日本国長崎県
三菱重工業長崎造船所
日本の造船所と言えばと言われれば真っ先に名をあげる人も多数存在する海軍の街長崎。ここ長崎の造船所では、ニュージーランド海軍向けに建造が進められているフリゲート艦の進水式が執り行われようとしていた。
「まさかなあ・・・もがみ型が覇権を握っちまうなんてなあ・・・」
日本国最新鋭の護衛艦であるもがみ型。異世界転移前はオーストラリア海軍向けとして、ドイツと最後まで競合していたが異世界転移に伴いドイツが強制的に脱落。オーストラリア海軍はアンザック級の代替としてもがみ型の発展型である新型FFMを、ニュージーランド海軍はもがみ型を採用した。この他カナダ海軍も新型FFMの採用を前向きに検討しており、イギリス海軍も現在計画中の新型フリゲート艦建造計画を日本と共同で進めるべきだという意見が出ている。更には西ロウリア王国海軍、シオス王国海軍、アルタラス王国海軍ももがみ型の採用を決定。西ロウリアは5隻、シオス王国とアルタラス王国はそれぞれ2隻を建造する契約を既に締結しており、日英の友好国が今後も近代化の一環としてもがみ型の採用が続くと予想されている。
「いよいよ命名の時間ですな」
日本とニュージーランドの海軍関係者が集まる。ニュージーランドの国防相が新型フリゲートの命名を行う。
「本艦をタラナキと命名する」
くす玉が割れ、勢いよくタラナキが進水する。ニュージーランドの国歌が流され、日本とニュージーランドの海軍関係者が拍手でタラナキを見守る。タラナキ級フリゲートとして採用された本艦は既存のアンザック級2隻の置き換えと、異世界転移に伴う他国の脅威から本国の防衛やイギリス海軍との共同作戦の為に2隻を追加で配備することになっている。今後2年以内に4隻全てが進水し、ニュージーランド海軍に配備予定である。
日本国兵庫県神戸市
三菱重工業神戸造船所
「本当に造るんだ・・・あれ」
この日三菱重工業神戸造船所では日本、イギリス、オーストラリアの海軍関係者が集まり起工式が執り行われていた。日英同盟締結時に日本、イギリス、オーストラリアは共同で原子力潜水艦の建造、配備、運用、そして核兵器の日本保有を決定。今年度の予算でいよいよ日本用原子力潜水艦の建造が認められた。過去に原子力実験船むつで痛い経験のある日本は神社から神主を呼び、起工式を実施。その様子はイギリスの公共放送により全世界に報道された。後に「やまと型原子力潜水艦」と称される一番艦はこうして起工されたのである。ちなみにやまと型原子力潜水艦は3隻の建造が決定しており、一部では「やまと」、「むさし」、「しなの」になるのではないかと噂されている。また造船所の外では左翼活動家による原子力潜水艦建造・核兵器保有反対運動が行われていたが、100人も集まらない上にほとんどの参加者が75歳以上の高齢者だったという。
日本国兵庫県神戸市
川崎重工業神戸工場
「たいげい型も出世したなあ・・・カナダ海軍が導入するんだもんなあ・・・」
川崎重工業神戸工場では海上自衛隊向けのたいげい型潜水艦が建造されている。元々は神戸造船所と一年置きに建造される本級であったが、カナダ海軍が既存のヴィクトリア級を置き換える目的で各国に入札を要請。異世界転移前は日本が自主的に撤退しており、韓国やスペインが有力と見られていたが異世界転移に伴い有力候補が強制的に脱落。通常動力潜水艦を建造出来るのは日本しかない状況であり、カナダ側が日本側に輸出を要請した。その後の交渉でカナダ海軍向けに3隻の輸出が承認。この他カナダ陸軍の主力戦車レオパルド2の代替として10式戦車を採用。異世界転移に伴い戦車も自力で製造可能な国が日本しか存在しない為、レオパルド2の解析を日加合同で実施。必要な技術を10式に盛り込む改10式戦車をカナダ陸軍に導入する。ちなみにイギリスはかつては自力で戦車を製造していたが、時が経ちすぎて製造能力を喪っており、現在製造能力を取り戻すべく日本企業の協力を得ながらオーストラリアと共同で新型戦車の設計を進めている。
「なんだかんだで日本の技術力って凄かったんですね」
「最近は人手不足でクワ・トイネ、クイラ、西ロウリアから労働者を受け入れるって話があるみたいだな」
「治安が悪化しないと良いですけどね」
異世界転移後、日本の製造業は息を吹き返した。一方で人手不足や労働者の残業が問題となっており、政府はイギリス、カナダ、オーストラリアへの技術指導やクワ・トイネ、クイラ、西ロウリアからの出稼ぎ労働者受け入れ等を進める予定であるが、問題解消には時間がかかる見込みである。
「仕事はキツいがお陰で給料は異世界転移前の2倍っすよ。バブルって話じゃないっす」
「最近班長が新車に買い換えたらしいな。車検通さずに」
「こりゃあ新卒採用も沢山取るだろうなあ」
日本各地の製造業は日夜入る注文に追われるのである。
(続く)