神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス 皇城
古の魔法帝国の古代遺跡を解析し、その技術差によって、世界の頂点に昇りつめた神聖ミリシアル帝国、そしてその力を使用し、世界から集めた富により、栄華を極めし都市、帝都ルーンポリス。正にこの都市は世界の中心であると、帝国臣民は自らを褒め称える。街には魔法技術によって作られた車が走り、高層建築物が立ち並び、夜は光の魔法により、柔らかい光が都市を包み込む。初めて帝都を訪れし他国の民は言う。
「何と栄えし都か、何と豊かなる国か、まるで神々の物語に出てくるような世界か・・・」
と。その世界の中心とも言える帝都ルーンポリスのさらに中心、世界を操りし帝が住まう皇城において、緊急の会議が開かれようとしていた。今まで敵なしで外交を行ってきた彼らに、奇襲攻撃とはいえ、初めて土をつけた国、グラ・バルカス帝国への対策について、会議が始まる。
皇帝ミリシアル8世を中心とし、
○軍務大臣シュミールパオ
○国防省長官アグラ
○情報局長アルネウス
○外務省統括官リアージュ
他、国の幹部といっても差し支えない。本会議において、外務大臣ぺクラスは、先進11ヵ国会議で、港町カルトアルパスに出向いており、本会議は不参加であった。なお、外務省統括官リアージュは、度重なる会議で、カルトアルパスと帝都を何往復もしていた。
「これより帝前会議を始めます」
国防長官アグラが司会進行を兼務する。
「今回の会議を開くきっかけとなった事案の概要を説明いたします」
アグラは説明を開始する。
「先日、先進11ヵ国会議において、西方の文明圏外国家グラ・バルカス帝国が我が国を含む世界へ向け、従属せよと表明いたしました。グラ・バルカス帝国は、現在、第2文明圏西側各国を落とし、連戦連勝を重ね、列強レイフォルを単艦で破ったことから自信をつけ、このような暴挙に出たと思われます」
説明は続く。
「グラ・バルカス帝国使節団は、先進11ヵ国会議で暴言を吐いた後、カルトアルパスから彼らの乗ってきた戦艦で立ち去っています。その後、同戦艦とは別の艦隊が、西の群島において、第零式魔導艦隊に攻撃を仕掛けました。」
一同は、その後の戦況経過報告に息をのむ。
「敵の規模は戦艦2、重巡洋艦3、巡洋艦2、小型艦5の計12隻の規模であり、戦艦の総合的強さは、我が方の最新鋭魔導戦艦に匹敵するものでした。敵に与えた被害は、戦艦1、重巡洋艦1、小型艦1隻を撃沈し、重巡洋艦1を大破、巡洋艦1を中破、小破多数させ、本海戦は我が方の勝利に終わりました」
話はつづく。
「しかし、その後敵の航空隊多数の猛攻にさらされ、第零式魔導艦隊は全滅いたしました」
場がざわつく。第零式魔導艦隊は、神聖ミリシアル帝国の最新型が配備される花形の艦隊であり、同国の強さの象徴だった。その艦隊が、航空攻撃により全滅したとの報告により、国の幹部は改めて衝撃に襲われる。
「戦闘航行中の戦艦が航空機ごときにやられるはずがない!!その時、我が方の戦艦はすでに損傷していたのか?」
総務大臣が尋ねる。
「詳細は不明ですが、国防省では、航空攻撃前の海戦で、すでに戦艦は損傷していたと分析しています。なお、西の群島は警備用の航空機を少数しか配備していなかったため、エアカバーはありませんでした。グラ・バルカス帝国艦隊は、その後陸軍離島防衛隊基地に艦砲射撃を加え、東に進路をとりました」
彼らはさらに話を続ける。
「彼らの侵攻目標は、先進11ヵ国会議が開催中の港町カルトアルパスと思われます。
ただ、首都に来る可能性もあるため、首都警戒中の艦隊は動かせず、現在東方展開中の第1、第2、第3艦隊をカルトアルパスに向かわせていますが、間に合わないでしょう。対応可能戦力は、今ある地方警備隊の巡洋艦8隻と、エアカバーのみであり、同戦力で戦います。カルトアルパスに被害が出る可能性は高く、各国に対して東の街カン・ブラウンに会議場所を移すように申し入れるも、各国はこれを拒否、グラ・バルカス帝国と対峙する道を選びました。なお、日本国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、カナダは日本領オラパ諸島並びに英領チャールズ諸島にグラ・バルカス帝国が侵攻したことに伴い離脱しました。また、アニュンリール皇国もすでに離脱しています」
国防長官アグラの説明に、外務統括官リアージュは疑問に思い、質問する。
「各国の戦力で対抗できるのですか?」
「相手は第零式魔導艦隊を葬った軍隊です。戦力として換算できるのは・・・そうですね、ムーの艦隊くらいだろうと思います。他は、的になるでしょう。しかし、数が多いので、「弾除け」として見るならば有力かと思われます。現在の状況の概要は以上です」
説明が終わる。皇帝ミリシアルが手をあげ、場が静まる。神聖ミリシアル帝国皇帝は、ゆっくりと話始める。
「アグラ、説明ご苦労」
ゆっくりとした口調、そのたった一言に、アグラは威厳を感じ取る。
「ははっ!!」
アグラはただ返事をし、頭を下げる。
「グラ・バルカス帝国か・・・・それなりに強国のようだが、我が国を他国と同一視してくるとは・・・・愚かなり。グラ・バルカス帝国は、どの位置にある?」
「ははっ!!ここでございます。」
彼はムーの西にある海域を指す。
「ここに大きな島がございまして、そこが帝国の本土であります」
「このような辺境の島国・・・・小国か・・・・」
「日本国よりもらい受けた地図により、同帝国の位置は判明いたしました」
「日本国・・・・英連邦王国と共にあのパーパルディアを実質的に滅した国か、何故東の辺境国が、西の辺境国の位置まで把握しているのだ? まさか、裏でつながってはいまいな?」
皇帝は、日本国がグラ・バルカス帝国の位置まで正確に把握していた事象に疑問を呈す。
「私が説明いたします」
情報局長アルネウスが手を挙げ、発言する。
「日本国と並びに英連邦王国各国と国交が結ばれて、まだ僅かな期間しか経過していませんが、かの国の技術力が現在徐々に明らかになりつつあります。特に日本国は、空力の及ばぬ場所、宇宙に観測機器を上げ、この世界、惑星を監視しています。よって、彼らの知る世界は、グラ・バルカス帝国の位置に留まらず、星の裏側もすべて把握していると推測されます。なお、現在世界地図の入手を外務省と連携して進めていますが、なかなか良い回答が得られません」
一同に衝撃が走る。決して人の力の届かぬ領域に、観測機器を浮かべる事が出来たのは、歴史上たったの1国だけであり、現在の神聖ミリシアル帝国の総力を結集しても不可能な事であった。
「まさか……まさか、日本国は古の魔法帝国の伝承にある、僕の星を実用化しているというのか?」
「はい、彼らは人工衛星と呼んでいますが、中身は僕の星と同一です。また、近々イギリスが日本からの技術移転を受けて偵察衛星を打ち上げ予定とも・・・・」
「日本国か、興味の沸く国だな・・・・いかん、話が脱線したな。グラ・バルカス帝国だが、今回の奴らの侵攻をしのいだ後、中央世界と第2文明圏で連合艦隊を作り、大規模部隊をもってレイフォル自治区に行き、第2文明圏から奴らを叩き出すぞ。日本国や英連邦王国の力は見てみたいが・・・・リアージュ、日本国や英連邦王国は早期に艦隊を送る事に同意するか?」
皇帝は、外務省統括官リアージュに問う。
「日本国並びに英連邦王国からは、まずは自国領内の盗人を成敗してからであるとのことでした。ですが、今後のグラ・バルカス帝国の出方次第では、軍の派遣を含めた軍事支援を行うとの回答が得られました」
「そうか、解った。第3文明圏は遠すぎるし、そもそも彼等も侵略されているしな、早期反撃の作戦からは外すとしよう。作戦案詳細は、アグラ、貴様に任せる」
「ははっ!!」
「我らに恥をかかせた代償、蛮族どもの血では釣り合わぬが、レイフォルから奴らを叩きだした後は、本土にも制裁を加えるぞ」
中央世界の雄、神聖ミリシアル帝国の皇帝ミリシアルは、怒りに燃える。後に彼等のもとには、カルトアルパスが灰塵に帰したという報せが入り、落胆と怒りに震えることになる。なお、直後にイギリスの首都ロンドンに置かれている駐英神聖ミリシアル帝国大使館より、自国の文化財が何故かロンドンにあるという報せも入る。
「え? 帝国文化館にあったはずの我が国の文化財が、イギリスの大英博物館で展示されている? 大ミリシアル展と称して一般公開されてる? どういうことだ?」
「全く以て分かりません・・・・陛下・・・・」
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
「・・・・戦果は以上となります!」
帝王グラルークスは、帝国海軍東方艦隊司令長官カイザルと、帝国監査軍司令長官ミレケネスから先の戦闘の報告を受ける。
「皇帝陛下の軍は多少の損害を出しましたが、カルトアルパスを壊滅させ、連合軍を全滅。更にはイギリス領の島々を占領し、併合。現在は日本領の島々に攻勢をかけるべく、支度を進めております」
「・・・・ふむ・・・・ん?」
書類の内容を訝しむグラルークス。
「ところで、カルトアルパスにおける戦果に、日英艦隊が含まれていないみたいだが?」
「私も確認したのですが、どうやら我が国の攻撃の前に離脱していた模様です」
「おそらくはグラ・ルークス諸島に向かったものかと」
「・・・・要するに、撃ち漏らしたのだな?」
鋭い眼光でカイザルとミレケネスを見つめる皇帝グラ・ルークス。何度も謁見しているにも関わらず、二人は緊張する。
「・・・・・そうなります」
「現在、我軍は総力をあげて日英艦隊を捜索しておりますが、哨戒線には引っ掛っておりません・・・・」
二人は気まずそうに答える。
「決して余はそなたらを責めている訳ではない。むしろ、そなたらの忠義は何人にも代えがたいものだ。それと、我軍の損害を見たが、この戦艦アポロノーム撃沈とはどういうことだ? 我軍の最新型戦艦、それも改良されている2番艦を喪うとはどういうことだ? まさか、日英の仕業か?」
「その可能性も含めて現在調査中です・・・・」
「ですが、敵の勢力圏に沈んでしまいましたので、引き上げは困難であり、調査は難航しております・・・・」
「うむ・・・そして最後にだが・・・」
次は何を聞かれるのか。二人は身構える。
「本来の計画では、既にオラパ諸島は制圧しているはずではなかったか? 何故まだ占領出来ていない?」
「それが、現地部隊からの情報が意味不明かつ、突拍子のないものばかりでして・・・・現在確実に言えるのは、敵の反撃により、攻勢は失敗。現在再攻勢をかけるべく、準備を進めさせております」
「今回の再攻勢には、総勢10000の陸軍並びに海軍陸戦隊を投入し、グレードアトラスター級戦艦3番艦のアキレスを旗艦とする、空母3、戦艦3、重巡洋艦8、軽巡洋艦10、駆逐艦30の大部隊を輸送船団と共に援軍として向かわせております」
「再攻勢に向けた準備は1ヶ月余りで完了し、陛下の望まれた戦果をご報告出来るかと存じます」
「・・・・そうか。日英艦隊を壊滅させなくては、我が国の世界制覇は成し遂げられん。必ずや壊滅させよ」
「「ははっ!!」」
「その為には日英艦隊壊滅を磐石なものとする必要がある。オラパ諸島への攻勢を中止し、グラ・ルークス諸島の防衛能力向上に回せ。必ずや敵は領土奪還の為に向かってくる。そこで日英艦隊を壊滅させ、返す刀で侵略すればよいのだ」
「成る程・・・・では、そのように!」
「追加の艦隊と既に派遣済みの艦隊の練度も上げねばならぬだろう。移動を含めて2ヶ月はグラ・ルークス諸島に籠れ。その間に練度向上と要塞化を進めるのだ」
「「では、そのように!!」」
帝王グラ・ルークスの命により、オラパ諸島への攻勢は中止となり、既に占領しているチャールズ諸島の要塞化を推進することになった。レイフォルに潜入しているスパイや衛星画像の解析等から、オラパ諸島侵攻の可能性が下がったとして、カルトアルパスより引き返している空母打撃群をロコール島へ向かわせ、別の空母打撃群と合流させることに決定。進路を変更し、無事両艦隊はロコール島に到着。外交官らを降ろし、今後の奪還作戦について話し合うことになる。
チャールズ諸島奪還艦隊旗艦
イギリス海軍空母クイーン・エリザベス
作戦会議室
「レイフォルに潜入させているMI6の職員からの報告によりますと、グラ・バルカス帝国はリペリュー島の攻略を一時中断。先に占領したチャールズ諸島各地を要塞化し、我らを誘き寄せ、殲滅することが目的と思われます」
チャールズ諸島奪還作戦に参加する日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、クワ・トイネ公国、クイラ王国、西ロウリア王国、ローデシア連邦、アルタラス王国、パーパルディア皇国の士官らは、旗艦である空母「クイーン・エリザベス」にて作戦会議を行っていた。
「既に我が国の潜水艦隊がチャールズ諸島周辺にて、海上交通路の遮断を実施している。無理に敵陣に突入する必要はないのでは?」
日本側の代表の一人である、護衛艦いずも艦長のヒロシがそう発言する。チャールズ諸島侵攻並びにオラパ諸島防衛に伴い、日本は海上自衛隊呉基地より、潜水艦隊をロコール島に向けて派遣していた。当初は占領されると見込まれていたリペリュー島周辺に展開し、増援部隊を送り込もうとする輸送船団や敵艦隊を攻撃する予定であったが、リペリュー島守備隊の的確な反撃と敵が慌てて逃げ出してしまったことから、現在はチャールズ諸島周辺海域の哨戒任務に従事。既に輸送艦3、輸送船4、護衛空母1、護衛駆逐艦2、海防艦6、軽巡洋艦1、潜水艦2を撃沈しており、チャールズ諸島に居座るグラ・バルカス帝国軍に対して、補給を圧迫していたのである。
「パーパルディア皇国に駐在する貴国の大使から、敵は10000の陸軍を島に送り込んだとも聞いた。無理に要塞化されつつある島に攻め込まず、補給を圧迫し、真綿で首を絞めるようにしていけば、犠牲も少なくて済みそうだが、どうだ?」
「ハネダ提督の考え方には私も賛成だ。引き続き潜水艦隊による包囲を続け、補給を圧迫し続けるべきだろう。数日以内にも我が国の潜水艦2隻が到着し、作戦に参加する見込みだ」
カナダの代表がヒロシの意見に同意する。カナダは日本から導入した「たいげい」型潜水艦を初の実戦投入する好機と見ており、本国で訓練中であった潜水艦「ヴィクトリア」、「ウィンザー」を派遣。日本の支援も受けながら作戦に参加する見込みである。
「だが、仮に潜水艦による包囲を続けても、最終的には陸軍を送り込まねば島は奪還出来ません。輸送船団を安全に島へ送り込む為にも、ここは敵艦隊との艦隊決戦は必要不可欠かと」
オーストラリアの代表は、グラ・バルカス帝国海軍との艦隊決戦を主張した。現状チャールズ諸島周辺の制海権はグラ・バルカス帝国側にあり、敵艦隊を排除しなければ輸送船団を安全に向かわせられないからである。
「しかし、艦隊決戦に勝利するのは確実であるとしても、敵がどれだけ要塞化しているかは未知数です。日本がリペリュー島に地下陣地や洞窟陣地を構築したように、敵も同じように要塞化してくる可能性があります。地下陣地を破壊可能なバンカーバスターがあれば良いのですが・・・」
ニュージーランドの代表は、敵が地下や洞窟に要塞を構築している可能性を主張した。同時にバンカーバスターを求めたが、そもそも同兵器を保有する西側諸国はアメリカ、韓国、イスラエルのみであり、日英にはない兵器であった。
「今後、グラ・バルカス帝国への反転攻勢が世界的に行われることを考え、今のうちに開発を本国に打診するべきか・・・話が脱線したな」
イギリスの代表は開発計画を本国に打診しなくては・・・と考えてしまう。
「ひとまずは潜水艦隊による包囲を続けつつ、戦闘機による空爆を実施して敵の戦力を少しずつ削いでいくのはどうだ? 偵察として哨戒機も送り込み、手薄な島を見つけ次第取り返していくとかさ」
ヒロシの隣に座るアキラが各国の代表の発言を踏まえて折衷案を纏める。
「成る程・・・確かに一理あるな・・・」
「敵が要塞化するなら、工事中を狙えば工事も遅れる・・・そして性能差を考えれば、まず反撃は無理」
「それに、敵が痺れをきらして彼方から挨拶に来るかもしれないンだぜ? 時々敵の軍港を爆撃したりとかすれば、逃げ場がない、修理もままならない、ならば敵基地を殲滅するしかない! ってな。あるいは補給はズタズタ、逃げるなら今しかない!! って、陸軍を捨てて逃げ出すかもしれねえ」
「流石はハネダ提督の副官! その策で行きたいと思う。異論はないか?」
会議を取り仕切るイギリスの代表が採決をとる。反対する意見はなく、全会一致でアキラの案が採用された。
海上自衛隊護衛艦「いずも」艦長室
「しかしアキラ、よくそんな策を思い付くよなあ・・・俺なんか犠牲を払いたくねえから、潜水艦で自滅させたら良いぐらいしか思い付かねえよ」
「ヒロシの策は確実なんだが、時間が掛かりすぎるンだよなあ。それに話によれば、神聖ミリシアル帝国が旗振り役になって、グラ・バルカス帝国に占領されているレイフォルに侵攻するんだとよ。こんな辺境の島よりもレイフォルの方が重要だ。敵も自然とレイフォル防衛に資源を割くしかなくなる。そうなれば、敵の反撃も弱くなり、取り返しやすくなるンじゃねえか? ってな」
「はあ・・・相変わらずお前の頭には敵わねえや・・・」
「お前のお人好しな性格にもこちとら敵わねえけどな!」
グラ・バルカス帝国占領下
イギリス領プリンセスダイアナ島
「撃て撃て!! 対空砲を休む間も無く打ち上げろ!!」
翌日から日英連合軍はグラ・バルカス帝国に占領されているチャールズ諸島への偵察と空爆を開始。特に艦隊の拠点が置かれているプリンセスダイアナ島への空爆は激しく、毎日のようにF2やユーロファイタータイフーンによる空襲が行われる。
「チクショウ! かすりもしない・・・・うわあ!!」
「バカな! 我軍のアンタレスが撃ち落とされたぞ!!
必死に対空砲を打ち上げるも、かすりもせずに日英連合軍は作戦を遂行。更には制空権確保の為に飛来したF15J戦闘機により、迎撃に上がった戦闘機を撃ち落とす。制空権を掌握すると、P1やP-3Cによる大規模空爆が開始される。
「しまった! あのエリアは!!」
大爆発を起こすと同時に、黒煙が吹き上がる。この作戦で燃料タンクが爆発・炎上。更には潜水艦による補給線の圧迫が強化され、グラ・バルカス帝国海軍は大型艦艇を動かすことさえ、ままならぬ事態に陥りつつあった。
グラ・バルカス帝国占領下
イギリス領キングチャールズ島
戦艦「ティタウィン」
「最早撤退しかないのではないか?」
「ですが、帝王グラ・ルークスからは、島を死守するようにと・・・」
「だが、敵の反抗作戦が開始され、我軍の補給線は崩壊している!! 退くなら今しかない!」
「司令は死にたくないだけでは?」
「なんだと? この航空主兵風情が!! 日英相手に必要なのは戦艦だ!! その戦艦がまともに使えずに沈むのを待てと言うのか!!」
「戦艦部隊が退くのでしたら、我々空母部隊も撤退することをお認めいただけますか?」
「勝手にしろ!! それに、これは撤退ではない!! レイフォルより連絡があったのだがな、神聖ミリシアル帝国が旗振り役になってレイフォルに攻め込む為、その援軍として転進するのだ!! 今から1時間後には全艦艇をレイフォルに向け転進せよ!! 良いな!!」
「喜んで! 我々も艦載機を喪い、戦闘継続は困難ですので!!」
「あの・・・陸軍に伝えた方が・・・」
「「そんな時間はないわ!!」」
「・・・・では、陸戦隊だけでも・・・」
「・・・・陸戦隊だけだぞ? 陸軍や空軍は無視するのだ。いいな?」
日英の反抗作戦により、補給線が崩壊しつつあると知った海軍の行動は速かった。陸軍に対して何の相談もなしに、海軍艦艇、航空機、輸送船団、陸戦隊を一夜にして引き上げてしまったのである。まさか本当に戦わずして逃げるとは想定していなかった日英は、この艦隊を丸ごと取り逃がすことにはなったものの、陸上戦力を送り込む上で邪魔な障壁が取り払われたことを意味した。
海上自衛隊護衛艦「いずも」
CIC
「ヒロシ、旗艦クイーン・エリザベスからだ。オペレーションタンポンを発動セヨ! だってよ」
「やれやれ・・・司令官様は悪趣味な作戦名をつけたもんだぜ・・・まあ、いいや。F35Bを発艦させ、上陸前の露払いをさせる。航空隊、発進!!」
海上自衛隊の護衛艦「いずも」、イギリス海軍の空母クイーン・エリザベス、プリンス・オブ・ウェールズから発艦したF35Bが上陸前最後の空爆を実施する。突然目の前に大艦隊が現れたグラ・バルカス帝国陸軍は反撃に移るも、やはりジェット戦闘機、それもステルス戦闘機を撃ち落とすことは出来ず、次々と対空砲台を沈黙させられていく。
「海軍は! 海軍はどうしたんだ?!」
「まさか日英艦隊に沈められたんじゃ?」
「バカな!! 我軍の戦艦が簡単に沈むか!!」
そうこうしている間に輸送艦「おおすみ」、「しもきた」から連合軍の陸上戦力が揚陸されていく。同時に輸送ヘリによる揚陸も行われ、グラ・バルカス帝国陸軍をチャールズ諸島から叩き出すべく行動を開始する。
「日本の戦車はバケモノか!?」
「こっちの対戦車砲じゃ歯が立たねえ!!」
「く、来るなああ!!」
上陸した74式戦車による攻撃がグラ・バルカス帝国陸軍を襲う。異世界転移前は完全に旧式化し、事実上のお払い箱としてオラパ諸島に送られていた同戦車は、グラ・バルカス帝国陸軍兵士の目には悪魔のように写っていた。やがて士気の下がった兵士が敵前逃亡を開始する。
「逃がすなー!!」
「皇国魂を見せてやれー!!」
「アルタラスの連中に遅れをとるなー!!」
「突撃! 突撃ー!!」
逃げ惑うグラ・バルカス帝国陸軍兵士をアルタラス王国陸軍、パーパルディア皇国陸軍が徹底的に追撃する。つい数年前までは互いに刃を交えた両国が、今や日英連合軍の一員として共に戦っている。互いに複雑な気持ちになりながらも、部隊は進んでいく。
「敵が要塞に籠りました!!」
「アルタラス王国陸軍に支援攻撃を要請! 我々は突撃する!! 着剣せよ!!」
「突撃ー!!」
「お、おい! パーパルディアの連中が銃剣突撃したぞ?!」
「あれじゃ紅茶が切れたイギリス軍だよ・・・支援攻撃を開始しろ! 迫撃砲、うてー!!」
特にパーパルディア皇国陸軍の銃剣突撃の迫力にグラ・バルカス帝国陸軍は恐怖した。銃弾を受けても、砲撃支援の下で構わず突っ込んでくる屈強な兵士達に新兵達は浮き足立つ。
「要塞内部に突入!! 我々パーパルディア皇国が一番乗りぞ!!」
この海外派遣で陸軍兵士2000名を派遣しているパーパルディア皇国陸軍は、イギリス軍から指導された銃剣突撃の成果をいかんなく発揮した。やがて後続のアルタラス王国陸軍、西ロウリア王国陸軍、ローデシア連邦陸軍も突入し、要塞は陥落。キングチャールズ島守備隊司令官を生け捕りにし、キングチャールズ島に再びユニオンジャックが翻ることになった。総勢15000の部隊がチャールズ諸島には展開していたが、これは海軍や空軍を含めた数値であり、実際の陸上戦力は9000であった。その内海軍陸戦隊が3000であり、それが一夜にしてごっそりと抜けてしまった。残りの6000を各地の島に分散配置しており、相対的に島一つ一つの兵力は少なくなり、各個撃破が可能な状況だったのである。その後、日英連合軍は占領されている他の島々への奪還作戦を実行。海軍の支援も、本国やレイフォルからの補給も得られず、士気の下がったグラ・バルカス帝国陸軍や空軍の多くは戦わずして降伏。日英は多数のグラ・バルカス帝国軍捕虜を多数獲得した。この勝利は直ちに速報として全世界に伝えられた。それは、グラ・バルカス帝国も例外ではなかった。
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
異界の大帝国、グラ・バルカス帝国の帝都ラグナにある外務省の一室で、2人の者が話をしていた。
「以上が神聖ミリシアル帝国での先進11ヵ国会議とそれに伴う戦況の報告になります・・・・」
外務省東部方面異界担当課長シエリアは、上司である異界担当部長ゲスタに報告を行う。
「そうか、ご苦労だったな・・・・しかし、イギリスから捕虜を取ったが、島は維持できなかったか・・・・まあ、仕方ないか」
吊り上がった目、シワシワの顔、いかにも性格の悪そうな文官、ゲスタは机の前に立つシエリアの報告を興味無さそうに聞く。
「ところで、捕虜は全部で102名にも上るようだが、何か各々の国の機密情報を話したか?」
「協力的な者もいますが、一切何も話さない者もいます。特に、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍人は20名ほどいますが、珍しく1人たりとも自国の情報を全く語りません。優秀な軍人を持っているようです」
「そうか・・・シエリア、情報が引き出せない捕虜は利用価値が無い。そうだな・・・・恐怖を引き立たせるためにも公開処刑を行え。全世界に放送しろ。我が国に歯向かう愚か者どもの末路をな」
シエリアの顔が引きつる。
「ゲスタ部長! 捕虜に拷問は加えない。これが我がグラ・バルカス帝国の方針だったはず。いくら部長の命令といえど、この方針を曲げる事は出来ません。まして、これは軍部の管轄です!」
「この世界に早期に我が国の盤石な基盤を築く。そのためには多少蛮族どもの国に合わせる事は、問題ない。これは皇帝陛下、帝王グラルークス様のお言葉だ。それに、私が言えば、軍部も動くよ。心配はいらぬさ」
「しかし、それでは蛮族と同じ土俵に立つ事になります。我が栄えあるグラ・バルカス帝国がそのような事をすべきではありません!!!」
「解っていないな、シエリア。お前は目の前の小さな正義にこだわり、大局を見失っていないか? 帝王グラルークス様は帝国の未来を盤石にしたいのだ。分かるか?」
「それは、これまでの方法でも達成する事ができます。それと捕虜を処刑する事に、何の関係があるのでしょうか?」
シエリアは、興奮してまくしたてる。
「落ち着け。お前ほどの者が取り乱すな。これだから女は使えない・・・と言われるぞ」
シエリアは黙る。ゲスタは続ける。
「軍部では脅威は神聖ミリシアル帝国のみであり、他の国はさしたる脅威ではないとの論調が広がっているが、皇帝陛下は違った見方をしている」
「と、いいますと?」
「皇帝陛下は逆に神聖ミリシアル帝国はさしたる脅威と感じておられない。これは、彼らが我が方からは別種の文明、魔法文明に起因する国家であり、あくまで過去の超文明の解析のみにより、成り上がっているからだ。自国のみでの基礎技術を持ち合わせていない。しかし、第2文明圏の列強国ムーは、我々と同じ機械文明、しかも、この国はただの1国のみで、車、鉄道、そして飛行機を発明している。この意味は解るか?」
「全発明をただの1国で成したのであれば、驚異的な技術者集団、技術国家と思われます。」
「そうだ。そして、かの国と我が国の技術レベルはおそらく50年くらいの差がある。下手に戦闘を長引かせると、敵はどんどんと強くなっていく。早期に配下に置く必要のある国だ」
ゲスタは続ける。
「そして皇帝陛下は、日本国並びに英連邦王国についても懸念されておられる。今回のカルトアルパスにおける海戦では、日本国と英連邦王国の海軍と戦うことはなかった。しかし、グラ・ルークス諸島を占領した我が軍は、オラパ諸島攻略に失敗した。空母による奇襲攻撃さえはね除け、それどころか島から我が国の軍を追い出してしまった。どのような兵器を使用したのかについては不明な点は多いが、当たれば輸送艦を一撃で轟沈させるロケットを保有していることだけは分かっている。我が国にもロケットはあるが、流石に大型艦艇を一撃で沈められる威力はない。部分的には日英は我が国を上回っているのだ。そんな国々が大艦巨砲主義に目覚めてみろ。強力なロケットと主砲を搭載した戦艦が誕生する可能性が高い。つまり、一定の研究開発期間を与えれば、我が軍に匹敵、いや凌駕する軍を創出する可能性がある。皇帝陛下はこの3国を、特に日英を脅威とみなしておられ、早期に攻略する事を望んでおられるのだ。軍部では、まずはムーから落とす作戦が現在立案中である。文明圏国家、列強国家は強いという現像がこの世界の共通認識だが、神聖ミリシアル帝国さえいれば大丈夫、列強ムーならば大丈夫、といった幻想を早期に破壊し、敵対国家は徹底的に破壊されるのだという事を世界に知らしめ、決心のゆらぐ国家を早期に列強国から離反させるためにも、帝国は強い、そして脅威的であるという事を世界に知らしめる必要がある。今後、捕虜が発生した場合、一々取り調べを行う事は非効率であり、情報が引き出せないと判断したらすぐに殺される。しかし、協力的な者達は生きながらえる事が約束される。そんな共通認識を持たせた方が良いと判断したため、今回は見せしめも兼ねて処刑する事とする。これは、早期決着の手段のためであれば、蛮行すらも認めるという皇帝陛下の強い意志の現れだ。これは、すべて帝国臣民の未来のためなのだ。安心しろ、皇帝陛下の勅命もここにある」
皇帝からの本物の勅命を見せられ、シエリアは黙り込む。
「シエリア、お前は若い。自らの正義に反すると思っているのだろう。しかし、お前は帝国の将来を左右する外務省のしかも課長クラス。仕事に私情を挟むな。決定事項だ。協力しない捕虜は公開処刑しろ。辛いだろうが、これは命令だ。それにこれは、イギリスによる、南部の商業都市ケンタウリへの攻撃に対する報復でもある。皇帝陛下はイギリスに強い報復をお望みだ。特にイギリス人は楽に死なせるな。最大限に苦しませて殺せ」
「はい・・・解りました」
シエリアは力なく答えるのだった。
イギリス領ニュー・ホンコン
ニュー・ホンコン総督府
「始まるな・・・」
「始まるわね・・・」
「愚かな蛮族の答え、しかと見せてもらうとしようか」
「これはこれはヴィクター駐フェン王国大使。読者からみれば、お前誰だっけ? そう言えばいたなあ・・・って感じですが、まだお帰りになられていなかったので?」
「グローリアよりも登場機会がないってはっきり分かんだね。それにまだ飛行機の時間があったのと、セイロンから届いたという紅茶を頂きたくてね?」
「そう・・・・貴方? 紅茶を三人前淹れてきてくれる?」
アオイは部下に紅茶を淹れて来るように指示を出す。数分後には、スコーンやケーキと共に紅茶が届けられる。
「おや? これは?」
「此方はモンブランという、日本のケーキだそうです。大学時代の旧友から紹介されたのですが、上品な甘さが紅茶に合いますよ。ヴィクター殿もどうでしょう?」
「大学時代の旧友・・・ジャパン・・・ははあ、ミス・ネブに、ミスター・オオカワのことですかな?」
「ええ。あの二人は良き友人です。今は結婚して、身を固められたそうです。今はまだですが、その内、彼らの子を授かるでしょう」
駐パーパルディア皇国英国大使のハルトとニュー・ホンコン総督のアオイ、駐フェン王国英国大使のヴィクターを始め、幹部がニュー・ホンコン総督府の総督執務室に集まる。彼らの見つめる視線の先にあるテレビでは、キャスターが緊迫した声でまくしたてる。見ているハルト、アオイ、ヴィクターは完全にリラックスしているが。
『まもなく、世界に従属を求めてきたグラ・バルカス帝国は重要発表を行う模様です。』
日英だけでなく、世界が注目する放送。生放送で重要な発表があるとの事であり、日英の国民もテレビを見つめる。魔信器、そして電波で同時に流される映像に、国民は釘づけとなる。
「おお、これは旨い! 流石は日本人!! 味にうるさいとは聞いていましたが、これ程とは!! ちなみに総督はハルト殿の旧友に会ったことはあるので?」
「私はその時には陸軍に入隊していたので、実は会ったことがないんですよね」
「そうなのですか? ハルト殿の妹ですから、てっきり会ったことがあるものかと・・・これは失礼!」
「さて、ヴィクター殿。この前レイフォルで我々が行った交渉について、蛮族はどう回答すると思われますか?」
「さあ? でも、何となくハルト殿には、答えが見えているのでは?」
「まあね。ま、楽しみにしようか。蛮族が引き返すのか、突き進むのかを、ね?」
ハルトは紅茶を飲みながら、画面の向こうにいるシエリアを見つめるのであった。
(続く)