日英同盟召喚   作:東海鯰

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海戦前夜

神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス

 

世界の富が集まる神聖ミリシアル帝国。近年はその富が東京やロンドンに流出しつつあるが、その中でも最も繁栄している首都ルーンポリスの中心部に皇帝の住まう皇城があった。

 

 

アルビオン城皇帝執務室

 

帝国の対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部の部長、ヒルカネ・パルぺは皇帝陛下からの直々の呼び出しがあり、皇城を訪れていた。陛下からの直々の呼び出しとあって、緊張しながら部屋の前に立つ。ドアが開き、皇帝陛下の従者の指示に従って部屋に入った。部屋の中にはテーブルと椅子が設置してあり、テーブルの上には帝国の名産品の紅茶が置かれ、微かな湯気を上げていた。その先には世界の王たる皇帝ミリシアル8世が座っていた。

 

「座るがよい、茶でも飲みながら話そう」

 

彼は陛下に言われるまま、椅子に腰かけた。

 

「緊張しているのか? まあ茶でも飲め、うまいぞ」

 

世界の中心に住まう帝の前で緊張せぬはずがない。1省庁の1部長を皇帝陛下が呼びつける事態、異例中の異例なのだ。彼は1口お茶を口に含む。緊張で味など感じなかった。

 

「陛下、このたびはどういったご用件でしょうか?」

 

対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部

 

帝国の各地で発掘される古の魔法帝国の超兵器。この超兵器を分析し、自国の国力増強に使用するのはもちろんの事、時々未だ使用可能な状態で発掘される兵器の補修、分析、そして運用までもを担当している部署。来るべき古の魔法帝国との戦いの際には最も必要とされる部門の長が呼ばれたという事は・・・・

 

「余が君を呼びつける理由、想像がついているのであろう?」

「魔帝復活の兆候を掴んだのでしょうか?」

「いや、グラ・バルカス帝国の件だ。」

 

ヒルカネ・パルぺはたかが1文明圏外国家のために、神聖ミリシアル帝国の超兵器運用部門の長である自分が呼ばれる意味が良く理解出来なかった。

 

「港町カルトアルパスを急襲した野蛮な民の国ですか、アグラ国防長官が3艦隊を派遣し、さらに世界連合がレイフォル沖合に展開する艦隊を殲滅するために向かっていると伺っています」

 

沈黙。皇帝陛下がゆっくりと話はじめる。

 

「余は念には念を重ねる主義でな、本大戦に古代兵器の投入をしようと思っている。このグラ・バルカス帝国艦隊を殲滅するために空中戦艦パル・キマイラを、そうだな・・・2隻ほど派遣せよ」

 

「なっ!!!!」

 

古の魔法帝国の発掘兵器、『空中戦艦パル・キマイラ』、国内で7隻が発掘され、運用可能な数はたったの5隻しか無い古代兵器、このうち2隻もの超戦力の投入。しかもそれが対文明圏外国家であることに彼は耳を疑った。

 

「失礼ながら陛下、パル・キマイラはまだ良く構造が理解できない部分があります。万が一にでも撃沈されたら代わりはありません。新たに作る事が出来ないのです。どうかご再考を!!」

「作れない事も、代わりが効かない事も解っておる。私は嫌な予感がするのだ」

「と、いいますと?」

「国防長官アグラは3艦隊もあれば十分に撃滅できるとの試算を出した。しかし、我が帝国は来るべき全種族の・.・・種としての存亡をかけた戦いを少しでも有利に進めるために、発掘された遺跡群から古の魔法帝国の力を推測し、世界史上最大の帝国を仮想敵国として発展してきたため、他国と大きな力の差がついている」 

 

ヒルカネは皇帝陛下の言葉をかみしめるように頷く。彼は続ける。

 

「差が付きすぎて、他国に対して性能面において勝ちすぎているのだ」

「しかし、それは良い事ではないのですか?」

「国家としては極めて良い事、最高と言っても良く、解析も技術も軍も、良くやってくれていると思う。しかし・・・・連戦連勝は、仮に気を付けていても目をくらます場合がある。国防長官アグラは優秀だ。決してグラ・バルカス帝国を侮ってはいないだろう。だが、心の奥底に油断があるように感じるのだ。科学文明国家・・・侮ってはいけない敵だ」

 

ヒルカネは皇帝の言葉をかみしめる。

 

「かしこまりました。仰せのままに・・・古代兵器、空中戦艦パル・キマイラを2隻、グラ・バルカス帝国討伐に派遣いたします」

「頼んだぞ、軍部の方には話をしておこう。万が一、1隻でも落とされるような事があれば、すぐに撤退せよ」

「古代兵器が落とされるような事は考えられませんが、承知いたしました」

 

出撃日の許可をもらい、多少のやり取りの後、ヒルカネは部屋を退室した。

 

「・・・・これで負ける事はあるまいが・・・・傲慢なる異界の帝国は殲滅せねばな」

 

皇帝ミリシアル8世は窓の外を眺める。

 

「それに、ここで我が国が力を見せることが出来なければ、日本国と英連邦王国がより一層勢力を増すだろう・・・既に外務省や国防総省では、将来の仮想敵国として日英を挙げる者が出てきておる・・・・経産省からも、日英との間で多額の貿易赤字を計上しており、富が日本の東京や英国のロンドンに流出していることも余に報告があった・・・・最近は英国の金融業がルーンポリスに進出して来てもおる・・・既にカルトアルパスは日本の経済的植民地だ・・・負けるわけにはいかぬ・・・・負けてはならぬのだ!!」

 

繁栄を極めし帝都を眺めながらそうつぶやいた。神聖ミリシアル帝国は、第2文明圏旧レイフォル沖合に展開するグラ・バルカス帝国海軍を滅するため、世界史上最強の国家、古の魔法帝国(ラヴァーナル帝国)の発掘兵器、『空中戦艦パル・キマイラ』2隻を同海域へ派遣する事を決定した。

 

同日 神聖ミリシアル帝国外務省

 

「では、勝利した暁には!!」

「はい。貴殿を中心としたレイフォルを復興させ、一人立ち出来るよう様々な支援をすることを約束致します」

 

神聖ミリシアル帝国は、レイフォルからグラ・バルカス帝国を叩き出した後のことを想定して動き出していた。神聖ミリシアル帝国は、レイフォル皇族唯一の生き残りである、レイフォル・ヨハン・ミハイを庇護していた。彼は最後のレイフォル皇帝、レイフォル3世の叔父にあたる人物であり、神聖ミリシアル帝国に居住するレイフォル国民と交流する為に家族と共に滞在していたところで、祖国がグラ・バルカス帝国と開戦。あっけなく敗戦し、亡命を余儀なくされたのである。

 

「ただし、幾つかの条件がございます」

「レイフォルを再建出来るのであれば構わぬ!!」

 

神聖ミリシアル帝国は亡命中のレイフォル皇族、レイフォル・ヨハン・ミハイを首班とするレイフォル亡命政府を樹立。レイフォル政府の要請という形で艦隊を派遣することになる。

 

 

グラ・バルカス帝国情報局技術部レイフォル出張所

 

職員のナグアノは昨日徹夜で作成した報告書と、ムーで入手されたとされる日本国で作成されたと思われる書籍、

 

「緊急特番号!! 日本国・大英帝国とグラ・バルカス帝国が戦えばこうなる!! ~天気は晴れ時々核弾頭~」

 

を手に取り、上司に報告のため、席の前に座って説明を開始していた。

 

「以上、この本に記載されている兵器が仮に実在した場合、我が帝国は破滅的な被害を受ける可能性があります!!」

 

ナグアノは説明に力が入る。超音速で飛行する航空機、マッハ4以上の速度で飛来する誘導弾、そして重巡洋艦をたったの1発で大破させるほどの威力を持つ対艦誘導弾、そして街一つを丸ごと消し去る威力を持つ核兵器。仮にこれらの兵器が実在すれば、軍は壊滅的な被害を受けるに違いなかった。彼の上司、バミダルはこの報告書を見て頭を抱える。

 

「ナグアノ君・・・君はこの本の信憑性についてはどう考えているのかね?」

「はい、我が軍に対する予想、規模はともかくとして兵器の性能は極めて的を得ていると考えます。しかも、この本では日本国及び大英帝国は70年も前に我が軍の軍事水準に達していたとあり、極めて脅威となる存在かと・・・・」

「バカモノ!!!」

 

執務室にバミダルの怒号が響く。付近にいた者達は、何事かと彼の方向を見た。

 

「お前は現実と空想、同盟国への民衆の安心と混乱防止のための欺瞞情報と、現実の区別もつかないのかっ!!! それでも情報局技術部の職員か!! クズ!! 分からないならクズだ!! クズ!! お前はクズだー!!」

 

一喝、彼はつづける。

 

「本件の一番の問題は、我が軍の情報が何処からか第3国に漏れているという事実だ!!! 君の報告書はともかくとして、軍上層部への伝達は、情報漏洩の視点で適正になされるだろう」

 

静まり返る執務室、そして沈黙。上司は諭すように話始めた。

 

「ナグアノ、お前はまだまだ勉強が必要だ。例えば、この本が偽情報かと思われる箇所がいくつかある」

「と、いいますと?」

「この・・・・イージス艦の記述を読んでみろ、同時に200以上の目標を追尾してその中から12目標を同時に攻撃可能とある。しかも、うち漏らした敵は個艦防衛を行い、それでもうち漏らした場合は砲を打ち、最後は20mmバルカンファランクス・・・・飛行する敵の未来位置をも予測して迎撃する。これを行うためには敵の飛行速度、砲の安定、そして弾丸の飛翔速度までもを計算する必要が出て来る。君は今の我が国の電算機の計算速度を知っているかね?」

「すいません、電算分野に関しては、勉強不足で解りません」

「仮に、この本に書いてある事を実現しようとした場合、電算機械だけで戦艦を超えるサイズになる事は間違いなく、下手をすると高層ビルレベルの大きさになる」

「70年にも及ぶ技術格差があれば、それも可能かもしれません」

「いや、70年では現実の電算速度はそこまで上がらない。真空管の小型化にはどうしても限界があるのだ。そして、仮に真空管に変わるものが出たとして、コインほどの大きさまで小型化に成功したとしても、とても大きなものになる。これほどの計算能力のアップ70年ではとても不可能なのだ。400年差があると言われるならば、産業の発達度合いが未知数となるため、解らないが、70年という数値は想像可能な数値なのだよ」

 

黙り込むナグアノ、バミダルは続ける。

 

「まあ、軍部には参考としてこの本は送られる。軍には色眼鏡無しでこの本の分析結果を伝えよう」

 

電算機の構造について、知識の乏しいナグアノはうなだれる。しかし、彼の本能は、全力で日本と英国に対する危険信号を送っていた。

 

「し、しかし! もしも! もしもこれが本当ならば、欺瞞情報では無かった場合、我が国の根幹を揺るがすほどの被害が出てしまいます!!」

「まあそうだな、被害が出たら軍幹部も考えるだろう。情報は適切な分析をして上に報告する。我々の出来る事はこれだけだしな」

 

話が終わりそうになる。ナグアノは、食い下がった。

 

「繰り返しますがもしも、これが本当ならば、我が国は多大なダメージを食らいます。情報の信用性を確かめるためにも、諜報員の日本国への潜入や、周辺国家からの情報収集強化も併せて軍部に報告したいと考えます。軍部から情報が漏れていたとして、逆サイドから漏洩者を捕らえる事も可能かもしれません。戦闘状態にある敵国への潜入が難しければ、周辺国家からであっても良いので情報収集強化を!」

「解った解った。それは軍部に私からきちんと報告しておこう。しかし、ナグアノ、心配には及ばんかもしれんぞ?」

「と、言いますと?」

「今レイフォルの我が軍を攻撃するため、異世界どもの大艦隊がここへ向かってきている。我が国は東方艦隊と、帝国監査軍合同で、この異世界艦隊の殲滅に当たる予定だ。本戦いの後には、ムーへの陸上侵攻が予定されている。ムーが落ちたら、いやでも日本国の情報は多く手に入るだろう」

「ならば、異世界艦隊が来るならばすぐに軍部にこの情報を!!」

「いや、異世界艦隊には日本軍は混じっていない。心配しすぎだ」

 

上司に説得されたナグアノ、不安がぬぐえない。

 

「それに、これは私も詳しくは知らないのだがな、皇帝陛下はシーン暗殺部隊を日本国の首都東京に送り込み、破壊工作を実施したそうだ。仮にこのふざけた書籍の通りであったとしても、我が国の攻撃が届くと分かれば、奴らも戦争どころではないだろう」

 

 

第2文明圏 列強国ムー 東の工業都市マイカル

 

海岸は、軍の出発を一目見ようと多くの人々で賑わっていた。軍人の家族と思われる者たちが、心配そうな目で彼らを見送る。不安になり、泣き出す母と子も多く見かけた。5隻ある空母の上にはムーの最新鋭艦上戦闘機紫電改2と最新鋭雷撃機フェアリーソードフィッシュ2が所狭しと並ぶ。空母5、フリゲート艦4、軽巡洋艦10、駆逐艦6、巡洋艦12、戦艦4、補給艦5の計46隻にも及ぶ第2文明圏列強国ムーの艦隊は、グラ・バルカス帝国海軍を滅するための世界連合艦隊と合流するため、工業都市マイカルを出港していった。

 

 

 

グラ・バルカス帝国海軍

 

 

神聖ミリシアル帝国と新たに成立したレイフォル亡命政府の発案という形で、中央世界と第2文明圏と連合で艦隊を組み出港した。帝国の第2文明圏への足掛かりとなる旧レイフォル地区へ向かった事を探知したグラ・バルカス帝国は、空母機動部隊による打撃及び戦艦等の打撃力による艦隊決戦を行うべく、レイフォル西側海域に集結を開始していた。帝国監査軍所属の、帝国で最も強力な超戦艦『グレードアトラスター』の艦橋で、艦長のラクスタルは前方の海を眺める。

 

「すごいな」

 

超巨大戦艦を最も見慣れた彼をもってしても、感嘆するほどの光景。上空には刃を研ぎ澄ましたかのような、美しい戦闘機が一糸乱ぬ編隊飛行をしている。その乱れない美しさから、帝国航空兵の練度の高さが伺えた。視線を海に向ける。海を覆いつくさんとするほどの艦艇数、帝国監察軍と、帝国海軍東方艦隊の連合軍が展開していた。巨大戦艦や空母が多数集結するその姿は見る者たちを圧倒し、決して負けぬと信じさせる力強さがあった。

 

戦艦10隻、空母9隻、重巡洋艦18隻、軽巡洋艦20、駆逐艦112。ここには見えぬが潜水艦64隻も参加する。戦闘可能な艦だけで233隻あり、補給艦等補助する艦艇を入れればその数は遥かに膨れ上がるだろう。

 

「帝国監察軍と東方艦隊。異世界の主力とも言える連合軍を撃破するにしても、過剰戦力のような気がしますね」

 

超戦艦グレードアトラスターの副長が艦長に話しかける。

 

「この戦いは、我が国がいかに強力かをこの世界に真に知らしめる結果になるだろう。本国の人間は、本当はもっと出したかったのではないかな?」

「とはいえ、西方艦隊も本土防衛隊も必要ですからね。本土を完全防衛している事を考えると、今回の派遣は相当戦力を捻出したと私は考えます。まあ、有り得ない事ですが、すべての艦隊が派遣されたら、補給艦を除く戦闘可能艦艇だけでも790隻にも及びますから、どんな国でも滅んでしまいますが」

 

艦長ラクスタルはフッと笑う。

 

「では、帝国に刃向かった愚か者たちを殲滅しに行くとするか」

「そうですね」

 

グラ・バルカス帝国、帝国監察軍及び帝国東方艦隊233隻と補給艦は、同海域に集結した後、決戦海域となる可能性の高いバルチスタ海域に向かい、出撃していった。

 

(本国は正体不明の攻撃により、帝都ラグナと港町ケンタウリが消滅した。もしここで敗れるなんてことがあれば、我が国はレイフォルから叩き出される。おそらくはイギリス辺りが小細工を仕掛けているのだろうが、自由レイフォル軍の活動が活発化している。基地に対する奇襲や鉄道の破壊、要人の暗殺等、治安維持にかかるコストが増大している。安定しているのは、皇帝陛下の四男グラ・ガルマ大佐が統治するニューアーク市のみ。このレイフォルでさえ未だに安定していない。行政官の能力の違いが余裕を作れないでいる・・・この戦、必ず勝たねばならん!!)

 

 

神聖ミリシアル帝国 バネタ地区 対魔帝対策省古代兵器分析運用対策部直轄 秘密基地 エリア48

 

広大な敷地に巨大な建造物群が立つ。その中で2隻の古代兵器。古の魔法帝国の遺産が出撃しようとしていた。現代の日本人が見たならば、中央部に円形構造物があり、三菱重工のマークのような形が三方向に延びて、リング状の物体が付く。言い方を変えるならば、メルセデスベンツのマークを横にしたような飛行物体。

中央部には円形構造物の上に城のような艦橋構造物がある。今、古代兵器である空中戦艦パル・キマイラが皇帝陛下の命を受け、出撃しようとしていた。パル・キマイラ2隻は徐々に高度を上げていく。基地には出撃を見守るヒルカネ・パルぺが立つ。

 

 

「ヒルカネ様、無礼を働いた異界の軍を相手に、世界連合のみならず、対魔帝の要となるような古代兵器まで投入するとは・・・皇帝陛下のやり方に文句を言うつもりはございませんが、少しやりすぎのような気がします」

「確かに、やりすぎ感はある。陛下は魔法文明の有益性をこの戦いで証明したいのかもしれないな。新たに出現した科学文明国家、日本国にグレートブリテン及び北アイルランド連合王国がこのところ、文明圏外国家からの求心力を高めていると聞く。グラ・バルカス帝国に対しても絶対勝利の必要性を感じておられるようだ。それにしても・・・・」

 

彼は空を見上げる。空中戦艦の名にふさわしく、空気力学以外の方法で空中に浮くその姿は見る者を圧倒する。軍部の者、いや、情報局の者でさえも、噂には聞けど見た事のある者はほとんどいないであろう。対空魔光弾に対する装甲を持ち、時速にして200km/hもの速度で移動するため、対艦用砲撃は当たらない。

半径130m、全長にして260mもある巨大な物体が、2隻も連続して出撃し、「実戦」に向かう様は、それを見慣れたはずのヒルカネですら感嘆するほどに力強く、そして美しかった。レイフォルやパーパルディア皇国程度の列強国であれば、この2隻の出撃で勝敗を決してしまうだろう。パル・キマイラ2隻はあっという間に先行している連合軍に追いつき、おそらくは時間的に戦闘が始まった時間帯に戦場に到着し、その圧倒的な力、戦術をもって敵を殲滅し、他国を震撼させる事になるだろう。世界で最も栄えし中央世界の列強国、神聖ミリシアル帝国は、国のプライドをかけ、自国の保有する古代兵器の一部を投入した。古の魔法帝国(ラヴァ―ナル帝国)の超兵器、空中戦艦パル・キマイラ2隻は旧レイフォル沖合に展開するグラ・バルカス帝国軍を滅するため、暁の空に向かって飛び去って行った。

 

 

日本国東京都新宿区

防衛省

 

防衛省が運用する偵察衛星、他国の脅威から身を守るために現在運用されている。この星は地球に比べてもとても大きく、一周するのに地球の倍以上は時間がかかる。大英帝国の協力はあるが、それでも現時点の運用基数では、敵性国家の常時監視等はとても不可能なものであり、各国の状況、首都、地理や、基地の定点撮影を行い、分析するのが精一杯であった。人工衛星の撮影した画像を解析していた横田は、20秒おきに3回撮影されたある写真を見て、戦慄を覚えていた。自分の考えが間違いでは無いかと思い、横田は解析を進める。

 

「ばっ! ばかな!!! おい! これ、これ! これを見てくれ!!!」

 

興奮した口調で横に座る同僚、堀山に話しかける。

 

「何を興奮しているんだ?」

 

堀山は写真を覗き込んだ。

 

「なんだ? これは?」

 

不可解な物体が写真に写る。

 

「これと見比べてみてくれ!」

 

横田の出した他の2枚の写真と見比べた。

 

「なっ!*なんだ!!*これはまさか!!!」

 

驚愕。

 

「神聖ミリシアル帝国の基地を写した写真だ。これが1枚目、そしてこれが20秒後の写真、そしてさらに20秒後の写真。この物体は動いているんだ。しかも、解析した結果、高度約100mに浮いている」

 

上から見たその写真は中央部に丸、そこから3方向に細いひし形の物体でリングにつながっている。リングはその物体を囲むように円形に機体を構成していた。

 

「こ・・・・この大きさって・・・・・」

「直径260.2mもある。こんな化け物みたいに大きい物体が、浮いて移動している、しかも2基も。信じられるか?」

「信じられんが信じるしかあるまい。いったいどういった原理で浮いてるんだ?」

「解らん。しかし、移動方向がムー大陸方向だから、対グラ・バルカス帝国戦に参加するつもりかもしれないな」

「こんなデカいものが浮くなんて・・・・まるでUFOだ、恐ろしい世界だな」

 

神聖ミリシアル帝国の投入した空中戦艦パル・キマイラはすぐに日本国の知るところとなった。日英同盟に基づき、情報は直ちにイギリス側にも伝えられる。画像から脅威度が非常に高いと日本の防衛省とイギリスの国防省は判断。空中目標にも対応可能な対艦ミサイル用プログラミング並びに大陸間弾道ミサイル用プログラミングを急ピッチで進める事となった。

 

 

第2文明圏、ムー大陸北方 バルチスタ海域 グラ・バルカス帝国海軍

 

大艦隊が東へ向かっていた。現代の日本人がそれを見たならば、ため息が出るほどの力強さを感じるだろう。帝国海軍の誇る戦艦や重巡洋艦の主砲は、海上自衛隊やイギリス海軍の所有する護衛艦の主砲よりも遥かに大きく、そして力強く見える。上空には数多くのアンタレス型艦上戦闘機が一糸乱れぬ編隊を組み、上空で警戒を行っている。艦隊も乱れは無く、異世界軍主力艦隊と戦えるとあって、兵たちの志気も高い。幸いにして空は晴れ渡り、見通しも極めて良好だった。グラ・バルカス帝国の誇る最大にして最強の戦艦、グレードアトラスターの艦橋において、艦長ラクスタルは海を睨む。かつてないほどの嫌な予感がする。

 

「副長・・・気を引き締めろ、本戦いは今までのように一筋縄ではいかない気がする」

「戦いに油断は禁物であるため、心してかかります。しかし艦長、油断は決してしませんが、我が国の優位性は揺るがないと考えます。何か気になる事でも?」

「・・・・カンだ。長年のカンがそう告げている。」

「怖いな、艦長のカンは良く当たる」

 

2人が話していると、通信兵が声をあげた。

 

「報告いたします。最前列艦前方1時の方向、250km先海域に、敵の大艦隊を発見、第1次攻撃隊が発艦準備を開始しました」

「ついに戦闘だな・・・・」

 

ラクスタルの眼光が鋭くなる。グラ・バルカス帝国海軍はバルチスタ海域において、世界連合艦隊を捕捉した。後に壮絶な戦いと記録された「バルチスタ海域の戦い」が幕を開ける。

 

 

イギリス海軍原子力潜水艦「ヴィクトリアス」

 

「始まったようだな」

 

潜望鏡を出し、艦載機を発艦させるグラ・バルカス帝国の空母を監視するイギリス海軍の原子力潜水艦「ヴィクトリアス」。以前、ケンタウリにSLBMを発射した本艦は引き続き第二文明圏とグラ・バルカス帝国本国の間の海域に潜んでおり、その動向を逐一本国へと報告していた。

 

「さて、どうなりますかね?」

「さあな。しかし、奴らも間抜けなものよ。我々が潜望鏡を出しているにも関わらず、1ミリも気付いていないのだ」

「もしかすると、味方の潜水艦と誤認しているのかもしれませんね」

「だとしたら、そいつは銃殺刑だな。敵と味方の区別がつかんヤツに生きる資格はない」

「沈めちゃいますか?」

「・・・・・今はまだよい。それに、やるなら艦載機を根こそぎ発艦させてからだ。ムーは我が国に加え、日本とカナダの協力で高性能なレシプロ機を配備したらしいが、その他はレシプロ機に劣るジェット機とワイバーンぐらいだ。ほとんどは帰還する為に空母に戻る。その直前に沈めてやればよい」

「・・・・艦長も人が悪いですなあ・・・グラ・バルカス帝国と神聖ミリシアル帝国をわざと戦わせて弱らせ、傷付いてようやく帰還したところで帰る場所を奪う。その頃にはムー以外の艦隊は全滅し、グラ・バルカス帝国も空母を喪い制空権喪失。そうなったところで、我が国を中心とした遠征軍がレイフォルに攻勢、ですな?」

「考えたのは私ではない。ニュー・ホンコン総督府だ。それを本国が改良し、実行しているだけだ」

「そうなると、ハルト大使も絡んでそうですな。確か、外交官になる前は海軍軍人だったと聞きますが?」

「あの家の跡取りは皆軍人経験が必要という不文律があるみたいだからな。その妹は未だに軍人だがな」

「そういえば、日本の東京がグラ・バルカス帝国による卑劣な毒ガス攻撃を受けたとか」

「これは教育であろうな。まあ、お人好しの日本人のことだ。最後通牒を突きつける為に、最後の交渉を行うのだろうな」

「その際は、本艦が日本の外交官を救出するのでしょうか?」

「今のところ本国から指示はない。だが、可能性はある」

 

イギリス海軍の原子力潜水艦「ヴィクトリアス」は現場海域で待機し、グラ・バルカス帝国と世界連合の艦隊決戦を間近で見届けることになる。

 

「・・・・・グラ・バルカス帝国、勝ったな・・・」

 

 

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

スコットランド ハミルトン公爵家邸宅のとある1室

 

「僕たちは暫くはここで幽閉か・・・」

「まあ、我が大英帝国に仇をなす裏切り者はハルト大使が全員炙り出してくれますから、堂々としてましょうよ! 幸い、紅茶は最高級品みたいだし!!」

「・・・・僕みたいな平民には、貴族の邸宅は息苦しく感じるというのに君は・・・」

 

ハルトの策略で本国にある彼の邸宅で身を隠すことになった二人は貴族の屋敷で不自由のない生活を暫く送ることになる。

 

 

パーパルディア皇国皇都エストシラント

駐パーパルディア皇国英国大使館

 

「さてさて、見せて貰おうか! 世界最強の実力とやらを!! なあ! 諸君!!」

「・・・・・は、はい!」

「・・・・・そ、そうですね!」

「なんだ? 緊張しているのか? おまえ達らしくないなあwww」

 

((ま、まさか・・・ばれてる?!))

 

(続く)

 

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