日本国愛知県小牧市
三菱重工業名古屋航空宇宙製作所小牧南工場
「ご覧下さい! 格納庫から出てきたのは異世界転移後始めて生産されたF35です!!」
異世界転移に伴い、西側の軍需工場であるアメリカやフランスと切り離された日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド。アメリカ製やフランス製の兵器の入手が不可能となり、各国ではリバースエンジニアリングや国産兵器の生産を進めていた。特にステルス戦闘機であるF35やイージス艦の中枢であるイージスシステムの国産化は急務であり、ユーロファイタータイフーンで繋ぎつつも、開発が行われていた。日本、イギリス、カナダ、オーストラリアの4か国共同でリバースエンジニアリングが行われたF35であるが、この日遂に異世界転移後始めて生産された初号機が報道陣に公開されたのである。
「今滑走路を進んでおり、離陸しました!! 日本で生産されたステルス戦闘機がたった今離陸しました!!」
現在、日英加豪でリバースエンジニアリングされているF35は空軍仕様のA型と海兵隊仕様のB型が生産される予定になっている。海軍仕様のC型は少数生産し、F2の後継機であるF3開発や今後日英が原子力空母を導入した場合に備えてのデータ取りに用いられる予定である。
「なんて速さだ・・・」
初号機の御披露目は日英のみならずムーを始めとした第二文明圏諸国の報道陣にも公開され、ムー経由で神聖ミリシアル帝国にも情報が伝わる。
「速さだけではない。あれはレーダーに映らないらしい」
「我が国が日英を敵に回さない選択をしたのは正解だったな」
第二文明圏各国の報道陣は性能試験の為に飛行するF35を見てそう言った。ちなみに日本は元々実証試験機心神を飛行させてデータ取りをしていたこともあり、今回のF35のリバースエンジニアリングで中心的な役割を果たした。また近々アメリカで型式証明が取れず、泣く泣くお役御免となった悲劇の旅客機MSJが日英加共同開発として蘇り、此方も日本が中心となり開発が進められている。主な企業として日本の三菱重工業、イギリスのロールスロイス、カナダのボンバルディアが参加している。
「旅客機も近々初飛行らしいな。日本はイギリスみたいに派手さはないが、静かなる実力者って感じだな」
「怒らせたら誰よりも怖いってヤツだな」
「ま、怒らせた国があるらしいけどな」
「言ってやるなよ」
この他、日英両国は広すぎる海における制海権確保の為に日本のいずも型、イギリスのクイーン・エリザベス級を上回る正規空母を計画。日英両国のクロスデッキを前提とした構造とする予定であるが、日英どちらが主導するのかやそもそもの艦載機がないことからまだ両国の防衛当局による構想段階である。
カナダ領ニュー・テリトリー(旧カイシン)
ニュー・テリトリー城
「まさかなあ・・・コイツがぶっつけ本番で運用とはな・・・」
先のコンホン条約によりカナダに割譲されたカイシン。ニュー・テリトリーと改められ、カナダの海外領土となり、またコンホン島防衛の拠点であった城塞都市の中心に位置するニュー・テリトリー城にはとある兵器が試験されていた。
「日豪製イージスアショア。日本とオーストラリアが合同で実施したイージスシステムのリバースエンジニアリングにより完成した陸上用のイージスシステム。ミサイルのみならず、周囲に配置した対空機関砲とも連動し、敵のミサイルや航空機を排除する・・・か」
パーパルディア皇国軍によるニュー・ホンコン奪還作戦が近いうちに行われることが衛星画像の解析や諜報部の調査で判明していることから、ニュー・ホンコン総督府は陸側の防衛拠点であるニュー・テリトリーに陸上部隊を集結させていた。ニュー・ホンコン並びにロークン半島にはイギリス、オーストラリア、ニュージーランドの守備隊のみを配置し、ロデニウス連合の援軍は全てカナダ軍の指揮下の下に編入。一方で海軍艦艇をニュー・ホンコン並びにロークン半島周辺に展開することで海側からの侵攻を抑止する構えである。ロークン半島には応急的に155mm砲を要塞砲として設置しており、防備を強化。今後ムーに対して沿岸砲の輸出要請を行い、防衛能力の向上を図る予定である。
イギリス領ニュー・ホンコン
ニュー・ホンコン総督府
「アルタラス王国に攻め込んだ敵は壊滅。アルタラス王国は独立を維持し、我が国は対パーパルディア皇国に向けた拠点の維持に成功した・・・まあ、当然よね」
つまらない、と言わんばかりに書類を投げ捨てるアオイ総督。
「で? そろそろじゃないの? 蛮族の土地がメギドの火に油を注いで焼かれるの?」
「もうまもなく着弾かと」
「そっか。さて、蛮族はどう出るでしょうねえ?」
翌日、ニュー・テリトリー城周辺にパーパルディア皇国軍5万が到着。ワイバーンロード100騎を先頭に朝駆けを仕掛けてきたが、既にレーダーにより正確な所在地を把握しているカナダ・ロデニウス連合軍は手始めにイージスアショアから対空ミサイルを発射。皇国のワイバーンロードを一方的に撃破した。
「くそ! ばれていたか! 退け! 退けー!!」
15騎が撃墜されたところで皇国軍は撤退を開始。カナダ・ロデニウス連合軍は追撃は行わず、両軍は城壁とその外側を流れる川を挟んで対峙した。
「なんて速射性と正確性だ! 撤退! 撤退!!」
海上ではパーパルディア皇国第三艦隊から抽出した精鋭30隻がニュー・ホンコンを強襲するべく襲来。しかし哨戒中のミサイル艇はやぶさ、くまたかに見つかってしまい、28隻を沈められ撤退。日本は日英同盟に基づき、ニュー・ホンコン総督の要請でミサイル艇2隻をニュー・ホンコンに派遣しており、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ロデニウス連合の艦艇と共に哨戒活動を行っていたのである。また別動隊15隻がロークン半島に迫るも、逆にオーストラリア・ニュージーランド軍から砲撃を受けた。更に哨戒中のロデニウス連合のフリゲート艦が接近中と報告があり、撤退。兵力では圧倒的に勝るパーパルディア皇国はイギリス連邦王国の拠点を全く打ち崩せずにいた。無論この間に日英の増援部隊はアルタラス王国を目指して移動しており、時間が経てば経つほどパーパルディア皇国側に勝ち目はなくなっていくのである。
「新月の夜に太陽を作り出すだと!? いかん! 馬は駆けよ! 人は走れ! 走れ走れ!!」
苦肉の策として夜襲を仕掛けた陸軍部隊だったが、照明弾をカナダ軍が打ち上げたことで位置が露呈。そこ目掛けてニュー・テリトリー城から猛烈な砲撃が開始された。死に物狂いで走るパーパルディア皇国軍であったが、城壁の内側からは銃撃を浴びせられた。機関銃から小銃、手榴弾にいたる様々な兵器が使用され、梯子を掛けて登ろうとした兵士が真っ先に撃ち殺されていく。一時間後には撤退命令が出され、パーパルディア皇国軍は10000の兵を喪い撤退。城壁周辺は血で染まり、各地には砲撃で出来たクレーターが形成されたという。この報告を受けた皇帝ルディアスは大激怒し、陸軍には最低限の皇都守備隊を残して全軍をニュー・ホンコンへ向かわせるように指示。エストシラントには守備隊と警察合わせて10000を残して全てがニュー・ホンコンに向けられ、第三艦隊も50隻を残して全てがニュー・ホンコンに移動を開始した。しかし、この動きはエストシラント沖で哨戒中の海上自衛隊の潜水艦たいげいに発見されており、エストシラントの英国大使館からの情報も加わったので、日英軍は作戦を変更。ニュー・ホンコンを囮にし、一気にエストシラント制圧を目指すことになる。
(続く)