日英同盟召喚   作:東海鯰

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迎撃準備

パーパルディア皇国皇都エストシラント

パラディス城皇帝執務室

 

「では、これよりアルタラス王国侵攻計画並びにデュロ防衛計画をご報告させて頂きます」

 

ルディアスによりパーパルディア皇国軍最高司令官に抜擢されたアルデは地図で艦隊を示しながら説明を始める。

 

「まずアルタラス王国侵攻計画ですが、第一艦隊を主力とする総勢324隻で侵攻します。アルタラス王国軍のみであれば過剰ですが、同国はイギリスと軍事同盟を締結しており、少なくとも1隻の大型砲艦が駐留していることが現地の邦人から確認されています。大型砲艦は脅威ではありますが、300隻を超える艦隊を差し向ければイギリスも首都に籠らざるを得ず、大使脱出用に使わざるを得ないでしょう。艦隊による艦砲射撃の後に揚陸艦を突入させ、一挙にル・ブリアスを制圧。イギリス人を生け捕りにし、レミール様の下で教育と致します」

「陛下、イギリスのアルタラス王国駐在大使は我が国を不当に恫喝し、更にはエルフェウス様を死に追いやったハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンだそうです。彼だけは直ぐには殺さず、コンホンに陣取るイギリスに対する交渉材料にするべく、半殺しにしたいと思いますが如何でしょうか?」

 

レミールは悪い顔で微笑みながらルディアスに許可を求める。

 

「無論許す。余は先のイギリスや日本のスパイの殺処分だけでは満足しておらぬ。レミールよ、エルフェウスの仇であるイギリス人と日本人を絶滅させる意気込みで励むのだぞ」

「ありがとうございます。ですが、ムーを始めとする第二文明圏諸国が先の殺処分に不当にも抗議。一時艦隊を我が国に差し向け威圧しエストシラントからイギリス人や日本人の退避を支援。更には我が国との国交断絶をつきつけてきた、とエルトから報告がありましたが、此方は如何致しましょうか?」

「むしろ此方から突き付けてやれ。我が国は主権国家であり列強。不当な要求をする国家とは付き合う必要はない。エルトには余から直々に使者を向かわせる。心配はいらぬ」

「かしこまりました」

「アルデよ、作戦計画の報告を再開せよ。確か、アルタラス王国の制圧計画は終わったのだったな?」

「はい。次にデュロ防衛計画ですが、イギリスはデュロに対する報復を通告しており、一部の住民がイギリスに不法占拠されているアルーニに逃亡している模様です。彼等はイギリスに雇われたスパイであると思われますので、むしろ好都合です。陸軍は15万人、海軍は第二艦隊とデュロ根拠地隊、更には監察軍を動員。空軍も最新鋭のワイバーン・オーバーロードを配備し、万全の態勢を整えております」

「まさに鉄壁、だな」

「その通りであります。またエストシラント防衛の為に第三艦隊を、西部方面防衛の西海艦隊は待機させ、万が一に備えます。全てが上手く行けば、返す刀でバハマ、ベリーズ、グレナダを始めとしたイギリスの従属国に侵攻。日本を経由し、イギリス本国を制圧。イギリス本国制圧後にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドに従属勧告を行う予定であります」

「うむ。余はそなたらの働きぶりに感謝している。決して余の期待を裏切るでないぞ!」

「「ははっ!!」」

 

 

第一外務局局長室

 

「・・・・・なんですかこれは!! 陛下は本気なのですか?!」

 

第一外務局では皇帝ルディアスからの勅命に頭を抱えていた。内容としては、

 

・本日正午より3日以内に外国人を含めて日英の製品を全て廃棄すること

 

・日英の製品の販売及び使用を外国人を含めて禁止する

 

・日英の企業の財産は全てパーパルディア皇国の国庫に編入し、全てパーパルディア皇国皇室財産管理室の傘下に置く

 

・日英の製品を使用した者は問答無用で死罪とする

 

・以上の勅命は既に臣民に対して公表済である

 

・第二文明圏諸国に国交断絶を通告すること

 

「日英を徹底的に排斥し、愛国心を高める狙いでしょうや?」

「そうではあろうが、既に膨大な数の製品が出回っているのだ!! いちいち回収したり、死罪にする等不可能だ!」

「こんなことをすれば市民が暴動を起こしかねない!! 既にエストシラント市民は日英の製品に慣れはじめているのだぞ!! 今更皇国の不便な製品に戻れる訳がない!!」

「間違いなく共和制派が市民を煽り、利用するぞ!」

 

 

パラディス城前広場

 

「ルディアスは我々の皇帝ではない!!」

「日英を敵に回した皇帝ルディアスは即刻退位せよ!!」

「犯罪人レミールを速やかに引き渡し、赦しを乞うべきだ!!」

 

パラディス城前の広場ではルディアスの勅命に抗議する市民が集まり、勅命の取消と日英への講和、そして皇帝ルディアスの退位を求めたデモが開催されていた。彼等は日章旗やユニオンジャックを掲げ、パーパルディア皇国政府に対して抗議。日英との貿易により財を成した商人や日英の製品や企業の恩恵を受けているエストシラント市民が参加。一方で彼等から約200m離れた場所では皇帝ルディアスの勅命に賛同する市民によるカウンターデモが開催されていた。

 

「皇帝ルディアスバンザーイ!!」

「驕り昂った日英に死を!!」

「蛮族は皆殺しだ!!」

「日英の王の首をはねてやれ!!」

 

現在のパーパルディア皇国は都市部と地方で意見が割れていた。現在日英の恩恵はエストシラントやデュロ、ニュー・ホンコン周辺の都市部に限られている。地方は都市部が必要とする製品の製造を担っていたが、都市部が日英に切り替えたことで地方は不況の嵐が襲っていた。日英の製品に直接触れ、仕事のある都市部と日英の製品に市場を奪われ、仕事を喪った地方の対立は現在進行形で進んでおり、地方の惨状を聞いたルディアスは心を痛めていたという。その為都市部では日英との戦争に反対、地方では日英との戦争に賛成する世論が多数派を占めており、保守派の地方とリベラル派の都市部の対立という埋めがたい事態となっていたのである。都市部ではここに帝政の廃止を目論む「パールネウス共和国復興連盟」、日本から流入した新たな価値観社会主義の実現を目論む「パーパルディア社会主義革命政府」、イギリスから流入したイギリスとの同君連合を掲げる「イギリス連邦王国加盟運動」、更には日本やイギリスに居場所がなくなった日本赤軍やIRA残党が加わり、状況はカオスと化していた。

 

「お前達! ここは皇帝陛下の門前である!! どちらもデモを止め、直ちに解散せよ!!」

「陛下はそなたらの対立を望んではいない!!」

 

治安部隊が到着し、パラディス城の防衛とデモ隊の整理を開始する。殆どの参加者は治安部隊の命令に従い解散していくが、一部のデモ隊が暴徒化する。

 

「皆が平等なパラダイスみてえな国を作るんだ!!」

 

とある社会主義者が保守派のデモ隊目掛けて拳銃を発砲する。

 

「ぐあ?!」

「逮捕逮捕!!」

「黙れ皇帝の犬風情が!!」

 

日本から輸出されていたのは民生品だけではなかった。福岡県の暴力団からは旧ソ連やロシア製の拳銃やロケットランチャーが密輸されていたのである。更には部品を東ロウリア王国へ密輸し、そこで組み立てた上で東ロウリア王国製としてパーパルディア皇国へ密輸。その結果東ロウリア王国やパーパルディア皇国の暴力団系組織では旧ソ連やロシア製の武器が流通しており、現地の警察組織では歯が立たない地域もあるという。

 

「ロケットランチャーとやらも喰らっときな!!」

 

所詮警察組織に過ぎない治安部隊は旧ソ連・ロシア製の兵器には全く歯が立たず、殉職者を増やしていく。

 

「な、なんだあれは!?」

「逃げろ逃げろ!!」

 

パラディス城前の広場は血で染まった。更に一部のデモ隊はパラディス城の敷地に向けて手榴弾を投げ込む。幸いにも負傷者は出なかったものの、臣民から攻撃されたという事実はパーパルディア皇国政府を震撼させるのには充分であった。この騒ぎを受け、皇帝ルディアスは軍に出動を指示。皇都防衛隊が駆け付け、数の暴力で制圧。暴徒化したデモ隊は皆撫で斬りにされ、使用されていた武器は回収された。パーパルディア皇国政府は彼等の背後には日英両政府が関わっていると断定し、両国が要求を拒否した場合の対応を検討し始めたのである。

 

 

アルタラス王国首都ル・ブリアス

アルタラス王国陸軍駐屯地

 

「いよいよコイツらの初陣か」

 

日英両国の支援により近代化されたアルタラス王国軍。その主力を務めるのは、カナダから輸出されたドイツ製戦車レオパルド2である。イギリスとオーストラリアが共同開発する新型戦車を導入することが決まっているアルタラス王国であるが、まだ開発は始まったばかりであり、練習用や繋ぎの戦車を必要としていた。そこで日本から輸出される改10式に装備の更新が決まっているレオパルド2の輸出をカナダに要請。カナダ側もこれを受け入れ20両のレオパルド2がアルタラス王国に輸出された。昨日までは訓練に励んでいた戦車部隊にとって始めての実戦。祖国防衛の為に燃える彼等の士気は高い。

 

「陸の王者が代わる瞬間になるだろうな」

「全くだ。お、あれは日本から輸出されたガンタンクか」

 

戦車部隊に帯同するのは26式自走対空高射機関砲、通称量産型ガンタンクである。元々ロシアによるウクライナ侵略によりミサイルより安価に対空戦闘が実施可能な兵器としてドイツのゲパルトが脚光を浴びていた。異世界転移後はワイバーンの迎撃や地上目標への攻撃可能な安価な兵器が求められたことから、陸上自衛隊が運用している87式自走高射機関砲をベースに16式機動戦闘車の車体を流用した新型の高射砲として完成。陸上自衛隊に導入された他、基地防空用として海上自衛隊、航空自衛隊も採用。更にはイギリス、カナダ、オーストラリア連邦、ニュージーランド、パプアニューギニア、クワ・トイネ公国、クイラ王国、西ロウリア王国、ローデシア連邦、トーパ王国、フェン王国、シオス王国が採用。現在他のフィルアデス大陸国家も強い関心を示しており、同兵器や使用する弾薬の注文が止まらない状態である。特に戦車を保有しないローデシア連邦やフェン王国では最強クラスの装備品となった。アルタラス王国も日本から購入し、戦車部隊の随伴用として20両、アテノール城防衛用として10両を配備している。この他アルタラス王国に駐留するイギリス軍が海軍基地に5両、空軍基地に10両配備している。

 

「あれはオーストラリアから輸出された輸送用の装甲車か」

 

次々とアルタラス王国陸軍兵士がブッシュマスター防護機動車に乗り込んでいく。オーストラリアで開発された同兵器はイラク戦争やアフガニスタン紛争にも参加した実績のある代物であり、アルタラス王国は兵員輸送用として購入した。その後イギリスの支援により12.7mm機関銃が搭載され、レオパルト2や26式自走対空高射機関砲に次ぐ装甲戦力として運用されている。この他パーパルディア皇国軍迎撃の為に日本から輸出された牽引式の155mm榴弾砲や99式155mm自走榴弾砲も移動を開始。輸送用車両に載せられ、続々と駐屯地を後にしていく。沿道には市民が集まり、アルタラス王国旗や日章旗、ユニオンジャックを振りながら防人達を見送る。

 

「他にもパーパルディア皇国の奴等が度肝を抜く兵器がある。アルタラス王国は滅びず! 見せつけてやろうぞ! 我々も出発だ!!」

 

司令官が指揮官用に通信機能を強化したレオパルト2に乗り込む。王都防衛用に近衛師団を残し、ほぼ全ての戦力がパーパルディア皇国軍の上陸が予想される海岸へと向かっていく。その海岸では海軍も活動を開始していた。

 

 

アルタラス王国海軍哨戒艦タス

 

「敷設作業は?!」

「あと30分で完了致します!!」

「艦長! 陸軍も敷設を完了。部隊もル・ブリアスを出発し、更にミサイル部隊は展開を完了しました!!」

「よし! 我々は敷設作業完了後にイギリス海軍基地に離脱する!! 警戒を怠るなよ!!」

 

日本から輸出された哨戒艦にはとある機能が追加されていた。それがパーパルディア皇国に牙を向くことになる。敷設作業を完了した哨戒艦は直ちに現場海域を離脱し、首都防衛の任務についた。アルタラス王国側の迎撃態勢が整ってから3日後、遂に敵が現れたのである。

 

 

アルタラス王国北東方向約130km沖合い 洋上

 

晴れた空、暖かく、南国を思わせる積乱雲が広がり、風はほとんど無い。海は凪であり、海鳥たちは海に浮かび、のんびりと浮かんでいる。そんな平和な海を、多数の船が白い航跡を引き、南西方向に向かっている。その数324隻。パーパルディア皇国皇軍100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運ぶ揚陸艦101隻。中央世界を基準とすると、東側に位置する第3文明圏において、他の追従を許さないほどの圧倒的戦力。皇軍はアルタラス王国を滅するため、南西方向へ向かっていた。将軍シウスは海を眺めていた。戦略家であり、冷血、無慈悲な将軍、それが部下たちのシウスに対する評価だった。

 

「間もなくアルタラス王国軍のワイバーンの飛行圏内に入ります」

 

報告があがる。

 

「まだ来ぬか・・・対空魔振感知器に反応が出たら、竜母から100騎程艦隊上空で警戒させよ。細かい運用面は任せる」

 

将軍は、対空魔振感知器、いわゆる魔素を利用して飛行するワイバーンを視覚外で発見するために開発された対空レーダーに感があれば、ワイバーンロードを艦隊上空で警戒任務にあたるよう指示する。ワイバーンロードは、各竜母に20騎ずつ配備されている。自分達の視界にはアルタラス王国海軍の姿はなく、兵士達の間には敵は恐れをなして逃げたのだと楽観視する雰囲気が広がっていた

 

(敵に竜母は無く、本国から洋上にワイバーンを飛ばしてくることとなるだろう。それに奴等はイギリスと同盟を組んでいることから、イギリス連邦王国軍がでしゃばる可能性もある。噂によれば鉄竜を有するとか・・・気を引き締めねばならぬな!)

 

最小の被害で最大の効果を。シウスは決して敵を侮る事無く、洋上をにらみつけた。

 

 

ニュージーランド空軍アルタラス王国派遣部隊

P-8哨戒機

 

「敵の大艦隊を視認!! 見渡す限りの敵です!!」

 

アルタラス王国派遣部隊の一員であるニュージーランド空軍の哨戒機部隊がパーパルディア皇国の大艦隊を発見した。同時にパーパルディア皇国側が迎撃のワイバーンを出撃させる様子も確認した。

 

「近くに上がっている友軍は?」

「イギリスのユーロファイタータイフーン2機が哨戒中です」

「よし! 情報を送れ! 蜥蜴擬きはイギリス空軍に任せるとしよう! 離脱する!」

 

こうしてアルタラス王国にてイギリスとパーパルディア皇国の再戦が始まろうとしていた。

 

(続く)

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