日英同盟召喚   作:東海鯰

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第二次エストシラント沖海戦と逃避行

デュロ脱出艦隊旗艦竜母デュロ

 

「先行する哨戒艇より連絡! 敵艦隊見ユ! 総勢30以上!!」

「やはり奴らはエストシラントに向かったか」

 

イギリスによる報復攻撃により甚大な被害を受けた工業都市デュロ。軍事施設も例外ではなく、哨戒活動中の艦隊50隻を残して他は港に係留された状態で核攻撃を受けた。その凄まじい破壊力はパーパルディア皇国艦隊を薙ぎ倒し、その全てを海中に沈めた。この様子を哨戒活動中に視認した哨戒艦隊は日英による再攻撃に備えて艦隊を洋上に退避。更にエストシラントの海軍本部に対して攻撃を受けたことを報告した。これに対して海軍本部は生き残りの艦隊に対してエストシラントに急行するように指示。この時には各地の哨戒線が日英艦隊の接近を察知しており、首都防衛の必要性が生じていたからである。同時にニュー・ホンコンに差し向けた部隊を大至急呼び戻しているが、こちらは撤退中にイギリス連邦王国軍やロデニウス連合軍の激しい追撃に遭い、壊滅的な被害を出していた。また陸上でも撤退するパーパルディア皇国陸軍をイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ロデニウス連合が徹底的に追撃。ニュー・ホンコン総督自らが最前線で作戦指揮を執るほどの本気ぶりであり、これに亡命してきた各地の貴族の兵が加わり逆に陸上からエストシラントに侵攻出来そうな勢いであるという。流石に一定まで追撃した後に引き上げたが、パーパルディア皇国には再度ニュー・ホンコンに攻めいる力はなく、首都防衛すら危うい状況にあった。首都では連日日英との早期講和を求める市民が大規模なデモをパラディス城前の広場で行われ、皇帝の勅命に反して日章旗やユニオンジャックを振り回す市民やそれを取り締まろうとする警官隊が激しく衝突。逮捕者が続出し、刑務所は収容限界を迎えていた。そこにイギリスの諜報機関が暗躍し、デモ隊に武器を与え、刑務所を襲撃させようとしているという噂が広まっており、エストシラントの治安は悪化する一方であった。

 

「我等が日英艦隊を撃退すれば、エストシラント市民の不安も払拭される!! さすれば、我が皇国に歯向かう蛮族は滅び、パーパルディア皇国による世界平和が実現するだろう! 飛竜隊発進!!」

 

デュロから脱出した艦で唯一航空戦力を運用可能な竜母デュロは30騎の竜騎士を発進させる。ワイバーンオーバーロードを搭載する本艦は周囲の艦と比較しても一際大きく、皇国の強大さを示しているかのようだった。日英以外に対しては。

 

「飛竜隊は海面スレスレを飛行し、敵の目を欺け!! 敵の対空魔信は我々の物より遥かに優れている! だが、弱点は同じはずだ!! 諸君の腕前を信じている!!」

 

パーパルディア皇国海軍は空軍との合同演習により、対空魔信の弱点を把握していた。海面スレスレを飛行する物体を対空魔信では捕捉しにくく、接近に気付いたころには既にワイバーンオーバーロードの射程圏内に入っている。もし日英艦隊が同じく対空魔信を使用しているのであれば、非常に有効な手段であった。全く間違いではなく、むしろ最適解である。しかし、当然弱点を知っているのはパーパルディア皇国だけではない。日英側も把握している。

 

 

海上自衛隊護衛艦かが艦載機SH-60K

 

「本機の前方より敵航空戦力が接近! その数少なくとも10!」

「海面スレスレを飛行か。敵の司令官も中々やるようだな。だが、我々が艦隊の外側を哨戒飛行していることには気付かなかったようだな。至急かがに報告! 戦闘機の出撃を要請しろ!! 本機は離脱する!!」

 

日英艦隊は敵航空戦力の接近を想定し、各種哨戒ヘリコプターを展開。護衛艦かがにはイギリス海軍航空隊のF35Bを4機臨時搭載し、即席の空母として運用している。

 

 

イギリス海軍航空隊F35B

 

「ジャパンの空母から発艦・・・時代は変わったな!!」

「そんなことより、あの蜥蜴擬きの相手が先だ!!」

「ミサイル発射!!」

 

予備機の1機を残して出撃したイギリス海軍航空隊のF35Bは現場に急行。敵航空戦力を発見するやいなや12発のAIM-120J(異世界転移に伴い、日本企業が国産化した上で強化改修したアムラーム空対空ミサイル)を発射。先頭を進むパーパルディア皇国海軍ワイバーンオーバーロード12騎を肉片へと変えた。

 

「敵の隊列が乱れたようだな」

「あわてて急上昇してるな。あれじゃレーダーに映るだろうに」

「我々の目的は達成した! あとはジャパンに任せる!!」

 

イギリス海軍航空隊はパーパルディア皇国海軍ワイバーンオーバーロード12騎をアムラームJで撃墜。護衛艦かがに帰投した。

 

 

海上自衛隊イージス艦こんごう

 

「対空戦闘ヨーイ!! 敵航空戦力を全て叩き落とせ!!」

 

イギリス海軍航空隊によるミサイル攻撃を受け、慌てて急上昇した結果、イージス艦の対空レーダーに捉えられてしまったパーパルディア皇国海軍のワイバーンオーバーロードに対して慈悲のないミサイル攻撃が開始される。イージス艦こんごうはその性能を存分に発揮し、次々と対空ミサイルSM-2MRJ(此方も異世界転移に伴い、日本企業が国産化の上で強化改修)を発射。30分足らずで対空目標を殲滅した。

 

 

デュロ脱出艦隊旗艦竜母デュロ

 

「竜騎士隊が全く損害を与えられずに全滅だと!?」

「竜騎士が撃墜される前に送った報告によれば、敵は頭の上に鉄の羽を高速で回すことによって飛行する鉄竜に哨戒飛行をさせ、我々の竜騎士を発見。その後矢じりのような鉄竜が現れ、攻撃してきた、と・・・」

「何ということだ・・・」

 

言葉を喪う艦隊司令。見張り員の報告が続く。

 

「敵艦隊が急速接近!! 砲を全て我が艦隊に向け・・・敵艦隊発砲!!」

 

次の瞬間、日本のもがみ型護衛艦が一斉に砲撃を開始した。圧倒的射程圏外から放たれる鉄の雨は瞬く間にパーパルディア皇国海軍艦隊を海の藻屑へと変えていく。

 

「艦隊の損耗率、80%を突破! なお上昇中!!」

 

無傷ではあるが、既に航空戦力を喪っている竜母デュロは戦闘能力が皆無に等しい。護衛の戦列艦は次々に沈み、同胞が海面を漂い、救助を求める。

 

「・・・・て、敵艦隊、遠ざかります!! 本艦を残し、全てを撃沈して撤退する模様!!」

「・・・・まさか敵に情けをかけられるとは・・・・本艦は海面に漂う味方を救助する!! 生きる希望ある者を見捨てるな!! 救助完了後は最寄りの港に向かえ! 中立国でもイギリスの同盟国でも構わん!! 責任は私が取る!」

 

日本艦隊は竜母デュロを除き、パーパルディア皇国海軍艦隊を全滅させた。後に竜母デュロはアルタラス王国のイギリス租借地に入港。同国に駐留するイギリス海軍により艦は抑留され、乗員は拘束されることになる。後に竜母デュロは賠償艦としてアルタラス王国国王に献上するという形で譲渡され、王室所有のヨットとして活用されることになる。

 

 

パーパルディア皇国皇都エストシラント

パラディス城執務室

 

「・・・・つまり、我が国はどうやっても勝てない、ということか?」

 

夜中のパラディス城執務室ではパーパルディア皇国皇帝ルディアスは側近にして彼の影武者マサーヤンからデュロに投下された核兵器に関する報告を受けていた。

 

「はい。技術研究所がデュロに投下されたコア魔法等から分析した結果、コア魔法を使用したのはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国に間違いありません。更に魔法の痕跡が見付からなかったことから、かの国は機械文明にてコア魔法を実現している模様です。更にクワ・トイネ公国に在住する邦人からの報告によれば、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国はコア魔法を250発保有しており、その気になれば何時でもエストシラントをデュロのように出来ると」

「うむ・・・・悔しいが、認めざるをえんか。して、日本国はどうだ?」

「日本国はコア魔法を保有してこそいませんが、海軍や空軍ではグレートブリテン及び北アイルランド連合王国を遥かに凌駕しており、デュロ脱出艦隊からの報告によればエストシラントに向かっている敵艦隊の半数は日本の艦とのこと」

「カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはどうなのだ?」

「これらの国々は日本やグレートブリテン及び北アイルランド連合に比べれば圧倒的に劣りますが、我が国が勝つことは不可能でしょう。また、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの艦も日本やグレートブリテン及び北アイルランド連合と共にエストシラントを目指しております」

 

頭を抱える皇帝。

 

「陛下はエストシラントからお逃げ下さい。私が身代わりとなります」

「!!」

 

皇帝は影武者の顔を見つめる。その眼差しは覚悟を決めた目付きであり、嘘偽りはないのがよくわかる。

 

「陛下、こんなこともあろうかと既に南方の大国アニュンリール皇国の大使と亡命に関する話し合いを妥結させておきました。エストシラント港からの脱出は不可能ですが、西海艦隊の拠点もあるルディーニングラードからの脱出が可能です」

「我が国の属領、リトアビアとポルスカに挟まれた直轄地か」

 

パーパルディア皇国西海艦隊の拠点ルディーニングラード。皇帝ルディアス自らの名を冠した都市であり、長らく大国として君臨していたポルスカ王国を滅亡させた際に直轄地として編入した皇国の重要拠点である。

 

「はい。流石の日英もルディーニングラードまでは手が届かないようで、現在でも商人たちの活動が盛んに行われ、多数の船舶が出入りしております。アニュンリール皇国側が準備した貨物船が入港しており、陛下の到着を待っております」

「・・・・・あい分かった。そなたの忠義に感謝する・・・」

 

この日の夜中、皇帝ルディアスは楽器ケースに身を隠して城を脱出した。しかし、彼らの逃避行を許すほど、イギリスは甘くなかった。

 

 

駐パーパルディア皇国イギリス大使館

 

「影武者を使い逃げるとは・・・・国王陛下の臣民を、私の婚約者の命を奪う輩を擁護しておきながら自分は逃げる? 絶対に捕まえなさい!! ニュー・ホンコン総督府、アオイ総督に対して至急部隊の派遣要請を!! 大使館防衛部隊も動員して追跡しなさい!!」

 

パラディス城周辺一帯はイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの諜報員や現地人スパイにより監視されていた。オーストラリアの諜報員が夜中にパラディス城を脱出する馬車を確認。直ちにドローンによる追跡を実施した結果、一行はエストシラントを出て5キロの位置にある安いボロ宿に移動。監視を続けたところ、楽器ケースの中から人が出てくる様子を確認。画像解析の結果、現地人スパイによりその人物はパーパルディア皇国皇帝ルディアスその人であると断定された。これを受けて駐パーパルディア皇国イギリス大使グローリアはニュー・ホンコン総督にヘリコプター部隊の派遣を要請。大使館も装甲車を出動させ、ボロ宿に向かわせた。これによりイギリス大使館を防衛する戦力は皆無となり、周辺のカナダ、オーストラリア、ニュージーランド大使館に頼ることになるが、皇帝を逃がすわけにはいかないとして、背水の陣を敷いた。それに、海と空から日英軍がエストシラントに向かってきており、持ちこたえられると踏んでのことでもあった。

 

「皇帝を逃がすわけにはいかない。だけど、それ以上に逃がしてはならない女がいる・・・・レミール、貴女だけは絶対に殺すわ!! 外務省のキャリアを棄ててでも!!」

 

復讐鬼と化した大使を他所に、皇帝捕縛作戦が開始される。ボロ宿の周辺にはオーストラリアとニュージーランドの諜報員が待機して常に監視しており、仮に移動した場合直ぐに通報、ドローンを再度展開する手筈が整っている。イギリス大使館では追跡部隊が出動準備を進めており、装甲車のエンジンが始動。ニュー・ホンコンではヘリコプターに特殊部隊が乗り込み、今まさに飛び立つところ。そしてエストシラントに迫る日英艦隊と日英航空部隊。パーパルディア皇国の敗北は近い。

 

(続く)

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