日英同盟召喚   作:東海鯰

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大英帝国の意思2

神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス

とある酒場

 

帝国始まって以来、初の空襲に見舞われた港街カルトアルパスのとある酒場は空襲を免れていた。

 

「うおー今日も、復興作業で疲れたぜ」

 

ドワーフのように見える男が話始める。最近日本国から輸入されたビールが注がれたジョッキを飲み干す。

 

「美味い!! やはり日本国のビールは一級品だな!!」

 

彼は、キンキンに冷えたビールを褒めたたえる。肉体労働で、疲れた体にビールの香りと美味さが染みていく。

 

「甘いな! 男ならスコットランドのスコッチウイスキー一択だろうが!!」

 

彼はスコットランドから輸入されたウイスキー片手に、ニュージーランドから輸入された羊肉で作られた焼き肉を食べる。

 

「ビールだと? そんなのより日本酒やろ日本酒!!」

「いや、ここは泡盛だ!!」

「なら俺はハブ酒だぜ!!」

「これだからお前らは・・・通なヤツはジャマイカのラム酒に決まってらあ!!」

「ジャマイカってどこだ? 聞いたことねえ国だな」

「知らねえのか? イギリス国王が治める、英連邦王国の一国さ!! 陸上やサッカーの強豪国だ!!」

「そう言えば先月我が国初のサッカーチームと親善試合をやってたな!! まあ、ジャマイカにボロ負けしたけど」

 

日英と交流が始まった神聖ミリシアル帝国やムーでは、野球やサッカーを始めとした地球国家のスポーツが流行しており、日英からのスポーツ用品の輸入も拡大していた。また、異世界転移後中止されているオリンピックの再開も計画されており、異世界転移後初のオリンピック開催都市に、神聖ミリシアル帝国のカルトアルパス、ムーのオタハイト、イギリスのロンドンが立候補する見込みである。

 

「ああ~、この日本のソーセージのパリッ!とした食感もまたたまらねえぜ!!」

「オーストラリアのオージー・ビーフも旨い!! ワインはないかワインは!?」

「このニュージーランドのキウイとかいうフルーツもうめえ!! この瑞々しさと酸っぱさが癖になる!!」

「私は酒が飲めないが、このカルピスとやらも凄いぞ。飲んでみろ。飛ぶぞ!」

「どれどれ・・・・かあ~!! 旨いなこれ!! 日本にはこんなうめえソフトドリンクすらあるのか!!」

「親父! パンケーキ1つ! カナダ直送のメープルシロップ付きで頼むぞ!!」

 

カルトアルパスに対する空襲は、目的として政府施設と港湾施設、空港施設が重点的に狙われたため、酒場は助かっていた。日英両国は復旧を兼ねて港湾、空港施設の強化に着手。大型旅客機の発着枠を増やせるよう、空港施設の大規模改修を開始。一部では作業が完了しており、その施設を利用して輸送機や貨物機が飛来。復旧作業や大規模改修のスピードを更に上昇させていた。港湾施設も日本からの大型貨物船やイギリスの空母がより容易に入港出来るように改修工事が行われ、日々港は日英からの貨物船の出入りが激しくなっていた。

 

「しかし、まさかこの国が空襲を受ける事になるとはな」

「しかも我が国は地方隊しか戦っていないようだ」

「でも、ミリシアルの地方隊が壊滅するだけでもとんでもない相手だ。皇帝陛下は民に被害が出たことについて、ひどく悲しみ、グラ・バルカス帝国に対して、烈火のようにお怒りになられたそうだぞ」

「皇帝陛下の怒りを買った国で、滅びなかった国は無い。グラ・バルカス帝国もこれで終わりだな」

 

彼らは神聖ミリシアル帝国が負ける可能性は全く考えず、想定すらしていなかった。それほどまでに帝国への信頼は空襲が一時的になされたとはいえ、厚い。

 

「グラ・バルカス帝国は強いな。先進11ヵ国の一部を除く連合艦隊を、ほぼ撃滅してしまったからな」

「日英の空母打撃群は戦っていないが、島嶼部での戦いに勝利したらしい。グラ・バルカス帝国の進撃を止めたことはでかいな」

「あったりまえだ! 日本国がグラ・バルカス帝国に負けてしまっては困るな。こんなうまいビールを作る国が無くなってしまっては困る!!」

「イギリスがなくなっても困る!!」

「しかし、グラ・バルカス帝国が日本を落とすとしたら、ムーや、この神聖ミリシアル帝国を落とさなければ地理的要因の関係上無理だ。まあ、この酒が途切れることは無い。安心だよ」

「ははは、違いねぇ」

 

神聖ミリシアル帝国の民は、空襲は一過性の奇襲と捉えていたため、帝国の行く末に対して楽観していた。酔っ払いどもの話はつづく。

 

 

第2文明圏列強ムー 東の港湾都市マイカル

マイカル空軍基地

 

「・・・・・まさか第2文明圏列強であるムーが外国軍の駐留を受け入れる時が来るとはな・・・」

 

この日マイカル空軍基地では、日英から派遣される戦闘機部隊並びに防護する陸軍部隊の駐留を祝う式典が開催されていた。日本、イギリス、ムーの要人が参列する式典であり、その中にはムーの技術士官マイラスやその上司も参加している。

 

「ですが、日本国やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の実力は確かです。既に日英製の装備品が多数導入されていますし、陸軍ではイギリス陸軍が採用しているL85を採用し、ここマイカルにてライセンス生産も実施しています。既に陸軍の主力部隊には配備されており、兵士からの評価も高く、傑作品との声が高いです」

「確かに、日本国やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の技術は高いのだろう。しかし、機械文明列強を誇るこのムーが、第2文明圏の盟主たる我が国が外国軍の駐留を受け入れることの危険性くらい、君にも解るだろう」

「はい、解ります。しかし、それでも海軍並びに空軍戦力の近代化は陸軍に比べ大きく遅れを取っています。日本から購入した「もがみ型フリゲート艦」はまだ数が揃わず、ラ・エルドの改修工事はまだ道中ば、そしてラ・カサミの修理と改修が加わり、とても自国のみで防衛は不可能な状況です。そこに神聖ミリシアル帝国からのレイフォルへの艦隊派遣要請と、このままでは本国が空っぽになってしまう、そう考えて政府は日英の駐留を受け入れた訳でしょう」

「まあ、それはそうなのだが・・・やはり・・・その・・・な」

 

上司は理屈では理解しているのだが、中々納得出来ない心情だった。やがて式典が始まり、マイカルに駐留するイギリス空軍の地上要員並びに防護するイギリス陸軍の行進が開始される。

 

 

Some talk of Alexander,And some of Hercules

Of Hector and Lysander, And such great names as these.

But of all the world's great heroes, There's none that can compare

With a tow, row, row, row, row, row, To the British Grenadiers.

 

Those heroes of antiquity Ne'er saw a cannon ball

Or knew the force of powder To slay their foes withal.

But our brave boys do know it, And banish all their fears,

Sing tow, row, row, row, row, row, For the British Grenadiers.

 

Whene'er we are commanded To storm the palisades

Our leaders march with fusees, And we with hand grenades.

We throw them from the glacis, About the enemies' ears.

Sing tow, row, row, row, row, row, The British Grenadiers.

 

And when the siege is over, We to the town repair

The townsmen cry, "Hurra, boys, Here comes a Grenadier!

Here come the Grenadiers, my boys, Who know no doubts or fears!

Then sing tow, row, row, row, row, row, The British Grenadiers.

 

Then let us fill a bumper, And drink a health to those

Who carry caps and pouches, And wear the louped clothes.

May they and their commanders Live happy all their years

With a tow, row, row, row, row, row, For the British Grenadiers.

 

 

イギリスの有名な軍歌である、ブリティッシュグレナディアーズと共にイギリス陸軍並びに空軍の行進が開始される。敵戦車への抑止力となり得るイギリス陸軍主力戦車チャレンジャー2を先頭に、基地防空を担う27式自走対空高射機関砲、PAC-3、敵地上部隊に備えるウォーリア歩兵戦闘車、その後ろにイギリス陸軍兵士や空軍の地上要員が続く。また、行進には英連邦王国の一員であるカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの陸軍兵士も参加する。3か国合計500名と僅かな部隊であるが、今後イギリス軍と合わせて5000人規模まで拡大する見込みである。

 

「日本は独自に軍歌を流したりはしないのか?」

「今回参加するのは航空自衛隊のみであり、陸上戦力は他国に依存する為、イギリス軍と一緒に入場するとのことでした」

 

マイラスと上司が会話したその直後、轟音が空軍基地上空に響き渡る。式典に参加するムーの関係者が一斉に空を見上げる。

 

「あれが日本の戦闘機・・・・か!」

 

上空には編隊を組んで飛行する航空自衛隊所属のF15J戦闘機4機とイギリス空軍所属のユーロファイタータイフーン4機の姿があった。その内2機のF15Jが上空で曲芸飛行を披露し、ムーの関係者の度肝を抜く。

 

「・・・・・成る程・・・・確かに政府が駐留を受け入れる訳だ」

 

その後戦闘機部隊は続々と着陸し、パイロット達による行進も行われる。その中には、オラパ諸島での戦いで30機を越えるグラ・バルカス帝国軍機を撃墜したエースパイロットである、オグリとウッチーの姿もあった。オグリに至っては旭日旗を持ち、日本側パイロットの先頭を進んでいる。

 

「な!! なんだと!? 日本には女性の戦闘機パイロットがいるのか?!」

 

マイラスの上司は、戦闘機から降りてきたパイロットの中に女性がいたことに驚く。

 

「噂には聞いていたのですが、あの女性パイロットこそが、政府が派遣を強く希望したエースパイロットとのことです」

「信じられんな・・・・」

 

ムー政府は本土防空戦力の強化の為に日英に対して、空軍戦力の駐留を希望していた。日本側は距離が有りすぎるとして慎重であったが、イギリス側はムーの巨大市場に介入する絶好の好機であり、レイフォルを解放後に英連邦王国の一員に組み込みたいという野心も重なりこれを了承。イギリス側から日英同盟に基づき最低限の部隊の派遣を要請されたことから、日本政府は戦闘機4機、輸送機2とそれらを整備する地上要員の派遣を閣議決定。国会では一部の左派政党が、

 

「イギリスの帝国主義に手を貸すとは何事だ!!」

「軍事費を福祉に回せ!!」

「日英による世界侵略反対!!」

「軍事費に湯水の如く使う金があるなら消費税を減税して国民に還元しろ!!」

「日本は中立国であるべきだ!!」

 

と、抗議した。最終的には与党に加え、大阪を拠点に置く野党の賛成多数で可決。日本はムーに部隊を派遣することが決定したのである。

 

「確かに政府は日本にエースパイロットの派遣を要請していたとは聞いていたが・・・・それがしかも女性・・・」

 

ムーは日本側に対して、イギリス軍程の規模は求めない代わりにエースパイロットを最低2人派遣して欲しいと要請していた。これを受け、防衛省では派遣するパイロットの人選を実施。オグリとウッチーは最終選考まで残った2人であったが、ロコール島にて管制塔の指示を無視して離陸する等、実力は確かながらも性格に難があるとして派遣は見送る公算だった。しかし、他のパイロットが育休や体調不良でまさかのリタイア。結果的に予備のパイロットだった2人に出番が回ってきたのである。やがて部隊の行進が終わり、イギリスの駐ムー大使であるブレンダン・ピース・フィリップによる演説が行われる。

 

「第2文明圏の平和は崩壊しました。我が国並びに同盟国日本は第二次世界大戦の恐怖から学び、異世界転移後も自由、公正、平和、民主主義を一丸となって守ってきました。そうして築かれた秩序をグラ・バルカス帝国は今日に至るまで毎日、毎日、そして今! この瞬間も侵害して来ました。我が大英帝国は第3文明圏のみならず、全世界の平和と自由で開かれた海を守る為、盟友である日本国と共に、第2文明圏の安全保障に積極的に関与し、ムーの人々を卑劣なる侵略者の悪しき魔の手から守ることを今日、ここに約束致します。神よムーを守りたまえ!! God save the King!!」

 

その後、基地の一角に連合王国旗、日章旗、一葉旗、オーストラリア連邦旗、ニュージーランド国旗を掲揚する式典が行われる。それぞれの国歌が演奏され、一国ずつ丁寧に掲揚される。

 

God save our gracious King,

Long live our noble King,

God save the King:

Send him victorious,

Happy and glorious,

Long to reign over us,

God save the King.

 

O Lord, our God, arise,

Scatter his enemies,

And make them fall

Confound their politics,

Frustrate their knavish tricks,

On Thee our hopes we fix,

God save us all

 

Thy choicest gifts in store,

On him be pleased to pour;

Long may he reign:

May he defend our laws,

And ever give us cause

To sing with heart and voice

God save the King.

 

通常であれば、好戦的な2番は省略されることが通例であるが、グラ・バルカス帝国からの侵略に対抗する等として、今回は異例の2番の歌詞も流されることになった。連合王国旗が掲揚されると、日章旗の掲揚に移る。今回日章旗を運ぶのは、エースパイロットの一人として派遣されたオグリ、共に掲揚ポールに日章旗を取り付けるのはウッチーである。

 

「・・・・・・(落ち着けオグリ。練習通りやればよい)」

「・・・・・・(分かっている! オレを馬鹿にするな!)」

 

無事、掲揚ポールに日章旗が取り付けられ、国歌と共に上がっていく。歌詞が短いため、連合王国旗よりも上がるスピードが速い。

 

君が代は

千代に八千代に

さざれ石の

巌となりて

こけのむすまで

 

日章旗が翻るまでオグリとウッチーは敬礼した。その間全く微動だにせず、国家への高い忠誠心を見せつけ、イギリス側を大いに感動させたという。後にこの画像を見たハルト大使がアキコ領事に対して、

 

「君たちの国は国歌を歌うヤツ、国家への忠誠心が高いヤツはネオナチ扱いされると聞いていたが、どういうわけだ?」

 

と、遠回しに、サヨクはウンチ!! と言ったという。

 

O Canada! Our home and native land!

True patriot love in all of us sons command.

With glowing hearts we see thee rise, The True North strong and free!

From far and wide, O Canada, we stand on guard for thee.

God keep our land glorious and free! O Canada, we stand on guard for thee.

O Canada, we stand on guard for thee.

 

カナダの国歌にはフランス語の歌詞もあるが、今回は英語の歌詞のみが流れる。今回派遣された部隊にはフランス語話者はいなかった為、大きな影響が出ることはなかったという。

 

Australians all let us rejoice,

For we are one and free;

We've golden soil and wealth for toil,

Our home is girt by sea;

Our land abounds in Nature's gifts

Of beauty rich and rare;

In history's page, let every stage

Advance Australia fair!

In joyful strains then let us sing,

"Advance Australia fair!"

 

オーストラリア連邦の国歌、進め美しのオーストラリアが流れる。オーストラリア連邦旗は左上に連合王国旗があしらわれており、イギリスとの歴史的結びつきを感じさせる。

 

E Ihowā Atua,

O ngā iwi mātou rā

āta whakarongona;

Me aroha noa

Kia hua ko te pai;

Kia tau tō atawhai;

Manaakitia mai

Aotearoa

 

God of Nations at Thy feet,

In the bonds of love we meet,

Hear our voices, we entreat,

God defend our free land.

Guard Pacific's triple star

From the shafts of strife and war,

Make her praises heard afar,

God defend New Zealand.

 

入植者の子孫である白人の軍人とニュージーランドの先住民であるマオリ族の軍人により、ニュージーランド旗が掲揚される。その後、ニュージーランドの国歌、神よニュージーランドを守りたまえが最後に流れる。マオリ語の歌詞に次いで英語の歌詞が流され、同じ先住民に対する扱いが隣国オーストラリアとは全く違うことが示される。その後、式典は無事終了し、日英軍の装備品が市民に公開される。その様子は神聖ミリシアル帝国の報道機関により、ムーがこれまでの慣例を破り、外国軍の駐留を受け入れ、市民が好意的に出迎える様子が報道されることになる。

 

「ん? あれは何だ?」

 

式典が終わり、空軍基地にて日英の装備品の一般公開が行われている間は休憩時間となる航空自衛隊の戦闘機パイロットのオグリはムー空軍エリアに見慣れない航空機を見つける。

 

「ムーは複葉機しか保有していないのではなかったのか? オレの認識が正しければの話だが」

「んー? 確かに見慣れない航空機だね~。でも、何となくドイツっぽい雰囲気もあるかな?」

 

オグリとウッチーはそのままムー空軍エリアに立ち入る。本来であれば、外国の軍人が他国の重要機密に立ち入ることは御法度だが、ムーの整備士達は彼らに気付かない、あるいは彼らが日本のエースパイロットと気付いてむしろ積極的にアプローチを仕掛けてくる。

 

「貴女方はもしや日本のエースパイロット、オグリにウッチーではありませんか?!」

「ええ、まあ、そうだが。あの機体は何だ? ナチスドイツが運用していたスツーカのようなアレだ」

 

オグリの指さした先には、ピカピカに整備されたJu87に酷似した固定脚の機体があった。

 

「あれは我が国が誇る技術士官マイラス殿が中心となって設計・開発された急降下爆撃機Ju88スツーカ2です。費用が高騰し、慣熟訓練にも時間がかかるユーロファイタータイフーンとは別の空軍の主力戦闘機や爆撃機を開発する計画がありまして、マイラス殿を中心に貴国から様々な航空機の文献を取り寄せたそうなのであります。その中に、ソ連の戦車を500両以上、装甲車800両以上、火砲150門、装甲列車4両、戦艦1隻、嚮導駆逐艦1隻、駆逐艦1隻、上陸用舟艇70隻以上、航空機9機を撃墜した名機である本機のモデルがあったのです」

(・・・・いや、それ中の人がチートなだけだが・・・)

(スツーカ自体は悪い機体じゃねえけど制空権・・・まあ、取れるか)

「お? 紫電改もあるじゃねえか。新明和工業辺りが協力したのか」

 

ウッチーはスツーカ2の隣にかつて日本海軍が運用した傑作機、紫電改に酷似した陸上機を見つける。

 

「いやあ! 日本のエースパイロットは博識ですな!! その通り!! こちらは日本国が大日本帝国と名乗っていた時代に活躍した名機、紫電改をベースに開発された、紫電改2になります! スツーカ2もそうなのですが、我が国の技術力だけでは開発出来ませんでしたので、貴国の新明和工業やSUBARU、三菱重工業に川崎重工業、そしてイギリスのロールスロイスにカナダのボンバルディアと、様々な航空機メーカーの支援を受けて開発されたのです! 幸いにも設計図は貴国の技術力で再現出来ましたし、SUBARUがT7練習機を開発していたことから、プロペラ機に関する技術も残っていたので!!」

 

ムーは取得費用が高騰するユーロファイタータイフーンだけでは、ムー空軍の近代化は成し遂げられないとして、比較的安価で機種転換が比較的容易な機体を探していた。日英から様々な航空機の文献を取り寄せた結果、陸上機並びに空母艦載機は紫電改、爆撃機はJu87、雷撃機はフェアリーソードフィッシュをベースに開発することが決定。初期生産分が既に納品され、現在戦力化に向けた訓練を実施中であり、艦載機仕様の紫電改2とフェアリーソードフィッシュ2は神聖ミリシアル帝国主導のレイフォル攻撃作戦に、上空直掩任務の為に空母と共に参加する予定である。

 

「どれか試しにお乗りになりますか?」

「「え?」」

「日本のエースパイロットであるお二人なら難なく乗りこなせるんじゃないかと思ったのですが、いきなりでは流石に駄目でしたかね?」

 

(はは~ん? これは明らかに挑発しているね~。どうするオグリ?)

(舐められたものだな・・・・このバーニングクイーンに乗りこなせぬ機体等ないことを思い知らせてやろうぞ!)

 

その後2人はJu88スツーカ2に搭乗。模擬標的に難なく命中させる等、要領の良さと練度の高さをムーに見せつけた。後にオグリが操縦士、ウッチーが後部機銃手を務めるJu88スツーカ2には37mm機関砲が2門増設され、後に日本の作家により、

 

「牛乳大好き魔王系スツーカおじさんが転生したら女だった件」

 

という漫画本のモデルになったという。

 

 

夜のとある酒場

 

「ほれ、飲めよ。しかし、改めてお前さんは凄いよオグリ。初めて乗った筈なのに既にムー空軍の熟練パイロットより上手にスツーカを扱えてたからな」

 

街の大通りから1本外れた狭い道にポツンと立つ小さな酒場でオグリとウッチーは酒を飲み交わす。店内は少々汚いものの、2人からすればむしろ昭和の日本の雰囲気も感じられ、更に煙草も吸える良い酒場であった。

 

「そういうウッチーはよくあんな時代錯誤な機銃で模擬標的を撃ち落とせるものだ」

 

酒を飲んだ後に煙草に火を点けてオグリ。今の日本なら御法度な煙草も、ムーなら吸い放題。久々の酒と煙草に2人は料理に手が進む。

 

「ほら、お前も出せ。点けてやるよ」

「そいつは、どうも。・・・・ふう~、ムーの煙草もまあまあだな・・・お? 大将、俺らはこれ、頼んでないぜ?」

 

ウッチーは注文に無い品物が届いたのを指摘する。

 

「貴女方は日本のエースパイロットとやらでしょう? 昼テレビで見ましたよ!! これはうちからのサービスで!」

「ほう! これはこれは・・・」

 

大将と雑談を交わしながら、オグリとウッチーの休息が続く。

 

「もうよせウッチー・・・流石に飲みすぎだ」

「チクショウ・・・本当にオグリは酒に強いよな・・・ロシア人かよ」

「あんなハゲの認知症のろくでなしの妄想爺と一緒にするな」

「ボロクソだね~うひぃ~ヒック!」

 

 

グラ・バルカス帝国 レイフォル地区

 

この世界の魔信器と呼ばれる機械を使い、これより恐怖の放送がなされようとしていた。レイフォル地区から発信された魔信は、ムー等を中継地点とし、各国に流れる仕組みとなっている。すでに重大な放送があると、各国には通達しているため、おそらくこの放送は、全世界の者たちが知ることになるだろう。

 

「本当に実施しなくてはならないのか・・・・」

 

シエリアは、罪なき者達の処刑を発言し、世界に発信しなければならないという本国の命令に、心を痛める。彼女の前に、目隠しをされ、自国の重要情報を話さなかった者達、グラ・バルカス帝国の上層部に言わせれば、不必要な捕虜たちが前に並ぶ。彼らは自分たちが何をされるか、まだ解っていないようだった。

 

「・・・・・・・でも、やるしかない・・・私は所詮一介の公務員でしかない・・・・」

 

彼女は本国のために身を粉にして働いてきたつもりだった。すべては国のため。しかし、今回の捕虜殺害の命を発しなければならないという状況に心は折れそうになる。

 

(いやだ! こんな虐殺ともとれる仕事をするために私は外交官を目指したのではない!!!)

 

心が叫ぶ。しかし、口は仕事のため、いつものように、何事も感じていないかのように話始める。

 

「捕虜たちよ。今からおまえたちの処刑を行うが、最後のチャンスをやろう。先ほど聞かれた事柄について、話す気があれば、申し出るがよい。」

 

(全員手を挙げてくれ!!!)

 

何人かが手を挙げる。シエリアは、捕虜に目を配る。イギリス人は・・・・誰一人として申し出る者がいなかったようだ。

 

「もういないのか? これから殺されるのだぞ? 答える気があるならば、知る、知らないは問わぬ。申し出るがよい。」

 

(早く手を挙げるんだ馬鹿ども!! 本当に死んでしまうぞ!!!)

 

イギリス人は誰も申し出ない。体は震え、妻の名前だろうか?女性と思われる名前を何度も繰り返している者や、国歌を熱唱し始める者、国王の名前を叫び、国王と国家への忠誠心の高さを見せ付けるもいる。

 

「そうか・・・・ではしょうがない」

 

(いやだ!!いやだ!!殺したくない!!!)

 

「これから帝国と戦う者どもよ!! 捕虜になり、帝国に従わぬ愚か者たちの処刑をこれより行う。愚か者の末路をその目に焼き付けるがよい!!! そして、我が国が怖ければ、自国政府に、帝国に降るよう働きかけるがよい。降らねばこれからの光景は、未来のお前たちだ!!! 我が軍門に降れば、永遠の繁栄を約束しよう!!!」

 

(殺したくない!! 殺したくない!!!)

 

シエリアは、僅かに目に涙をためる。

 

「構え――!!!」

 

(神様、ごめんなさい)

 

処刑人が、銃を構える。

 

「撃てーーっ!!!」

 

発砲音の後、捕虜たちは、血飛沫を上げ、あっさりと崩れ落ちる。

 

「帝国に逆らう国は、皆こうなる。お前たちが利口な事を願おう」

 

放送は終わる。その光景は、全世界に放送された。世界の民は激高する。英国国民にとって、その光景は、先の悲劇を彷彿とさせ、グラ・バルカス帝国、そしてシエリアに対する怒りとなって国民は纏まるのだった。一方、日本のネット民がよくあつまる「な○J」では、「○んJ民」が集まり、

 

「悲報グラ・バルカス帝国さん、ブリカスに喧嘩を売り無事死亡確定」

「既に港町を核攻撃されてるのに更に喧嘩を売るのは草」

「諜報サボってたヤツwww」

「帝都炎上モード、突入!」

「ブリカスの大使がウッキウキで核のボタン押してて草生えたわwww」

「大英帝国の植民地拡大不可避www」

「なおアメカスよりはマシな模様」

 

と投稿が止まらなかったという。

 

 

イギリス領ニュー・ホンコン

捕虜収容所

 

「病気だな」

「病気?」

 

ミカドアイHDの能登川は部下と共にグラ・バルカス帝国による、捕虜処刑のニュースを見てそう呟いた。日英が捕らえた捕虜の管理を担うミカドアイHDは、グラ・バルカス帝国の回答次第で捕虜をどう扱うかをイギリス政府から指示を受けており、それを判断する為に胸糞悪いニュースを見ていたのだ。

 

「とことん敵のことを知ろうとしない、都合の良いように解釈するという病だ。あの日の捕虜交換交渉から今日まで、イギリスはありとあらゆる方法でグラ・バルカス帝国に対して、圧倒的差を見せ付けてきた。レイフォルにミサイルを撃ち込み、本土には核すら落とした。引き返すことも、土下座して赦しを乞うことも、亡命することすら出来た。だが、それも今終わった。あの女は戦犯として死刑、良くてエストシラントの地下強制労働施設で他の屑共に慰み者にされて終わりだ。問題は」

 

ヘビースモーカーである能登川は煙草を吸う。

 

「ふ~、自分がそういう立場にあり、危うい状況である、そういうことを自覚しているかだ。まあ、無理だろうがな」

「能登川先生! ニュー・ホンコン総督府のバイオレット総督、駐パーパルディア皇国大使のスカーレット大使から連絡です! 予定通り、例の策を実行せよ、と・・・・」

 

部下の報告に能登川はニヤリと笑う。

 

「そうか・・・さて! 捕虜からクズに変わる瞬間を拝みに行こうじゃないか!!」

 

能登川は部下に対し、捕虜を1ヵ所に集めるよう指示を出した。数時間後、イギリス空軍の輸送機にすし詰めで収容された捕虜はニュー・ホンコン国際空港を離陸する。捕虜達は皆、祖国に帰れるのだと信じてすし詰めの機内で我慢していたが、吐き出された場所がパーパルディア皇国のエストシラント国際空港/キングカズタカインターナショナルエアポートと知り絶望。その後鉄格子の付いたバスに乗せられ、地下強制労働施設へと送られるのである。

 

「さて、クズ共はどちらを選ぶか・・・どうお考えですか? スカーレット大使?」

「さあ、どうかなミスター・ノトガワ。まあ、僕も楽しみなんだけどね(ニヤリ)」

 

2人は護衛のイギリス兵や白服と共に地下強制労働施設へと脚を踏み入れる。グラ・バルカス帝国軍捕虜に待ち受ける待遇は果たして?

 

(続く)

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