杯だ!!」

「はいよ~!!」

 

この時、哨戒艦エストから僅か2キロ先にはエストシラントに向かうイギリスの空母打撃群が迫っていたが、完全に酒に酔っていた乗員らはイギリス艦隊を完全に見逃し、易々と艦隊を首都近海まで通過させるという失態をおかすことになる。

 

 

イギリス連邦王国艦隊

旗艦空母クイーン・エリザベス

 

「見張り員からの報告では、哨戒艦と思わしき艦は乗員が酒を飲み交わす等此方に全く気付いていないとのこと」

「え? そんなことある? 首都近海だよ? 緊張感なさ過ぎだろ」

 

パーパルディア皇国の哨戒艦に見つけて貰い、その誘導でエストシラントに向かう予定だったイギリス艦隊は哨戒艦の乗員が酔っぱらい、気付いて貰えないという想定外の事態に遭遇した。

 

「仕方あるまい。彼等を無視して進むとする。暗礁に注意しながら慎重に進め!」

 

イギリス連邦王国艦隊はパーパルディア皇国の哨戒艦を無視して更にエストシラントへ向けて前進する。一方で突如として巨大艦が首都の目の前に現れたパーパルディア皇国側は大混乱となっていた。

 

 

パーパルディア皇国首都エストシラント

パラディス城執務室

 

「な、なんだと! 神聖ミリシアル帝国でもムーでもない、第三国の艦隊がエストシラントの沖合いに現れただと!? 哨戒艦隊は何をしていたのだ!!」

 

パーパルディア皇国皇帝ルディアスの弟にして皇位継承順位第一位のエルフェウスは突然の艦隊来襲に驚愕する。

 

「今は兄上も第一外務局局長も不在なんだぞ! 何で留守居しかいない時にこんなことが起きるんだ!!」

 

現在パーパルディア皇国は権力の空白が生じていた。パーパルディア皇国最高指導者にして皇帝のルディアスが神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世即位30年を祝う祝賀会に第一艦隊を引き連れて出席中、第一外務局局長のエルトはカルトアルパスで開催中の先進11カ国会議出席の為に第二艦隊の護衛を受けて出席中。第二外務局局長のリウスは体調不良により出勤しておらず、まともな指導者は皇太弟であるエルフェウスと第三外務局局長のカイオスのみという状態であった。

 

「直ちにカイオスを呼べ! もしかするとグレナダ沖で監察軍を退けた噂のイギリスかもしれん! もしそうなら間違いなく報復が目的だ!!」

「カイオス様は本日休みを取られていて・・・」

「緊急事態に休みも何もあるか! 病床から起き上がれず入院中のリウスならまだしも、カイオスはただの休暇だろうが! 直ぐにヤツの私邸に使者を送れ!」

「ははっ!」

「それと件の艦隊に対しては刺激することなく、丁重に扱え! 兄上の民が危険に晒されることがあってはならん!!」

 

皇帝ルディアスに代わり留守居として政を担っている皇太弟エルフェウスは矢継ぎ早に指示を飛ばす。同時に工業都市デュロを拠点とする第三艦隊に至急出撃の準備を進めるよう指示を出すが、第三艦隊は昨日帰還したばかりであり、演習中に遭遇した猛烈な嵐により全ての艦が何かしら損傷しており一部の艦は艦首が丸ごとえぐり取られている等でとても戦える状態ではないと判明。更に沿岸部に配置されている砲台は帳簿上では最新鋭の1000門の砲台と1000000発の砲弾が備蓄されていることになっていたが、首都にまで攻め寄せてくることはないだろうと、沿岸砲台の幹部から末端に至るまで汚職が横行。予算の流用や水増し請求、架空発注等が行われており、実態は監察軍の御下がりの50門の砲台と200発の砲弾しかないという悲惨な状態であった。何とか首都の防備を固める為に正規軍に緊急出動を命じるも、

 

「我々はパーパルディア皇国皇帝ルディアス様の軍隊である。我々はルディアス様の指示のみで動く官軍であり、憲法上存在しない者の命令をきく必要はない」

 

として陸海空軍全てからエルフェウスの命令は拒絶された。皇太弟は神聖ミリシアル帝国への留学経験があり、パーパルディア皇国を立憲君主制国家に改めようと考えていた為か、国民から軍部に至るあらゆる者に嫌われており、むしろこれを契機に失脚させようという思惑であった。このことをついさっき知ったエルフェウスは顔面蒼白になりながらカイオスの出勤を待っていたという。

 

「ファッ!? なんでこんなことになってるの?!」

「聞き取りをしたところ、蛮族がエストシラントにまで攻めてきた試しがないことから予算は遊びに使ってしまったと・・・」

「はああああ!? こんな糞みたいな装備でアレと戦うの!? 冗談じゃないよ!!」

「それとエルフェウス様が国民から嫌われており・・・」

「どうすりゃいいんだよ・・・」

 

(続く)

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