日英同盟召喚   作:東海鯰

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迫りくる敗北の時間

アルタラス王国 王都ル・ブリアス郊外

アルタラス国際空港イギリス空軍司令部

 

「エストシラント南方300キロ上空に展開している、日本のAWACSより通信。敵航空戦力を発見。その数20!」

「かなりの数だな」

 

皇都上空を監視していた航空自衛隊のAWACSのレーダーには、皇都の南側上空に20機近い飛行物体を捉えており、戦闘空域の情報は、リアルタイムで本作戦の参加機並びにアルタラス王国のイギリス空軍司令部に伝えられる。

 

「ですが、護衛として日本のF15が10機が展開しています。問題ないかと」

 

早期警戒機の北側約100kmの空には、航空自衛隊のF15J改戦闘機10機が、その後方約50kmには無誘導の爆弾を満載したF2戦闘機が20機、イギリス空軍のユーロファイタータイフーン10機が亜音速で皇都北方の陸軍基地に向かい飛行する。

 

「よし、予定通り攻撃を開始セヨ!」

 

空軍司令部からの命令を受信したAWACSは直ちに作戦機に指示を飛ばす。指示を受けたF15J改は距離を詰め、99式空対空誘導弾を発射した。射程100km以上にも及ぶミサイルは、マッハ4以上の速度で、皇都南方上空を飛行するワイバーンオーバーロードを滅するため、轟音と共に飛び去っていった。

 

「・・・・寒い時代だな、そう思わんか? ああ、敵に言っても無駄か」

「はあ・・・・」

 

イギリス空軍司令部では、ワイバーンオーバーロードがなす術なく撃墜されるであろう様子が予想され、哀れみの表情を浮かべる者の姿もあった。

 

「我々に歯向かうからこうなるのだ。愚かなことよ」

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 南方空域

 

第18竜騎士団第2中隊のワイバーンオーバーロード20機は、皇都エストシラントの少し南方に位置する空域を、警戒飛行中だった。中隊長デリウスは、中隊1のベテラン騎士、プカレートに魔信で話しかける。

 

「もう少しあちらの海域も警戒しましょう」

「そうですね」

 

ワイバーンオーバーロードの編隊は、一糸乱れぬ動きで、錬度の高さが伺える。

 

「中隊長殿、敵についてなのですが・・・・」

「何でしょうか?」

「数日前の通達文のとおりであれば、日本はムー国の飛行機械で戦いに来るでしょう。しかし、それにしてはグレナダ、フェン、アルタラス、コンホンの戦いで、我が方の被害が大きすぎるような気がするのです。軍の上層部に今の疑問を呈しても、言葉の歯切れが悪くなった後、通達文のとおりとしか言わない。中隊長はどうお考えか?」

 

皇国上層部は、軍の士気の大幅低下を恐れ、一部の幹部を除き、日本やイギリスに関する情報を遮断していた。

 

「たしかに、今回の戦いについて、上層部は何を聞いても歯切れが悪い。何かを隠しているようにも見えたが、何かは解りません。しかし、ムー以上の敵って、何が考え付きますか?」

「古の魔法帝国か、神聖ミリシアル帝国、まあ無いですな」

「ところで・・・・」

「何だ!!! あれは!!!!」

 

目の良い部下の一言で、会話は途切れる。各竜騎士は、何かを発見した竜騎士の指差す方向を注視する。透き通るような青い空に、数点の斑点が見える。綺麗な写真に落とされた汚れのような斑点は、徐々に大きくなり、それが飛行物体である事を認識する。

 

「は、速い!! 回避セヨ!!!」

 

常軌を逸した速度で竜騎士隊に向かってくる「それ」を見たデリウスの本能は危険信号を全力で鳴らす。散開したワイバーンオーバーロード竜騎士隊、しかし「それ」も向きを変え、彼らに迫る。

 

「そ、そんな!!!」

 

ミサイルは、先端から斜め後方に向かい、衝撃波をまといながら、竜と呼ばれる異世界の生物に向かう。同衝撃波境界層では、空気が粘性発熱を起こし、高温となる。航空自衛隊の制空戦闘機F15J改から発射された99式空対空誘導弾20発は、1発も外れる事無く、皇都エストシラント南方空域を警戒中の第18竜騎士団第2中隊のワイバーンオーバーロード20騎に命中した。

 

ドドドンドーンドンドーン!!!

 

声を発する間もなく、絶命する竜騎士、そして列強となった後、1度として本土が戦場となる事は無かったパーパルディア皇国。

皇都エストシラント全域に、確実に平時とは違う不気味な炸裂音が鳴り響く。ある者にとっては、恐怖。そしてある者にとっては破滅の目覚まし時計となった、空対空ミサイルの炸裂音、すでに目を覚ましており、上空を見上げた皇国臣民は、信じられない光景を目にする。列強たるパーパルディア皇国、そしてその中でも最強の皇都防衛軍、その最強なはずのワイバーンの亡骸が雨のように上から降ってくる。ある者は、ワイバーンの首、胴体、足、羽等のパーツとなり、ある者は胴体から上の無い状態、そして人の原型を留めたもの、多数の肉と血が落ちていく。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

皇都エストシラントの様々な場所から、その凄惨な光景に耐え切れなくなった女性の悲鳴が上がる。住民はざわつき、様々な建物の扉や窓が開く。彼らが上空を見上げた時、矢のような形の何かが10機、見た事も無い高速で、上空を通過する。その物体からは、2本の炎が後方に向かい、噴出している。直後、耳を覆いたくなるような轟音が鳴り響く。物体の通過した近くの建物では、その衝撃波により、窓ガラスが全て割れる。恐怖。

 

「何だ! 何だ!! 何が起こっているんだ!!!」

 

住民が恐怖に怯える中、F15J改の起こした衝撃波音は、皇都エストシラントにこだまする。

 

「・・・・遂に来たか!! 我々の勝利は近いぞ!!」

 

エストシラント上空を飛行する航空自衛隊のF15を視認したオーストラリア軍やニュージーランド軍の兵士達は歓喜の声をあげる。イギリス大使館の各地では勝利を確信した兵士や大使館職員らがお祭り騒ぎを起こしていた。一方、大使館前に展開していた近衛師団はパラディス城へ撤収。プランB発動に動き出した。

 

 

皇都エストシラント北方陸軍基地

 

装飾が施された豪華な石作りの建物の1階で、女性魔信技術士のパイは、魔力探知レーダーを確認していた。ワイバーン等の空を飛べる高魔力生物は、その存在そのものから、人間とは比較にならない魔力があふれ出ている。その魔力を探知出来るように作られたのが、魔力探知レーダーであり、これは対空のみではなく、対地としても有効に機能する。上空に関して、現在レーダーには友軍の騎影しか表示されておらず、付近上空にも高魔力生物は確認できない。

 

「ん? 何かしら?」

 

レーダー画面の変化にパイは気付く。今まで綺麗に隊列を組み、飛行していた友軍のワイバーンの動きが乱れ始める。パイが上司に報告しようと思ったその時、レーダー上に写されていた友軍の点20騎が大きく光り、画面から消えた。

 

 

その現象が意味する事・・・・それ即ち撃墜!!!

 

パイはすぐに隣に置いてある魔信機に向かって叫ぶ。

 

「緊急事態発生! 緊急事態発生!! 皇都南方空域を警戒中の第18竜騎士団第2中隊20騎がレーダーから消えた。撃墜された可能性大!! 待機中の第3中隊にあっては、緊急離陸を実施し、皇都上空の警戒に当たれ! なお、レーダーに敵機影は確認出来ず。飛行機械の可能性大!!」

 

パイが指令した直後、陸軍基地に連続した炸裂音がこだまする。異常事態の発生は、この炸裂音により、すべての者が認識するに至った。

 

「20騎すべての反応が消えただと!?」

 

パイの上司が血相を変えて、画面の前に来る。

 

「はい、短時間に次から次へと、連続して反応が消失しました!!!」

「20騎! 20騎もだぞ!!!警戒隊としての数は申し分無い量であり、しかも世界最強のワイバーンオーバーロードだぞ!!! そんな短期間でやられてたまるか!!!」

「しかし、事実です! ものの20秒もかからずに消えました!!」

「故障ではないのか?」

「ありえません!!」

「くっ!! 我々はいったい何と戦っているんだ!!!」

 

レーダー室でそんな会話がされる中、指令を受けた第3中隊は滑走路から離陸しようとしていた。

 

「第2中隊がやられただと!? ちくしょう!! 油断した第2中隊を殺ったところで、いい気になるなよ!!!!」

 

翼を広げ、ワイバーンオーバーロードは離陸するために走り出す。今回は緊急のため、縦1列に連続して走る。

 

「敵接近!!!」

 

誰かが魔信で叫ぶ。騎士は空を見上げる。

 

「なっ!!!」

 

連続した爆発音、F15J改の放った短距離空対空誘導弾は離陸滑走中の竜騎士団に襲いかかった。

 

「か、回避ー!!」

「うわあああ!!」

 

パーパルディア皇国皇都防衛軍陸将メイガは、不気味な炸裂音がした後、窓の外を眺める。部下がノックも無く、部屋に転がり込んでくる。

 

「メイガ様!! 第18竜騎士団第2中隊のレーダー上の反応が消えました!! 至急作戦室にお願いします!!!」

「解った」

 

陸将メイガは、小走りで隣の作戦室に移動する。移動後、すぐに部下が報告に来る。

 

「先ほどエストシラント南方空域を警戒中の第2中隊がレーダー上から消えました。同レーダーでは、反応が消える直前にレーダー上の光点が大きく光っており、撃墜された可能性が高いため、現在第3中隊を緊急離陸させています。」

 

部下は、窓の外を指差す。指示された先の滑走路では第3中隊のワイバーンオーバーロードが離陸するため、滑走を開始していた。

 

「敵は・・・・どの程度の強さがあるのか・・・・」

 

メイガはつぶやく。

 

「あれは何だ!!」

 

誰かが叫ぶ。次の瞬間、飛翔してきた多数の光の矢が、離陸滑走中の竜騎士隊に襲い掛かる。光の矢は、ただの1発も外れる事無く、第3中隊の竜騎士に着弾し、彼らは陸将メイガの眼前で爆音と共に、肉片となる。

 

「!!!」

 

声の出ないほどの驚愕、直後に後方から炎を2本噴出しながら、飛行機械が猛烈な速度で通過する。衝撃波・・・・およそ10機の飛行機械は、急上昇をはじめ、信じられない上昇力で空に消える。

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーー!!!!

 

基地全体に、緊急時のみ使用が許される最大級の警戒アラームが鳴り響き、基地内の人間は、慌しく動き始める。

 

「早急に戦闘態勢に移行しろ!!! 竜騎士隊で、上がれる者はすべて上がれ!!!」

 

陸将メイガは吼える。

 

 

皇都エストシラント

 

皇国臣民たちは、先ほどの爆発について、話をしていた。

 

「今のは何だったんだ?」

「南の方角で、竜騎士がやられているのを見た!!少なくとも、味方でない何かが皇国を攻撃しようとしている!!!」

「いったい何処だ? まさか戦争中のグレートブリテン及び北アイルランド連合王国か?!」

「可能性は高いな!! しかも海軍にいる弟によれば、同盟国の日本も加わっているらしい!!」

「馬鹿な!! 文明圏外の蛮国がいくら背伸びをしたところで、列強であり、第3文明圏最強のパーパルディア皇国の、しかも皇都に攻撃など、無理に決まっている!!」

「いい加減目を覚ませよ。日英の輸出品を見ただろ? あんなものを大量に安く作れる国だぞ?」

「うわっ!!」

 

住民たちの会話は、突如として現れた轟音によってかき消される。地上高50m付近といった、超低空を、爆弾を主翼と胴体に抱えたF2戦闘機が20機、ユーロファイタータイフーンが10機の計30機が亜音速で通過する。その内、1機のタイフーンは彼らに見せつけるかのように機体全体がユニオンジャックでペイントされている。

 

「なななな・・・・何だ!!!」

 

腰を抜かして動けなくなる者、逃げ惑う者、混沌とした状況がそこに生まれる。皇都上空に低空侵入してきたF2戦闘機とユーロファイタータイフーンは、上昇に転じ、上昇しながら爆弾を投下する。放物線を描きながら、無誘導の爆弾は飛翔する。

 

ヒュゥゥゥゥゥヒュゥゥゥ・・・・!!!

 

かん高い風きり音が多数こだまする。聞いた事の無い音、それを聞いた人間たちの本能は全力で警笛をならす。爆弾を投下したF2戦闘機とユーロファイタータイフーンは、後方から太い炎を1本噴出しながら、雷鳴のような轟きと共に、上空へ消えていった。

 

 

皇都北側 陸軍基地

 

ヒュゥゥゥゥヒュゥゥゥヒュゥゥ!!!!

 

「何だ!!! 何の音だ!!!」

 

聞いた事の無い不気味な音が鳴り響き、陸将メイガは吼える。音源は1つや2つではなく、多数の音源がある。メイガは窓の外を見る。次の瞬間。猛烈な光、光の連続、耳を劈く爆音。F2戦闘機及びユーロファイタータイフーンから投射された爆弾は、攻撃目標から誤差数十メートルで、ワイバーン用の滑走路に着弾した。連続して猛烈な爆発が起こる。陸将メイガの眼前の窓ガラスは、爆発の衝撃で四散し、ガラスの破片が陸将メイガの目に突き刺さる。

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!! 目がー!!! 目がぁー!!!!」

 

彼は目を押さえ、その激痛からその場を転げまわる。メイガは、痛みのあまり、1度は我を失ったが気力を振り絞って我に帰る。

 

「状況は!!!状況はどうなっている!!!!」

 

陸将の目からは血が流れ、視力を失っているのが見て取れるが、彼は指揮能力を失ってはいなかった。

 

「今の爆発は、空中から投下された爆弾だと思われます。現在滑走路が爆炎に包まれており、被害状況を視認できません。」

 

幹部はメイガの問いに返答する。

 

「空から爆弾を投下だと!? なんて威力だ・・・しかし、とんでもない事を!!!」

 

パーパルディア皇国には、爆弾は存在するが、ワイバーンに搭載出来る爆弾は無い。飛竜は重たい物を持つと、飛べなくなってしまうため、上空から打ち下ろす導力火炎弾といった支援火力はあるが、空から爆撃するといった事例が無く、その場にいた全員が衝撃を受ける。

 

「煙が晴れます」

 

そよ風が吹き、煙が晴れてくる。

 

「なっ!!! こ、これでは!!!」

「どうした!?何が見えている!!!」

 

彼らの前に、月面のように穴だらけとなり、絶対使用不可能となった滑走路だったものが姿を現す。

 

「か、滑走路をやられました。これでは他の竜騎士は離陸出来ません!!」

 

悲鳴のような報告。メイガはそれを聞き、絶望に包まれる。

 

「そ、それでは!!! 皇都上空はどうする!!! 何か方法は無いのか!?」

 

「ありません。ワイバーンオーバーロードの数はそろっていますが、離陸出来なければ意味がありません。少なくとも現時点において、我々は皇都上空の制空権を失いました」

 

陸将メイガ他、幹部全員の心を絶望が支配した。

 

 

皇都エストシラント

 

「おい! 見ろ!!!」

 

興奮した臣民が北方向を指差す。言われるまでも無く、住民たちは、猛烈な爆発音がした方向をすでに見ている。見た事も無いほどの大きな爆煙が陸軍基地から上がっている。汗が吹き出る。言葉が出ない。あまりの光景に、泣き出す女性もいる。しかし、彼らに更なる恐怖が聞こえる。何処からだろうか? 先ほどとはまた違う音が多数聞こえてくる。

 

「いったい次は、何なんだ!!!」

「あそこだ!あそこ!!」

 

目の良い者が、南の空を指差す。

 

「なっ!!!」

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

先ほどとは、比べ物にならない量、白く大きな機体が多数、上空から侵入してくる。白い機体は、後方に白い雲を引き、その機体から発せられているであろうエンジン音が、皇国臣民の恐怖をかき立てる。先ほどからとてつもなく速い機体を見た皇国臣民にとって、上空を侵入してくるそれは、ひどくゆっくりに見える。そのゆっくりとした行軍、飛行機の大きさ、そして量が皇国臣民にさらなる恐怖をもたらす。

 

「あれは!! まさか竜か!!!?」

 

ユーロファイタータイフーン8機の護衛を伴い、海上自衛隊所属のP1爆撃編隊は皇都上空を通過する。海上自衛隊を中心に、日英加豪新5か国による共同作戦に参加する総数70機にも及ぶP1爆撃編隊の後方からは、1機1機が雲を引き、多数の飛行機雲は皇国上空の空の様子を変える。パーパルディア皇国に、彼らを防ぐ手段は全く無い。皇国臣民は自らをも破滅に導く行軍を、なす術も無く見つめる。

 

「間もなく目標投下地点に達します」

 

眼下には異世界の地、栄えた都市が見える。覇権主義を抱え、驕り高ぶった文明。日本やイギリス連邦王国に対し、民間人を含む全てを殲滅すると宣言してきた国、容赦する必要は無い。しかし、まさか哨戒が主だった任務である自分たちが、爆撃をする事になるとは思わなかった。最も、共に作戦に参加しているイギリス空軍所属の機体は何故か堂々と尾翼にユニオンジャックが描かれているが。

 

「3、2、1、投下!!!」

 

海上自衛隊、イギリス空軍、カナダ空軍、オーストラリア空軍、ニュージーランド空軍によるP1爆撃編隊は、爆弾の投下地点まで、予定どおりに到着、殲滅目標である皇都北側の陸軍基地に対し、多数の無誘導爆弾を投下した。

 

「敵が!! 敵が侵入してくるぞ!!!」

 

皇都防衛隊の幹部が叫ぶ。滑走路が破壊され、多数のワイバーンオーバーロードは地上にいる。敵の高度まで届く武器は無く、現時点出来る事は無い。

 

「デカイ飛行機械を送り込んできやがったか!! しかも、量が多いぞ!!!」

「奴ら一体何をするつもりなんだ!!!」

 

基地にいる多くの者が上を見上げる。

 

「ん!!?」

「あっあれは!!!」

「何か黒い物を落としたぞ!!」

 

ヒュゥゥゥゥヒュゥゥヒュゥゥゥ……

 

先ほど、滑走路を猛烈な爆発で破壊した時に使用された兵器の音がする。

 

ヒュゥゥゥゥヒュゥゥヒュゥゥゥ……

 

先ほどよりも、遥かに音の数が多い。

 

ヒュゥゥゥゥヒュゥゥヒュゥゥゥ……

 

空を見上げる者の目が見開かれる。何十機もの敵機から、非常に多くの黒い物体が連続して投下される。

 

ヒュゥゥゥゥヒュゥゥヒュゥゥゥ……

 

音の量は加速度的に増え続ける。

 

「先ほどの高威力爆弾!!!!」

「爆弾の雨がくるぞ!!!!」

「退避――!!!退避―――!!!」

「くそ!! 量が多すぎる、何処に逃げろというんだ!!!」

 

パニック状態となる基地、しかし、爆弾は彼らが避難するまで待ってはくれなかった。連続する炸裂音。猛烈な光。建物の何十倍もの高さまで吹き上がる爆炎。基地全体が爆煙に包まれる。しかし、爆発はまだ続く。表面を舐めるように、繰り返し爆炎は吹きすさぶ。爆弾の投下を終えたP1爆撃編隊は、上空で旋回し、南方へ飛び去っていった。

 

「こりゃあ派手にやりましたなあ・・・」

「国王陛下の使いである領事を殺害したんだ。当然だろう」

 

前々からエストシラントに潜伏しているイギリス軍の兵士は今回の攻撃に関する効果測定のため、皇都北方の陸軍基地周辺に潜伏していた。陸上基地の破壊状況が不足していた場合は、第2次攻撃を要請する。ドローンを飛ばし、高空から基地の状況を確認する。カメラに写る状況、そこに構造物は無く、昔基地だった場所には多数のクレーターが存在するのみ、動くものの気配すら微塵も無い。基地だった場所と、その周辺区域ですら構造物は確認できない。

 

「敵基地の殲滅を確認、第2次攻撃の必要無し」

 

観測員は無線で第1報をイギリス大使館に送り、大使館からアルタラス王国の司令部へ転送。彼らは足早にイギリス大使館へと戻って行った。パーパルディア皇国、皇都防衛隊の大規模陸軍基地は、日本国航空自衛隊のF2戦闘機及びイギリス空軍のユーロファイタータイフーンにより滑走路を破壊され、日英加豪新のP1爆撃隊の猛爆撃によって、原型を留めずに全滅、この世から姿を消した。

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 南方海上

 

それは、波を裂き、突き進む。2列に並んだ金属で出来た船、総数40隻は、航跡を引きながら北へ向かう。日英加豪新の艦隊は、パーパルディア皇国海軍残存勢力を滅するため、皇都エストシラントの南方にある大規模な港へ突き進むのだった。

 

 

日英加豪新連合艦隊旗艦

護衛艦かが

 

「いかに慌てて艦隊をニュー・ホンコンから呼び戻そうと無駄というもの。我々を怒らせたことを永遠に後悔するとよい」

「司令、市ヶ谷から報告。敵の主力艦隊はニュー・ホンコンとエストシラントの中間地点におり、我々のエストシラント突入には間に合わないとのこと。また、ニュー・ホンコンからはロデニウス連合の艦隊が執拗に追撃を行っており、まともに戦える状況ではないとも」

「では、艦隊の一部を抑えに回せば問題なさそうだな」

「その抑えですが、オーストラリア海軍とニュージーランド海軍が我々に担わせて頂きたいと。我らも武功をあげたいとのこと」

「成る程な。もがみ型は弾薬を消費しているし、イギリス海軍はエストシラント攻略の要。あくまで日英の補助であるオーストラリア、ニュージーランドの艦隊を向けることは利にかなってはいるな。よし! 揚陸艦等一部の艦艇を除き、オーストラリアとニュージーランドに、カナダの艦艇1隻を加えた艦隊でエストシラントに向かう敵主力を迎撃する! カナダから出す艦艇についてはカナダ海軍の判断に任せ、カナダ海軍が迎撃艦隊の指揮をとるようにとも!!」

「ははっ!!」

 

指示を受け、カナダ海軍からはフリゲート艦トロントが臨時旗艦として分離し、揚陸艦等を除きオーストラリアとニュージーランドの艦艇を率いてパーパルディア皇国海軍主力艦隊に向けて移動を開始する。

 

 

カナダ海軍フリゲート艦トロント

 

「こちらは本艦隊の指揮をとるトロントだ。我々はこれより別動隊として、エストシラントに向かっている敵主力を殲滅する! ニュー・ホンコンから追撃しているロデニウス連合艦隊と協力し、敵を挟み撃ちとする!! 本日天気晴朗ナレド、波高シ!!」

「艦長、最後のが言いたかっただけでは?」

「確かに波高いけども」

 

 

イギリス領ニュー・ホンコン

ニュー・ホンコン総督府

 

「本当か?!」

「現地のパプアニューギニアのスパイの情報では、やはりルディアスは現地人浮浪者に扮して宿に滞在している模様です。現時点では宿から出ていないようです」

「先ほどアルタラスの司令部より、敵首都上空の制空権を完全に掌握したとのこと。あとは総督の命で空中待機している特殊部隊を突入させられます」

「うむ。では命じよう! 現地の友軍と協力し、ターゲットを確実に捕縛せよ!!」

「ははっ!!」

 

アオイ総督は友軍が完全に制空権を掌握したことを確認し、空中待機させていたヘリ部隊を突入させる。また、現地に待機している地上部隊とも連携し、宿に繋がる街道に部隊を展開。確実にルディアスを捕縛する態勢を整えた。

 

「グローリア大使には悪いが、皇帝は我々が確保する。確保完了後、速やかに総督府まで移送せよ!!」

「ははっ! では直ちに!!」

 

部下と入れ替わりに、駐アルタラス王国英国大使にして兄のハルトが入室する。

 

「始まった?」

「始まったよ。あとはここに連れてきて、私達で尋問だよ。しかし、よくホンコンまで来たね」

「本国からだ。僕を全権大使とし、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスで講和会議を開催することで日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、その他参戦国と神聖ミリシアル帝国の間で合意。パーパルディア皇国政府の降伏を以て開催とすると。アオイは僕の護衛として同行するようにと」

 

ハルトはアオイに英国本国からの通知書を見せる。

 

「本国も私達をこき使うわね」

「そろそろ僕も報われて欲しいなあ・・・アオイは総督、でも僕は一国の大使。そうだなあ・・・パーパルディア総督にでもなろうかな?」

「まあ、無理でしょ。よくて駐神聖ミリシアル帝国大使辺りよ」

「手厳しいねえ・・・」

 

兄妹達の雑談は続く。その間に戦況は刻一刻と日英優勢に傾くのである。

 

「因みに戦後は、我らの国王陛下がパーパルディア皇国皇帝に即位される予定だ。あと日本のエンペラーもパーパルディア皇国皇帝を兼務し、2か国の国家元首を頂点に頂く立憲君主制国家に改められるそうだよ」

「よく日本が飲んだわね。辞退しそうなのに」

「国王陛下が必死に説得されたそうで。最初は頑なに飲まなくて最後には弟宮にまで泣きついたとか」

「絶対あっち困惑してるじゃんそれ。ちなみに国王陛下はエンペラーに対して、君のタンポンになりたいって言ったの?」

「ソレチガウヤツ」

 

(続く)

 

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