日英同盟召喚   作:東海鯰

51 / 112
リペリュー島の戦い1

グラ・バルカス帝国海軍リペリュー島攻略艦隊旗艦

戦艦「ティタウィン」

 

一般人から見れば異様な艦橋、一部の者からは違法建築と揶揄される戦艦がリペリュー島に向けて全速力で移動する。戦艦「ティタウィン」は同型艦の「ベリタテ」、準同型艦で本級の改良型である「アルフェラッツ」、「メラク」の計4隻を率いてリペリュー島北部の海岸に主砲を向ける。旧帝国海軍に詳しい者が見れば、扶桑、山城、伊勢、日向が勢揃いしたように見えるだろう。

 

「二線級の戦艦とは言え、まだまだ働けるところを見せてやろうぞ!! 主砲、ウテー!!」

 

ティタウィンの発砲を皮切りに4隻の戦艦部隊は一斉に艦砲射撃を開始する。各艦36センチ連装砲を12門搭載し、圧倒的火力をリペリュー北部の日本側陣地に叩き込む。

 

「はははは!! 見たまえ参謀!! このティタウィン以下戦艦部隊による圧倒的火力を!! 空母艦隊にはこんな芸当は出来まい!!」

「おっしゃる通りにございます!! やはり巨大な主砲を搭載した戦艦こそが海軍の主力に相応しい!! 航空主兵等邪道ですな!!」

 

リペリュー島攻略艦隊は、戦艦4、重巡洋艦3、軽巡洋艦5、駆逐艦8、輸送艦15で編成されており、空母は含まれていない。2隻の空母はチャールズ諸島に護衛の駆逐艦5隻と共に同諸島防衛と称して残してきているが、これは艦隊司令以下幹部らが熱烈な大艦巨砲主義者であり、空母に戦果を与えなくする為の嫌がらせであった。

 

「よし! 航空巡洋艦より偵察機を出せい!! 砲撃の成果を確認するのだ!!」

 

戦果確認の為、最上型重巡洋艦に酷似した艦から水上偵察機1機が発艦する。

 

「・・・上陸予定の沿岸部に敵兵の姿なし!」

「陣地も木っ端微塵だな!! こりゃあ楽勝だな!!」

 

彼らの目には戦艦の砲撃により木っ端微塵になった沿岸砲台や自動車の姿があった。見渡す限り邪魔になりそうな構造物は瓦礫と化しており、人影の姿はない。

 

「敵影なし! これより帰投する!!」

 

グラ・バルカス帝国の水上偵察機が上陸予定のリペリュー島北部の沿岸部をぐるりと見て回り、母艦へ帰投しようと考え始めた時だった。

 

「ん? 人影が見えないか?」

「え?」

 

次の瞬間、彼ら目掛けて一発のミサイルが放たれる。

 

「ろ、ロケット弾!? そんなものが当たるか!!」

「念のため回避するぞ!!」

 

直ちに回避行動を取る水上偵察機。しかし、彼らを嘲笑うかのようにミサイルは付いてくる。

 

「ば、馬鹿な!! ロケット弾が付いてくるだと!?」

「だ、駄目だー!! う、うわああああ!!」

 

グラ・バルカス帝国海軍の水上偵察機は派手に爆散する。戦艦部隊による猛烈な艦砲射撃を地下に設置した防御陣地でやり過ごした陸上自衛隊リペリュー島守備隊は、91式携帯地対空誘導弾を用いて水上偵察機を撃墜。水上偵察機の搭乗員はこの戦闘で初の戦死者となるのである。

 

 

リペリュー島北部守備隊地下陣地

 

「敵水上偵察機を撃墜! 現在残骸を調査中!」

「本部より通信! 引き続き北部沿岸部を監視し、嫌がらせを継続せよとのこと!!」

「了解した。皆、覚悟は出来ているな?」

 

北部方面守備隊小隊長が気を引き締めさせる。

 

「まもなく敵は輸送艦を用いて大部隊を上陸させる! 南部の陣地より対艦ミサイルの支援はあるが、リペリュー島に配備されているのは6発。半分以上の輸送艦は無傷で敵兵を上陸させるだろう!! 我々は上陸して油断している敵兵目掛けて砲撃を行う!! 榴弾砲、迫撃砲は合図があれば直ぐに撃てるよう、再度点検せよ!!」

 

各員は配置につくべく、移動を開始する。島北部の沿岸部を防衛する部隊には、155mm榴弾砲FH70が2門、120mm迫撃砲RTが4門とそれらを扱う50名の部隊が配備されている。しかし、これは敵が島の南部へ侵攻するのを遅らせる為であり、沿岸部で防ぐためではない。その為、最低限の弾薬のみが割り当てられており、頃合いをみて高機動車にて南部方面へ撤退する予定である。

 

 

戦艦「ティタウィン」艦橋

 

「水上偵察機が断末魔をあげた後消息を絶った模様です。搭乗員らは、ロケットが付いてくると叫んでいたと」

「フン! 馬鹿馬鹿しい!! 誘導機能がついたロケットだと? そんなものあるなら我が国が先に配備しているわ!!」

「ですが司令。仮にまぐれ当たりであったとしても、敵は我が国と同等またはそれ以下のロケット弾を保有していると見るべきでしょう」

「司令、私も艦長の意見に同意致します。その上で追加の艦砲射撃を具申致します。先ほどまでは戦艦の主砲のみだった為に、撃ち漏らした敵兵がいたのでしょう。更に距離を詰め、副砲や巡洋艦、駆逐艦も含めた全火力をぶつけてみては如何でしょうか?」

「・・・・成る程。確かに艦長や参謀の意見には一理ある。よし! 隊列を組み直せ!! 南部で監視にあたっている駆逐艦3隻もこちらに回せい!!」

「ははっ!!」

 

 

リペリュー島南部守備隊高台陣地

 

「ん? 隊長!! 南部方面に展開している駆逐艦に動きが!!」

「また嫌がらせの艦砲射撃か?」

「違います!! どこかに移動しようとしています!!」

「何!?」

 

南部方面守備隊小隊長が双眼鏡を洋上に展開する、グラ・バルカス帝国駆逐艦に向ける。

 

「・・・・本当だ。しかし、わざわざリペリュー島南港の封鎖を解くとはどういうわけだ?」

「潜水艦でも展開させているのでしょうか?」

「可能性はあるな・・・・司令部に報告だ!!」

 

 

リペリュー島中心部リペリュー山洞窟陣地

リペリュー島守備隊総司令部

 

「長命隊長! 南部方面の守備隊より、監視していた駆逐艦3隻が移動。どこかに移動しようとしていると」

「港の封鎖を解除するだと? 一体どういうわけだ?」

 

司令部幹部らは地図を広げ、現在の両軍の戦力配置を示していく。

 

「駆逐艦が離れた・・・問題はこれがどこに行くかだ。北部方面守備隊からは水上偵察機を撃墜したと報告が来ている。一方で敵は上陸の気配を見せず、輸送艦は後方で待機。代わりに戦艦や巡洋艦が慌ただしく移動しているとも言っている・・・・」

 

リペリュー島守備隊長命隊長は地図を睨む。

 

「・・・・もしかすると、我々が水上偵察機を撃墜したことで、追加の艦砲射撃を行うつもりなのではないでしょうか?」

 

幹部の一人がそう発言する。

 

「敵は水上偵察機が撃墜されるとは想定していなかったはずです。あれだけ戦艦が砲弾を叩き込んだのだから、敵兵はいないはずだ、と」

「撃ち漏らした敵兵がいたと判断して、か? なら戦艦だけで再度艦砲射撃をすればよいのではないのか?」

「今回は巡洋艦や駆逐艦も含めた全艦艇で艦砲射撃するつもりなのではないかと」

「わざわざ砲弾と時間の無駄遣いか・・・この島は固い珊瑚礁で出来ている。いかに戦艦や巡洋艦の艦砲射撃を受けようともびくともしない。加えてコンクリート製の陣地も一部では整備している。敵が砲弾と時間を無駄にしてくれるなら好都合というものだ」

 

長命隊長以下守備隊は、全員死を覚悟しているとは言え、1日でも長く耐えて本国からの増援がロコール島に集結する時間を稼がなくてはならない。既にロコール島からは、イギリス空軍の輸送機がニュー・ホンコンやアルタラス王国から離陸したとの情報が入って来ている。本格的な増援は日英本国からの派遣となる為に少なくとも3ヶ月はかかるが、ロコール島に戦闘機が到着すれば制空権の確保が可能になり、補給を受けることも可能になる。ただし、ロコール島には戦闘機の補給整備が可能な設備がなく、それらも構築しなくてはならず、仮の補給整備拠点完成には1ヶ月を要する見込みである。

 

「・・・・1日でも長く敵を足止めしたいが、我々の持つ武器弾薬には制約がある。対艦ミサイルは6発、戦車は4両。いずれも本国では旧式と化した在庫処分品だ」

 

輸送艦「にほんばれ」がリペリュー島守備隊増強の為に運んできた物資の中には、88式地対艦ミサイル6発(発射機付き)、74式戦車4両があった。いずれも本国では旧式と化しており、廃棄予定であったものだが、日本がパーパルディア皇国からオラパ諸島を割譲されたことに伴い、ロコール島に配備。限られた予算でそれなりの守備隊を編成することを強いられた結果であり、将来的には島の設備拡張と合わせて置き換え予定であった。

 

「置き換える前に戦争になってしまったがな・・・・」

「今更悔いても仕方ありません。数日中にもイギリス空軍の戦闘機や空中給油機の先発隊が到着するそうですが、敵空母艦隊がどう動くか分からず、ロコール島から離れられないと」

「チャールズ諸島で待機している艦隊か・・・確かに不気味だな。こっちに来るとばかり思っていたが、どういうわけか待機。もしリペリュー島を救援する為にロコール島の部隊をここに差し向けた場合、手薄になったところを空母艦載機にて奇襲する可能性がある、最悪の場合占領されるかもということか・・・」

 

まさかグラ・バルカス帝国海軍リペリュー島攻略部隊が大艦巨砲主義者の集まりであり、航空主兵派への嫌がらせ為に空母部隊を連れてきていないなんて夢にも思わない日英側は、チャールズ諸島に展開している空母部隊を強く警戒。空母がリペリュー島に向かうのか、ロコール島に向かうのかが全く分からず、部隊はロコール島から動けない状態となっていた。カルトアルパスに展開していた空母打撃群が到着するまで最低でも2ヶ月かかる為、意図が分からない空母部隊に怯えなくてはならない状況が続く。

 

「敵に上陸されては終わりだが、洋上で防ぐ手立てはなし。如何するべきかな?」

 

長命は幹部に意見を求める。正解等存在しない、命懸けの戦場。皆に緊張が走る。

 

「私は少しでも敵の輸送艦を沈めるべきかと・・・」

 

幹部の一人がそう発言する。

 

「敵の輸送艦一隻辺りに何人の兵士が乗っているのかは分かりませんが、北部方面守備隊からの報告やドローンによる画像等からグラ・バルカス帝国の輸送艦は、第二次世界大戦でアメリカ海軍が運用したLST-1級戦車揚陸艦に酷似しています。仮に本揚陸艦と同等クラスの性能を有していると過程した場合、150名の兵士と多数の軍用車両、例えばジープでしたら44両を輸送可能です」

「44両だと!? 仮の話ではあるが、戦車ならどうなる!?」

 

幹部の一人が驚きながら尋ねる。

 

「M24軽戦車なら24両です。ただ、グラ・バルカス帝国の装備は旧日本軍に酷く酷似していますので、97式中戦車を輸送してくる可能性が高いと思われます。それでも20両は輸送出来るのではないでしょうか?」

「とは言え、チハなら我々の74式戦車で一方的に蹂躙出来るし、在庫処分としてオラパに送られた79式対舟艇対戦車誘導弾や87式対戦車誘導弾もあるし、僅かながら01式軽対戦車誘導弾もある。問題は兵士の数であろう」

 

仮に全ての輸送艦から150名の兵士が上陸した場合、150(人)×15(隻)=2250人の兵士が上陸する計算になる。それも戦車や装甲車、その他火砲コミコミである。

 

「まずは輸送艦を可能な限り洋上で撃破しましょう。仮に泳いで上陸されたとしても、丸腰であればむしろ敵の戦力を下げられます。対艦ミサイルは島の中心部に配備しており、いかに戦艦による艦砲射撃があろうとも、撃破は出来ません」

「その上で上陸し、物資を広げ始めたところを見計らい、一斉に砲撃を加えましょう。敵兵の撃破だけでなく、貴重な物資の喪失にも繋がるかと」

「うむ・・・・となると、北部に弾薬を融通してやらねばな・・・ここや南部から回せるか?」

「可能です。敵の空母がどこにいるかは気がかりですが、夜間なら問題ないかと」

「うむ! では、その策でいく! 北部方面に戦力を移動!! 戦車も回せ!!」

 

日本側は敵が上陸し、油断しているところを狙い、徹底的に殲滅することに決定。陽が落ちるのを待ち、部隊を移動させる。

 

 

リペリュー島北部守備隊地下陣地

 

「・・・・・はい・・・はい、分かりました!」

「何かあったのかね?」

 

北部守備隊の小隊長が通信担当に尋ねる。

 

「どうやら南部に展開していた駆逐艦が北部へ移動。明日にも再度艦砲射撃を行い、その後上陸してくる可能性が高い。これを海岸にて殲滅するべく、南部から増援を送るとのこと!! 戦車も来ます!!」

「ほう・・・・長命隊長もかなり思いきったな・・・みんな!! どうやら敵さんは明日にも再度艦砲射撃をするらしい!! ちゃんと地下壕に隠れておけよ!! また増援として戦車が来る! 受入れ体制も整えておけ!! いよいよ明日敵が来るぞ!!」

 

その後、本部や南部からの増援が到着。総勢200が火砲や戦車と共に地下陣地で待機することになる。一方、グラ・バルカス帝国海軍側は・・・・

 

 

戦艦「ティタウィン」艦橋

 

「司令! 艦隊が集結しました!! 直ぐにでも砲撃が可能です!!」

「ご苦労!! では参謀!! 君なら何時砲撃を開始する?」

「某でしたら、早朝の時間がよろしいかと!」

「ほう・・・・敢えて夜ではないと?」

「流石に艦隊の集結に時間を要しましたし、兵にも休息が必要であります!! 更に早朝なら敵が眠っているでしょうから、反撃もない。また、先に占領したグラ・ルークス諸島(チャールズ諸島)より輸送艦が移動中であり、戦艦部隊が消費した弾薬を夜間に補充する意味合いもあります!!」

 

グラ・バルカス帝国は、イギリス領チャールズ諸島を占領すると、島の名称をグラ・ルークス諸島に変更。グラ・ルークス島(キングチャールズ島)に補給拠点を設け、本国からの輸送艦やタンカーが停泊可能な簡易的な港や輸送機や爆撃機が離発着可能な滑走路を整備したのである。明日にも、本国から無人島に秘密裏に設置した飛行場を経由して、ベガ型双発爆撃機が飛来し、ロコール島への奇襲攻撃を敢行する予定である。

 

「素晴らしい!! では、兵士には酒を許可しよう!! 我々の勝利に乾杯するのだ!!」

 

互いに翌日の決戦に向けて準備を開始する。一方、ロコール島では・・・・

 

 

日本国東京都オラパ諸島村ロコール島

海上自衛隊ロコール島飛行場

 

「まさかコイツらを引っ張り出すなんてな・・・」

 

飛行場の各地には、陸上自衛隊の地対空誘導弾改良ホークが並べられていた。本来であれば此方も廃棄予定であったが、異世界転移に伴い延期。その後暫くは倉庫で眠っていたが、オラパ諸島領有に伴い、ロコール島に配備。03式中距離地対空誘導弾やPAC-3の配備が予算の都合上間に合わないことから、在庫処分も兼ねて送られていたのである。

 

「今や改良ホークの在庫全てがここ、ロコール島にある感じですからね・・・・」

 

偵察衛星の画像解析で、グラ・バルカス帝国海軍の空母艦隊が引き続きどのような動きをするのかが分からないこと、更には爆撃機が飛来する可能性があると、レイフォルに潜伏するイギリスの諜報部より得られた情報がもたらされたことから対空警戒が厳重となる。

 

「イギリス空軍の輸送機2機がまもなく到着します!!」

 

ニュー・ホンコンから飛来したイギリス空軍の輸送機が着陸する。輸送機からは、27式自走対空高射機関砲(イギリス空軍仕様)やそれらを運用するイギリス空軍や、それを防護するイギリス陸軍の兵士がぞろぞろと降りてくる。

 

「レーダー員は少しでも違和感を感じたら報告せよ!! 民間人の命は我々にかかっている!! そしてリペリュー島にいる同胞の命もな!!」

 

ロコール島に1ヶ月前に設置されたレーダーサイトが24時間監視を続け、P-3C哨戒機がロコール島周辺海域で潜水艦狩りを継続する。ここ数日、ロコール島周辺海域にグラ・バルカス帝国の潜水艦が出現するようになり、操業中の漁船が攻撃を受け撃沈され死者が出る事態にもなっている。海上自衛隊は既に2隻の潜水艦を撃沈しており、潜水艦狩りに躍起である。

 

「明日にはイギリス空軍のタイフーンが空中給油機と共に飛来します。また、ニュー・ホンコンから油送船1隻、タンカー2隻がニュージーランド海軍のフリゲート艦タラナキの護衛を受けて移動中で、明日の朝には到着します」

「ニュージーランドは訓練中の新型を投入か・・・かなり本気だな」

「というか、もがみ型のニュージーランド海軍仕様、引き渡されていたんですね」

「今は二番艦と三番艦を同時に建造中らしいぞ。もがみ型は大人気商品だな」

「しかし、護衛が1隻で大丈夫なのか?」

「直ぐにでも動けるのがそれしかいなかったらしいからな・・・まあ、彼等が無事入港出来るようにする為に潜水艦狩りをしているからな」

 

ロコール島には続々と増援部隊や物資が到着し、日に日に設備や部隊が強化されていく。

 

 

イギリス領チャールズ諸島キングチャールズ島(グラ・ルークス島)

グラ・バルカス帝国海軍仮説基地

 

「かなり不味いな・・・・」

「ロコール島周辺海域で消息を絶った潜水艦はこれで3隻目・・・あまりにも損耗が激しすぎる・・・」

「まさか日本が潜水艦対策出来るとは・・・・想定外でした」

 

占領したキングチャールズ島に設置された仮設基地では、潜水艦部隊を指揮する士官らが頭を抱えていた。リペリュー島への増援を阻止し、いずれ来るロコール島攻略作戦の為に潜水艦部隊には、リペリュー島南部の哨戒とロコール島周辺海域での通商破壊が命じられていた。前者については問題は出ていないが、問題は後者であった。

 

「このまま損耗が続けば、リペリュー島の哨戒活動も困難になります。悔しいですが、ロコール島から部隊を下げ、リペリュー島全体を包囲するべきではないでしょうか?」

「確かにな・・・・通商破壊は全く成果は上がらないし、沈めたのは操業中の漁船団のみ・・・やむを得ないな」

 

潜水艦部隊を指揮する士官らは、ロコール島での通商破壊作戦の中止とリペリュー島包囲強化を決定。潜水艦の撤退を開始させることになる。撤退中も日英の哨戒機や哨戒艦による攻撃により、潜水艦の損耗が続き、最終的には10隻の潜水艦を喪い、通商破壊作戦は大失敗に終わった。グラ・バルカス帝国海軍が潜水艦を引き上げたことで、日英は制海権を回復。ニュージーランド海軍の護衛により、ニュー・ホンコンからロコール島に向かっていた油送船とタンカーは翌朝に無事入港し、貴重な燃料を島に送り届けることに成功するのである。

 

 

日英加豪連合艦隊

海上自衛隊護衛艦「いずも」艦長室

 

「順調に航行した場合、チャールズ諸島到着まであと2ヶ月・・・か。長いと思わねえ?」

 

「いずも」の艦長室では、艦長のヒロシと医官のケントが雑談をしていた。

 

「しかも出発前にアキラ先輩から、絶対に師匠を死なせるな! と無理難題を言われましたしね・・・・」

「師匠って誰だよ・・・ってずっと思ってたけど、まさか防衛大学時代の教官で陸自とか、想像つくかよって話だよ。こちとら、そう言えばいたなあ・・・程度の認識だよ」

「俺は防衛大学経由じゃないんで、全く知りませんでしたね」

「というか、なんで君は自衛隊に入ったんだよ。普通に病院で院長とか出来そうじゃん」

「軍艦の上で治療をやって見たかったもので!」

「物好き過ぎるだろ・・・」

「まあ、今はアキラ先輩はお休み中ですし、大丈夫大丈夫!!」

「何が大丈夫なのか分からねえ・・・・」

 

 

グラ・バルカス帝国海軍空母艦隊旗艦

空母ペガスス

 

「潜水艦部隊から協議の申し入れだと?」

 

空母艦隊を指揮する士官は怪訝な表情を浮かべる。大艦巨砲主義の現場指揮官達により、空母艦隊は完全に冷や飯を食わされていた。建前は空母の喪失回避であるが、その本音は大艦巨砲主義だと、空母艦隊の誰もが理解していた。故に士気は上がらず、風紀は乱れ、怠惰な毎日を過ごしていた。

 

「まあ、良い。協議するとしよう」

 

数時間後

 

「成る程な・・・・確かにこれほど潜水艦がやられているとなると、通商破壊は不可能・・・そうなれば、空母とまもなくやってくる爆撃機でロコール島を奇襲する他ないな・・・」

 

潜水艦部隊からの要請は以下の通りだった。

 

・潜水艦部隊は、ロコール島を拠点に活動する日英の哨戒機部隊の攻撃により、大損害を被っている

 

・これ以上の潜水艦の喪失を避けるべく、既に通商破壊作戦は中止している

 

・ロコール島の航空基地を破壊しないことには、潜水艦による封鎖は不可能であり、また航空基地が健在である限り、ロコール島が陥落することはない

 

・ロコール島の航空基地を破壊し、後方を攪乱することでリペリュー島攻略の支援になると考えられる

 

・以上の理由から、空母艦載機によるロコール島奇襲作戦を提案したい

 

「良いでしょう!! 我々もロコール島の航空基地を破壊するべきであると考えていました。明日にも爆撃機20機が到着します。彼等と共にロコール島を奇襲します。潜水艦部隊には工作員を乗艦させ、混乱するロコール島に工作員を上陸させてください」

「承知しました! 協力に感謝します!!」

「あと、この作戦はリペリュー島にいるバカには報告しないよう、お願いいたします。あの時代錯誤の大艦巨砲主義に知られれば阻止されるでしょうから」

「全くですな。これからは航空機と潜水艦の時代。戦艦はいらなくなりますからな」

「では、抜かりなく」

 

 

日本国東京都オラパ諸島村ロコール島

東200キロ上空

 

「いよいよロコール島に着陸・・・・オレの時代が始まるってもんだ!!」

「おいおい、落ち着けよオグリ。まだ戦闘は始まったばかりだぜ?」

 

この後援軍のF15J戦闘機4機と輸送機3機が着陸。長旅の疲れを癒すために戦闘機パイロット達は直ぐに休みを取ることになる。

 

 

ロコール小学校職員室

 

「・・・・という訳で、空襲警報が発令された場合、直ちに児童を校舎に避難させ、窓から遠ざけるよう、お願いいたします!!」

 

行政区の職員が小学校を訪れ、空襲警報発令時の対応について説明を行う。校庭や屋上には27式自走対空高射機関砲や改良ホークの陣地が築かれ、戦時仕様に様変わりしていた。校庭での体育は無期限中止となり、体育館で行うことに。教室の一部は自衛隊やイギリス軍に提供され、隊員の寝泊まりや物資の保管に使われていた。左翼教員が反発し、イギリス陸軍と衝突し拘束される等混乱も起きていた。

 

「また、児童らが誤って自衛隊やイギリス軍の区域に入らないよう、指導もお願いいたします! 我々も好きで学校に陣地を構築しているわけではないことをどうか、どうかご理解頂きたい!!」

 

陸上自衛隊やイギリス陸軍の関係者が頭を下げる。左翼教員は納得していない様子であり、自衛隊やイギリス軍の活動を妨害するべく、怒りの声をあげる。

 

「そもそも貴方達がここに来るから、グラ・バルカス帝国が小学校を攻撃するのでしょう? 児童を守る為にも、自衛隊とイギリス軍は小学校から出ていくべきだ!!」

「そうよそうよ!! 軍国主義はんたーい!!」

「そもそも戦争になったのは! 日本とイギリスがグラ・バルカス帝国の話を聞かなかったせいではないのか?」

「グラ・バルカス帝国の物量に日英が勝てるわけがない!! 平和の為にも速やかに降伏するべきです!!」

「「・・・・・・・・・」」

 

ロコール小学校はリペリュー小学校と異なり、それなりの数の教員を抱えている。更には本国で手に負えない左翼の中の上澄みを島流ししていたこともあり、左翼勢力最後の溜まり場と化していたのだ。一方、リペリュー小学校の教員であるタクマとケイは自衛隊やイギリス軍に好意的であり、左翼教員の態度に全く共感出来ず、理解に苦しむと同時に、何も出来ない、力のない自分自身に不甲斐なさも感じていた。

 

「タクマ先生もそう思うでしょ?」

 

ロコール小学校を牛耳る左翼教員のボスである女性教頭がタクマに圧力をかける。ロコール小学校の校長は自衛隊に好意的であるものの、教頭でありお局様として牛耳る左翼のボス教員であり、校長の指示を聞かない、本国から叩き出された左翼の中の左翼である彼女は誰にも止められない存在であり、好き勝手していた。更にはタクマのことを明らかに小僧扱いしており、勝ち誇った顔をしている。

 

「・・・・・・ボクは自衛隊やイギリス軍が小学校に陣取るのに賛成です」

「はあ?!」

「そもそも彼等はボク達日本人を守るために来ています。決して侵略の為じゃない。ここだけじゃなくて、オラパ諸島行政区や公民館、港湾施設、浄水場に下水処理施設等、島の重要施設全てに配備されています。どれも攻撃される可能性が・・・」

「あらまあ! タクマ先生は右翼なのねえ~。お利口ぶっちゃって!! 貴方みたいな軍国主義者に指導される児童が可哀想だわ~」

 

周りの教頭の取り巻きもニヤニヤ笑う。校長や一部の教員は何か言い返したい顔をしているが、お局様の圧倒的権力を前にただ睨み付けるのみになっている。お局様はそれをみて完全に勝ち誇っている。

 

「・・・・・軍国主義者? 自衛隊に好意的なら軍国主義者になるのか? とんだ飛躍ですね。ロシアがウクライナで何をしたのかを忘れたんですか?」

 

反論されるとは思っていなかったお局様は一瞬だけ顔をしかめる。

 

「あら? 教頭に反論する気? 私は教頭。ヒラの貴方よりずーっと偉い立場なのよ? 目上の人を敬いなさい、坊や?」

 

タクマをヒラと言ったお局様。ロコール小学校の校長は顔を青ざめた。お局様はまともに人事異動の通知を読んでいなかった為、タクマがリペリュー小学校の校長であるとは知らなかったのである。

 

「それに、ウクライナがさっさと降伏すれば良かった話なのよ。ロシアとウクライナには圧倒的国力差があったし、ウクライナが無駄な抵抗をするから、可愛い子供達が犠牲になったのよ坊や。こういう中長期的目線を持ちなさい。目上の人を敬い、言うことは聞くのよ?」

「ウクライナが無駄な抵抗をしたから? 何を言っているんですが貴女は!? ロシアはウクライナの民間人をわざと狙って攻撃したんです!! そしてロシアの目的はウクライナの傀儡化。そうなれば更に多くのウクライナ人が殺される、それがわかっているから彼等は抵抗しました。グラ・バルカス帝国がロシアのように、民間人を狙う可能性があるのなら、先回りして対空兵器を配備するのは合理的ですし、小学校には民間人が避難する為の地下壕もあります。それに、ボクはリペリュー小学校の校長です。ボクを入れて教員は二人しかいませんが、教頭の貴方よりはずっと目上の立場だと思いますが? それこそ、目上の人を敬ったらどうですか?」

「はあ? 調子に乗るのも大概にしなさい。貴方みたいな若僧が校長な訳ないでしょ? 顔は良いのに、頭は残念なのね。それだから坊やは頭の悪そうな金髪女しか引っかけられないのよ!」

 

あ、不味い。校長がそう思い、お局様に彼が他校の校長であることを伝えようと前に出る。

 

「教頭先生! タクマ先生はリペリュー小学校の校長です! 人事異動の通知を渡したでしょう?」

「はあ? そんな話、聞いてないけど? それに仮に校長だったとしても、私の方が経験は圧倒的に上なのよ? 今席を外している金髪女より、価値があるのよ? 自分が落ちこぼれの無能だって、分かってる?」

 

お前が言うのか? 校長以下お局様に反感感情を抱く教員がそう思った通り時、校長を吹っ飛ばしてタクマが前に走ってくる。

 

「ケイを侮辱するな!! このクソ腐れ外道の左翼ババア!!」

 

次の瞬間、我慢の限界に達したタクマが女性教頭に殴りかかる。突然の行動に取り巻きの教員は頭が真っ白になり、動けないでいる。

 

「ちょ! ちょっとタクマ先生!? ふざけた真似はやめなさい!! やめろ小僧!!」

 

逃げようとする女性教頭をイギリス軍の兵士二人がしれっと羽交い締めにし、タクマが殴り続けられるようにサポートする。誰もタクマの側を押さえず、女性教頭の側を押さえる。

 

「このクソババア!! 死ね!! 死ね!! 死にやがれ!!」

 

思い切り顔面を殴り付けるタクマ。相変わらずイギリス軍の兵士は女性教頭の側だけを羽交い締めにしており、更には、

 

「GOGOGO!!」

「ヤッチャエタクマサン!!」

「ヒューヒュー!!」

 

と、何故かタクマの方を応援する始末。そして自衛隊の隊員はどうしたらよいか分からず右往左往している。

 

「た、タクマ!!」

「あ! ケイ先生!! は、はやく彼を押さえなさい!!」

 

たまたまトイレに行っており、その場にいなかったケイはタクマがお局様を思い切り殴り付けている光景に驚く。同時に何か許せないことがあったのだと、察した。

 

「あんた! 私のタクマに何したのよ!!」

 

ケイはタクマと共に女性教頭を殴り始める。イギリス軍の兵士はイケイケ! と言わんばかりに声を出しながら押さえ続ける。

 

「あっちを押さえなさいバカ!!」

 

 

オラパ諸島行政区

行政区長官室

 

「え? ロコール小学校で暴力事件? 左翼教頭をリペリュー小学校の校長と教頭が殴りつけた?」

 

オラパ諸島行政区の二代目長官であり、後のオラパ諸島村長を勤めることになる原石慎太郎長官は部下の報告を聞くと、少し考えた後にこう言った。

 

「・・・・これは、あの小学校のクソ左翼腐れ外道教員共を日本から追放する絶好の好機なのでは?」

「どうしてそうなるんですか?(困惑)」

 

原石長官は公安、MI6、自衛隊、イギリス軍、ミカドアイHDと合同でロコール小学校の女性教頭を筆頭とする左翼教員をグラ・バルカス帝国に内通したとして、革命的粛清人事を即日敢行。数日前、観光客に扮して潜入していたところを逮捕したグラ・バルカス帝国の工作員と関わっていた証拠を捏造し、外患誘致罪で死刑になるか、地下帝国で死ぬまで働くかを選ばせた後に、左翼教員全員をニュー・ホンコン行きの輸送機に詰め込み、エストシラントの地下帝国に送り込んだ。これによりロコール小学校の左翼教員は一掃され、正常化されることになる。ちなみにお局様以下左翼教員は保護者からの評判も悪く、この革命的粛清人事は大絶賛されることになる。

 

「・・・・はあ、はあ、はあ・・・・・またやってしまったよ・・・」

「タクマはよく我慢してたわ。私の為に怒ったんでしょ?」

「・・・・・うん」

「それに、ロコール小学校の校長は感謝してたわよ。貴方のお陰でお局様を排除出来た、って」

「それは結果論だよ。いずれにしてもまた暴力事件を起こしてしまった・・・・」

「なら、その分働いて貰わないとね。タクマ校長先生?」

 

グラ・バルカス帝国に対する日英の逆襲まであと2ヶ月。各々の思惑が入り交じる中、作戦が開始される。

 

 

グラ・バルカス帝国海軍リペリュー島攻略艦隊旗艦

戦艦「ティタウィン」

 

「時間だな。うちーかたー、はじめ!!」

「うてー!!」

 

(続く)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。