日本国東京都大田区
東京国際空港
「・・・・・何なんだこの大都市は!!」
前後左右を屈強な警察官や自衛官に囲まれ、全く休まることなく日本に降り立ったレミールは窓の外に映る大都市に驚愕する。
「・・・・・・・・チッ・・・・」
政府専用機から降ろされ、警察官や自衛官に囲まれながら移動するレミールを待ち構えていた報道機関が一斉にシャッターを切る。見世物にされていると思ったレミールは舌打ちをする。暫くは空港の敷地内を移動させられていたが、ありとあらゆる設備が皇国にないものか、あるいは遥かに先進的なものだった。
「・・・・・・・・今度は機械車か?」
護送を担当する警察官から説明を受けたところ、東京国際空港からバスと呼ばれるムーの機械車のような乗り物で、日本の首都、東京のとある施設に送られるらしい。
「皇国を打ち破った都市の実情はどんなものか・・・」
レミールは列強を破った日本の首都に興味を持つ。レミールは、警視庁の被疑者搬送用のマイクロバスに乗せられた。バスの中には鉄格子があり、まるで動く牢屋のようだ。前後を白と黒の警察車両や暗い緑色の自衛隊の装甲車がガチガチに固め、上空には警察のヘリコプター、周辺空域には自衛隊のF35戦闘機が万が一に備え警戒監視に当たっている。やがてバスは彼女の常識をはるかに上回る速度でスムーズに動き始める。
(なんだ? この石が1つになったかのような道路は!)
道路に継ぎ目がない。やがて街中に入り、彼女の目に空からも見た、見渡す限りの高層建築物が飛び込んでくる。
(な、なっ!!!)
1つだけではない。ほぼすべてのビルが、彼女の常識を基準にすると、圧倒的に高く、そして地を埋め尽くさんかぎりの車が走る。街を歩く人々の量は皇都エストシラントと比べ、比較にならないほど多く、そのすべての人がデザイン性の溢れた美しい服を着ている。その常識離れした建物の高さが、整列して動く車の波が、空を飛ぶ超巨大な飛行機械が、目に飛び込んでくる映像のすべてが彼女の心をうつ。パーパルディア皇国の皇都エストシラントは、すべての繁栄を現実にした街だと思っていた。他の列強国の首都と比べても、決して引けをとらない、繁栄が約束された街だった。しかし、眼前の風景と比べると、エストシラントでさえ、ただの田舎の風景に思えてしまう。しかもかつての日本がいた世界にはこれを遥かに上回る国があったという。
「私は・・・・私は・・・・!」
レミールは五感をもって、日本の国力を感じ取る。皇国がどうあがいても勝てないほどの、100年たっても追いつけないほどの、圧倒的国力差があることに彼女は初めて気づく。
「戦いの結果は・・・・初めから決まっていたのだな・・・・」
後悔、絶望
彼女の心は残酷な現実に打ちひしがれる。その後警視庁から、日本人殺害の首謀者としてレミールの身柄引き渡しをパーパルディア皇国に要求。皇国はこれを受け入れ、イギリス領ニュー・ホンコンを経由して日本に到着。羽田空港で殺人の疑いで逮捕したと発表した。
パーパルディア皇国皇都エストシラント
パラディス城前広場
「おい見たか!? 例の放送を!!」
「みたみた!! 皇国が敗戦、属領は独立の賛否を問う住民投票実施だろ?!」
「しかもルディアス陛下が退位し、パーパルディア皇国皇帝にはイギリス国王が即位するらしいな!!」
「まじか?! 皇国も変わるな!!」
パラディス城前広場は先ほど実施された放送のことで持ちきりだった。内容は、
・パーパルディア皇国は日英に降伏。休戦協定を締結した
・属領は直ちに遅滞なく独立か残留かを問う住民投票を実施する
・日英軍が駐留し、武装解除を実施する
・日英が占領統治を行い、民主化や憲法改正、法令改正を行う
・皇国皇帝は日本国天皇と英国国王が共同で即位する
・講和会議を神聖ミリシアル帝国カルトアルパスで開催する
といったものだった。一部の戦争継続派が駐留する日英軍に投石する騒ぎがあったものの、皇国の警察組織に検挙され、次の日には姿がなかったという。一部ではミカドアイHDが地下帝国に拉致したとも言われているが、真相は不明である。
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
誰もが、世界中の誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国、その他とは隔絶した栄え方、そのあまりにも高度な発展を前に人々は『世界の中心』という意味を込め、帝国の存在する大陸を中央世界と呼ぶ。神聖ミリシアル帝国は
○世界で最も高い魔法技術
○国の基礎を安定して支える高度な政治システム
○広大な国土と優秀な物質の量産化システム
○優秀な学問体系
が高度に入混じり、この世界の文明圏国家や、列強国と比べても国力の優位性は疑いようがない。帝国は、国土の所々に残る、古の魔法帝国の遺跡を解析し、高度な技術を支えてきたため、地球の歴史を基準にすると、軍事技術はいびつな発展をしている。帝都ルーンポリスにある外務省、その建物の1室で、2人の男が会談をしていた。
「しかし・・・・まさか、第3文明圏唯一の列強国、パーパルディア皇国が完璧に負けるとは・・・しかも本土の国土が狭く、文明圏外の国々に・・・・未だ信じられないよ」
外務省統括官リアージュはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドのことをイギリスが支配する属領と認識しており、彼らがミリシアル帝国を優る国力を有することを知らない。故に日本とイギリスに関心が行っていた。
「我が国の魔導船団をもってすれば、パーパルディア皇国など吹けば飛ぶような軍隊、しかしそれでも第3文明圏の技術水準から考えれば、皇国の軍事力は付近の国よりも隔絶していた。日本国にグレートブリテン及び北アイルランド連合王国。実に興味の沸く国だな」
「はい、ですから是非早期使節団の派遣を。それに、政府は日英と皇国の講和会議をカルトアルパスで開催する予定なのです。事前に彼らのことを知るべきでしょう」
「アルネウス君、情報局長である君が、日本国やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の情報を集めたいのは解るが、我が国は世界最強の国だよ? ただ単に講和会議斡旋を目的として、我が国側から打診し、使節団を派遣するなど・・・しかも、列強国ですらない、文明圏外国に」
「リアージュ様、日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は今後、第3文明圏の列強に代わって第3文明国の・・・・いや、東方大陸国家群の代表的存在であり、列強の1つになると思われます。それに、我が国の開く先進11か国会議にパーパルディア皇国の代わりに日本とイギリスを呼び、それらの準備すべき事柄の指導も行うという形で、国交樹立の準備も含め、使節団を派遣するといった形ではいかがですか?」
「うーん、それならば議員の方々も納得するかもしれないな。検討と根回しをしてみよう。前に届いたイギリスからの要求に対する返事も出さなければならなかったしな」
後日、神聖ミリシアル帝国は、日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国に使節団の派遣を決定した。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドについてはイギリスの属領という認識から使節団派遣は見送られ、イギリスにて会談することになった。
第3文明圏外国家 マール王国
「何!! 本当か!! それでは・・・・」
「はい。領土献上に関し、パーパルディア皇国から強い圧力を受けていましたが、列強パーパルディア皇国は日本国並びに英連邦王国との戦闘で国が傾くほどのダメージを受け、74ヵ国に分裂。現在は日英軍が駐留し、戦後処理を実施中です。これにより我が国への圧力は無くなり、我が国は救われました!」
マール王国の王城、謁見の間において、側近は王に報告する。王は安堵の表情を浮かべる。
「本当に良かった。我が国が列強の侵略を受けたら、おそらくはあっさりと蹂躙されるだろう。かつての国力はなく、衰退しておる。しかし、日本や英連邦王国は最近何かと話題になるが、本当に転移国家なのか?」
「はい、少なくとも本人たちはそのように述べていますし、新しく出来た新興国に列強が負けるはずがありません」
「うーむ、日本の国旗はたしか太陽を現していたな?」
「はい」
「異界の太陽も東から昇る・・・・か。この太陽は、我々の未来を照らす太陽となるのか、それとも我々を焼く業火となるのか」
「日本国は問題ないと考えますが、もう片割れの英連邦王国。特に盟主であるイギリスの機嫌を損ねてはなりませぬ。イギリスは既に各地の無人島に国旗を立て、領有権主張を進めています。その手は第一文明圏にも及びつつあり、つい昨日にオラパ諸島から北に100キロ海上に浮かぶ珊瑚礁の島を発見。イギリスはこの島々をチャールズ諸島と命名し、領有を宣言しました」
「太陽の沈まぬ帝国を目指すつもりなのか・・・.」
「いずれにせよ、日本国並びに英連邦王国との国交開設は急務です」
列強パーパルディア皇国を完全に屈服させたというニュースはあまりにも大きく、世界を駆け巡る。日本やイギリスの外務省は、皇国戦の後、新規国交開設のため様々な使者が日本を訪れる事となり、地獄の忙しさになる。
グラバルカス帝国
第2文明圏、列強国ムーのさらに西にある大帝国であり、突如としてこの世界に現れ、瞬く間に周囲の国を制圧、ついには第2文明圏のパガンダ王国すらも落とし、さらに列強レイフォルをたったの1艦で倒すという伝説級の戦果を挙げた国。この世界の人々にとって、それは恐怖であり、一部では、神聖ミリシアル帝国よりも強いとすら噂される。そんな世界の注目を集める国、グラバルカス帝国、帝都ではその繁栄を自室から眺め、考えにふける男が一人。帝王グラルークスは、栄華を極めし帝都を眺める。
「この世界は我々に何を求める?」
国ごと異世界に転移するなどという、バカげた事が現実となった。前世界、ユグドと呼ばれた星で最大の勢力を誇ったグラバルカス帝国。前世界では、始世の国、エーシル神を祭りしケイン神王国と世界を2分し、戦争を行っていた。資源力、生産力、そして軍事力、そのどれもを比べても、グラバルカス帝国が戦争に勝利する事は、誰の目にも明らかだった。豊富な資源、圧倒的な生産力、世界最高の技術力があった。しかし、あまりにも突然起こった転移と呼ばれる現象により、本土のみがこの世界へと来てしまう。広大な土地を失ってしまったが、敵国への本格侵攻、上陸作戦準備のため、大部隊を本土に一時帰国させていた時に転移が起こったため、外国駐在陸軍基地を除き、戦力のほとんどは失われなかった。ライバルたるケイン神王国は消えた。変な星に転移し、一時帝国は混乱したが、東を向くと眼前には広大な土地と貧弱な武装を持つ現地人たち。我々の優位性は明らかであり、皆歓喜した。当初、周辺国は我が国に対して攻撃的であるにも関わらず、あまりにも弱く、あっさりと制圧した。しかし、それらの弱小国を支配する事で、この世界には文明圏と呼ばれる、上位の共同体があることが判明する。文明圏がどの程度の国か、当初は解っておらず、全く未知の世界であるため、慎重な意見が相次ぎ、話し合いによる国交の設立といった融和政策が模索された。
手探りによる外交。しかし行く国行く国、噂と比べてもあまりにも能力が低く、にも関わらず文明圏外国と侮られ、外交は全く進まない。しびれを切らした融和政策の代表格たる皇族が、わざわざ弱小国に足を運んでやったにも関わらず、
「世界の事を全く知らない蛮族」
と罵られ、同皇族は反論したところ、不敬罪で殺されてしまう。この1件で、この世界で融和政策を推進しようとする者はいなくなった。前世界と同様、武力による統治、及び領土拡大政策が推し進められる事になった。まずは皇族を不敬罪で殺すといった大罪を犯した国、パガンダ王国を強襲制圧し、あっさりと落とす事に成功する。その後、帝国は第2文明圏に宣戦を布告し、世界の5本の指に入ると呼ばれた列強国レイフォルも、あまりにもあっさりと我らに降伏する。この世界において、文明圏外国家も列強国も我らの前では弱小国に過ぎない。
「全く・・・・おもしろき世界よ」
帝王グラルークスは世界を統治する夢を見る。しかし、一抹の不安も過る。
「大学時代の学友から手に入れた多数の写真・・・・ここに写る多数の艦艇。我が国の艦艇より洗練されているようにも見える・・・・」
グラルークスは一枚の写真を手に取る。イギリス海軍の空母がパーパルディア皇国に砲艦外交しに来た時に撮られたものだった。
「このグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は危険だ。明らかに我が国の空母より優れている。搭載されている戦闘機もだ」
陸海空三軍の大元帥でもあるグラルークスはある程度の軍事に関する知識がある。特にイギリス海軍の空母クイーン・エリザベスに関心を寄せていた。
「この先端の反りたつ壁。おそらくはここを使って速度をつけるのだろう。そして横に飛び出している甲板は着陸用・・・この空母は有事の際には発艦と着艦が同時に可能なのだろう・・・」
続けてグラルークスは別の写真を手に取る。そこには空母から垂直に離陸するF35Bの姿が写真に納められていた。グラバルカス帝国において同じ挙動が出来る戦闘機は存在しない。
「そもそもプロペラすらない。勘だが、神聖ミリシアル帝国より大英帝国の方が脅威だ。そしてその大英帝国を支える日本国もな・・・・いや、日本の方が脅威かもしれぬ・・・ 」
グラルークスは学友が撮影した造船所の写真を手に取る。そこには輸出仕様の「もがみ型護衛艦」が3隻同時に建造されている様子が納められている。戦争の片手間で他国向けの軍艦を大量に建造出来る圧倒的な工業力。いくら本土が直接被害を受けていないとは言え、グラルークスにはこの工業力は脅威でしかなかった。
「日本やイギリスには戦艦がない・・・・しかし、これ程の工業力や陸軍の装備品を見る限りはその気になれば作れるはず・・・・まさか、本当に戦艦は彼らにとっては過去の遺産なのか?」
グラルークスの学友から送られた写真には神奈川県横須賀市に鎮座している戦艦三笠の姿もあった。解説によれば、三笠はイギリス製で、100年以上前に日本が大日本帝国と呼ばれていた時代に運用されていた、とある。
「・・・・それも含めて面白き世界ということなのか? それに日英は我が国と同じように潜水艦も保有しているようだ。それも明らかに洗練された・・・・」
呉基地で大和ミュージアムを視察した学友の写真。彼は軍港巡りに参加しており、係留されている海上自衛隊の潜水艦の写真を多数撮っていた。形に差異はあれど、概ね似た形状をしており、どれも砲がなく、葉巻や水滴に似た形をしている。
「そしてこの戦艦大和とは何だ!? 我が国の最新型そのものではないか!!」
グラルークスが最後に手に取った写真は戦艦大和の復元模型である。無論全てが最新型戦艦と同じではないが、主砲の大きさや配置、運用思想が完全に一致していた。
「こんな偶然があるのだろうか・・・・」
後にグラルークスの不安は的中し、グラバルカス帝国は日英を敵に回してしまうことになるのである。
グラバルカス帝国情報局
薄暗い部屋、鳴り響く電子音、まるでモールス信号のような音が鳴り続ける通信室の隣にある茶色を基調として格式高き部屋、その部屋に1人の男が報告のために訪れる。男は上司に報告を行うため、ドアをノックする。
「入れ」
中から低い声、命令を受け男は中に入る。
「閣下、日本並びに英連邦王国に関する総合戦力分析報告書が出来ましたので、報告と決裁に参りました」
男は閣下と呼ばれた男に書類を手渡す。書類に目を通すと、男は笑った。
「日英はパーパルディア皇国を降伏させ、神聖ミリシアル帝国カルトアルパスにて講和会議? どういうわけだ?」
「日本のマスコミの報道では、日英はパーパルディア皇国に軍を駐留させる一方で、同盟国として近代化させる模様です。と、いう事は日英には皇国を統治するだけの国力が無い事を現します」
「更に日本国は人口が1億2千万人と、国土面積に比べて多いが、その分食料自給率が低く、ロデニウス大陸が日本の生命線。そして英連邦王国は日本の工業力が生命線・・・か。では我々と日本が、将来的に衝突した場合、帝国の圧倒的な海上戦力で日本とロデニウス大陸間の海域を封鎖するだけで、日本は干上がり、同時に英連邦王国も干上がるな」
「また日英の軍では重巡洋艦クラスの艦船を確認していますが、戦艦は確認されていません。第3国経由の情報でも、1万トンクラスの艦船が、空母を除いては最大の艦の模様です」
男は一息つき、さらに話を続ける。
「日本国は、憲法に必要最小限度の戦力しか保持できない事が規定されています。それが原因かもしれませんが、日本国の保有する艦船のほとんどが、砲がたったの1門のみでありしかも豆鉄砲のような小口径砲です。はっきり言って、海上戦力は取るに足りません。それでもこの世界の蛮族どもにとっては、脅威なのでしょうが。次に、日本の陸上戦力ですが、たったの15万人と、我が国と比べると無いのも同然です。この陸上戦力のあまりの低さが、パーパルディア皇国の完全統治をあきらめた原因かもしれません。空軍の戦闘機は、現時点でたったの300機ちょっとで、我が国と比べると、あまりにも数で貧弱すぎる数です。英連邦王国を加えても我々の足元にも及びません」
「・・・・・そうか、日本が自分たちの軍を、自衛隊と呼ぶのも、そのあまりにも貧弱な数ゆえかもしれないな。航空機に関して言えば、これほどまでに機数が少なければ、仮に性能が多少優れていたとしても、何もできまい」
「はい、日本国は恐れるに足りません。我らの覇を止められる者はいません。そして英連邦王国も・・・・」
皇帝の不安とは裏腹にグラバルカス帝国は、新たな世界秩序構築のために動き始める。
パーパルディア皇国属領メルアニア
メルアニア統治機構本部前
「独立賛成8.1%、独立反対91.0%!! よってメルアニアはパーパルディア皇国に残留し、パーパルディア皇国メルアニア県として皇国本土と対等な立場となることが決まりました!!」
イギリスの圧力により、メスマン帝国が撤退したメルアニアでもパーパルディア皇国敗戦に伴う住民投票を実施。住民の一部は避難先のニュー・ホンコンで投票となった為に集計が遅れていたが、圧倒的反対多数でメルアニアはパーパルディア皇国に残留。ほとんどの属領が独立を選択する中、メルアニアは数少ない残留を決めた属領となった。結果メルアニアは飛び地となってしまうも、周辺国は日英が主導する軍事同盟である「フィルアデス大陸条約機構」に参加した為、完全に孤立することはなかった。
「メルアニア万歳!! パーパルディア皇国万歳!!」
メスマン帝国から民を逃がし、自らは散ったザハク以下パーパルディア皇国兵を悼む市民らがザハクの写真を掲げ、パーパルディア皇国旗を振り回す。更にニュー・ホンコンから帰国した市民らが日章旗やユニオンジャックを掲げる。メルアニアにはイギリス軍に加え、フィルアデス大陸条約機構軍の一員として再度パーパルディア皇国軍が進駐。市民らは皇国軍を大歓迎することになる。
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
ルーンポリス国際空港
「それでは、これより出発します」
世界最強と言われし最大の列強国、神聖ミリシアル帝国は、第3文明圏よりもさらに東にある文明圏外国家、日本国とイギリスに対し、パーパルディア皇国との講和会議斡旋や世界の先進11ヵ国会議への出席要望と、国交開設の事前準備のため、30名にも及ぶ先遣使節団を派遣しようとしていた。代表的な人物は、
○外交官フィアーム
○情報局員ライドルカ
○武官 アルパナ
○技官 ベルーノ
である。一行は空港の駐機場へと向かう。駐機場には、白色に塗られた翼の付いた人工的な乗り物が駐機している。彼らは『天の浮舟』と呼ばれる航空機に乗り込む。
天の浮舟 ゲルニカ35型
航続距離 4200km
巡航速度 時速310km
主エンジン 魔光呪発式空気圧縮放射エンジン
燃料 高純度赤発魔石
日本人が天の浮舟を見たならば、一見して不思議な型をした航空機に、イギリス人が見れば紅茶が切れて頭がおかしくなった航空機に見えるだろう。エンジン部分に不思議な型が刻んであり、プロペラは無く、一見ジェット機のようにも見える。しかし、速度が時速310km程度の巡航速力のため、後退翼ではない。今回の派遣は、技術大国ムーの支援も得られる事から、一旦アルタラス王国ムー基地で燃料となる魔石を交換し、日本国の西の地方都市、福岡市へ向かう。観光を兼ねながら日本を体感し、首都東京で会合。東京では日本の国家元首である天皇皇后両陛下を始めとする皇族と謁見する。日本国内の移動はすべて日本側が準備する。その間、天の浮舟はムーが用意した高純度魔石燃料により、燃料交換を行う。帰りは再度アルタラス王国で燃料補給し、帰る事となる。情報局員ライドルカは、天の浮舟に乗り、大きなイスに深く腰掛ける。ふと右側を見ると、先に乗り込んだ外交官フィアームがおり、その顔は優れない。
「フィアームさん、どうかしましたか?」
話しかけられたフィアームはライドルカの方向を向く。
「事前に説明は受けましたが・・・・我々、中央世界の、しかも世界ナンバーワンの国が、わざわざ自分から、第3文明圏のさらに東の文明圏外国家に足を運ぶ行為が気に入らないのです」
話は続く。
「その国は、実質的にパーパルディア皇国に勝ったと説明を受けたが、私は違うと思う。あの国は、元々恐怖による支配があり、国内に不満を多く抱えてきた。日本とイギリスはそこを上手くついただけではないのか? だいたい第3文明圏は文明圏と呼んでいいものかと私は思っている。独自の文明は持ってはいるが、未だにワイバーン以外の飛行方法すら確立されていない。私から見れば、第3文明圏そのものが、土地だけは広く、文明レベルの低い集合体にしか見えない。今から行く国は、そんな第3文明圏からもさらに外れているというじゃないか。第3文明圏はレベルが低く、さらにそこから外れると、レベルの低さに拍車がかかる。私はまず、この天の浮舟がきちんと着陸できる滑走路があるのかが心配ですよ」
「滑走路については、ご存知のとおり、ムーにもきちんと確認を行っているので大丈夫です。それに、我が国の報道機関がイギリス海軍の空母を視察したこともあったではありませんか」
「空母ねえ・・・・所詮はムーの猿真似でしょう。そういえばら今回の派遣はあなた方情報局が主体となって提案したらしいな。まずは情報局だけで情報を集めてくるべきなのでは?」
「集めてきた結果です」
「そうかなあ? 日英の工作に引っ掛かっているだけにしか見えないし、そもそも神聖ミリシアル帝国はナンバーワンというプライドがある。国交を結ぶにしても、まずは日本やイギリスから来させるように工作くらいはしてほしかったものだ」
「申し訳ありません。事前の情報によれば・・・いや、どうせすぐにわかります。日本を直接見ていただければ、いろいろと感じる事があるでしょう」
天の浮舟は、エンジン後方から青い光を発しながら滑走する。舟は浮き上がり、日本を目指して飛び立っていった。
第2文明圏列強ムー
港湾都市マイカル マイカル空軍基地
「これがイギリスの戦闘機か・・・・」
「神聖ミリシアル帝国のようにプロペラがない・・・・」
「ムー空軍の歴史が変わる・・・・確実にな・・・・」
この日ムーのマイカル空軍基地に新たに配備された戦闘機を空軍関係者がじっと見つめている。イギリスから譲渡されたユーロファイタータイフーン4機が遂に納品されたのである。タイフーンはムー空軍から選抜された一流中の一流のパイロットの操縦によりマイカル空軍基地に着陸。彼らは整備員と共にイギリス本国で訓練を受けており、今後は本格的な運用整備方法についてのノウハウをイギリスから伝えて貰うことになっている。この他練習機として多数のプロペラ機やジェット機も購入しており、ムー空軍の近代化が進められる。一方で予算の関係からミサイルは最低限の数しか配備されず、基本的には機関砲で戦うことを強いられるが、仮想敵であるグラバルカス帝国相手には機関砲でも十分であり、まずは頭数を揃えることが優先された。
「あのハリネズミも凄いらしいな」
「模擬標的に100発100中だもんな」
「なあ!」
マイカル空軍基地の防空部隊として日本から輸出された26式自走対空高射機関砲が展示されていた。
「水平射撃をすれば対人戦闘にも使えそうだな」
「しかし、これでは貿易赤字は止まりそうにないな」
ムーは日英との国交樹立により、多数の日英企業が進出していた。マイカルはムーで一番先進的な港町に生まれ変わり、発電所や石油コンビナートが建設されていた。一方でムーは官民問わず多数の製品を日英から輸入したことで多額の貿易赤字を抱えており、今後の日英との首脳会談では貿易の不均衡についても議題になる見通しである。
パーパルディア皇国皇都エストシラント
パラディス城
「しかし、日英からの求めは多岐に渡りすぎている・・・ 民主化や議院内閣制なんて考えたこともなかった」
敗戦後のパーパルディア皇国において首相兼外相に就任することになったエルトは多岐に渡る戦後改革に疲れていた。
「しかし、何故日英は我が国に寛大な措置をとるのか・・・・」
日英から出されている改革政策。そこにはこうも記されていた。
・戦後改革の進展に合わせて領事裁判権の廃止や関税自主権の回復等を段階的に進めていくことを約束する
「何故日英は自らが手に入れた利権を手放すのか・・・」
エルトはその後、日英とパーパルディア皇国の間における不平等条約を改正し、戦後改革に尽くした名宰相として皇国の歴史に名を刻むことになる。
皇都エストシラント元海軍基地跡
日英の大規模爆撃から奇跡的に生き残った魔信技術士パイは、破壊された海軍基地を眺める。海は太陽の光が反射し、美しく光り輝いており、海鳥たちは何もなかったかのように、のんびりと海に浮かぶ。しかし陸地を見ると無残に破壊されつくした海軍基地だった残骸が散乱し、日英の作業員が瓦礫の除去に向けた現地調査を行っている。
「日本に英連邦王国か。とんでもない国と戦争をしたものね。くじけてはいられない。皇国は再出発し、再び繁栄する!!」
パイは皇国の再興を夢見て走り始めるのだった。
オラパ諸島ロコール島
オラパ諸島特別行政区仮庁舎
「帰りた~い、帰りた~い、俺もに~ほんに帰り~たい~」
防衛省から新たに新設されたオラパ諸島開発庁に出向したヒロシは毎日書類の山と闘いながら替え歌を歌い、泣く日々だった。
「くそ~、外務省からシンが来るって聞いてたのに、まさかのアキコと結婚するという裏技で逃げられた!! そもそも俺の方が先に好きだったのに~(涙)」
幼少期(幼稚園時代)
「アキコ! 俺はお前のお婿さんになる!!」
「うん! 私はヒロシのお嫁さんになるわよ!!」
「って、約束したじゃねえかよ~!!」
長官室で一人泣くヒロシを他の職員はただそっと見守るのであった。
「アキコ~、なんでお前はあんな男を選ぶんだよ~。せめてアキラにしろ!!」
日本国東京都町田市
アキコの家
「・・・・・ヒロシが泣き叫んでる声が聞こえる・・・気がする」
「まあ、お前とヒロシは付き合いが長いもンな。分かっても不思議じゃねえな」
「アキラ! お前にはアキコは渡さないからな!!」
「私の家で暴れないでくれる?」
「おっ、そうだな。それより酒だ!! 酒!! 僕とアキコの婚約祝いの酒だ!!」
「オラパで放置されてるヒロシかわいそー(笑)」
「アキラ、あんたがいてやりなさいよ」
「まあ、仕事なンで。さあアキコも飲め!」
「やれやれ・・・」
1時間後
「シン! 一気!!」
「それは不味いってアキコ!!」
「私の酒が飲めないのシン!? 飲まなきゃヒロシにNTRされるわよ!?」
「それは嫌だ!!」
「じゃあ飲めー!」
「ぐあああ!!」
「あははははは!! 命乞いするシンには笑うしかねえンだよ!!」
「お前もだ!!」
「ン~?!」
「そして私も!!」
この後全員酔い潰れました。ちなみにアキコは自分自身で酒癖が悪い自覚があるので基本的には飲みません。本人は酒が大好きだけど。
「頭がクッソいてぇ・・・・・一気飲みはアカンは・・・・・」
「昨日は飲み過ぎたってもンだな・・・」
「まあ、今日も休みだから良いんじゃない? ミリシアルに行ったらまた年休消化が不可能になるし・・・」
「「息を吐くように缶ビール開けようとするな!!」」
(続く)