パーパルディア皇国エストシラント郊外
ミカドアイHD地下強制労働施設大広間
「・・・・・一体何が起きるんだ?」
「本国に返されるんじゃねえのか?」
「でもどうみても強制労働させる施設だぞ?」
ニュー・ホンコンの捕虜収容施設からエストシラントの地下強制労働施設に移送された、グラ・バルカス帝国の捕虜6000人は口々にこれから何が行われるのかを予想していた。軍用機に乗せられた時は皆、レイフォルに向かうものだと思っていたが、機体は東に進路をとり、エストシラントに着陸。気付いた時には手錠をはめられ、バスでここまで連れてこられていたのである。
「お、おい! 誰かが来たぞ!!」
一人の海軍兵士が指を指す。壇上に軍人や白服を連れた日本人とイギリス人が現れ、威圧するかのように捕虜達を見下ろす。
「さてさて、グラ・バルカス帝国の捕虜・・・・いや、脱走兵の諸君!! 地下強制労働施設の空気は如何かな?」
壇上に立った能登川は早速捕虜達を挑発する。
「脱走兵だと!?」
「俺たちは誇り高きグラ・バルカス帝国の軍人だ! お前らみたいな劣等人種なんかよりずっと偉い立場なんだぞ!!」
「第一、俺たちは捕虜だろうが! お前らが批准しているジュネーブ条約に則った対応をするべきだろうが!!」
「そうだそうだ!!」
やはりな、と言わんばかりに微笑む能登川。
「ジュネーブ条約? 確かに我が国や大英帝国はジュネーブ条約を批准している。だが、それは捕虜や民間人であればの話だ。我が国や大英帝国、そして諸君らの祖国グラ・バルカス帝国は諸君らを軍人、捕虜とは認めていない」
「帝国がだと!?」
「俺たちは祖国の為に戦ったんだ! デタラメなことを言うんじゃねえ!!」
自分たちが置かれた立場に気付かないクズ共。すると次の瞬間、巨大なスクリーンが下ろされる。
「そんなに疑うなら見てみるがいい。諸君らの外交官が我が国や大英帝国の外交官に向けて放った言葉をな」
スクリーンにはレイフォルで行われた捕虜交換交渉の様子が映し出される。
「レイフォル駐在のシエリアじゃねえか?」
「隣はダラスだ!!」
一部のクズ共は自国の外交官2人に気付く。全員が息を飲みながら映像を視聴する。
「・・・・捕虜の交換には応じない」
「では、祖国の為に戦った戦士を見捨てるということですね?」
「違う」
「・・・・ほう・・・その心は?」
「そもそもだが、偉大なる我が帝国軍兵士が捕虜になることはない!! 帝国軍兵士は皆、任務を果たすまで戦い、祖国の為に死ぬことが命じられている!! ゆえに捕虜は発生しない!! 貴国が捕らえているのは捕虜ではない。祖国を裏切り、逃げ出した臆病者! 脱走兵である!! そんな脱走兵と捕虜を交換しろだと? ふざけるのも大概にしろ蛮族が!!」
はっきりと自国の外交官が自分たちを脱走兵と切り捨てた瞬間、彼らは血の気が引いた。一部のクズ共は見捨てられたショックで泡を吹いて倒れる。
「見ての通り、グラ・バルカス帝国は諸君らを軍人であり、捕虜であるとは認めず、帝国を裏切り、敵国に亡命した卑劣なる脱走兵であるとした。これが諸君らの祖国の統一見解である。貴様らは捕虜ではない。そう相手国が判断した以上、諸君らの捕虜としての待遇は永遠に消滅したのだ」
全員、頭が真っ白になり言葉が出ない。
「だが、現在の我がミカドアイHDのカズキ会長は先代のカズタカ会長とは違い、その慈悲の深さはマリアナ海溝より深い御方である。諸君らには二つの選択肢を用意なされ、大英帝国側からも了承を得た」
二つの選択肢。内容を危機漏らさまいと、全員の視点が能登川に注がれる。
「一つは、戦争終結までこの地下強制労働施設にて、荷馬車の如く働かされること。それも1日1食、睡眠時間は4時間、休憩はなしだ。実質的には死ぬまでの労働だ。そして」
二つ目の選択肢。クズ共はそれに希望を託す。中には神頼みしているクズもいる。
「もう一つは、イギリス軍に志願し、危険の最前線で戦い、君たちを見捨てた祖国に復讐をし、生きて、生きて帰ることだ。イギリス軍に入隊するのであれば、他のイギリス兵と同等の待遇を与えることをスカーレット大使は確約して下さった」
もう一つの選択肢。それはイギリス軍への入隊であった。他のイギリス兵と同等の待遇を約束するとは言っているが、それは同時に彼らの祖国に刃を向け、かつての仲間達と殺し合えという、残酷な話でもある。究極の選択にクズ共は言葉を失う。
「さあ、どうする? かつての仲間達を守る為にここで無惨にも朽ち果てるか、それともかつての仲間達に刃を向け、生きて祖国へ帰る道を探すか。お前達にはこの二つしかない」
クズ共の一人が能登川に問う。
「大英帝国が負けた時はどうなるんだ!! その時の処遇について話してくれ!! 俺はレイフォルに海軍で勤務する弟が、そして祖国には年老いた両親、そして娘が生まれたばかりの妻がいるんだ!!」
しかし、能登川は冷たくこう言った。
「残念ながら質問には一切お答え出来ません」
するとクズ共は一斉に文句を言い始める。
「何だと?! 負けたらどうなるか話すのくらい当然だろ!」
「そうだ!」
「バカにしてんのか!!」
「そうだそうだ!!」
「話せよ!!」
「ヒドスギィイクイク!!」
「ふざけんな!!」
「答えろ!!」
しかし、こんなことを予め予想していた能登川は全くぶれない。むしろ心の奥底では、やはりな・・・クズ!! と思っていた。
「・・・・・黙れ」
「え?」
ドスの効いた声にクズ共が静まり返る。
「ぶち殺すぞ、ゴミめが・・・・」
全員ざわ・・・ざわざわ・・・し始める。
「お前らの質問に答えるのは容易い。だが、ここで大英帝国が負けた時の処遇を聞いてどうなる? そんなに聞きたいのなら幾らでもしてやる。スカーレット大使も聞きたいのならしてやってもよいと仰せだ。だが、ここにいるお前らに話の真偽を確かめる術はない!!」
能登川の傍らに控えるハルトも無言で目を閉じながら頷く。
「それでも聞きたいと言うのか?!」
「まあ、君たちは脱走兵として扱われているのだから、家畜未満の扱い、いや奴隷未満だろうけどね」
ここでようやくハルトが口を開く。ちなみにハルトはミカドアイHDの大株主の一人であり、父親は社外取締役も勤めている。
「お前らは、娑婆での戦い(リペリュー島上陸作戦、ロコール島奇襲作戦、ニュー・ホンコン攪乱作戦)に負けに負け、今ここにいる。負けて行き着く先が地獄云々より、ここが既に地獄の釜の底だということにまだ気付かんのか。祖国には脱走兵として見捨てられ、捕虜として扱われることがなくなって貧窮し、うじうじと、人生の底辺を這って、這って、這いつくばっているのだ!」
ざわ・・・ざわざわざわ・・・クズ共の動揺は止まらない。
「ただ希望はある。大英帝国軍に志願し、大英帝国軍軍人として戦い、生き残り、勝利することが出来れば生きて祖国へ帰国し、愛する家族や友人に会う可能性が高くなるだろう。即ち、地獄の釜の底から引き揚げられるのだ。お前らが為すべきは勝つこと! 勝って祖国に帰ること!! 心に刻め!! 勝つこと!! 勝つことだけが全てだ!! 勝たなければゴミ!!」
能登川は勢いよく演説台を右手で叩き付ける。
「勝たなければ!! 勝たなければ!! 勝たなければ!!」
能登川の勢いにクズ共は呆気に取られる。入れ替わるようにしてハルトが演説台に立つ。
「ご機嫌よう、愛する祖国に見捨てられた愚かな元帝国軍人諸君。聞いて貰ったとは思うが、君たちはこれから地下強制労働施設で朽ち果てるか、我が大英帝国軍に志願するかを選ぶことが出来る。さあ、どうする?」
「そんなことはどうでもよいんだよ!! つべこべ言わずに祖国に返せよ!! この劣等人種が!!」
クズがハルトに対して石を投げつける。避けることも容易に出来たが、敢えてハルトは避けず、頭から血を流す。
「・・・・素晴らしい。実に素晴らしい!! この期に及んでまだ捕虜だと思っているとは・・・・ミスター・ノトガワ、どうやらまだまだ教育が必要みたいですなあ。ハハハハハ!!」
石をぶつけられたのに余裕綽々のハルトにクズ共は恐怖した。頭から血を流しているのだ。普通の人間なら取り乱してもおかしくない。尤も、彼は核兵器を使い、お手軽に何十万人の人間を殺戮したのだが。彼と入れ替わるように再度能登川が演説台に立つ。ハルトは白服達から治療を受ける。
「貴様はあれを戯れ言、余興とでも思っていたのか? クズ!! 話にならん!! クズ!!」
「てめえ!!」
「連れていけ!!」
次の瞬間、ハルトに石を投げつけ、更に能登川に反論したクズは完全武装したイギリス兵と管理担当の白服により地下強制労働施設へと送り込まれていった。
「お前達もあのガキみたいに死ぬまで強制労働を望むか?」
あの者は生きて地上には帰れない。それが確定したことを知ったクズ共の動揺は更に広がる。
「さあどうする? 大英帝国軍に志願か? それとも権利放棄か?」
次の瞬間、一人の元士官が前に出る。
「入隊届を渡せ・・・私は大英帝国軍に志願し、私を見捨てた祖国・・・外交官シエリアを八つ裂きにする!!」
シエリアに脱走兵扱いされたことを終始憤慨していたグラ・バルカス帝国陸軍少佐の男が前に出て能登川に入隊届を要求する。彼はチャールズ諸島プリンスフィリップ島守備隊の指揮官であり、日英軍による反抗作戦では、多勢に無勢を悟り、部下を守る為に即座に降伏を決断した士官である。
「よくぞ決心した! 道拓く者! 勇者よ!! 歓迎するぞ!!」
その者は白服に連れられ、別室に案内されていく。この後彼は身体測定と健康診断を受け、ワクチン接種の後に大英帝国軍に入隊することになる。
「さあ、どうする? 他の者は決心したぞ。参加か? それとも権利放棄か?」
ざわ・・・ざわざわざわ・・・クズ共は互いに顔を見合わせる。
「・・・・あのクズを連れていけ。そしてそこのクズもな」
すると、決断の出来ないクズが一人、また一人白服により強制労働施設へと連れて行かれる。
「な、何を?!」
「決断出来ぬクズを待っていても仕方あるまい」
「そ、そんなあ!」
「もう少し待って下さい!!」
「クズ!! 話にならん!! クズ!! もう少し待ってくれ? お前達はそう命乞いする現地人を一体何人殺してきた? 自分たちがその立場になったら命乞いが罷り通るとでも思うのか? クズ!!」
ばっさりクズを切り捨てる能登川。
「世間はお前達クズの母親ではない。クズの決心を何時までも待ったりはせん。一生迷ってろ。そして失い続けるんだ。貴重なチャンスを・・・」
その後一人、また一人とクズ共がイギリス軍への入隊を志願する。最終的には6000人のクズ共の内、4500人がイギリス軍に入隊し、残りは地下強制労働施設にて一週間以内にこの世から処分されることになる。
「いやあ、素晴らしい演説でしたよ。ミスター・ノトガワ!!」
「いえ、練習をしていたので・・・この度はスカーレット大使の手をわずらせてしまい、申し訳ありません」
「お気になさらず」
「しかし、スカーレット大使は通訳なしで日本語がよく理解出来ますな」
「私には日本人の友人が2人いたので、彼らから日本語について学んだのです。完璧ではありませんが、大体は理解出来ます」
ハルトは学生時代にアキコとシンの2人と友人だったこともあり、日本語について理解があったのである。
「さて、私はそろそろ大使館に帰りますかね。今頃グラメウス大陸では、日英合同の核実験が行われる頃ですかね?」
グラメウス大陸イギリス領区域
日英合同核実験場
「・・・3、2、1・・・0!!」
日英の関係者が見守る中、遂に運命のボタンが押される。次の瞬間、キノコ雲がグラメウス大陸に出現する。今日に至るまで、日本はイギリスからの技術支援を受け、核兵器の開発に着手。日英両国は青森県六ヶ所村に残されていた莫大な量のプルトニウムやグラメウス大陸オーストラリア領区域に豊富に埋蔵するウラン鉱山から核兵器の材料を調達し、より高性能かつ高威力の核兵器を製造。そしてたったいま、それが成功したのである。こうして日本は異世界において、イギリスに次ぐ核保有国となった。更に日本の強みである宇宙ロケット技術を応用し、陸上サイロから発射する大陸間弾道ミサイルの開発に着手。既存のH3ロケットをベースに、今回完成した新型の核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルをグラメウス大陸日本領区域に配備。同基地にはイギリス陸軍所属の大陸間弾道ミサイル部隊も配備され、日英両国合同の核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイル基地となるのである。
「これで日英の結束は更に強化される。古の魔法帝国に立ち向かうには、日英の結束は不可欠だ」
「ですが、神聖ミリシアル帝国が気がかりです。将来的には同国とイギリスが覇権争いをしかねません」
「日英同盟を破棄しろとか、言いかねないな。まるで昔のアメリカだ」
日英両国の絆が深まる中、日本はイギリスと神聖ミリシアル帝国の対立を危惧するのである。
グラメウス大陸日本領区域
日英合同弾道ミサイル部隊基地
「・・・・・国王陛下並びに首相からの命令を確認。グラ・バルカス帝国首都に新型の核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイルを1発発射せよとのこと!!」
日英合同の大陸間弾道ミサイル基地では、イギリス本国からの命令が伝えられる。
「・・・・・確認した。核ミサイルの発射を許可する。発射準備!!」
「ははっ!!」
各員所定の手続きに従い、発射装置の安全装置を解除していく。そして遂に・・・・
「発射準備完了!!」
「発射!!」
ミサイルサイロの一角から大陸間弾道ミサイルが発射される。目標はグラ・バルカス帝国帝都ラグナ。イギリス人を虐殺し、更には宣戦布告までした驕り昂った敵国。その出鼻を挫くべく、新型の核弾頭を搭載したミサイルが放たれた。
「ちなみにミサイルの名前は何だったか? 日本側がつけた名前をそのまま採用したはずだが?」
「マサカドです。怨念が凄まじい程強く、あのGHQですら手出し出来なかったという、平将門から取られたとのこと」
「わざわざ日本人はお祓いまでしていたな。そんなにヤバいヤツなのか・・・・」
大英帝国の意思がラグナに降り注ぎ、後悔する日は近い。日本人は哀れに思い、イギリス人はザまあ見ろと思うのである。
エスペラント王国 王城
「それでは、署名をお願いいたします」
イギリスがグラ・バルカス帝国に報復している頃、エスペラント王国の王城では、同国とオーストラリア、ニュージーランドによる国交樹立並びに両国の境界線に関する条約、エスペラント条約が調印された。
「人類は滅びていなかった。この事実は大きい」
条約の批准式に参加したエスペラント王国側の関係者はそう呟いた。今から2ヶ月前のことだった。
グラメウス大陸ニュージーランド領区域
オーストラリア・ニュージーランド連合軍
「撃て!!」
オーストラリアとニュージーランドの連合軍はこの日も魔獣の駆除作業に従事している。オーストラリア領区域に出現した魔獣の群れをひたすらに追撃していたオーストラリア軍だったが、魔獣の群れはニュージーランド側の区域に逃げ込んだ。これを受けてオーストラリア政府はニュージーランド政府に協力を要請。これを快諾し、両国は連合軍を結成。順調に害獣を駆逐していっていた。
「しかし、潰しても潰しても現れやがって・・・・」
「せっかくの手付かずの天然資源も、これでは宝の持ち腐れですな」
天然資源の宝庫であるグラメウス大陸であったが、魔王の配下であった魔獣が跋扈しており、日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、それぞれが領有することになった地域で大規模な駆除作業を実施していた。ちなみにイギリス側の区域では、魔獣を誘き寄せて核実験を実施することで大量の魔獣駆除と実験データの確保をしており、日本とカナダをドン引きさせている。
「隊長! 先行するニュージーランド軍より連絡!! 明らかに人の手で作られた要塞を発見したとのこと!!」
「なに?! 人はいるのか?」
「たった今、装甲車に向けて矢を射掛けられたとのことですが、乗員は無事です」
「敵意がないことを示せ。話し合いができないかを模索せよ。未確認国家の可能性がある!!」
その過程でオーストラリア軍とニュージーランド軍が明らかに人の手で作られた要塞を発見したことが出会いのきっかけであった。
「接近中の鉄の箱ですが、全く効いていません!!」
「モルテス団長!! 鉄の箱から人が出てきました!! 見覚えのない旗を振っていますが、敵意はなさそうです!!」
「なんだと?!」
エスペラント王国の防衛戦を死守する騎士団の団長モルテスは、部下からの報告に驚く。エスペラント王国を人類最後の砦と信じている彼らにとって、外部からの人類の流入は全くの想定外であった。
「まさか過去に派遣した調査隊の末裔か?」
団長は城壁に登り、旗を振るニュージーランド軍の兵士を見つめる。
「・・・・見たことのない旗、見たことのない服装、見たことのない武装・・・だが、どうみても我々と同じ人類だ・・・信じられん・・・」
「まさか、奇跡的に城壁の外にも存続しているグループがあったのではないでしょうか?!」
副騎士団長の発言に皆は歓喜する。自分たちは孤独ではない。その可能性が高まったからだ。
「彼らを歓迎するぞ!! 急ぎ門扉を開けよ!!」
「ははっ!!」
「先行するニュージーランド軍より通信!! 現地人との接触に成功。よく分からないが、大歓迎を受けているとのこと!! また、速やかに合流されたしとも!!」
「承知した! 我々も行くぞ!!」
オーストラリア軍はM1A1エイブラムス戦車を先頭にエスペラント王国へと向かう。先に接触したニュージーランド軍の紹介もあり、何の妨害を受けることなく入国。城壁を死守する兵士らかは大歓迎を受けることになる。
エスペラント王国城塞都市司令部
「・・・・では、貴殿方は海を越えた先にある国の者達であると!?」
オーストラリア軍並びにニュージーランド軍の代表者と会談した騎士団団長モルテスはこれまでの常識を覆す話に驚く。
「はい。我が国は此処の大陸、ニュージーランドはその近くにあります」
異世界の世界地図を使い、この世界について説明するオーストラリア軍とニュージーランド軍の代表。エスペラント王国側は聞き漏らしてはなるまい、と真剣に話を聞いている。
「なんと! 貴国の軍は魔獣をいとも簡単にねじ伏せられるのですか?!」
「はい。我が国からすれば、一息に蹴散らせる敵です。我々は魔獣駆除の為に活動しており、我が国の領域に現れた魔獣がニュージーランド側に移動。それを追撃していたところ、貴国の城塞を発見したのです」
その後モルテスはオーストラリア軍並びにニュージーランド軍の装備を見学した。戦車や装甲車の試乗や小銃の試射等、先進的な装備の数々にただただ驚愕した。
「・・・・・い、急ぎ王城に報告しなくては!!」
その後、エスペラント王国はオーストラリア軍並びにニュージーランド軍を王城に招待。数日後には外交官を乗せたオーストラリア軍の輸送機が到着。実務者協議が実施され、エスペラント王国は外の世界との国交を樹立。国境線も確定し、イギリス主導の国家連合コモンウェルスにも加盟。日英に倣った立憲君主制国家への移行を進めると共に、軍の近代化にも着手。また外交関係については、人手や情報が足りないことに加え、大国の傘下に入りたいという事情から国境を接するニュージーランドが利益代表を務めることになった。後に同国は日英からの投資を受け、経済成長を遂げることになる。
神聖ミリシアル帝国カルトアルパス
駐神聖ミリシアル帝国日本領事館
「思ったより早く再建されたな」
「しかも日本本土と変わらない仕様にもなったンだよなあ。ありがたいことだ」
グラ・バルカス帝国による空襲で燃え尽きた日本領事館であったが、戦後の復興事業に伴い再建。その際に日本式に改められ、今までは使用出来なかった電化製品の使用が可能となった他、水道の蛇口から水が飲めるようになっていた。
「たまたま東京を視察中だったカルトアルパス市長の発案で、日本式の電化方式や上下水道の導入が決まったのが大きいわね。元々東京都から支援して貰うつもりだったのが、今回の空襲で早まった感じね」
世界最強を自負する神聖ミリシアル帝国では、自国の製品、システムこそが世界最高峰と信じて疑わない者が多かった。しかし、様々な国家の交流の場となっているカルトアルパスでは、他国の優れた技術やシステムが流入しやすく、それを受け入れる下地が整っていた。カルトアルパス市長フリードリッヒは、パーパルディア皇国やムーからもたらされる情報を多数見聞きしており、日英との国交樹立前から両国に強い関心を寄せていた。国交樹立後、実際に日本企業の電化製品や発電システム、更には上下水道について日本領事館を質問攻めにしていた。彼はこれまでに得られた情報から、日英は自国よりも優れた文明を有していると直感。カルトアルパス近代化政策を発表し、日英からの投資を呼び込みながらカルトアルパスの発展をはかる政策を市民に向けて公表した。初めは理解を示すものは少なかったものの、日英の製品が徐々に流通するに連れて、政策に対する支持も上昇。世界会議開催1ヶ月前に開会されたカルトアルパス市議会にて、カルトアルパス近代化政策は賛成多数で可決。フリードリッヒ市長らは東京都からの支援を受ける為に日本へ渡航。その視察中にカルトアルパスは灰塵に帰したものの、むしろ邪魔な建設物が除去されてちょうどよいという状態であった。
「まだ一部だけだが、蛇口から水が飲めるようになって市民は喜んでるみたいだな」
「まあ、飲める日本が異常とも言えるンだがな。そういえば、昨日から火力発電所が操業を開始したな」
「たまたま攻撃を受けなかったヤツね。新たな雇用が生まれたと、昨日市長から感謝の手紙が来てたわね」
「あとは更地になった広大な土地にクソデカショッピングモールが出来るらしいな」
「イオ○カルトアルパス中央店が出来るらしいな。アイも買い出しが楽になるンじゃないか?」
「でも、領事館で炊事担当が私しかいないから領事館職員の食事提供で忙しくなるのが複雑・・・」
「逆に今までは給料泥棒だったんだから働いて返しなさい。貴女を庇うのも大変だったんだからね」
「ぐぅ・・・・分かりました、お姉さま・・・」
後にカルトアルパスは日英の支援とフリードリッヒ市長の手腕により、帝国一発展した港町となるのである。また、生活水準だけなら帝都ルーンポリスをはるかに上回るとして、神聖ミリシアル帝国国内では人気の赴任先となる。
「領事館職員用の部屋が出来たって言っても、完全個室にはならねえんだな」
「仕方ないじゃない。イギリス政府と違って、日本政府は広大な敷地を要求しなかったんだから。むしろイギリスの領事館には完全武装の陸軍が平気で常駐しているわよ」
「げっ・・・よく神聖ミリシアル帝国政府はキレないな」
「キレてはいるらしいよ。ただ、フリードリッヒ市長や市議会は本国政府は信用出来ないとして、イギリス海軍を誘致しようとか言ってるみたいよ」
「そりゃあ、精鋭艦隊はなすすべなくやられて、街を空襲されたんだからなあ・・・一方の日英軍は侵略者を追い払い、更には捕虜を多数獲得したンだ。どちらの方が頼りになるかなンて明らかだからな」
「自国の軍を信用出来ないって、終わってない?」
「おいアキコ! ベッドが人数分ないぞ!! 床で寝ろとか言うのか!?」
「この部屋は4人部屋だけど、机や本棚、その他家電製品を置く関係でベッドが3つしかないのよね。まあ、誰かは起きてるだろうから大丈夫だと、本国は思ってるらしいわよ」
「じゃあ、私がお姉さまと一緒に寝る!!」
「はあ?! ふざけるなアイ! 夫である僕が優先だろう!!」
「はあ?! そうやってお姉さまのことを犯すつもりでしょう!! まだ子作りには早いわよ!! 本国に帰ってからにしてよね!!」
「あんたらさあ、本当に無礼千万よね」
「それだけお前のことが好きなンだよなあ、あいつらは。良かったじゃン」
シンとアイは暫く喧嘩していたが、アキコとアキラは二人を放置して就寝。その後疲れはてた二人は床でそのまま就寝し、翌日の朝アキコに蹴り飛ばされて目覚めることになる。
「起きろこのクソガキ共!!」
「うへ?!」
「いった~い!!」
「あはははは」
「お前は黙れ、今の私は非常に機嫌が悪い」
「へ?」
なお笑っていたアキラは、機嫌の悪いアキコにノコギリクワガタの形をした目覚まし時計を投げつけられ、アゴの部分が鼻の穴にクリーンヒットし、暫く悶絶することになる。
「本国には領事専用の部屋を作って貰うように要請しとかなきゃね」
この後流石に領事専用の私室くらい用意してやれということになり、アキコ専用の私室が増設された模様。
「お姉さまがいなくなってしまったわ・・・」
「その前に男と同じ相部屋にされてることに怒るべきなンだよなあ」
「いや、だって他の女と馴染めないし、シンがお姉さまの部屋に行かないか監視しないといけないし」
「は? お前アキコの従妹だからと調子に乗りやがって!」
「うっさいわね! このクソガキ!!」
「お前も大概じゃねえか! いい加減姉離れしろよ!!」
「ま~た始まったンだよなあwww領事の夫と従妹による痴話喧嘩がwww消灯するから怪我はすンなよ~」
二人は電気が消されても喧嘩をしていたが、力尽きてベッドで就寝。翌日、またもやアキコに蹴り飛ばされて起床した模様。
「・・・・・・zzz・・・・zzz」
ちなみにシンとアイが喧嘩していた時、ようやく私室を確保したアキコ領事は久々にぐっすり寝れたそうである。
「あのバカ達は・・・・むにゃむにゃ・・・・・ただ、むにゃむにゃ・・・・切るわけにも・・・むにゃむにゃ・・・いかないし・・・zzz」
(続く)