日英同盟召喚   作:東海鯰

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大英帝国の意思

第2文明圏グラ・バルカス帝国統治下

レイフォル沖30キロ海上

海上自衛隊護衛艦「いずも」艦長室

 

「はあ・・・・何で俺またこき使われてんの? 休ませて欲しいよ・・・」

 

話は少し遡る。グラ・バルカス帝国の先進11ヵ国会議奇襲により、壊滅的な被害を受けた各国。その中でも捕虜を取られた国家は多く、各国がグラ・バルカス帝国に対する本国の意志を伝え、また、可能であれば捕虜返還交渉を行うため、日本国海上自衛隊の護衛艦「いずも」にて、グラ・バルカス帝国のレイフォル地区にある地方都市レイフォリアの外交窓口に向かっていた。

 

「まあ、仕方ないんじゃない?」

「オラパ諸島防衛、チャールズ諸島奪還作戦は成功したんだ。堂々と敵陣に切り込めばよい! しっかりしろよ!! ヒロシ!!」

「はあ・・・・外交官様は気楽で良いよなあ・・・」

「はあ? 久々にしばくわよ?」

「おー、怖い怖いwww 怒らせると怖いンだよなあ~。この女は」

「喧嘩しても良いですけど、大怪我しないでくださいね~。ヒロシ先輩!」

「え? 俺が怪我するの前提なの?!」

「当たり前じゃん」

「当たり前だろ」

「当たり前なンだよなあ」

「当たり前ですよ」

「お姉様が負ける訳ないじゃない」

 

艦長室では、ヒロシ、アキコ、シン、アキラ、ケント、アイによる昔話や愚痴がこぼれまくる。当初は、非武装の民間船で向かう予定であった。しかし、各国の民間船会社はグラ・バルカス帝国軍による拿捕を恐れ、どこも船を出してくれなかった。そこで日英両国は、今後行われるレイフォル奪還作戦に日英が参加しないことを条件に(補給したいし、日英の勢力圏に不穏な国がある)、チャールズ諸島に展開している空母打撃群から精鋭艦隊を編成。海上自衛隊の護衛艦「いずも」を旗艦とし、以下の艦隊を編成した。

 

海上自衛隊

護衛艦「いずも」(旗艦)、イージス艦「はぐろ」、護衛艦「てるづき」、護衛艦「しらぬい」、護衛艦「によど」

 

イギリス海軍

駆逐艦「デアリング」、フリゲート艦「ヨーク」、「ブルドッグ」

 

(フリゲート艦はどちらも、「もがみ型護衛艦」のイギリス海軍仕様。「ブルドッグ」は当初31型フリゲートとして、デンマーク海軍のイーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲートをベースにすることを計画していたが、異世界転移に伴い、ベースの艦を変更した。ヨークは試作として建造され、後の「ブルドッグ」らのベースになった)

 

原子力潜水艦「ヴィクトリアス」

 

(既に分離し、別行動中)

 

カナダ海軍

フリゲート艦「バンクーバー」

 

オーストラリア海軍

イージス艦「ブリスベン」

 

ニュージーランド海軍

フリゲート艦「タラナキ」

 

※補給艦は他国が賄う

 

 

プライドの高い先進11ヵ国参加国の間では、

 

「グラバルカス撃つべし!!」

 

といった意見が大半を占めていたため、日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを除く自国民に対しては非公式の訪問。また、グラ・バルカスの言った

 

「我が国に降れ」

 

というのは、具体的にどういった内容を示すのかが不鮮明であり、その確認もかねて外交官たちは向かう。

 

「しかし、アキコも行くのか・・・領事館は瓦礫の山になってて暇になってるから、とかか?」

「まあ、朝田大使の補佐だけどね」

 

日本国の外交官としては、パーパルディア皇国戦で舌戦を行った朝田大使(現駐パーパルディア皇国日本大使)が適任とされ、駐神聖ミリシアル帝国領事のアキコは補佐役として急遽グラ・バルカス帝国へ捕虜返還交渉をするため派遣されていた。今回の対帝国に対する直接交渉の参加者は、

 

○神聖ミリシアル帝国 

西部担当外交部長

シワルフ

 

○ムー国 

外交官

ヌーカウル

 

○日本国 

外交官

朝田泰司

根布昭子(補佐役)

 

秘書官

根布真(アキコの専属秘書官)

 

駐在武官

栄彰(護衛艦「いずも」との連絡役)

 

○グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

外交官 

ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン

ビート・フィッツジェラルド

ヴィクター・ハロン(他の英連邦王国全体の利益代表)

 

ニュー・ホンコン総督

アオイ・バイオレット・アリス・ハミルトン(軍部との連絡役)

 

○カナダ

外交官

ジャスティン・フィリップ・トルボー

 

○オーストラリア連邦

外交官

オリバー・スミス・ラッド

 

○ニュージーランド

外交官

ウィレム・ピータース

 

○アガルタ法国(中央世界) 

外務卿 

リピン

 

の8か国である。彼らはグラ・バルカス帝国のレイフォル地区に魔電で事前通告し、海路にて入国を行う。

 

「なんか、一名程ヤバイヤツいない?」

「いや、三人ぐらいいるように見えるけど?」

「ハミルトン兄妹にビートか・・・荒れるな、間違いなく」

「核の雨かあ・・・可哀想なンだよなあ・・・」

「自業自得定期」

「むしろ交渉してくれるとか、グラ・バルカス帝国は感謝すべきなんじゃない?」

 

艦内放送が入り、間も無く入港するとの報せが入る。上陸する面々をヒロシらは見送る。

 

「・・・・終わってンなあ・・・色々と」

 

超弩級戦艦グレードアトラスターの全力砲撃を受け、灰燼に帰したレイフォリアは、まだ傷跡が残るものの、僅かに復興が進んでいるようでもあった。

 

「うわあ・・・酷いものね・・・」

 

入国後、生気の抜けた元列強国、レイフォルの民たちの姿が見えてくる。彼らの目は死んでおり、やる気、覇気が全く感じらず、彼らの厳しい統治の実態を垣間見る。

 

「・・・・心配しないでアイ。ちゃんと帰れるから」

「・・・・・・・・」

 

本来であれば、護衛艦「いずも」に乗艦すること等叶わない筈のアイだが、アキコの従妹であること、またシンと共にアキコの護衛役として付き従っている。

 

「しかし、なんて雑な統治か・・・・そう思いません? フィッツジェラルド殿」

「同感ですねえ・・・・ハミルトン殿。我が大英帝国ならもっと素晴らしい統治が出来るでしょうに・・・」

「まあ、彼らの本国が焼き払われるか否かが決まりますけどね」

「・・・・・・・・・(ここが将来の英連邦王国、レイフォル王国か)」

 

(・・・・相変わらずあんたらは物騒なのよ・・・)

(流石はシンの友人。頭おかしいヤツしかいないンだな)

(アキラてめえ!)

(・・・・怖いよ、お姉様・・・)

 

各国の大使は、レイフォル地区にあるグラ・バルカス帝国の出長所の前までやってきた。

 

「ナニコレ? ハル兄、これが敵の大使館なの?」

「これから(グラ・バルカス帝国が)悲惨なことになると思うけど、やられたらやり返す! それがジョンブル魂だ!!」

「同感ですねえ! 何なら今からアレやりますか?」

「アレ(核攻撃)」

 

グラ・バルカス帝国からは、例え敵対していても、外交窓口だけは守ると通達されていたため、堂々と出張所に入る。

 

(なんでまた俺が、扱いの難しい案件につかなければならないのだ・・・・)

 

「朝田大使・・・・」

「あ、根布補佐役・・・・だ、大丈夫ですから・・・はあ・・・」

 

朝田はうんざりした気持ちで、アキコら補佐役と共に帝国の外交官がいると言われる建物に入っていった。一方のハルト、ビート大使は我が物顔で入っていく。

 

「ああ~、この壺土産に頂いておくか~」

「じゃあ僕はこの絵画にしますかねえ?」

「私はコレ~(甲冑)」

 

会議室で待たされる事10分。やがて会議室のドアが開き、人相の悪い男が一人入って来た後、彼らに告げる。

 

「ほう、この世界の強国のみなさん。雁首そろえてこられるとはどういったご用件かな?」

 

グラ・バルカス帝国の外交官ダラス。外交官とは思えない非礼極まりない発言に、イギリスを除く他国の外交官の顔が強張る。朝田が前に出る。

 

「日本国政府は、あなた方グラ・バルカス帝国の行った武力攻撃に対し、遺憾の意を表明いたします。また、我が国の領土であるオラパ諸島侵攻に関して、賠償、島民への謝罪、そして・・・」

「ほう! あなたが我々と同様に転移国家である日本国か!!」

 

外交官ダラスは朝田の言を遮り、話を始める。

 

「先のカルトアルパス襲撃の際には、尻尾を巻いて逃げ出したと聞く! オラパ諸島という、我が国から遠く離れた島嶼部においての局所的戦闘では! 勝利はしたようだが、弱き国の外交官はつらいだろう。ところで、遺憾の意とはなんだ? 具体的にどう対応するというのだ?」

 

ダラスは挑発する。続けてイギリスの大使、ビートが前に出る。明らかにダラスを見下した表情である。

 

「あなた方の先進11ヵ国会議での発言は、世界に対する宣戦布告ととれる。あなたの態度は我が国にとって、狂った自殺願望があるようにしか見えませんが、本気で世界を・・・大英帝国と日本を敵に回して戦って、自分たちは勝てると思っているのでしょうか?」

 

ビートは丁重に問う。

 

「弱小国家がいくら連合を作っても、強くはならんよ。弱者は弱者のままだ」

「ぷっ!」

「何が可笑しい・・・・そこの小僧! 出てこい!!」

 

ダラスの発言を受け、ハルトは身を乗り出す。

 

「まさか貴殿は本当に大英帝国と日本が弱小国家であると認識されているのですか・・・呆れましたねえ・・・もし本当にそう・・・」

 

彼が続けて発言しようとしたその時、彼の前に神聖ミリシアル帝国の外交部長が立つ。

 

「神聖ミリシアル帝国の西部担当外交部長のシワルフです。我が国は、あなた方が港町カルトアルパスで行った奇襲、そして蛮行を、痛烈に非難し、直ちに謝罪と賠償、そしてレイフォル国からの撤退並びに今回の蛮行の責任者の引き渡し、そして捕虜の返還を行うよう通告に参りました。我が国、神聖ミリシアル帝国は、他国と違って交渉に来たのではない。お願いではない。これは命令だ。従わない場合は、敵になるのは我が国のみではない。先進11ヵ国のみでもない。これは中央世界の総意だ」

 

怒りをもって、シワルフは発言する。ダラスが返答しようとした時、部屋の扉が開き、扉の奥からつり目の美しい女が姿を現す。

 

「シエリア様・・・・」

「ダラス、ここからは、私が責任をもって交渉を行う」

「しかし、この場合の担当は・・・・」

「命令だ、相手はこの世界の連合と言っても差し支えない。お前の手には余る」

「ぐ・・・・解りました」

 

ダラスはシエリアに席を譲り、隣の席に座る。

 

「話は聞いていた。帝国の考えは、先進11ヵ国会議で説明したとおりだ。変更は無い」

 

凛とした顔、曇りなき眼でシエリアははっきりと発言する。

 

「グラ・バルカス帝国は何を望む」

 

シワルフは、シエリアを睨みつける。

 

「我が軍門に降る事。当然国家の主権は認められなくなるがな」

「具体的には?」

「植民地・・・といえば、解りやすいかな?」

「「「(グ帝を大英帝国の)植民地(にする)?!(大歓喜)」」」

「・・・・(グラ・バルカス帝国はオーストラリアよりでかいからなあ、統治が大変なんだよなあ・・・・どうしたものか・・・・)」

(アカンアカン! シン、アキラ、アイ!! 止めに入るよ!!)

((おうよ))

(はい! お姉さま!!)

 

植民地と聞いてイギリスの大使らがウキウキし始めるのを、アキコら日本の代表団が止めに入る。

 

「通告を、中央世界が飲むとでも思っているのか?」

「いいや、今は飲むとは思っていないよ。ただ、敗退を重ねた時、お前たちは我が国の案を飲む事になるだろう。どれだけお前たちの軍が悲惨な事になっても、外交窓口だけは開いておこう。自らの国民のためを思うならば、早めに決断を下すがよい」

「なめおって・・・・捕虜の返還には応じないのか?」

「戦争が終わるまで、捕虜の返還は無い。我が軍門に降れば、捕虜は返還してやろう」

「あー、そのことなんですけど?」

 

ハルト大使が待ってましたと言わんばかりに発言する。

 

「我が大英帝国と日本国は、貴国の将兵を両国で合わせて6000名程を捕虜にしてるんですよね。あと、ニュー・ホンコンで強制浮上させて拿捕した大型潜水艦も我が国はニュー・ホンコンにて抑留しているんですよ。どうでしょう? 我が国と日本が保有する6000人の捕虜と貴国が捕らえている捕虜を交換しませんか? 同時に大型潜水艦の返還も致しますよ? まあ、本音は技術調査が完了してて、正直大英帝国としてはあの粗大ごみはいらないんで、スクラップにするか、返品するか、って話なんですけども」

 

日本とイギリスが多数のグラ・バルカス帝国軍捕虜を獲得していたことを知ったシエリアとダラスは顔をしかめる。まさか捕虜交換を仕掛けてくるとは想定していなかったのである。

 

(守備隊は玉砕したものと思っていたが・・・・)

(どうするのですか、シエリア様・・・)

 

シエリアとダラスは互いに目配せをする。明らかに動揺した態度にハルトは更に追撃をかける。

 

「我が国はジュネーブ条約を批准しており、捕虜の人権は当然の如く認めています。また、此方は我が国と日本が捕らえている捕虜の名簿になります」

 

ハルトはカバンから分厚い書類の束を取り出し、それをシエリアとダラスに渡した。そこには、顔写真付きの捕虜のデータが記されており、彼らにとって、見覚えのある軍人の姿もちらほら見られた。

 

「貴国が捕らえている捕虜の人権は当然認められるのでしょうね? まさか貴国が蛮族と見下している我が国と違い、捕虜を虐待し、処刑なんてしませんよね?」

「それは・・・・」

 

シエリアの目が泳ぐ。ハルトは一瞬でシエリアが何の指示を受けていたのかを察した。

 

「あと、そもそもなんですけど、貴国が捕らえてる英国人って、全員民間人なんすよね。チャールズ諸島の自然について調査しに来ただけの研究者なんで、軍事情報を知ってる筈がないんですよね。なんだろな? 他所様の土地に土足で踏み行って、大英帝国と日本の実力をまともに調べずに、意味不明な発言を繰り返す。正直言って、諜報活動ちゃんとやってます? 連戦連勝で驕りが出てないっすか?」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・Do you know English? Please answer.」

「・・・・・捕虜の交換はしない。これは我が国の意思だ」

「あ~、民間人を拉致しておきながら返さないんすか。まるでミサイルぶっぱなしまくる将軍様のいる国みたいというか、なんというか、シエリアさんって頭悪いっすよね~。素直に捕虜交換した方がまだ助かると思いますよ~」

 

唐突に頭悪いと言われ、シエリアは腸が煮えくり返る思いだった。つい言葉に感情が入る。

 

「それは、我が国が決める事だ!! お前たちに答える義務はない!!」

「答える義務はない? 違いますねえ。本国から処刑の指示が出ているから答えたくないの間違いじゃないですか? お嬢さん?」

「もし、本当に捕虜を虐待し、処刑するのなら、我が国は徹底的な報復も辞さない。これは脅しではないわ。詳しくはデュロについて調べてみることよ」

 

ビートとアオイがハルトの援護に入る。完全に本音がバレているシエリアは心が痛む。

 

「で、どうしますか? 捕虜の交換をしますか? イエスかノーか!!」

 

笑顔で机を叩くハルト。

 

(まるでマレーの虎ね・・・)

(山下将軍みたいなことをイギリス人がやるのか)

(まあ、ノーなンだろうな)

(なおノーは核報復・・・)

 

「もし、捕虜の交換を拒むのであれば、我が国は日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと共に貴国を植民地にする用意があるんすよ。無論グラ・バルカス帝国の皇室は一人残らず処刑しますし、貴方も見せしめに処刑されますよ?」

「フン! 出来もしないことを口にしおって・・・小僧め、調子に乗るな!!」

 

ダラスがハルトを小僧扱いする。

 

「あ、はーい。じゃあ核撃ちま~す。まずは性能試験したいんで、貴国の地方都市に落としま~す。ポチっとな」

 

ハルトが核のボタンを押したことで、イギリス海軍の原子力潜水艦ヴィクトリアスは核弾頭を搭載したトライデントⅡを発射。グラバルカス帝国南部の地方都市目掛けて飛翔する。イギリス政府は捕虜を交換しないことが明確になった場合、南部の地方都市に核を落とすことを決定しており、発射ボタンを彼に渡していたのである。ただし、撃てるのは今回一回、一発だけの使いきりである。

 

「言っておきますが、これは脅しではありませんぞ、シエリア殿!!」

「我が国はかつてイギリスの植民地でしたから分かります。怒らせてはいけない国であると!!」

「オーストラリアみたいに、犯罪者の流刑先にされますよ!!」

 

旧植民地であるカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの外交官が警告する。彼らはハルトが押したボタンが本物の核のボタンであることを知っており、哀れみの感情も合わせて警告する。

 

(こんな危ないヤツに核のボタン持たせちゃダメでしょ)

(なにがなんでも核報復するというイギリス政府の意思だな)

(地方都市オタワ\(^o^)/なンだよなあ)

(それはカナダ)

 

 

「・・・・捕虜の交換には応じない」

「では、祖国の為に戦った戦士を見捨てるということですね?」

「違う」

「・・・・ほう・・・その心は?」

 

ハルトは何を言い出すのかな? と言わんばかりにニヤニヤしている。シエリアは怒りを噛み殺しながら答える。

 

「そもそもだが、偉大なる我が帝国軍兵士が捕虜になることはない!! 帝国軍兵士は皆、任務を果たすまで戦い、祖国の為に死ぬことが命じられている!! ゆえに捕虜は発生しない!! 貴国が捕らえているのは捕虜ではない。祖国を裏切り、逃げ出した臆病者! 脱走兵である!! そんな脱走兵と捕虜を交換しろだと? ふざけるのも大概にしろ蛮族が!!」

 

ハルト、アオイ、ビートの三人は「そう来たか~」と言わんばかりにニヤニヤしている。ヴィクターは呆れて無表情、日本の代表団は「不味いですよ・・・」という顔だ。

 

「なんだろな? この後本当に捕虜を処刑しそうな臭いというか、雰囲気というか・・・シエリアさんって、若くて綺麗な方だと思うんですけど、肝心なところでミスしちゃう人っすよね~。今なら大英帝国に亡命して、命だけは助かりますけど、如何すか?」

「ハルト殿、もう良いだろう。グラ・バルカス帝国は捕虜の返還に応じる気はない。そして、我ら・・・世界そのものである我らに、自国の植民地になれと求めている。これが明確に判明した。事務レベルではっきりとした訳だ。シエリア殿、これで間違いないな?」

 

神聖ミリシアル帝国の西部担当外交部長シワルフは、シエリアに問う。

 

「間違いはない」

「では、最後に・・・・あなた方グラ・バルカス帝国の民のために、発言しよう。神聖ミリシアル帝国の保有艦隊数は、貴国が戦った艦船の数を遥かに上回る。我が国の魔導工学に基づく工業力も他国を遥かに凌駕している。早めの降伏をお勧めする。貴女が戦火に巻き込まれて死なないように祈っておこう」

「本当にさっさと降伏した方が良いよ? 何なら既に報復されてるけど?」

「貴様の兄が先ほど何をしたのかは分からんが、ではこちらも交渉窓口だけは開いておこう。自国民を大切に思うならば、早めの降伏を進めしよう」

「まさかここまで愚かとは・・・呆れますねえ」

「今頃更地になってるんだろうなあ・・・」

 

会議は終了し、シエリアは退室する。各国の大使が退室を開始しようとした時、グラ・バルカス帝国外交官ダラスが彼らに向く。

 

「お前たちにとっては、国民へは非公式としているようだが、実質的公式な国と国の会議は終わった。少し個人的なお前たちへの感想を述べよう」

 

彼は続ける。

 

「弱者連合が・・・烏合の衆がいくら集まっても、我が帝国には勝てない。帝国は今後すべての国々をその配下に治める事となろう。貴様らも、この世界の連合として、プライドはあるだろうが、帝国に降るか、弱者連合で、国亡ぶまで戦うか……本気で考えた方が良い。まあ、お前ら蛮族に考える頭があるとは思えないがな」

 

イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを除く各国の外交官の顔が曇り、日本国大使朝田が発言する。

 

「では、私も個人的な感想を述べよう。あなた方は、現実が見えていない。今回の文明国とは思えない、国際会議への武力での介入、そして我が国並びに同盟国イギリス、カナダへの宣戦布告。我が国、日本国政府が日英同盟に基づき参戦を閣議決定した時、グラ・バルカス帝国の終わりの始まりとなるだろう。貴国は、第3文明圏のパーパルディア皇国が我が国並びにイギリスにした事、そしてその後の展開を、少しはお勉強した方がいいでしょう。外交窓口は開いておきます。早めに降伏するならば、ムーにお願いして入国し、日本国大使館の扉を叩いてください」

「では、中々発言の機会がなかった私からも」

 

続けてイギリスの駐フェン王国大使であり、他の英連邦王国全体の利益代表であるヴィクター大使が発言する。

 

「今頃貴国の地方都市は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれているだろう。貴殿らに情報が来るかは分からぬが、それが貴国の首都にも降り注ぐことになろう」

 

イギリスによる、グラ・バルカス帝国への核報復阻止交渉は失敗に終わった。各国連合の会議は終了する。

 

「あれ? 会議の趣旨変わってない?」

「なお実際に核報復は行われた模様」

「間違いだけど間違いじゃないンだよなあ・・・」

「これは安定のブリカス」

 

なお、イギリスの代表団がしれっとグラ・バルカス帝国の文化財を持ち帰っていたのだが、それに気付くのは後のことである。

 

 

グラバルカス帝国統治下レイフォル沖300キロ海上

イギリス海軍フリゲート艦ヨーク艦橋

 

「・・・・という訳で君達の出番が来たわけだ(まあ、核撃ったけど)」

「まあ、そうなると思っていましたよ・・・ハルト大使」

「それじゃあ、奴等に手土産をくれてやるとしましょう。日本から輸入した艦対艦ミサイルを4発撃ち込んでやってください」

 

安全圏まで離脱したイギリス海軍フリゲート艦ヨークは、先ほどまで各国の代表団が滞在していたレイフォル出張所に向けて、17式艦対艦誘導弾を4発発射する。その光景を見ていた各国の代表団は、常識離れした攻撃手段に驚く。特に神聖ミリシアル帝国の代表団は信じられない・・・といった表情であった。その後17式艦対艦誘導弾は寸分の狂いなく、レイフォル出張所に着弾。シエリア、ダラスら幹部は偶然にも休憩の為に出張所を離れており、被害はなかったが、出張所は瓦礫の山と化し多数の死傷者を出した。

 

「蛮族め・・・・まさか出張所に爆弾を仕掛けていたとは・・・・」

「決めつけはよくないぞダラス。兵士の中には出張所に向けて飛翔する物体を見たという報告が多数上がっている。綿密な調査が必要だ」

 

 

第2文明圏 文明圏内国家 ソナル王国

 

第2文明圏列強国レイフォルに国境を接するソナル王国、ムーの南側に位置するこの国、王の間では、緊急の王前会議が行われていた。レイフォルを落とし、そして先進11ヵ国会議外務大臣護衛艦隊が実質的に全滅した事について、緊急会議が執り行われていた。

 

「以上が、先進11ヵ国会議での外務大臣護衛艦隊が受けた被害と、戦闘の軌跡です・・・・」

 

ソナル王国にとっては、先進11ヵ国会議は強国たちの会議であった。そして、戦った11ヵ国はその中でも精鋭艦隊と想定される。

 

「なんと・・・・ムーの機動部隊ですら全滅したというのか?」

 

王は60隻を超える精鋭艦隊が実施的に全滅した事に唖然とする。

 

「はい、相手は、多数の航空機と、あの列強レイフォルを単艦で滅ぼしたグレードアトラスター型超弩級戦艦です」

 

会議室は静まり返る。

 

「列強レイフォルを、たったの1隻で滅ぼした、伝説の艦か・・・その強さは本物である事が証明された形となった訳だ」

「その艦名を聞いただけで、第2文明圏の海軍は震えあがると言わています。唯一ムーの艦隊だけは、これに対応可能と思われていましたが、本戦いではムーの機動部隊が手も足も出ずに全滅しており、各国の海軍には、グラ・バルカス帝国に対する恐怖が広がっています」

「第3文明圏列強パーパルディア皇国を完全に解体した日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は海戦に参加していないが、局所的な島嶼部の戦いでは勝利している。日英なら勝てるのではないか?」

 

日英が参加していない、更に局所的な島嶼部での戦いには勝利している。それだけが各国の希望であった。

 

「さらに・・・・これは、確定情報ではありませんが、神聖ミリシアル帝国に放っているスパイによると、神聖ミリシアル帝国の第零式魔導艦隊が、グラ・バルカス帝国の機動部隊に襲われ、全滅したと・・・・繰り返しますが、これは不確定情報です」

 

王の間は絶望に包まれる。

 

「第零式魔導艦隊が全滅したのであれば、世界で彼らに抗するすべはないではないか・・・・」

 

沈黙。

 

「外務卿!」

「はっ!」

「民のためだ・・・・状況によっては、戦わずして降伏の道も、考慮しておいてくれ」

 

王の間では、泣き始める者も出てくる。

 

「解りました。降伏する場合の道筋も、検討いたします。1200年続く、伝統ある国家が失われるのは、心苦しいのですが・・・・」

 

ソナル王国は、戦わずして降伏する事を検討する。しかし、翌日大英帝国より、

 

・グラ・バルカス帝国に降伏するのであれば、貴国を敵とみなす

 

との通達が送られ、国は大混乱することになる。

 

「グラ・バルカス帝国への攻撃をきっかけに第2文明圏を切り崩し、我が国の利権を拡大する!! ルール・ブリタニア!! 海を統べよ!! 英国の民は隷属せじ!!」

 

 

海上自衛隊護衛艦「いずも」艦長室

 

「とか、ハルトは言ってるんだろうなあ・・・」

「まあ、何時ものハルトじゃん」

「あとなんかしれっと、ハルト大使が乗っているフリゲートがミサイルをぶっぱなしてるんだけど? 司令官の俺が知らない作戦を実施してない? 俺はお飾り?」

「まあ、奴等に対する手土産みたいなもンだろ。艦隊はムーのマイカル海軍基地を経由して、ニュー・ホンコンに帰るから問題ないだろうよ」

「数週間後には核報復かあ・・・・壊れるなあ・・・」

「・・・・・一回で済むのかなあ?」

「まあ、済まないでしょうね・・・というか既にやってる」

「降伏するまで核の雨を降らせそうだしな」

「何ならグラメウス大陸に日英合同の大陸間弾道ミサイルの地上発射基地を建設しているはずだから、試験と称して撃ちまくりそう」

「ああ! そう言えばあったなそンな計画!! ていうか、新型の核弾頭も試作品が出来たって話も噂で聞いたぜ? 撃つンじゃないか? 新型」

「まあ、データ取りには最適ですからね。しかも合法的に核を撃てる」

「合法的に核実験とか・・・・グラ・バルカス帝国壊れちゃう・・・」

「勝手に壊れてろ定期なのよねえ・・・・」

「じゃあ、グラ・バルカス帝国滅亡確定を記念して麻雀でもやるか」

「おいシン、俺は今勤務中なんだけど?」

「じゃあ、ヒロシが出てけば良いだろう。残りの面々でやる」

「いや、ここ艦長室」

「じゃあ同窓会やるなよ。それだからアキコを僕に取られたんじゃないのか?」

 

まだ独身かつ、幼なじみにして幼少期の彼女をNTRされたヒロシの心に火がつく。

 

「やるか?」

「やってやるよ」

「「うおおお!!」」

 

次の瞬間、ヒロシとシンが取っ組み合いの喧嘩を始める。

 

「馬鹿と馬鹿が戯れてるわねえ・・・」

「全くなンだな!」

「怪我はやめてくださいね~治療するの僕なんで~幼馴染みと喧嘩して労災とか書きたくないんで~www」

「じゃあ、馬鹿を放置して麻雀始めましょ!!」

 

 

イギリス海軍フリゲート艦ヨーク艦橋

 

「タイトルはあれだな。グ帝の美人外交官を(核で)分からせてみた、だな」

 

(続く)

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