日英同盟召喚   作:東海鯰

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熾烈な?外交戦

神聖ミリシアル帝国の、日本国訪問から約1年後

第2文明圏列強国ムー 

東の港湾都市マイカル

 

空は晴れ、空気は暑すぎず、寒すぎず、海の匂は心地よく、海鳥は歌う。老人は、設置されたイスに座り、遠い目で港を眺め隣の淑女に話始める。

 

「このマイカルもこの一年で随分と変わったなぁ」

 

港には、日の丸の描かれた大型タンカーや、車輌輸送船が停泊している。半年ほど前に改良工事が完成し、整備された港は水深が深く、大型タンカーも十分に停泊可能であった。陸地を眺めると、円柱状の大型石油備蓄タンクが大量に並べられている。港湾都市マイカルの南側を眺めると、今までのムーからは考えられなかった規模の石油化学工場が建設され、先月から稼働を開始している。ムーの大手企業もマイカルに進出、工場も現在ムーが知り得た最新式のものを、このマイカルに多く建設していた。ムーの設備投資額は過去最大にのぼり、未曾有の建設ラッシュが続いている。

 

「本当、日本国やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国と付き合うようになって、随分と景色が変わりましたねぇ。再来月には空路も民間に開かれるらしいですよ」

 

日英のジャンボジェット旅客機の発着にも耐えれるよう、元々あったムーの各地にある空港も、管制機能が強化され、元々かなり頑丈に作ってあった滑走路も改善し、延伸工事が急ピッチで進んでいた。また旅客機もムー製から比較的小型のカナダ製のプロペラ機が増え始めている。

 

「そういえば、車も最近日本のものを随分と見るようになってきたな」

「日本の車は性能が極めて高いですからね」

 

ムーは産業保護政策をとらなかったため、日本の車は富裕層を中心として飛ぶように売れていた。日本では発展してきたクワトイネ公国やインフラが整備されつつある西ロウリア王国、そして第3文明圏各国から受注される車に対し、工場は連日フル稼働となり、供給が間に合わない状態が続いている。第3文明圏各国に現地生産用の工場を新設しているが、それでも需要に供給が追い付いていない。

映像技術に関しても各国は、日本の情報通信技術に目をつけ、国営テレビを設営。各地に電波塔が立つ。また電源そのものが無い国が多く、発電所の受注もあまりにも大量に受け、供給が間に合わず、悲鳴が上がっている。第3文明圏各国は、国策として日本式携帯電話の普及政策をとり、都心部では携帯電話がつながり始めている国もあるが、やはり日本の工場はフル稼働であり、過労死する者が続出し社会問題となっていた。建設関係では、港湾整備の受注が相次ぎ供給が間に合っていない。また、造船分野でもタンカーの受注が殺到し、10年先まで予約でいっぱいとなっていた。日本はイギリス、カナダ、オーストラリアの造船所の近代化や拡張を支援しているが、それでこの結果である。衣類に関しても、布は輸出していたが、ファッション性や、縫製技術は日本製の人気が高く、かつてない忙しさとなっていた。

 

「あれが日本から輸入された新型艦か。武装が貧弱に見えるがなあ・・・」

 

ムー海軍の近代化政策の一環として輸入された「もがみ型護衛艦」が4隻並ぶ。ムーは海軍戦力近代化の一環として、20隻の「もがみ型護衛艦」の導入を決定。日本から完成品を4隻輸入し、16隻をムーの造船所で建造することで合意している。隣ではマイカル海軍造船所の拡張及びラ・カサミ級戦艦ラ・エルドの改装工事が行われている。改装工事では、機関のガスタービン化、副砲の撤去、VLSの増設、各種レーダー搭載、CIWS増設等が実施される。一方で乗員の訓練が間に合わないことから今回の先進11か国会議には派遣されず、引き続き戦力化に努める方針である。

 

「お、今日もタイフーンが訓練飛行か。新たな時代を感じさせるなあ・・・・」

 

この日もムー空軍のユーロファイタータイフーンが編隊飛行を実施していた。また軍港では日本から譲渡された90式戦車が陸揚げされており、ムーは陸海空の近代化を推し進める。

 

 

 

グラ・バルカス帝国帝都ラグナ 

 

グラ・バルカス帝国では、国の今後を決定づける重大な会議が行われようとしていた。

 

「これより帝前会議を開催いたします」

 

司会進行が会議の開始を宣言し会議が始まる。すでに全員に根回しは終わっており、最終意思決定がこの会議で行われる。

 

「カイザル、ミレケネス。間もなく先進11ヵ国会議が開催されるが、準備は整っているな?」

 

帝王グラルークスは、帝国海軍東方艦隊司令長官カイザルと、帝国監査軍司令長官ミレケネスに確認を行う。

 

「はい、皇帝陛下。準備はすべて整っております」

 

2人は、口をそろえて答える。

 

「陛下、今回の作戦で現地人どもは・・・世界は震撼し、我らにひれ伏す事になるでしょう」

 

外務省長官モポールは、自信をもって発言する。

 

「よもや、神聖ミリシアル帝国に遅れをとる事はあるまいな?この世界では最強と言われているようだが」

「現地人に遅れをとる事は考えられません。兵器の設計思想を見れば、かの国の間違った方向性が見えてきました。我が国を止められる者はこの世界にはおりません」

「そうか。だが、気になる国が2か国程ある。日本国と英連邦王国はどうだ? 彼の国々は機械文明国。ミリシアルより脅威であると余は考えておるが」

「ご安心くださいませ陛下。彼の国々は戦艦すら保有していない平和ボケ国家。恐れるに足りませぬ」

「・・・・・・そうか。では本件は、許可することとする。皆頼んだぞ!!」

 

帝前会議は終了した。しかし、グラルークスは不安を払拭することが出来ず、密かに旅行好きの学友に資金を提供し、日英について細かく調べさせるのであった。

 

「・・・・・何もないと良いが・・・」

 

 

神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス

 

広大な港湾施設を持つ港町カルトアルパス、先進11ヵ国会議には、各国の軍が大使を護衛しやってくるため、すべてが収容できるよう、開催地にはこの港町カルトアルパスが選ばれた。港湾管理者の元には、続々と到着する各国の軍の情報が集約される。

 

「第1文明圏トルキア王国軍到着しました! 戦列艦7、使節船1、計8隻」

「了解、第1文明圏エリアへ誘導せよ」

 

港に着いた船を適切に誘導していく。

 

「第1文明圏アガルタ法国到着。魔法船団6、民間船2」

 

「了解」

 

港湾管理責任者ブロンズはこの先進11ヵ国会議が好きだった。各国が使者を護衛するという名目で、最新式の軍艦を艦隊ごと送り込んでくるため、軍艦の大好きな彼にとってこのイベントは仕事であると同時に、お祭りのような気分となる。

 

「ここに第零式魔導艦隊があれば、各国の軍も貧相に見えるのだろうがな」

 

日頃、港町カルトアルパスの近くに基地を有している第零式魔導艦隊は軍艦がひしめく祭りの際には、様々な事情から西にある群島に訓練に行くのが毎年恒例となっていた。

 

港湾管理者ブロンズは、ワクワクしながら待つ。今回開催の国の中で、どんな軍隊を送り込んでくるのか楽しみな国が4つある。

 

1つは、西の列強国、レイフォルをあっさりと落とした新興軍事国家グラ・バルカス帝国。そして残りは、第3文明圏の列強国パーパルディア皇国を降伏させた日本国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、カナダ。特に日本、イギリス、カナダは合同で空母打撃群とやらを編成するという。いったいどんな艦隊が来るのか、彼のドキドキは止まらない。その時だった。監視員が急にざわつき始める。あまりにも大きく、城のような船が水平線に見える。その姿は船が近づくにつれ、さらに大きくなり、やがて神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦を見慣れた彼でさえ、絶句し、その雄々しさに見とれてしまうほど美しく、力強い艦が近づいてくる。

 

「グラ・バルカス帝国到着、戦艦1隻のみ」

「おお!!」

 

それを見た者すべてが感嘆する。グラ・バルカス帝国の誇る、全世界最大最強の戦艦。

 

全長263.4m

全幅38.9m

満載排水量72800t

出力150000馬力

 

港町カルトアルパスの住人は、その雄々しい姿に圧倒される。

 

「なんてでかい砲を積んでやがるんだ!!!」

 

45口径46cm3連装砲を3基。世界最大の砲は誇らしげに水平線を向く。グラ・バルカス帝国超弩級戦艦グレードアトラスターは、神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパスに入港した。グラ・バルカス帝国の戦艦は、あまりにも大きく、強烈であり、近くに見える第1文明圏トルキア王国の戦列艦やアガルタ法国の魔法船団がおもちゃに見える。港湾管理者ブロンズは、唖然としてその威容を見つめていた。

 

「・・・・長!! ブロンズ所長!!!」

 

第8帝国の戦艦に見とれていたブロンズは、部下からの問いかけで我に返る。

 

「ああ、何だ!?」

「日本国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、カナダが到着しました!! 空母2、巡洋艦7、駆逐艦4、補給艦2!!」

 

 

日英加空母打撃群

 

空母「クイーン・エリザベス」(イギリス海軍)

護衛艦「いずも」(海上自衛隊)

イージス艦「みょうこう」、「まや」(海上自衛隊)、「ブリスベン」(オーストラリア海軍)

護衛艦「すずつき」、「たかなみ」、「ありあけ」、「あさひ」、「あがの」、「ながら」(海上自衛隊)

フリゲート艦「アナポリス」、「ニピゴン」(もがみ型のカナダ海軍仕様)

補給艦「おうみ」(海上自衛隊)、「タイドホース」(イギリス海軍)

 

 

オーストラリアは会議には参加しないが、空母打撃群に参加予定であったイギリス海軍の45型駆逐艦「デアリング」が機関故障によりジブラルタルで離脱。たまたま同地に停泊していた「ブリスベン」が代役として艦隊に編入された為である。

 

 

「ん? 見慣れない旗を掲げた船がいるな?」

「あれはオーストラリア海軍の船だそうです。なんでもイギリス海軍の船が故障した為の代役だそうで」

「しかし、どの船も無駄にゴツゴツしていなくて美しいな」

 

ミサイル兵装が主体であり、装甲がほとんどない日英加豪艦隊は見た目が非常に滑らかでさっぱりとした印象を受ける。

 

「グラバルカス帝国の戦艦とは違ってまた良いな・・・あれは」

 

日本国政府は先進11ヵ国会議に関し、神聖ミリシアル帝国に配慮して艦隊を派遣しないことを検討していた。国際会議、しかも世界最強を謳う第1文明圏の神聖ミリシアル帝国がプライドをもって警備している場所への移動に軍艦を使用するのは非常識であるとの判断があったからである。しかし、イギリス政府とカナダ政府から、空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を編成。途中、クワ・トイネ公国、西ロウリア王国、アルタラス王国と軍事演習を実施しながらカルトアルパスを目指す方針であること、更に両国から日本も空母打撃群に加わって欲しいとの申し出があったことから、日本も軍艦を派遣。艦隊防空を担うことになった。

 

「まさか、ほとんどの国が艦隊を連れてきているとは・・・・各国すべてが砲艦外交のような事をしているのか」

 

港町カルトアルパスの光景を眺め、日本の外相岩谷武はつぶやく。各国が艦隊を同行して来ている状況を目撃した岩谷は、イギリス政府とカナダ政府の提案に乗っかってよかったと安堵した。

 

「岩谷大臣、まもなく着岸致します。降りられる支度の程、よろしくお願いいたします」

 

周りの職員に促され、岩谷外相ら日本政府関係者が護衛艦「いずも」から退艦する。

 

「・・・・艦長って話だったはずなんだけどなあ・・・・」

 

途中、オラパ諸島を経由した日英加空母打撃群は同地で補給を行うと同時に、人事異動を実施した。オラパ諸島行政区長官であったヒロシはようやく東京都から派遣された後任の者に職を明け渡すことが出来たが、新たにオラパ諸島へ向かう外相護衛艦隊、ひいては日英加空母打撃群の日本側の最高司令官に任命されてしまった。一応は護衛艦「いずも」の艦長ではあるが、ヒロシが日本側の最上級士官になってしまい、棚ぼた(別に嬉しくない)で責任ありまくりの役職に就いてしまったのである。ちなみに空母打撃群自体はイギリスの士官が率いている。

 

「羽田艦長、我々も陸に上がりましょう」

「ああ、そうだね」

 

周囲の隊員に促されて遂にカルトアルパスに立つヒロシ。上陸が許可された隊員らは観光に繰り出す中、彼は側近と共に日本領事館へと向かった。

 

 

神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス

在神聖ミリシアル帝国日本領事館

 

「・・・・・こうして集まるのも、久しぶりね」

「全くなンだよなあ」

「ヒロシ! お前が一人変なところにいるからだぞ!」

「好きでいたんじゃねえよ! あとお前はアキコと結婚したからって調子に乗るな!!」

「乗ってない!! 言いがかりはよしたまえ!!」

「ま~たやってるよ」

「やれやれ、なンだよなあ」

 

領事室では、ヒロシとシンが久々に会って早々に口喧嘩が始まる。それを笑いながらアキコとアキラが眺めるという、小学校時代から変わらない風景である。

 

「アキコお姉さま! お茶をお持ちしました・・・うわっ!!」

 

女性職員がノックせずに扉を開けて入って来る。扉の近くで口喧嘩から取っ組み合いの喧嘩になっていたヒロシとシンはその女性職員にぶつかり、二人とも熱々の緑茶を浴びてしまう。

 

「「アヂィィ!!」」

「馬鹿ねえ・・・・この領事館にはノックもせずに入ってくる女がいるのに・・・」

「あわわわ・・・・」

 

腰を抜かす女性職員にアキコが手を貸す。彼女は夢野愛。アキコの母方の従妹であり、2歳年下の後輩である。アキコのことを実の姉のように尊敬しており、彼女が領事としてカルトアルパスに赴任すると聞き付けて給仕担当として採用して貰った経緯を持つ。ちなみに本職は駅のホームの立ち食い蕎麦屋である。

 

「ん? アイじゃねえか! お前もミリシアルにいたのかよ!」

 

ヒロシの側近として領事館まで同行していた未来健永がそう叫ぶ。彼は護衛艦「いずも」の医官であり、同艦では一番信頼されている軍医でもある。夢野愛とは幼なじみであり、ヒロシやアキコの後輩でもある。

 

「あら? ケントも来てたの? これじゃあ、完全に同窓会ね!」

「確かに!」

 

その後彼らは昔の思い出話をしながら至福の時を過ごした。

 

「そう言えば、そろそろ始まるんじゃないかしらね?」

「言われてみればそうだな」

 

アキコとシンは時計の時刻を確認する。

 

「始まるって言っても、俺達に何か出来ることなんであるのかよアキコ?」

「・・・・こんなこともあろうかと、事前に会議場に隠しカメラを仕込んでおいたのよ・・・・イギリスの領事館が」

「流石はブリカス様々なンだよなあ・・・」

 

アキコはパソコンを開き、隠しカメラにアクセスする。画面には会議場の様子が映し出される。

 

「ちょっと音声悪くね?」

「まあ、隠しカメラだし、そこはね」

「これイギリスも絶対見てるよなコレ?」

「当たり前なンだよなあ・・・」

「ヒロシ先輩! アキラ先輩! 俺にも見せてくださいよ!!」

「アキコお姉さま! 私にも!!」

 

 

神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス 

帝国文化館

 

繁栄を象徴したかのような豪華絢爛であり、極めてデザイン性、そして威厳を考慮して作られた帝国文化館。日本国外務省の近藤(駐神聖ミリシアル帝国日本大使)と井上は、同帝国文化館内の国際会議場に足を運んでいた。自分の着席位置を確認し、開催までの空いた時間に、ロビーで持参した水筒のお茶を飲む。今回の先進11ヵ国会議は数日に及び、最初に外交担当の実務者級の会議が行われる。そこで話を詰めた後に、後半で外務大臣級の会議と意思決定をもって会議は終了する。間もなく始まる、転移後初の国際会議実務者協議への出席、日本の歴史に刻まれる事は間違いなく、2人は緊張する。ちなみに根布領事は領事館の仕事に専念する為にお留守番である(なお、隠しカメラの存在は知らない。そもそもハルト駐パーパルディア皇国大使の息のかかったイギリスの領事館職員が勝手に仕込んだので知るわけがない)。近藤は部下の井上に話しかける。

 

「間もなく始まるな・・・・どうなることやら」

「そうですね。これほどまでに事前の根回しの無い国際会議は初めてです。事前資料すらまともにないこの状況で、会議はうまくいくのでしょうか?」

「それだけここに来る者たちは国の権力を握っているのかもな」

 

話をしていると、3人ほどがこちらに歩いてくる。特殊な衣装をまとった彼らは近藤の前に立ち、話しかけてくる。

 

「日本国の方、ですね?」

はい、そうです」

「私は中央世界のアガルタ法国の外交庁に勤めるマギと申します。以後、よろしくお願いいたします」

 

彼は右手を差し出す。

 

「日本国外務省の近藤と申します。よろしくお願いします」

 

近藤は差し出された手を握り、握手を交わす。マギは、にっこりと笑う。

 

「近藤殿、お会いできて光栄です。日本国や英連邦王国の戦闘法術は中央世界でも噂になっていますぞ。この魔法文明の世界において、科学文明のみで成り上がり、東の文明圏外国家でありながら列強パーパルディア皇国に挑み、皇軍を完膚なきまでに叩き潰した勇敢な民族が住まう国だと。列強ムーでさえ、科学技術に重点を置いているとはいえ、魔法に頼っている部分もある。しかし、日本国と英連邦王国はほぼすべて科学技術のみで成り立っている不思議な国だと聞いています。私たちの今までの常識では、魔法が使えなければろくな文明を築く事が出来ず、聞こえは悪いですが、蛮族というイメージが強い。しかし、日本国と英連邦王国は魔法無しで、高度な文明を築いていると聞き、我がアガルタ法国は日本国と英連邦王国に対し、非常に興味を持っています。今度、是非日本国にも伺ってみたいものです」

「ありがとうございます。是非、一度日本にいらして下さい。また、今回の国際会議は日本国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、カナダは初参加となります。どうか、よろしくお願いいたします」

 

近藤も、笑顔で答える。近くではカナダの代表が各国の代表と親しげに会話をしている。

 

「なんと! 貴国の雄大な自然は本当に素晴らしいですな!!」

 

カナダの代表はトルキア王国の代表に対し、オタワの街並みやナイアガラの滝、メープル街道と言った主要な観光地や氷に閉ざされた北極諸島の様子をまとめたスライドショーをタブレットで紹介していた。

 

「ソーリー、是非とも国交を樹立しましたらカナダに足を運んで頂けると幸いです。また、此方は我が国の特産品のメープルシロップになります。天然の甘味料ですぞ、是非ともお使いください!」

「なんと天然物ですか!! 天然物でこれは凄い!! 失礼ながら、我々は貴国をイギリスの属国とばかりに思っていましたが、それは間違いでしたな!!」

 

一方で、イギリスはというと・・・・

 

「貴殿方がグラバルカス帝国の代表、ですね?」

「・・・・そうだが、お前は何者だ?」

「これは失礼。私は大英帝国外務・英連邦・開発省のビート・フィッツジェラルド公爵と申します。この度は大国グラバルカス帝国と邂逅することが出来まして、大変喜ばしく思います」

 

明らかに腹に何かを抱えた笑みを浮かべるイギリスの外交官。ちなみに彼は北アイルランド貴族であり、現フィッツジェラルド家当主でもある。

 

「私はグラ・バルカス帝国外務省、東部方面異界担当課長のシエリアだ。しかし、公爵と名乗らなかったか? その若さで公爵とは大したものだな」

「はい。ですが、両親は私がまだ5の時にIRAの爆弾テロに遭いましてねえ・・・教会で亡くなってしまったのですよ。結果、長男である私が爵位を継承せざるを得なくなった訳で」

「そうか・・・・そう言えば、貴国は大英帝国と言ったか? 貴国はまあまあ強い軍を所有しているみたいだが、戦艦すら持てぬ国力しかないようだな」

「ぷっ」

「・・・・何がおかしい?」

 

明らかに馬鹿にした笑いにシエリアは静かに怒る。

 

「いえいえ、まさか戦艦という時代遅れの金食い虫を維持して満足する程度の頭脳しか持ち合わせぬ国だとは思わなかったものでねえ!」

「我が国の最新鋭戦艦を馬鹿にするだけでなく、我が国に対して侮辱するとは!!」

「失礼失礼。ですが、貴殿方がよからぬことをすれば」

 

ビートは手持ちのタブレットの画面をシエリアに見せつける。画面を見たシエリアは、表情こそは平静を装うも、内心ヒヤヒヤしていた。周りのグラバルカス帝国の代表団は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「貴国の首都は・・・ここですかねえ? 拡大してみましょう」

 

ビートは帝都ラグナの辺りを拡大する。そこにはシエリアらグラバルカス帝国側しか知らないはずの帝都の街並みが広がっていた。

 

「この建物は何かしらの重要施設なのでしょうが、消し飛びますよ? デュロみたいに、ね?」

 

ビートはグラバルカス帝国皇帝以下皇族の住まう建物を指して言った。対するグラバルカス帝国側は、機密情報をイギリス側が手に取るように把握していることにただただ驚愕することしか出来なかった。

 

「では、また・・・・と言いたいところですが」

「・・・・まだあるのか」

「・・・・いや、可哀想ですから止めておきましょうか。ですが忠告しましたよ。我が大英帝国並びに同盟国に対して、よからぬことをしないことですよ。あははははは!!」

 

ビートらイギリス側の代表団が立ち去る。

 

「・・・・シエリア様、あの画像は・・・」

「間違いなく我が国の街並みだ。見間違えることなんて有り得ん」

「しかし、情報が漏れる要素等・・・」

「ない。あり得ない。絶対にあり得ない! あり得ないはずだ!」

 

シエリアが狼狽する中、放送が入る。

 

「間もなく、先進11ヵ国会議が開催されます。関係者の方は、席へお戻り下さい」

 

各国の代表団がそれぞれの席に座る。そして15分後。

 

「これより、先進11ヵ国会議を開催します」

 

帝国文化会館国際会議場で、会議の開始を始めるアナウンスが流れる。先進11ヵ国会議、世界の行く末を決める会議(この付近の国が認知している世界)として、ほとんどの国が注目する会議である。会議は1週間に及ぶ予定となっている。同会議は参加しただけで、大変な誉であり、常時参加国は1ヵ国を除き列強と呼ばれていた。日本、イギリス、カナダは本会議に参加はしているが、毎年参加が決定している訳ではなく、本会議で日本、イギリス、カナダとグラ・バルカス帝国が常時参加国として承認される予定である。パーパルディア皇国が国力を大きく落とし、レイフォルが国として消滅したため、常時参加国は現在のところ、

 

 

○魔法文明国 神聖ミリシアル帝国(中央世界)

○竜人の国  エモール王国(中央世界)

○科学文明国 ムー(第2文明圏)

 

の3ヵ国のみである。今回の先進11ヵ国参加国は、

 

○神聖ミリシアル帝国(中央世界)

○エモール王国   (中央世界)

○ムー       (第2文明圏)

○グラ・バルカス帝国(文明圏外、第2文明圏西側)

○日本国      (文明圏外、第3文明圏東側)

○グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(文明圏外、第3文明圏東側)

○カナダ(文明圏外、第3文明圏極東)

○トルキア王国   (中央世界)

○アガルタ法国   (中央世界)

○マギカライヒ共同体(第2文明圏)

○ニグラート連合  (第2文明圏)

○パンドーラ大魔法公国(第3文明圏)

○アニュンリール皇国(文明圏外、南方世界)

 

 

となっていた。力のある国のみが集められ、開催される世界会議の開催に、会場の空気も張り詰める。またイギリスとカナダは枠外から追加となった為、次回からは先進13カ国会議に改称される見込みである。日本の代表、近藤は会議場を見渡す。人間以外の存在も会議場には代表として来ており、異世界に来たのだとつくづく実感させられる。エモール王国の使者が手をあげ、議長が指名し、発言権を得る。同国は、竜人の治める国であり、国家の人口がたったの100万人であるにも関わらず、列強に名を連ねる強国である。エモール王国の使者は立ち上がる。同人は身長が2mほどもあり、頭からは角が2本生え、目も髪も赤い。

 

「エモール王国のモーリアウルである。今回は皆に伝える事がある。重要な事であるため、心して聞くがよい」

 

場が静まる。同時に隠しカメラで視聴している日本領事館の面々もパソコンの画面の前で静まり返る。

 

「先日、空間の占いを実施した」

 

(占いって何なんだアキコ?)

(エモール王国の国家の総力をかけて行う空間の占いのことよ。その的中率が90%代後半にも及ぶらしいわ)

(マジかよぱねえな)

(流石は異世界なンだなあ)

(はえー・・・凄い・・・・)

(一体何を言うのかしら?)

 

各国の代表は彼の発言に聞き入る。

 

「その結果だが・・・・古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国が近いうちに復活するとの結果が出た」

 

空気が凍り付く。無論、日本領事館の面々もである。

 

「な・・・なんてことだ!!」

「伝承が本当ならば、我らが抗する術はないぞ!!」

 

会場がざわつく。モーリアウルは続ける。

 

「時期や、場所は、空間の位相に歪みが生じており、判然としないが、我らの計算だと、今から4年から17年までの間にこの世界の何処かに出現するだろう。奴らにどれほど抗する事が出来るのか、伝承がどれほど本当なのかは不明だが、奴らの遺跡の高度さが、その文明レベルの規格外の高さを物語っている。各国はいらぬ争いをする事なく、軍事力の強化を行い、世界で協力して古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国復活に、準備をするべきである」

 

(最短で4年かあ・・・・ギリギリやまと型原子力潜水艦一番艦が就役。搭載する新型の核弾頭やSLBMも一応間に合いそうだな)

(間に合わないと困るんだけど? あとICBMと原子力空母、完全新規のイージス艦もね)

(おい待てアキコ、F3の陸上機仕様と艦載機仕様もだろ!)

(要求多過ぎなンだよなあ・・・)

(でも、それだけ逼迫した状況になるのは間違いないですよ。予算倍額して貰わないと)

(・・・・・良く分からないけどヤバそう・・・)

 

会場はざわつき、様々な国の大使がうなずく。そんな中、笑い始める20代後半の女性が一人。

 

「くっくっくっ・・・・ハーっはっはっは!!!」

 

会場参加者の多くが、非難的な目で彼女をみる。ただし、イギリスの代表は、新しい玩具が出来たな、という目だが。

 

 

(なんだ? あの女は?)

(同じ外交官として教育がなってないわね)

(全くだ! 元外交官の僕からみてもあり得ない!)

(お前が言うな、なンだよなあ、お前が)

(あの大和擬きに乗ってきたんだろうなあ・・・)

(綺麗な人ね、アキコお姉さまの下の下ぐらい)

 

 

「いやいや、失礼。私はグラ・バルカス帝国外務省、東部方面異界担当課長のシエリアという。魔帝だか何だか知らんが、過去の遺物を恐れるとは、その現地人のレベルに唖然としている所だ。

そもそも、占いなぞ、そんなものを国際会議で発言する神経が私には理解が出来ないよ。しかも、この世界の列強と呼ばれる国が、この発言。我が国にあっさりと滅ぼされたレイフォルも、弱かったが、列強と言われていたらしい。世界会議か。レベルの低さがしれるな」

「新参者が何をいうか! この礼を知らぬ愚か者め!!」

 

エモール王国と同盟国トルキア王国の使者がグラ・バルカス帝国のシエリアを罵る。モーリアウルは、ゆっくりと口を開く。

 

「新参のグラ・バルカス帝国か、魔法を知らぬ人族主体の国らしいな。魔力数値の低い人族ごときがほざくな。貴様らごときに期待はしていない」

「科学を理解出来ぬ亜人風情が・・・・我が帝国に、一人前の口をきくとはな」

「亜人は、人間以下という意味だ。我が国は竜人族ぞ、下種が!」

 

会議は紛糾し、議長が場を鎮める。

 

「なんだか、すごい会議だな」

 

近藤は、部下の井上に話かける。

 

「本当、前世界では、考えられない進行状況ですね」

 

 

(何故だろう・・・・転移前の世界でも起きてそうな気がするんだけど)

(アメリカとウクライナ辺りでやりそうな気がしなくもない)

(僕だったらあの女にコップ投げつけてるけどね)

(それはそれでアカンくて草)

(全世界敵に回して勝てる自信があるんだろうなあ・・・哀れ)

(イギリスが玩具にしそうな件)

 

 

「あー、ちょっと発言しても良いですか?」

 

日本国大使の2人は唖然とする。すると、イギリスの代表が手をあげ、発言権を得る。

 

「えーと、シエリアさん。貴女の言う、科学を理解出来ない云々は全く以て同意するんですけども、我が大英帝国からしたら貴殿方の科学がレトロ過ぎて笑ってしまうんですよ。良く我が大英帝国や日本がいるのにでかい口叩けますねえ。感心しますよ、本当に!」

 

完全なる嫌味にシエリアは不機嫌になる。また、イギリスがグラバルカス帝国の技術力をレトロと表現したことに各国は顔を見合わせる。やがて場が静まり、ムーが手をあげ、発言権を得る。

 

「我が国ムーは、先進11ヵ国会議において、グラ・バルカス帝国に関する非難声明を発し、同国に対する懲罰のため、2年以上の交易制限を発議いたします。理由としましては、第2文明圏イルネティア王国、王都キルクルスに対する大規模侵攻です。国家間同士の戦争ではあるが、このところ、彼らは、やりすぎだ。このまま彼らを許すと、世界秩序を破壊する可能性があります」

 

神聖ミリシアル帝国も手を挙げる。

 

「確かに、グラ・バルカス帝国は、世界秩序を乱しすぎている。このまま第2文明圏国家を侵攻し続けていると、我が神聖ミリシアル帝国も介入せざるを得なくなる。我が国は、ムーの提案に賛成するとともに、グラ・バルカス帝国に関し、第2文明圏の大陸から即時撤退を求める」

 

誰もが認める世界最強の国の介入、それを聞いただけで、すべての国が震えあがり、剣を治める事がほとんどだった。

 

「我が大英帝国も、神聖ミリシアル帝国やムーの提案に賛成します。もし必要でしたら、懲罰としてグラ・バルカス帝国の首都に高性能爆弾(核弾頭)を複数投下する用意もありますよ。いや、本当に」

 

全員の視線がグラ・バルカス帝国の美しき外交官シエリアに向けられる。彼女はゆっくりと発言する。

 

「一つ最初に伝えておこう。我が国は今回会議に参加し、意見を言いに来たのではない。この地域の有力国が一同に会するこの機会に、通告しに来たのだ。グラ・バルカス帝国帝王グラルークスの名において、貴様らに宣言する。我らに従え。我が国に忠誠を誓った者には、永遠の繁栄が約束されるだろう。ただし、従わぬ者には、我らは容赦せぬ。沈黙は反抗とみなす。まずは尋ねよう。今、この場で我が国に忠誠を誓う国はあるか?」

「あのー、シエリアさん? 私の話をちゃんと聞いてました? 何なら会議の前にお伝えしましたよね? よからぬことをすれば、貴殿方の国の首都を焼き払うって。出来もしないことを高らかに宣言するのは、凄くみっともないので、今すぐ止めてもらってよいですかねえ?」

 

両国の牽制のしあいに各国は騒然とする。

 

「我が国、カナダはイギリスの同盟国として、共に戦う用意がある。もしグラバルカス帝国がイギリスを攻撃するのであれば、我が国に対する攻撃と見なし、集団的自衛権を行使することになるだろう」

 

カナダはいち早くイギリス側につく。同時に日本に対してもイギリスと歩調を合わせるような促す。

 

「我が国とカナダが動けば、自然と日本。更にここには代表団はいないが、オーストラリアとニュージーランドも加わる。異世界転移前に世界の海を支配した大英帝国と日本による軍事同盟に勝てると本気で思うのでしたら、思う存分御相手致しましょう!」

 

(核兵器使う気だ)

(核兵器投下待ったなしね)

(帝都炎上不可避)

(グラバルカス帝国終了のお知らせなンだよなあ)

(まーたブリカスが正当な理由で核兵器使うのか)

(一番喧嘩売っちゃいけない国に喧嘩売ったわね)

 

「・・・・やはり、今従属を誓う国は現れぬか。まあ、当然だろうな。帝王様は寛大だ。我が国の力を知った後でも構わない。その時は、レイフォルの出張所まで来るがよい。まあ、かなり自国が被害を受けた後になりそうだがな。では、現地人ども、確かに伝えたぞ!!」

「え? 本当に高性能爆弾を落としても良いんですか? 思い知らされるのはそっちですよ?」

 

グラ・バルカス帝国の使者は、先進11ヵ国会議途中で退室した。

使者は港からも去り、その日の先進11ヵ国会議は終了した。開催日数、残り6日。

 

 

神聖ミリシアル帝国 西の群島

 

神聖ミリシアル帝国、第零式魔導艦隊は、群島で訓練を行っていた。島が所々にあり、視界は悪い。魔導戦艦3、重巡洋装甲艦2、魔砲船3、随伴艦8、計16隻のこの世界に敵なしと言われた大艦隊は実戦さながらの訓練を繰り返し、練度の維持に努める。

 

「ん?」

 

魔信探知機を見ていたレーダー監視員は、多人数が集まったような点が海上を高速で近づいてくる反応を見つける。

 

「こ・・・・これは!!!」

 

仮想敵国、ムーの機械動力艦が、魔信探知しないため、集まった人間が海上を高速で移動していた状況を見て、船による攻撃の可能性があると、確信する。彼はすぐに上司に報告する。

 

「レーダーに感あり!!北方向より、機械動力艦と思われる反応が接近中!! 速度27ノット、距離60km、反応から想定するに、戦艦2、重巡洋艦3、巡洋艦2、小型艦5、計12隻が我が艦隊に接近しています!! あ、速度が29ノットに上がりました!!」

「何だと!? 29ノットだと!? ムーでは、そんな速度は出せないはず・・・・となると・・・・グラ・バルカス帝国か?総員、戦闘配備!! 総員戦闘配備!!! 不明艦隊がこちらに接近中!! これは訓練ではない!!! 繰り返す!! これは訓練ではない!!!」

 

世界最強と謳われた、神聖ミリシアル帝国第零式魔導艦隊は、急きょ現れた謎の集団に対し、戦闘態勢に移行した。

 

 

イギリス海軍原子力潜水艦「ヴィクトリアス」

 

「始まるみたいだな」

 

有事に備え、イギリス海軍は2隻の原子力潜水艦を神聖ミリシアル帝国の領海に展開していた。あからさまな領海侵犯であり、バレれば外交問題不可避であるが、神聖ミリシアル帝国には水中の敵を捕捉する装備を有していないことが調査により分かっている。その為安心して、堂々と原子力潜水艦を展開出来る。その内の1隻が今、神聖ミリシアル帝国海軍とグラ・バルカス帝国海軍による軍事衝突、そして世界最強と唄われた神聖ミリシアル帝国海軍の精鋭が全滅する様を見届けることになるのである。

 

 

イギリス海軍原子力潜水艦「アガメムノン」

 

「ヤマトクラスはどうだ?」

 

艦長が潜望鏡を覗く兵士に尋ねる。

 

「ヤマトクラスは引き続き単独で移動していますが、他の艦と合流する素振りはありません」

「・・・・となると、ヴィクトリアスの方に現れた艦隊が神聖ミリシアル帝国艦隊を全滅させた後に合流するのだろう」

 

日英加による空母打撃群に加わっていた原子力潜水艦「ヴィクトリアス」と「アガメムノン」はカルトアルパスには入港せず、洋上で哨戒活動に従事していた。

 

「ちなみに空母打撃群は何をしている? 昨日グラ・バルカス帝国が全世界に宣戦布告したのだろう? 我が国に日本、カナダ、オーストラリアによる連合艦隊を以てすれば、あんなものガラクタに過ぎぬだろう」

「艦長! 本国より緊急通信!!」

 

本国からの緊急の報せがアガメムノンに届けられる。

 

「・・・・・これは不味いな・・・一時的とはいえ、島はグラ・バルカス帝国に占領される。そして捕虜も取られるな・・・」

 

(続く)

 

 

 

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