日英同盟召喚   作:東海鯰

62 / 111
東京動乱2

東京都千代田区霞が関

警視庁

 

「警視庁から三田」

「三田です、どうぞ」

「それでは、110番が入っております。最寄りのPB員等の派遣をお願いいたします。場所は泉岳寺駅、浅草線の泉岳寺駅までお願いいたします。気分が悪くなった者が3名程いるとのことです」

「三田了解」

 

始めは、体調不良者が出ただけだ。誰しもがそう思っていた。しかし、

 

「警視庁から三田」

「三田です、どうぞ」

「それでは、次の場所にもPBの派遣をお願いいたします。場所は三田駅、浅草線の三田駅事務室までお願いいたします。先に泉岳寺駅で発生した事案と同様やもしれませんが、目が見えない、呼吸が苦しいという者がいるそうです。また、G事案に関連がないかも合わせて調査せよ」

「三田了解」

 

しかし、後に三田駅、大門駅、人形町駅と浅草線各所から体調不良者が続出しているとの通報が入る。これはおかしい。誰もがそう思った。

 

「三田2から警視庁」

「警視庁から三田2、どうぞ」

「此方、浅草線の大門駅! 浅草線は全線でストップしています。更には救護中の駅員やPBも倒れたとも連絡が入っています。また、大門駅に停車中の運転士の証言ですが、大門駅に停車中の京成高砂行の電車、京成高砂行の電車の3号車に不審物があるとのこと!」

「不審物は3号車、間違いないか?」

「間違いありません。鑑識を要請します。また、状況から鑑みるに、防毒マスクの着用が必要と判断します」

「警視庁了解」

 

これはもしや・・・全員の脳裏に地下鉄サリン事件が過る。

 

「警視庁から各局、浜松町1-27-12中心5キロ圏の警戒配備を発令する。 なお、既報の通り浅草線、浅草線にて薬品がまかれ病人が出た等、事案が発生している。あるいはG事案に発展するやもしれず、事態の究明にあたれ、以上警視庁」

 

しかし、その後も被害の報告が後を絶たない。体調不良者の報告は増え続ける。

 

「警視庁から各局、浅草線の沿線要点配備を発令する。西馬込から押上と、京急線の品川から泉岳寺とし、沿線を管轄する各所とする」

 

浅草線で事案が発生したことから、警視庁は都営地下鉄浅草線と京急本線の一部に沿線要点配備を発令。更に警戒レベルをあげる。この時点ではまだ、浅草線以外からの通報はなく、また全体G配備とななっていない。

 

「麹町から警視庁」

「警視庁から麹町、どうぞ」

「先ほど、英国大使館から入った情報であるが、一連の浅草線における病人騒ぎは、グラ・バルカス帝国による破壊工作である可能性が非常に高いとのこと。英国側がどのようにして情報を得たかは不明ではあるが、少なくとも我が国または英国内でテロ事件を起こすことで、厭戦感情を引き起こすことが狙いであるとのこと」

「警視庁了解。なお確認しますが、この情報は英国大使館独自でしょうか? それとも英国政府公式でしょうか?」

「それについては回答を差し控えるとのことでした」

「警視庁了解」

 

その後警視庁には、三田線、新宿線、大江戸線、東急東横線の各駅からの病人騒ぎの情報が入る。そして遂に・・・

 

「警視庁から各局!! 本日8時10分頃、地下鉄浅草線内にて発生した一連の事案により、全体G配備を発令する!! ただし! 実施署は23区内とする!! 実施署は23区内とする! 以上警視庁!!」

 

遂に全体G配備が発令。都内の警察官は非番を含めて全員召集。警察施設への一斉点検が開始されると共に、検問が開始され、不審物の確保に向けた準備が進められる。

 

 

日本国東京都千代田区永田町

首相官邸

 

「・・・・浅草線を始めとする、一連の地下鉄各線並びに東急東横線における毒ガス散布により、現在東京都内は非常に危機的な状態にあります。よって本件により、自衛隊に対して治安出動をここに命令します!!」

 

首相官邸では、一連の病人騒ぎ事案に対する専門家や有識者による対策会議が行われていた。そして、イギリス政府からの緊急の情報提供により、一連の病人騒ぎはグラ・バルカス帝国の特殊部隊の犯行であり、使われている兵器は何らかの毒ガスであると判明。警察のみでは、治安維持は困難と判断し、日本政府は初めて自衛隊に治安出動を命令した。同時にイギリス政府に対して、日英同盟に基づき支援を要請した。

 

「既に自衛隊は初動対応を実施済みでありますが、治安出動を命じたことにより、対応にあたる隊員の規模を拡大し、国民の皆様の不安を払拭し、一人でも多くの被害者を救われることを願います。同時に政府機関に対する防護を強化し、更なるテロを未然に防止してください」

 

治安出動が命じられたことにより、近隣の部隊が動き出す。皇居、首相官邸、防衛省、東京駅等都内の主要施設周辺に自衛隊とイギリス軍の戦車や装甲車が展開。その穴を埋めるように警察の車両が展開。百里基地からはF35が2機常時都内上空を飛行。横須賀基地からは、稼働可能な艦艇全てが出撃し、東京から神奈川一帯の警戒監視活動を開始。また、日英同盟に基づき、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが部隊の派遣及び医療支援を開始。都内は厳戒態勢となっていた。

 

 

東海道新幹線東京駅八重洲口

 

「通路を空けろ!!」

「医療物資が通るぞ!!」

 

西日本や製造元から緊急的にかき集められたPAMが東海道新幹線により、東京駅に到着。予め待機していた警察官や自衛隊員、JR東海職員の手により、迅速に車外に搬出。駅の外へと移送が開始されていた。駅構内は入場規制を実施しており、JR東海、警察、自衛隊が通路を確保。待機している自衛隊の輸送車両に搭載され、迅速に各地の病院へと輸送されていく。

 

 

東京メトロ副都心線池袋駅

 

「お待たせ致しました! 安全確認とれました為、副都心線は運転を再開致します! なお、新宿三丁目駅につきましては、都営新宿線の新宿三丁目駅にて毒ガスが散布されました影響により、一部の出入口を封鎖しております。お急ぎのところ、大変ご迷惑をおかけ致します、申し訳ございません」

(まもなく6番線に、各駅停車和光市行が10両編成で参ります。安全柵の内側までお下がりください)

 

東京メトロと都営地下鉄は、グラ・バルカス帝国によるゲリラ事件により全線で運転を見合せ、被災者の救護活動や被災車両や駅施設の洗浄、点検作業を実施。唯一被害を免れた副都心線は、運転見合せから6時間後に各駅停車のみが運転を再開した。この日は、東武、西武、東急、横浜高速、相鉄との直通運転を中止し、各駅停車のみかつ列車本数が少ない状態となった。この日運転を再開したのは副都心線のみであり、他路線は翌日の始発から平常ダイヤでの運転再開に向けて、準備を進めることになる。

 

 

日本国東京都千代田区永田町

首相官邸

 

「それでは、これより内閣総理大臣石葉茂夫による記者会見が行われます」

 

厳戒態勢の都内に集まった各国の報道陣。彼らの目線で一点に集中する。

 

「まず、今回都内の地下鉄各線並びに東急東横線にて発生した一連のゲリラ事件にて亡くなられた方並びに遺族の方に対しまして、心より哀悼の意を表しますと共に、お怪我をされた方々の1日も早いご回復をお祈り致します」

 

まずは定型文。続けて総理が今回の事件の内容について話す。

 

「今回、東京都内で発生した一連のゲリラ事件について、イギリスの捜査機関と緊密に連携し、現在捜査中であります。現時点では、犯行を実行したのは、グラ・バルカス帝国の特殊部隊であり、使用された毒ガスはサリンであるということが判明しております」

 

各国の報道陣が一斉にシャッターを切る。同時にグラ・バルカス帝国による攻撃が遠くはなれた第三文明圏にまで届いたという事実に各国の報道陣は騒然とする。

 

「現時点での死者は81名、負傷者は8100人となっており、更に犠牲者や負傷者が増えることが予想されています。少しでも違和感を感じた場合、迷わずに病院を受診するようお願いいたします」

 

その後、質疑応答に移る。

 

「TOKYO新聞の餅月です。今回の地下鉄を中心としたテロ事件が起きた原因は、日本政府並びにイギリス政府による、グラ・バルカス帝国に対する挑発が原因ではないでしょうか? むしろ日本政府はグラ・バルカス帝国政府に真摯に向き合い、話し合うべきではないでしょうか?」

 

記者からの質問に石葉首相はねっとりボイスで返答する。

 

「まず、我が国並びにイギリスは、グラ・バルカス帝国に対して、挑発等一切、しておりません。むしろ、我が国並びにイギリスは、グラ・バルカス帝国から、一方的に宣戦を布告された、被害者の立場です。それなのに、何故、何故真摯に向き合い、話し合う必要があるのでしょうか? 私は理解出来ません」

 

本音では、コイツ、外患誘致罪でしばけねえかな? と思いながら総理は返答した。しかし、餅月記者は止まらない。

 

「理解出来ませんじゃなくて、総理は理解する気がないんです!! 総理のせいで国民に死者が出ているんです!! 責任を感じないのですか!!」

「一国の総理として、責任を感じております。ですから、犠牲になられた、または被害を受けた国民の皆様に寄り添い、必要な支援をしていく、これこそが総理の責任である、そう考えております」

「全くの0回答です!!」

 

ギャーギャー騒ぐ餅月記者であったが、余りにも自分勝手過ぎた為、退室するように司会から命じられる。それを拒んだことから、女性職員により強制的に会見場から排除される。

 

「独裁者! 恥を知れ!!」

 

やかましい女が排除されると、次の記者に質問権が割り当てられる。

 

「イギリスのYJUニュースです。今回、東京で起きた一連のゲリラ事件により、日本国内では核兵器による報復を求める声が高まっています。日本政府として、核兵器による報復は検討しているのかどうか、お聞かせください」

「ご質問ありがとうございます。現在、防衛省並びに外務省にて、対応策について、検討中であります。核兵器による報復の可能性も含めて、現在慎重に検討している状況であります。しかし、我が国が保有している核弾頭はわずかな物であるのは、周知の事実であり、我が国が保有する核弾頭による報復は、可能性は0ではないものの、難しいのではないか、そう考えております」

「と、なりますと我が国の核弾頭が使用されるのでしょうか?」

「それについても、現在日英両国の当局者にて検討している次第でございます」

 

何故イギリスが保有する核弾頭を日本が使用するのか。それには日英両国の事情があった。

 

まず日本側であるが、核実験には成功したものの、保有している核弾頭は10発にも満たず、予算や製造ラインの兼ね合いから一気に大量の核弾頭を製造することは不可能であった。そのため、日本が保有する新型の核弾頭は虎の子の切り札であり、おいそれとは使えない。

 

一方のイギリス側であるが、こちらはむしろ核弾頭が余っていた。イギリスは古の魔法帝国ことラヴァーナル帝国復活に備えると共に、老朽化しつつある既存の核弾頭を置き換える必要があった。その為日本の核武装に全面的に協力し、グラメウス大陸にて積極的に核実験を実施。使用するウランやプルトニウムの産地による違いも調べながら新型の核弾頭を生産し、徐々に既存の核弾頭を置き換えつつあった。そこまでは良かったのだが、問題はその先。置き換えられた既存の核弾頭の処分である。これがまた厄介な曲者であり、そこら辺にポイポイ捨てるわけにもいかず、かと言って解体するにも莫大なコストがかかる。いっそのこと兵器として使ってしまった方が安上がりなのである。しかし、いくら敵国とは言え、何の理由もなしに核を使うわけにはいかない。核の在庫処分を行う口実が必要だったのである。今回の東京で発生した、グラ・バルカス帝国によるゲリラ事件は、核兵器使用の格好の口実となる。更に日英同盟があるため、日本に対するテロ攻撃は、イギリスに対するテロ攻撃でもある。現在イギリス政府は、日本政府に対して在庫処分待ちの核弾頭の譲渡を提案して来ており、これを日本政府が受け入れるかどうかの話であった。

 

その後、幾つかの質問が行われた後に記者会見は終了。翌日、自衛隊を治安出動させたことに対して、国会での事後承諾を求める採決が行われた。一部の極左政党を除き、ほぼ全ての政党が賛成。自衛隊の活動は国会での承認がなされ、法的根拠を得た。発令から3日後には、治安出動は解除され、各部隊は各々の基地へと戻ることになる。

 

 

神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス

駐神聖ミリシアル帝国日本領事館

 

「・・・・・・面倒なことになったわ・・・・」

 

パソコンの前で本国からの命令に、頭を抱えるアキコ。

 

「速やかにグラ・バルカス帝国が実効支配しているレイフォルに向かい、最後の外交交渉を実施せよ・・・これ、明らかに拒否されるの前提じゃない・・・」

 

最悪生きて帰れない。そう肌で直感したアキコ。

 

「一人で行くべきなのだろうけど・・・・」

 

アキコの脳裏にシンの笑顔が浮かぶ。

 

「もし帰って来れなかったら、シンはどうなる? 最悪自殺しちゃうよ・・・・ね・・・・」

「アキコ~、今日は中々部屋から出てこないじゃないか」

 

空気を読まずに入ってくるシン。アキコは即座にパソコンを閉じる。

 

「・・・・・シン」

「どうしたんだアキコ? そんな辛そうな顔をして? 美しい君には似合わないじゃないか」

「・・・・・・シン、お願いがあるの」

「なんだ? そう、かしこまらなくても良いじゃないか。何時もの毅然としたアキコらしくないぞ」

「・・・・・・私とレイフォルに行ってくれと言われたら、貴方は行く?」

 

行かない。アキコはそう言って欲しいと願った。

 

「・・・・・・僕にとってアキコ、君は太陽なんだ。君が僕の人生を照らしてくれるから、今日がある。君がレイフォルに行くというなら、僕が一緒に行かない理由なんでないだろう!!」

 

ある意味予想通り、ある意味期待通り、あるため期待外れの回答だった。

 

「・・・・・・ありがとう。やっぱりシンって、馬鹿よね」

 

アキコはシンに抱き着いてきた。アキコの方から抱き着かれたシンは顔が赤くなる。

 

「・・・・・・本国からの命令よ。我が国はグラ・バルカス帝国による、東京都内でのゲリラ事件に対して、イギリスが保有する核弾頭を用いて徹底的な報復を実施する。しかし、我が国は平和を希求する国家として、彼らに最後のチャンスを与えることにした。遺族や被害者、事業者に対する多額の賠償、責任者並びに実行犯の身柄引き渡し。これらを要求し、受け入れるか否かをレイフォルで突きつけてこい、と。拒否すれば、即座に報復し、その様子を彼らに見せつけろと」

「・・・・・・成る程、グラ・バルカス帝国側の対応次第では、最悪生きて帰れない。そう考えたんだね、アキコは」

「いくらレイフォルにイギリスがスパイを潜り込ませてると言ったところで、私達を安全にムーまで脱出させられるかは未知数。現地のパルチザンと手を組んでいるとは聞くけど、上手く行くかも未知数。シン、一緒に来てくれる? 生きて帰れたら、職務遂行の為にずっとわたしが我慢してた、そして貴方にずっと我慢させてた貴方の子を産んであげるわ」

「産むのは僕の子じゃない。君と僕の子を、だろう」

 

覚悟を決めた2人は本国に対して、アキコとシンの2人でレイフォルに出向き、日本政府の強い意思を突き付けることを承諾した。同時に、生きて帰れたら長期休暇を付与することを外務省に要求し、これが認められた。翌日、2人は神聖ミリシアル帝国を出発。経由地であるムーへと向かった。

 

「お姉さま・・・生きて帰ってくるかしら・・・」

「さあ? ま、簡単に死ぬようなタマじゃねえから、心配はいらないンじゃねえか?」

「そもそもアキラさんは自衛官でしょ! なんで一緒に行ってあげないんですか!!」

「誘われてねえし、そもそも俺一人が行ったところで変わりはしねえ。なら、2人に任せるべきだろ」

「要は臆病者ってことね! お姉さまが死んだら貴方のせいよ!!」

「まあ、死んだら作者が泣くから死なねえだろうよ」

「マジレスするな!!」

「あとシンのことも心配してやれよ」

「あんなお姉さまを誑かす金食い虫なんか心配するもんか!! プンプン!!」

「やれやれ・・・」

 

 

イギリス領ニュー・ホンコン

ニュー・ホンコン総督府

 

「アオイ、特殊部隊はレイフォルに潜り込ませれた?」

「準備万端よ、ハル兄。既にレイフォル市内や会談が行われるレイフォル出張所仮宿舎、そして港にニュー・ホンコン総督指揮下の特殊部隊隊員、そしてグラ・バルカス帝国に対するパルチザン活動を行っている、自由レイフォル軍の精鋭が潜伏しているわ。もし奴らがハル兄の友人に手をかけようとすれば、直ぐに動くわ。そして、何故かは知らないけど、バーニングクイーンと風来王を名乗る2人のパイロットがムー空軍の爆撃機と戦闘機で航空支援しに来るらしいわ」

「自由レイフォル軍・・・確か我が国が支援しているパルチザン組織だったか。最近では対戦車ミサイルの使用を開始したと聞いてるけど」

 

神聖ミリシアル帝国がレイフォル皇帝の血筋を引く者を庇護し、将来的にレイフォルを従属化に置いた上で再建しようとしているように、イギリスも独自にレイフォルの再建を試みていた。イギリスは、そもそもグラ・バルカス帝国が増長した原因はレイフォル皇帝にあると考えており、端からレイフォル皇帝の血筋を引く者を擁立する気はなかった。レイフォルを英国国王が国家元首を務めるレイフォル王国として再建し、英連邦の一員とすることで、新たな利権を作ろうとしていた。そこでイギリスは、現地で武力闘争を続けるパルチザン組織に接触。複数回に渡る交渉にて、各地のパルチザンは自由レイフォル軍として再編成。イギリスは武器、弾薬、食料、訓練を提供し、グラ・バルカス帝国に圧力をかける。イギリスは神聖ミリシアル帝国が中心となって行う一大懲罰作戦は失敗すると踏んでおり、その後を見据えて動いていた。

 

「確か我が国はムーに戦力を徐々に移動させているそうだね」

「明らかに神聖ミリシアル帝国が敗北した後を狙った動き。まあ、あんな模倣国家風情が勝てるわけないしね」

 

既にイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは陸海空の戦力をムーに向けて移動を開始。東ロウリア王国、リーム王国、メスマン帝国に備える一部の部隊は残しているものの、かなりの大部隊が第二文明圏へ向かっている。日本はイージス艦2隻と僅かな航空戦力を追加で派遣する以外は、第三文明圏における留守居の役割であり、英連邦王国軍が安心して遠征出来る環境整備に邁進している。これにより、

 

第二文明圏遠征国

イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド

 

第三文明圏留守居国

日本、クワ・トイネ公国、クイラ王国、西ロウリア王国、ローデシア連邦、その為フィルアデス大陸条約機構加盟国

 

遠征したがるイギリスと、引きこもりがちの日本。真反対な両国が何故か上手く連携出来ているという不思議な構図が出来上がったのである。

 

「しかし、ハル兄の要請は驚いたわ。私の指揮下にある特殊部隊を大至急レイフォルに送ってくれ、だなんて」

「僕の友人が、彼らに最後の情けをかけに行くんだ。クズ共のことだ。僕の大切な友人に手をかけるかもしれない」

「お手軽に核のボタンで何十万人の人間を殺した男がたった2人の友人の命を気にする・・・・彼方からみたら悪魔にしか見えないでしょうね」

「あははは! 確かに!!」

 

2人の元に淹れたての紅茶が届けられる。2人はそれを口に運び、繊細な味わいを楽しむ。

 

「なんせ、人の命は平等じゃない。どんなに能力がある者でも、運がなければ、それを発揮出来ずに死んでいく。確かに僕は何十万人の人間を殺しただろう。だけど、僕からしたら、僕が殺した何十万人のクズ共と、アキコとシンの命。後者の方が圧倒的に重い。そう思うけどね」

「ハル兄は昔からそうよね。味方にすると心強いけど、敵にすると徹底的に潰しに来る」

「そうでもなければ、大英帝国の外交官なんか勤まらないさ」

「ハル兄なら間違いなくそうよね。しかし、バーニングクイーンに風来王・・・・何者なのかしら?」

「それについては僕もよく分からなかったよ。まあ、航空支援があるだけ良いんじゃない? ちなみにアキコとシンの2人はバーニングクイーンが搭乗する爆撃機が地上を滑走して救出する予定らしいよ」

「牛乳大好き魔王系スツーカおじさんかな?」

「ちなみに爆撃機のパイロットは女性らしい」

「何がなんだか分からないわね」

 

※流石にふざけすぎだろいい加減にしろ!ということで爆撃機による救出作戦は中止。素直に原子力潜水艦を待機させた上で回収することになりましたとさ。

 

 

グラ・バルカス帝国占領下レイフォル

貧民街区域のとある宿

 

「これが今回の保護対象か・・・・」

 

レイフォル市内に潜伏する自由レイフォル軍の兵士達は、イギリス側から提供されたアキコとシンの顔写真を見つめる。

 

「しかし、2人ともかなりの美形だな」

「日本人って、皆顔が良いんですかね?」

「流石にそれはないだろう。この2人が日本人の中では上澄みなだけだろう」

「しかし、グラ・バルカス帝国はろくでもない国を敵に回したよな。大英帝国と日本だろ? 既に本国が酷えことになってるらしいじゃねえか」

「でも、レイフォルから出ていく様子はねえ。むしろ日に日に増えてやがる。本当に酷えことになってるのか?」

「逆だ逆。酷いことになっているからこそ、レイフォルを喪う訳にはいかぬのだ。神聖ミリシアル帝国による懲罰作戦は凌げるだろうが、イギリス軍が徐々にムーに集まりだしていると聞く。本番はそこからだ」

 

自由レイフォルの兵士達は、イギリスの特殊部隊やMI6の職員らと共にレイフォル市内各地に潜伏し、アキコとシンの到着を待つ。また、レイフォル沖合いには原子力潜水艦トライアンフが待機。特殊部隊が二人を救出した後に彼らを収容する為に潜んでいた。また、トライアンフは本作戦が最後の任務であり、本国で試運転中のアキリーズと交代して退役する見込みである。

 

 

グラ・バルカス帝国占領下レイフォル北方

ニューアーク市旧ニューアーク市長邸宅

 

グラ・バルカス帝国の攻撃により、国家が崩壊し、街は壊滅したレイフォル。そんな中でこのニューアーク市だけは攻撃を免れていた。理由としては、ニューアーク市長は首都壊滅の報せを受け、進軍してきた帝国軍に対して即座に降伏を申し入れたこと、そしてニューアーク攻略部隊の指揮官が、グラ・バルカス帝国皇帝グラ・ルークスの四男、グラ・ガルマ大佐であったからであった。

 

「ガルマ様、今日はより一層とご機嫌がよろしいようで」

「おお、イセリア。君こそより一層美しいじゃないか」

 

ニューアーク市を無傷で占領したグラ・ガルマ大佐率いるニューアーク攻略部隊は、ニューアーク市長の邸宅を司令部として、占領統治を開始した。その過程でグラ・ガルマは現地の事情に詳しい秘書をニューアーク市長に要求。ニューアーク市長は自身の娘を差し出し、同時に命と地位の保証を懇願した。幕僚らが嘲笑する中、グラ・ガルマ大佐はこれを快諾。それどころか、彼を自らの補佐官として任命するという厚遇ぶりであった。これには、ニューアーク市長も感激し、彼は積極的に帝国の為に尽くす傀儡へと成り下がることになる。

 

「君のお父上は本当によく働いてくれるよ。彼がいなければ、このニューアークの統治も軌道には乗らなかっただろう」

 

事実、帝国占領下の都市で唯一占領統治が上手く行っているのが、ここニューアークであった。元々顔立ちがよいグラ・ガルマ大佐、帝国皇帝の四男というお坊ちゃん育ち、にも関わらず戦車乗りの一人として戦場の最前線で戦う武骨さ、そして人誑しな性格と、占領下にあるニューアーク市民からも、占領する兵士達からも人気のある帝国軍人であった。非常に安定しているニューアーク市には、グラ・バルカス帝国本国の財界も注目しており、投資が積極的に行われ、現地の市民が雇用され、そして過度な労働の強制や虐待を許さないというお坊ちゃん育ちの司令官の姿勢がニューアークの統治安定化を作り出していた。

 

「これも全て、聡明なるガルマ様のお陰ですわ」

「イセリア、君が僕のことを支えてくれるから何とかなっているんだ。誇って良いんだぞ」

 

夜のバルコニーで占領軍の司令官と市長の娘が2人きり。初めはギクシャクした関係だった2人も、やがて人誑しの司令官に絆され、何時しか恋人同士の関係に。司令官は本国の父に対して、彼女との結婚を望んでいるが、

 

「占領地の原住民の女に現を抜かすとは何事であるか! 貴様はそれでも栄光あるグラ・バルカス帝国軍人か!!」

 

と、叱責。更にレイフォルの司令部からは、

 

「ニューアークの統治が緩すぎる!! 原住民は奴隷に過ぎん!! ガルマ大佐は原住民に甘すぎる!! お坊ちゃん育ちが抜けていない!!」

 

と、此方からも叱責。しかし、それでも彼は彼女との恋を諦めてはいない。むしろ、彼女との恋が叶うのであれば、祖国を捨て、レイフォルの民として暮らす覚悟すらあった。

 

「そういえば、レイフォルには間も無く神聖ミリシアル帝国による懲罰作戦が行われると聞いています。ガルマ様は行かれるのですか?」

「ニューアーク駐留軍には出動命令は出ていない。だからこのままさ」

「それは良かったです。もしガルマ様が戦死なんてされたら私・・・」

「泣くなイセリア。私は確かに軍人だ。だが、同時にニューアークの市民の命を預かる行政官でもある。もし仮に神聖ミリシアル帝国やムー、そして最近頭角を表している日本やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国がこのニューアークに来るのであれば、市民の為に、私についてくる兵士の為に最善の策を取るだけだ」

 

今宵も司令官と市長の娘の密会は続く。

 

(・・・・・・世界連合は蹴散らせるだろうが、日英に勝つことは不可能であろうな。スパイをムーに潜り込ませ、更にはお父上のご学友に情報を提供して頂いたが、日英の国力は我が帝国を遥かに凌駕する。そんな帝国相手に負けると分かっている戦をしようという、お父上のお気持ちが分からぬ・・・・)

 

彼は帝国の勝利よりも、配下の兵士やニューアーク市民の命を最優先に頭をフル回転させる。

 

(・・・・・レイフォリアの情報局に資料請求しておくか)

 

(続く)

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。