日本国政府専用機 ボーイング777-300ER
「こんな巨大な鉄竜が我が国のワイバーン、いや列強のワイバーンロードより速く、そして高く飛べるとは・・・ヤゴウ殿、日本という国は列強を遥かに凌駕する国力を持っていると見て間違いないようですな」
「全く同じ意見ですぞハンキ将軍。しかも説明によればこれは非武装の鉄竜。非武装でこれだけの速さで飛ぶのですから、戦闘用となれば我が国のワイバーンでは勝負にすらならないでしょうな」
「故に、日本とは友好関係を築かねばならぬ。不可侵条約は最低限、可能ならば武器の輸出を要請しなくては。海上保安庁という警察組織の船でさえ、海軍のあらゆる船を凌駕しておる。また日本ではかの国の友好国であるイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとも会談する予定になっておる。仮に日本から輸出されなくても、他の国からの輸出はあり得る」
「本日は日本、イギリス、カナダ。明日は午前にオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、午後には残りのイギリス連邦王国と会談する予定でしたな。我々は歴史が変わる瞬間に立ち会うのかもしれませんな」
そうこうしている内に、政府専用機は着陸態勢に入る。東京の空の玄関口羽田空港が近付くと一行は更に驚愕する。
「何なんだこの国は!?」
「巨大な鉄竜が数えきれない程停まってるぞ!!」
「石垣島とは比べ物にならない数の鉄の箱が走り回っている! 明らかに列強以上、いや神聖ミリシアル帝国より上かもしれない!!」
一行は窓の外に映る東京都大田区の街並みに驚愕する。クワ・トイネ公国の一行は東京国際空港/羽田空港に到着。事前に待機していた専用車に乗り換え警視庁のパトカーや白バイの厳重な護衛の下、首相官邸へと向かうことになる。
東京都 首相官邸
「日本国へ遠路遥々よくお越しくださいました。私が日本国の首相を務めております石葉です」
「クワ・トイネ公国使節団団長のヤゴウです」
「同じく使節団のハンキです。本日は宜しくお願い致します」
その後、集まった報道陣向けの写真撮影が行われた後、外務大臣や各省庁の官僚らが集まり、日本とクワ・トイネの間で初めての外交交渉がスタートした。事前に石垣島で海上保安庁と接触していたことから、会話に関して言葉は通じるが文字は言葉の壁がある事が分かっており、プロジェクターを用いて基本的に映像で日本国の紹介を行うと共に、先の海上自衛隊の哨戒機による領空侵犯に対する日本政府公式の謝罪が行われた。日桑外交折衝と呼ばれた今回の会談では以下のことが暫定的に決められた。
1.日本国はクワ・トイネ公国に対して、哨戒機/騎による領空侵犯に対して公式に謝罪する
2.日本国とクワ・トイネ公国は速やかに国交を樹立するべく、実務者による協議を開始する
3.クワ・トイネ公国は日本国に対して国交樹立後速やかに食料の輸出を行うことを確約する
4.クワ・トイネ公国は日本国と他の異世界国家の国交樹立に向けた仲介を担う
5.1-4履行の見返りとして、日本国は無償でクワ・トイネ公国のインフラ整備を政府開発援助で行う
6.1-4履行の見返りとして、日本国はクワ・トイネ公国の海上における警察能力向上の為、巡視船を5隻供与し、訓練も併せて支援する
7.日本国とクワ・トイネ公国は不可侵条約を締結する
8.国交樹立後一年後を目処に両国の為替レートを設定する
クワ・トイネ公国側は軍の装備品の輸出を希望したものの、技術流出やそもそもの技術格差、米国製兵器の国産化の課題等から見送られた。その代替として巡視船を新造し、訓練支援とセットで供与することを提案。これだけでもクワ・トイネ公国側の海上能力の飛躍的向上に繋がることから日本側の打診を受け入れることになった。
「やはり武器の輸出はなりませんでしたな」
「だが、絶対に出さないとは言っていなかった。今後彼らが安定すればまだ可能性はあるし、そもそも海上保安庁が運用している巡視船ですら我々には大きすぎる成果だ。それに5隻は暫定的に決めた数。正式な国交樹立となれば追加もあり得る」
「それもそうですね」
その後、一行はイギリス大使館へ移動。英桑外交折衝が行われた。基本的には日本と同様の内容であったが、異なるのは軍の装備品の供与や輸出が認められたことであった。その後クワ・トイネ公国の一行は2日間かけてカナダ、オーストラリア、ニュージーランドを初めとしたイギリス連邦王国の国々と会談。特にオーストラリアは退役予定であったM1A1エイブラムスやアンザック級フリゲートを供与すると表明。訓練支援の為に陸軍と海軍からなる軍人顧問団をニュージーランドと共同でクワ・トイネ公国に駐留させ、同国軍の近代化を支援するとした。この他イギリスはアサルトライフルを初めとした個人携行用装備を、空軍戦力についてはユーロファイタータイフーンを訓練支援と併せて供与すると確約。空軍の訓練には時間がかかることから、一時的にイギリス空軍を駐留させ、同国の防空支援を担う用意があるとも伝えた。カナダはイギリス空軍防護を目的とした陸上戦力の派兵の用意があると表明した。
東京都内のとあるホテル
「ハンキ殿、大きな収穫が獲られましたな」
「全くだ!! 我が国からすれば食料は腐るほどある!! ほっておけば生えてくる草を大量に輸出すれば一気に国が豊かになると来たもんだ!! これは最早神が我々に与えた奇跡だ!!」
日本からはインフラ整備と巡視船供与、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドからは軍の近代化と英連邦王国軍の駐留による抑止力の強化を引き出したクワ・トイネ公国の外交団一行は極めて上機嫌であった。
「あとはこの内容を本国に持ち帰らねばなりませんな」
また辛い船旅になるのか・・・普通ならそうなるところだが、何と日本側が外交団一行を客船で送ると表面したのである。既に日本の圧倒的国力を肌で感じていた彼らは帰りはどんな船が来るのかとワクワクが止まらないでいた。その後、一行は横浜港から大型クルーズ船に乗船し、日本各地の港を経由しクワ・トイネ公国へ向けて帰国を開始。途中石垣島で残留希望者を除き残してきた兵士らを回収すると、海上自衛隊の護衛艦やイギリス海軍の駆逐艦による護衛を受けて移動を開始した。ちなみに彼らが日本に来るまでに乗ってきた帆船については国交樹立後に日本に譲渡され、石垣島で日桑友好の証として、屋内で丁重に静態保存されることになる。
「しかし、イギリスの外交官はやけに紅茶は輸出出来るのか!? 出来るんだよな!? と叫んでいましたが、ハンキ殿は何かご存知ですかな?」
「全く分かりませぬ。日本やカナダの外交官に聞いても色好い返答は頂けませんでしたし・・・分かりませんなあ・・・」
(続く)