パーパルディア皇国アルタラス王国侵攻軍やニュー・ホンコン奪還部隊を日英陣営が完全に撃退し、デュロに核報復を敢行した頃まで時を遡る。
フィルアデス大陸北方
メスマン帝国首都アンコラ
アンコラ宮殿スルテンの間
「聡明なるスルテンに申し上げます。エストシラントに滞在する大使より、今や憎きパーパルディア皇国はニホンとグレートブリテン及び北アイルランド連合王国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにより瀕死とのことであります!!」
パーパルディア皇国の北方に位置し、同国に次ぐ広い領土を有し、かつてはパーパルディア皇国と並ぶ強国として栄え、先進11ヵ国会議にも参加していた国がある。その名はメスマン帝国。パーパルディア皇国が魔導砲やマスケット銃を採用し始めると技術力の差から徐々に衰退を始め、次々と従属国や領土を失陥。その後、メスマン帝国首都アンコラで結ばれたアンコラ条約により、両国の国境線の確定、相互不可侵が約束されたが、今や事実上のパーパルディア皇国の従属国にまで成り下がっていた。
「今こそ、我らの領土を取り返す好機です!!」
「既に軍は出撃体制を整えており、あとはスルテンである閣下の号令を待っております!!」
メスマン帝国のスルテンであるメトメフ6世は部下達の報告を真剣な眼差しで聞き取る。
「うむ。して、国境線・・・いや、憎き異教徒(パーパルディア皇国)に不法占拠されている一帯の様子はどうだ?」
「大きな変化はありません。むしろ我々が攻めてくることはないと油断しきっており、まともに警備をしていない模様です」
「よし。今ここにスルテンの命を発する。異教徒により占領された土地を奪還するべく、ここに聖戦を宣言する!! 軍は直ちに攻撃を開始せよ!!」
「ははー!!」
「閣下、パーパルディア皇国の大使には何と伝えておきましょうや?」
「ん? 異教徒と言えど、外交官の首を刎ねるわけにはいかんからな・・・聖戦を通達すると共に、邦人共々24時間以内に出国するか、中立国の大使館に退避せよとでも伝えておけ」
「承知に」
聖戦を発動したメスマン帝国はアンコラ条約により定められたパーパルディア皇国との国境線に軍を集結。これを知ったパーパルディア皇国メルアニア守備隊はメルアニア統治機構に対して緊急通報した。
パーパルディア皇国属領メルアニア
メルアニア統治機構
「メスマン帝国との国境線に総勢100000の軍が出現!! 戦象や騎馬隊、またマスケット銃を装備した歩兵部隊が確認されています!!」
「腐ってもかつてはフィルアデス大陸を二分した大国メスマン帝国・・・我が国の兵器をコピー、国産化していたか・・・くそっ!!」
メルアニア統治機構長官のザハクは机に拳を叩きつけた。
「おそらくはニホンとグレートブリテン及び北アイルランド連合王国が我が国を攻撃し、我軍は惨敗。アルタラス侵攻軍もほぼ全滅し大混乱に陥っている隙を突いてのことだろうな・・・・しかも我々には増援はない・・・メルアニア統治機構軍の戦力は?」
「歩兵、地竜、砲兵、騎馬隊全てを合わせて10000、警察組織を含めても15000と言ったところです・・・・」
「とても守りきれるものではないな・・・・」
ザハクは頭を抱える。
「幸いなのは、メルアニアにおける我が国への感情はかなり友好的であるということか」
「元々メスマン帝国に虐げられていた地域でしたからね」
メルアニアはかつてメルアニア王国という独立国であり、パーパルディア皇国と同じ宗教を国教とする王国であった。住んでいる民族こそはパーパルディア皇国とは異なるものの、遥か昔にフィルアデス大陸の大部分を支配した神聖マーロ帝国によって支配され、帝国統治下において現在のパーパルディア皇国と同じ宗教を信仰することになった経緯がある。その後神聖マーロ帝国は崩壊し、メルアニア王国が成立。暫くは独立国として存続していたものの、メスマン帝国が成立すると、領土拡大政策の第一歩として制圧された。メスマン帝国の支配下により、メルアニア人はこれまでの宗教の信仰を禁止され、二等臣民として奴隷にされていた。長らくその状態が続いていたものの、皇帝ルディアスの領土拡張政策によりメルアニアはメスマン帝国からパーパルディア皇国に割譲された。属領メルアニアとしてパーパルディア皇国の支配下に入ったメルアニアは、メスマン帝国に対する最前線と位置付けられ、他の属領とは比べ物にならない程優遇されていた。また、メルアニア人は勤勉で優秀であったことから多数のメルアニア人が兵士や統治機構職員として雇用されており、メルアニア統治機構軍の3割はメルアニア人が占めている。またメルアニア自体には搾取可能な資源が存在していないこともまた、他の属領とは異なる点であった。搾取可能な資源がなく、同じ宗教を信じ、非常に友好的な民、敵国の最前線にして経済拠点。奇跡的に噛み合ったが故の結果であった。
「長官! 統治機構前には軍に志願する男女が集まっている模様です!!」
「・・・・気持ちは嬉しいが、配布する武器がない・・・・」
メルアニア統治機構前広場
「メスマン帝国が攻めてくるんだろ!? 俺たちも戦わせてくれよ!!」
「二度と信仰を禁止され、奴隷にされるのは懲り懲りだ!!」
「メルアニアはパーパルディア皇国と共にある!!」
「火事場泥簿のメスマン帝国に鉄槌を!!」
メルアニア統治機構前広場には10000を超える市民が集まり、軍への志願を表明していた。パーパルディア皇国からの移民が多数であるが、メルアニア人も多数参加。彼らはパーパルディア皇国旗を掲げ、連帯と徹底抗戦を求めていた。
「・・・・・・」
窓から彼らの様子を見つめるザハク長官。
「・・・・死ぬのは我々軍人だけでよい。彼らの命を無駄にしてはならぬ。海軍に命ずる。民間人を本国へ脱出させよ。動ける船は全て動員せよ。ただし! 女子供老人を優先するのだ!!」
「ははっ!」
「陸軍は国境線に罠を仕掛け、時間稼ぎを! その後撤退し、首都と港の防衛に総力を捧げよ!! 我々は最後の一兵まで闘う!! 守るべき民を守れ!! 軍人としての誇りをメスマン帝国に、そしてエストシラントに攻め込んでいるニホンとグレートブリテン及び北アイルランド連合王国に見せつけてやるのだ!!」
「承知!!」
その後、統治機構職員により高札が出された。パールネウス語とメルアニア語で書かれており、このように記されていた。
諸君ら臣民の祖国に対する心意気に強く感謝する。だが、我々メルアニア統治機構は諸君ら臣民を守ることが責務である。例えメルアニアが敵の手に落ちようとも、諸君らが無事であれば何時でも取り返せる。メルアニア統治機構長官として、皇帝陛下に代わり命ずる。民間人は直ちにメルアニアの港に退避せよ。既に海軍や民間の船会社には諸君らを脱出させる船を出すように指示を出した。我々、メルアニア統治機構軍は諸君らを無事に脱出させる為、最後の一兵になるまで闘う。
パーパルディア皇国、そしてメルアニアに栄光と祝福あれ!!
パーパルディア皇国万歳!! メルアニア万歳!!
メルアニア統治機構長官ザハク
高札を読んだ市民は皆涙を流した。そこにはパールネウス人もメルアニア人もない。皆、長官の想いに感激していたのだ。これ以降、多数の市民がメルアニアを脱出し、ニュー・ホンコンへ向かって脱出した。ニュー・ホンコンはイギリス領ではあるが、パーパルディア皇国各地では日英との戦闘により疲弊している皇国に対しての反乱が日に日に拡大しており、相対的に敵国の支配地域の方が安全であること、またニュー・ホンコン総督であるアオイ・バイオレット・アリス・ハミルトンと駐アルタラス王国英国大使のハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンが人道上の配慮及び、戦後統治における対英感情を良くする為に避難民の受け入れを受諾したことが理由である。後に彼ら兄妹は駐パーパルディア皇国英国大使であるグローリアとガチの殴り合いの喧嘩になるのだが、それはまた後日の話である。
メスマン帝国メルアニア解放軍
「進め進め!! メルアニアの首都は目前ぞ!!」
国境線に仕掛けられたパーパルディア皇国軍の罠やゲリラ戦に苦戦しながらも、メスマン帝国軍は数の暴力で進撃。侵攻開始から一週間で遂にメスマン帝国軍はメルアニア統治機構から8キロの地点にまで到達。更に海軍はメルアニアの港まで20キロの地点にまで迫っていた。
「よし、進めー!!」
「「「「「うおおおー!!!」」」」」
翌日正午過ぎ、メルアニア統治機構本部にメスマン帝国軍が突入。ザハク長官を筆頭に統治機構本部は徹底抗戦を貫くも、遂に陥落。これによりメルアニア統治機構軍の生き残り1200人はまだ逃げ切れていない800人程の避難民と共にメルアニアの港にまで押し込められることになった。また避難出来ない寝たきりの老人や介護者、更には通信員や避難を拒否し、市内に残っていたパールネウス人やメルアニア人を総勢10000人メスマン帝国軍は集団虐殺。首都侵攻までに20000人のパールネウス人やメルアニア人を集団虐殺しており、後にこの事が理由で戦後日英による経済制裁とイギリスを中心とする多国籍軍による軍事侵攻が行われることになる。
メルアニアの港
「統治機構本部が陥落・・・」
「いよいよメスマン帝国軍がこの港にも・・・・」
「ママー、怖いよー!!」
「船はまだ来ないのか!?」
「昨日メスマン帝国海軍に沈められたのを見ただろ!! もうおしまいだ!!」
最後の避難民を脱出させる船は昨晩メスマン帝国海軍により撃沈。海面を漂う兵士や乗組員を銃撃する等、メスマン帝国海軍は港を封鎖し、避難民の退路を完全に遮断していた。希望はない・・・・誰もがそう思った時だった。
ドー!!
「なんだ!?」
突然の汽笛が港中に鳴り響く。全員が海の方を振り向く。
「な、なんだああのバカデカイ船は!?」
「我が国の船ではないぞ!!」
「だが、神聖ミリシアル帝国にも、ムーにもない船だ!!」
「見慣れない旗を掲げているぞ!!」
掲げている国旗を見て誰かが叫んだ。
「あれはニホンの旗だ!! ニホンの船だ!!」
「ニホン!? 敵国の船がなんでメルアニアに?!」
「我々を殺す為に来たのか?!」
「でも、ニホンジンは平和を愛する民族だと聞いたゾ!! もしかしたら助かるかもしれないゾ!!」
全員が港にむけ前進して来る大型船に注目する。パーパルディア皇国海軍で唯一メルアニアに残っているタグボート部隊が前進。その後日章旗を掲げた大型船は水深の問題でやや沖合いで停泊。船長ら船員数名がパーパルディア皇国海軍のタグボートで上陸した。
「メルアニアの皆さん、聞こえますか?!」
船長と思われる人物が避難民らに拡声器で呼び掛ける。彼の言葉を聞き逃さまいと皆が耳を傾ける。
「我々は日本の商船です! 私たちは危険を承知で貴殿方を助けに来ました!!」
救助と知ると、避難民らに笑顔が戻る。彼らは歓喜の声をあげ、兵士達も驚きの表情を見せる。
「乗り移る為の船を出しますので、まずは女子供、次いで高齢の方から順に乗船してください!!」
やがて大型船からも迎えの船が降ろされると、順番に船に乗り込んでいく。更にパーパルディア皇国海軍も動員可能な船舶を総動員して大型船に避難民を乗船させていく。群衆を陸軍や警察機関の生き残りが統制し、混乱を最小限に抑える。
「まさか、敵国の民間船に救われるとは・・・しかも、彼の国の民を我々は虐殺したというのに・・・・」
とあるパーパルディア皇国軍の兵士がそう呟いた。
「我々・・・・いや、世界が失った弱者に対する優しさ・・・騎士道精神が残っているということか・・・・」
兵士らがそんな会話をしていると、船長に話し掛けられた。
「何をしているのですか? 次は貴殿方の番です!! 武器を捨て、身軽になってから乗ってください!!」
「え? ・・・・あ、ああ・・・・」
こうして、最後の避難民や兵士を乗せたタグボートが大型船に到着。幸いにもメスマン帝国で積み荷を全て降ろしており、空の状態でニュー・ホンコンに向けて回航中だったこともあり、約2000名の民間人や兵士を収容することが出来た。そして、大型船は錨を揚げ、出港。
ドー!
汽笛を鳴らし、港湾から出た直後にメスマン帝国海軍に包囲された。
「船長! メスマン帝国海軍が本船を包囲!!」
「見れば分かる」
「船長、メスマン帝国海軍の司令が魔信で呼び掛けています」
「応じる」
船長はクワ・トイネ公国製の魔信を取り、メスマン帝国海軍と交信を開始した。
「こちらは日本国の商船東郷丸である。我々はイギリス領であるニュー・ホンコンへ向かっている。速やかに進路を空けられたし」
「黙れ!! こちらはメスマン帝国海軍だ!! ニホンの商船に命ずる!! 直ちにパールネウス人とメルアニア人を我々に引き渡せ!!」
「こちら東郷丸。貴殿らの要求を断固拒絶する。我々は避難民を多数収容しており、イギリス領ニュー・ホンコンに向け急ぎ向かう必要がある。進路を空けられたし」
「それは出来ない。パールネウス人とメルアニア人の引き渡しはスルテンの命である!! 避難民が邪魔であるのであれば、我々が引き受けようぞ!!」
「避難民収容は人道上必要があってのことであり、邪魔とかの問題ではない。我が国はジュネーブ条約を批准しており、民間人並びに捕虜の保護は例え敵国であっても義務である」
「我が国はジュネーブ条約を批准していない。詳しい内容は知らないが、ニホンの言い分はスルテンの命に反している。スルテンはニホンとの対立は望んでおられぬ。速やかに停船し、パールネウス人とメルアニア人を引き渡せ!!」
互いの意見は完全に並行線。更にメスマン帝国海軍の戦列艦が一斉に威嚇射撃を敢行。力ずくでも停戦させるつもりであった。しかし、船長以下船員の判断は変わらない。
「・・・・・諸君らに見えるだろうか? 本船には日章旗が掲げられている。避難民は既に日本の保護下にある。メスマン帝国軍の要求は断固として認められない。絶対に彼らを貴殿らには引き渡さない!! もし本当に本船に砲弾を当ててみろ。避難民に指1本触れてみろ。それは日本国への宣戦布告と見なす!! そして、我が国の同盟国であるイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに対する宣戦布告ともなる!! それでも撃つというのか?」
船長は逆にメスマン帝国海軍を脅した。自分たちの判断次第ではフィルアデス大陸最強の国家であったパーパルディア皇国を降伏寸前にまで追い詰めている国を敵に回すかもしれない。彼らに迷いが生じた。
「撃ちたいなら撃てばよい。本船は武装していない。簡単に沈められるだろう。だが、その報復は必ず行われる。貴殿らのスルテンとやらもろともメスマン帝国を消し飛ばすだろう。かつて工業都市として栄えたデュロのように・・・・」
追い討ちをかけるように日本側はメスマン帝国海軍を脅迫した。神聖ミリシアル帝国の報道機関により、彼らにもパーパルディア皇国の工業都市デュロがイギリス軍による攻撃で跡形もなく消滅し、生き残り達が謎の病に苦しんでいる話が届いていた。
「・・・・進路を開けよ」
「司令・・・・」
「ニホンを敵に回すことは出来ない。口惜しいが、憎きパールネウス人とメルアニア人を見逃す他ない」
こうして、東郷丸はメスマン帝国海軍の包囲を突破し、ニュー・ホンコンへ向かった。事の詳細をニュー・ホンコン総督府に通報。
イギリス領ニュー・ホンコン
ニュー・ホンコン総督府
「日本の商船がメスマン帝国海軍の要求を拒絶し、パーパルディア皇国の民間人と捕虜2000人を乗せ、ホンコンに向け移動中。しかも奴らは海面を漂う敵兵に対して銃撃を実施する等、戦争犯罪も犯している・・・ねえ・・・」
「どうみる? 総督」
「どうも何も、蛮族としか。しかも奴らは日本の商船を拿捕する為に執拗に追跡しているともあるじゃない」
「今は敵国の民だが、彼らは将来的に国王陛下の臣民となる者。それに、メスマン帝国に赴任している友人からの話では、どうも砂漠地帯から石油が湧くらしい」
「・・・・これは利権の匂いがするわね」
ニヤリと笑うハルト大使とアオイ総督。本国に事の次第を報告すると共に、数日前に配属されたばかりのイギリス海軍の哨戒艦ドラゴンフライと油送船1隻を東郷丸護衛の為に出港させた。
イギリス海軍ニュー・ホンコン守備隊
第一哨戒艦隊所属
哨戒艦ドラゴンフライ
「景気づけにミュージックだ」
東郷丸を発見した哨戒艦ドラゴンフライは大音量で「ルールブリタニカ」を流し始める。更には速力差を活かしてメスマン帝国海軍に対して異常接近を繰り返し、嫌がらせ。更には白々しくユニオンジャックを靡かせた。メスマン帝国海軍は隙を見て東郷丸を拿捕しようと執拗に追跡して来ていたが、勇ましくユニオンジャックを掲げる哨戒艦ドラゴンフライが出現すると報復を恐れ、そそくさと逃げていったという。
イギリス領ニュー・ホンコン
「皆さん、長い間の船旅お疲れ様でした。もう大丈夫ですよ!」
イギリス海軍の護衛で東郷丸は無事ニュー・ホンコンに入港。船長ら乗組員はアオイ総督やハルト大使による歓迎を受ける。避難民は先に避難していた者らと共にカナダ領カイシンに設けられた受け入れ施設に収容。必要な治療やワクチン接種を受け、戦後まで待機することになる。この記録は避難民らの証言により日英に広がっていたものの、日本商船側には存在せず、またニュー・ホンコン総督府にも残されておらず、当の本人達も口を割らなかったことから、長らく存在が疑問視されていたが、後にニュー・ホンコン総督府と駐パーパルディア皇国英国大使館との間で交わされた通信記録が機密指定解除により公開されたことで真実と判明するのである。
機密指定第893号
グローリア大使⇔ハルト大使atニュー・ホンコン総督府
「ですから、パーパルディア皇国人受け入れはジュネーブ条約に則ったものであり、本国からも承認を得てのことです」
「黙れ! たかが田舎のアルタラスの大使が腐っても列強国に赴任している私に反論するな!!」
「と、言われても困りますが。将来的には国王陛下の臣民となる者達です。国王陛下の臣民を見殺しにしたとあっては、陛下の威厳にキズがつきます」
「お前は安全地帯にいるから分からないだろうが、大切な人を殺された憎しみを此方は背負わされているのよ!!」
「アルタラス王国は安全地帯ではありませんでした。アルタラス王国軍の奮戦によりようやく、安全地帯になったのです。今は戦後処理について、アオイ総督と話し合う為にニュー・ホンコンにいますが」
「とにもかくにもパーパルディア皇国人のホンコン受け入れには反対する!! お前達が独断で決めたせいで本国は迷惑している!!」
「避難民受け入れは本国のみならず、我が国の盟友、日本国政府も認めていること。我々の独断ではないし、なんだろな・・・僕達が独断で決めたとか、それって貴方(グローリア大使)の感想ですよね?」
「若僧が偉そうに!!」
「いやいや、僕と貴方は殆ど年齢離れてないっすよ? 確かに貴方の方が歳上ですけど。ああ! 歳上だから我慢が利かなくて、幼児退行しちゃったってことすか!! すみません!!」
「どうせお前達が日本の商船に避難民の情報を流したんだろうが!!」
「いや、流してないっすよ? 勝手に決めつけて茹でダコになるのやめてもらっていいすか? それに救助を決断したのは東郷丸っすよ? 我々は、同盟国の行動を支援し、戦後処理を円滑に進める為に協力しただけなんですよね。貴方のように憎しみで動いてる訳じゃないんすよ。軽率な発言は貴方のキャリアを崩壊させますよ?」
「国民感情があるでしょうが!!」
「国民感情すか? 憎しみに任せて弱いもの苛めをしようとしている貴方の立場の方が戦後に心配っすね。どうすか? 戦後貴方はケイマン諸島辺りに栄転して、飼い殺しが良いところじゃないですか?」
「この腐れ兄妹が!!」
「あ、電話切れちゃった。あっちからかけてきたのにね」
また、何故日本の商船が彼らに迫る危機を知ったのか。誰が救助を決断したのか。それらについては今日に至るまで謎のままである。そして、彼ら以外にも敵国の民に手を差し伸べる者達がいた。
(続く)