日英同盟召喚   作:東海鯰

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ガルマ総督の決断

グラ・バルカス統治下レイフォル

ニューアーク市

 

「ここがニューアークか・・・」

 

ムーとの国境線を越えて丸3日。イギリスの使節団は途中、何度か休憩しながらニューアーク駐留軍側が用意した装甲車で揺られに揺られて遂に辿り着いた。

 

「しかし、レイフォリアとは違い、現地住民は生き生きしていますね」

 

使節団代表、ブレンダン駐ムー英国大使の秘書にして友人のミツルはそう呟く。

 

「彼方は搾取に搾取を重ねた結果ああなったみたいだが、ここは違う。ミツル、あれを見ろ。レイフォル人の警察官が入植者を取り締まっている」

 

彼らの視線の先には、商店から酒を窃盗したグラ・バルカス帝国人が、レイフォル人の警察官二人に逮捕されている様子があった。警察官はグラ・バルカス帝国式の制服や装備を着用しており、明らかにレイフォリアとは違う。

 

「うるせえんだよ! この劣等人種風情が!! ガルマのクソガキがこんなクソ甘々統治なんかしやがって!!」

 

暴れる酔っ払いに対して、一人は対応、もう一人が無線機で応援を呼んでいる。やがて応援のパトカーが到着し、此方からはグラ・バルカス帝国人の警察官二人が降車する。

 

「貴様ら劣等人種なんぞ、クソガキガルマの小僧の気紛れでなあ!!」

「ガルマ総督への侮辱は皇帝陛下に対する侮辱でもある!! 罪に罪を重ねるな!!」

「窃盗及び総督への不敬罪で逮捕する!!」

 

ブレンダンとミツルは、彼はグラ・バルカス帝国人だから解放されるのかと思いながら見ていたが、そのまま逮捕され、手錠をはめられ、パトカーに押し込まれるのを見て、ここは他の占領地とは違うのだと感じた。

 

「・・・・・どうやら、グラ・ガルマという男は相当なやり手のようだな」

「現地人を登用し、自分たちの手駒として利用する。それが出来るだけの信頼を得ているようですね」

 

イギリスの使節団を乗せた車列はそのままニューアーク総督府に向けて進んでいく。

 

「話によれば、ニューアーク市はグラ・バルカス帝国軍が迫ると戦わずして降伏したと聞くが、レイフォル式の建築物は破壊されず、ほとんどが維持されているな」

「グラ・バルカス式と思われる建造物もありますが、レイフォリアと比べると抑制的ですね」

 

やがてニューアーク総督府に到着し、彼らは儀仗隊の歓迎を受ける。広場にはグラ・バルカス帝国旗と連合王国旗が掲揚されている。

 

「たかが外交官相手に儀仗隊・・・しかも我が国の国歌まで演奏とは・・・」

「彼らの本気度が伺えますね」

 

使節団の中からは、ブレンダン大使とミツル秘書官の二人のみがニューアーク総督グラ・ガルマ大佐と謁見することになっていた為、ここで軍人とは別れる。軍人らはそのままグラ・バルカス帝国軍人らと交流する。

 

 

ニューアーク総督府応接室

 

「遠路遙々ようこそニューアークまでお越し頂きました。私はガルマ総督の御伽衆の一人、エイテスにございます」

「うむ。私はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の駐ムー国大使のブレンダン・ピース・フィリップだ。此方は秘書官のミツルと申す。エイテス殿、よろしくお願いいたします」

「お話には聞いております。大変申し訳ありませんが、我が主人ガルマ総督は少々遅れて参ります予定で・・・」

 

少し気まずそうに話すエイテス。

 

「・・・・何かあったので?」

 

さては罠か? と身構えるブレンダン大使。

 

「いえ、ガルマ総督には彼女と言いますか、事実上の妻であり、ニューアーク市長の娘、イセリア様がおられるのです。二人は本気で結婚するおつもりなのですが、皇帝陛下が中々お認めにならず、イセリア様は大層ご立腹なのです。今頃・・・」

 

そこまで言ったところで扉が開く。

 

「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の大使殿、長いことお待たせしてしまい、大変申し訳ござらん。私はニューアーク総督府にて、総督を勤めているグラ・ガルマである」

 

頬に叩かれた跡が残ったガルマが入室してくる。どうやら、

 

「ガルマ様、何時になったら貴方と結婚出来るのですか!!」

 

と言わんばかりに叩かれたようである。ブレンダンとミツルは安心する。

 

「はは・・・どうやらガルマ総督の奥方は大変気の強い御方のようですな」

「強すぎて私が尻に敷かれているよ。まあ、そこが良いのだがね」

「では総督、私はこれで」

「いやエイテス、君は残れ」

「総督、しかし・・・」

「これは君にとっても大切な会談となろう。我が国が不当に奪ってしまった君の祖国を取り返せる好機になるやもしれんのだぞ!!」

「「??」」

 

どういうわけだ? という顔のブレンダンとミツル。

 

「紹介が遅れたな。彼はエイテス・アルフレト・リッキンバーグ。イルネティア王国の第一王子だ」

「・・・・・滅ぼした国の王子を何故グラ・バルカス帝国の四男が匿っているので?」

 

普通の神経をしていれば、敵対国の王子なんぞ血眼になってでも殺す。下手に生かしておけば、反乱分子が担ぎ上げるだけである。にも関わらず、この男は何故? それが二人の考えだった。

 

「普通に考えれば、彼を生かしておくのはあり得ないだろう。だがな、イギリスの大使殿。私は帝国によるイルネティア王国侵攻には何の大義もないと考えているのだよ」

「なんと?!」

「驚くのも無理はない。だがなイギリスの大使殿。我が国がわざわざイルネティア王国を侵略しなければならない合理的な理由が存在すると思うか?」

 

逆質問してくるガルマ。ブレンダンとミツルは何も答えられない。

 

「支配している私が言うのもおかしい話なのだがな、レイフォルとパガンダに関しては、我が国に大義があると考えている。我が帝国がこの世界に転移した際に最初に接触した国がパガンダ王国、そして同国の宗主国であるレイフォルであった。貴国がどうなのかは知らないが、始めは我が帝国も慎重に外交交渉を行っていた」

 

自国について語り始めるガルマ。貴重なグラ・バルカス帝国に関する内部事情。一切聞き漏らすまいと、ブレンダンとミツルはじっとガルマを見つめる。

 

「周辺国と友好的な関係を築く為に、我が帝国はパガンダ王国に使節団を派遣した。しかし、同国の外交官の対応はゲスの極みであった。かの者は非礼な対応を繰り返し、更には我が父グラ・ルークスの弟、グラ・ハイラスに対して多額の賄賂を要求。その金額は我が国の正規空母1隻が建造出来てしまう多額の賄賂であった」

「そんな命知らずな外交官が居たのか・・・・」

「しかもそれがパガンダ王国の王族と来たものだから尚更呆れてしまう。悲劇はそれだけでは終わらない。奴らはハイラスを処刑し、他の外交官にその姿を見せつけたのだ。こんなことをされて怒らぬ国はあるかブレンダン大使」

「まあ、ないでしょうな。我が国なら直ぐにでも報復するでしょう。何なら宗主国とやらにも責任を被せて」

「貴国でもそう思うか。まあ、結果は察しの通り、我が帝国の圧勝。特にパガンダは徹底的な報復が行われ、パガンダ人は民族浄化され絶滅した。帝国はそのままレイフォルにも侵攻。私は8000の兵を率い、戦車部隊の隊長として、軍団の司令官としてニューアークに侵攻。同市は戦わずして降伏したことから、私は無傷でこの地を手に入れたのだ」

 

一通りグラ・バルカス帝国が転移したところから、レイフォルが亡国化するところまでを話したガルマ。

 

「私は無傷でニューアークを陥落させた功績から皇帝陛下より、ニューアーク総督の地位を与えられた。ニューアークはイルネティア王国の眼前にあり、重要拠点という位置付けだからだ。一方で、占領地の安定化も私の仕事であった。それについては長くなる故割愛するが、現地人も入植者も同じ皇帝陛下の民。他方が搾取され、貧窮することはあってはならない。その思いから、現地人の生活環境の改善、貧困の撲滅、治安の安定化、そして経済成長。私は出来る限りのことをしてきた。現地人のことを知るためにニューアーク各地に自ら出向き、杯を交わすこともあった。時にはパルチザンに銃口を向けられたこともある。だが、同じ帝国臣民、同じ人間として対等に扱う。粘り強くやってきたつもりだ。レイフォリアの現地人は搾取され、貧困の渦にある。だが、このニューアークではそれはない。レイフォリアの奴らは私利私欲の為に現地人を、皇帝陛下の臣民を不当に搾取している。それを私は許せないのだ!!」

 

自らの思いを熱弁するガルマ。話は続く。

 

「イルネティア王国侵攻なんぞ、私利私欲の塊だ!! あれはレイフォリアの連中が言い出した作戦だが、列強レイフォルがこの程度なら世界征服も夢ではない。そう考える者がグラ・ハイラス殺害後に急増していた。狂った民意とそれを正そうとしない皇帝陛下!! おまけに皇帝陛下自身も世界征服について否定しない!! 陛下の臣民が不当に搾取され、貧困に喘いでいる話をしても聞き入れようとしない!! むしろ私のやり方は間違っているとまで言ってきた!! 侵攻に次ぐ侵攻により軍事費は膨れ上がり、我が帝国の国家財政は破綻寸前だ!! それを誤魔化すための第二文明圏全体への宣戦布告!! 最早一度敗北して解体された方がましだ!!」

 

ガルマの本音が漏れる。

 

「イルネティア王国侵攻作戦には我がニューアーク守備隊も参加した。私も侵攻作戦に参加する部隊全員の士気高揚を目的に参加した。その時にエイテス王子と出会ったのだ」

 

 

イルネティア王国商業都市ドイバ

ドイバ港

 

「戦車、前へ!! 私に続けー!!」

 

ガルマが搭乗する2号戦車ハウンドIIが進撃を開始する。それに続いて15両の戦車が前進し、イルネティア王国軍ドイバ港守備隊陣地に突撃する。

 

「ガルマ様! 港に小舟があります!!」

「砲は届くか?!」

「ギリギリかと・・・」

「もしかすると、逃亡用かもしれん!! 小舟を潰す!!」

「進行中の射撃ですと、当たらないかと・・・」

「構わん! 私が狙う!! お前は私の代わりに操縦してくれ!!」

 

ガルマは対戦車用砲弾を砲塔に込め、港で今にも逃げ出しそうな小舟に狙いを定める。上下左右に激しく揺れ、中々狙いをつけられない。

 

「・・・・・ここだ!」

 

戦車砲が火を吹く。砲弾は奇跡的に小舟に命中。搭載されていた魔石に誘爆し、大爆発を起こす。

 

「ガルマ様! お見事です!!」

「たまたまさ!! ん?」

 

続いてガルマは10人程の非武装の集団を見つける。

 

「・・・・・全車停止!!」

 

ガルマの指示で戦車部隊は非武装の集団の目の前で停車する。

 

「ガルマ様、どうしたのですか?」

「あの者らを生け捕りにしろ。非武装の人間を殺すのは流石の私でも無理だ」

 

ガルマは追い付いた歩兵らと共に非武装の集団に近付く。

 

「私はグラ・バルカス帝国ニューアーク総督府総督のグラ・ガルマである!! 貴公らの身柄を拘束させて貰う!! 抵抗しないのであらば、命は取らぬ!!」

 

ガルマ自らが非武装の集団に接近する。慌てて周りの歩兵もガルマに追随する。

 

「降伏の意志があるのであれば、両手を挙げよ!!」

 

全員が両手をあげる。

 

「よし、全員我が隊に降伏した!! 何者かは分からぬが、彼らをニューアークまで連行せよ!! 到着後は捕虜としての待遇を補償し、丁重に扱え!!」

「ははっ!!」

 

ニューアークより到着した輸送艦に彼らは乗せられていく。ガルマらも、イルネティア王国陥落後はニューアークに帰還することになっていたことから、彼らと共に輸送艦で帰還する。この時尋問も行われ、集団の一人がイルネティア王国第一王子のエイテスと判明。彼らは援軍を求めてムーに渡る予定だったという。

 

 

輸送艦ニューアーク士官室

 

「・・・・私をわざわざニューアークに連れてどうするつもりだ? 処刑するのか?」

「逆に聞くが、何故エイテス王子を処刑しなくてならないのだ?」

「・・・・は?」

「いや、私には貴方をわざわざ処刑する理由が見つからないのでな、知りたいのだよ」

「ば、バカなことを!! 私は貴様らから見れば敵国の王子だ!! 私を生かしておけばいずれは貴様らに牙を剥くだろう!!」

「ははは!!」

「な、何がおかしい!! この侵略者め!!」

「気に入った!! エイテス王子、私はそなたが気に入ったぞ!! これよりそなたは私の御伽衆に任ずる。私の話し相手として傍に居て貰うとしようぞ!!」

「・・・・・どうやらこの人には私の常識は通用しないらしいな・・・まあ、殺されるよりはましか・・・・」

 

 

「そんな感じでエイテス殿と会った。始めはギクシャクしていたのだがな、今はこうして私の友になってくれている」

「私も最初は何時殺してやろうかと思っていたのですが、不思議と何時しかこの人を守らなくては・・・と思うようになりましたね。他の皆も同じことを言うのです」

 

(人心掌握に長けた人物であるのは間違いないな)

(一方で帝国に対する不信感も持っている・・・)

 

「さて、長々となってしまったが、本題に入らせて貰おう。私、グラ・ガルマは貴国に条件降伏する。条件はニューアーク市民並びに私の配下の兵士や軍属・・・無論エイテス殿を含めた全員の命を保証すること、それだけだ。それが叶うのであれば、皇帝の四男である私は戦犯として死刑にされても構わぬ。我が隊のスパイからの報告で貴国や同盟国日本は我が帝国を遥かに凌駕する国力と技術力を有することが分かっている。ただ、民や配下の兵士や軍属を巻き添えにしたくはないのだ・・・・貴国や同盟国の民生品を見れば、我が帝国はとんでもない国に宣戦布告してしまったのが良く分かる」

 

ガルマは席を立ち、棚から一台の携帯型ゲーム機を取り出す。

 

「ムーに派遣していたスパイが持ち帰った日本製のゲーム機だそうだ。持ち運び出来る大きさと重さ、にも関わらず高画質かつ高性能。我が帝国にはこれを実現するだけの技術力はない。ニューアークの技術研究所にサンプルとして一台提供したが、全く未知の領域だと言っていた」

 

そこには、日本有数の家庭用ゲーム企業、任○堂のハード、Swi○ch2が置かれていた。

 

「ガルマ総督はそのゲーム機で遊ばれるのですか?」

「いや、私は職務に忙しく遊ぶ暇はないが、エイテス殿は日本のゲームを痛く気に入っているようだ」

「そうなのですか」

「そして此れはレイフォルから届いた貴国や同盟国の軍事技術に関する書籍だ。手に取っただけで貴国や同盟国の技術力の底なしさが垣間見える」

 

ガルマは「緊急特番号!! 日本国・大英帝国とグラ・バルカス帝国が戦えばこうなる!! ~天気は晴れ時々核弾頭~」を取り出す。

 

「貴国が多数保有しているこの核兵器という兵器、このままではこれが我が帝国の至るところに落とされるであろうな。下手すれば、このニューアークにも落ちるだろう」

「・・・・大衆紙を信じるのですか?」

「我が隊から派遣しているスパイの情報とも合致する要素が多すぎるのだ。信じるしかあるまい」

 

(物分かりが本当に良い人だな・・・)

 

「イギリスの大使殿、いや大使様。どうかお願い致す。私の命と引き換えに、ニューアークの市民や我が配下の兵士や軍属の命を救ってくだされ!! どうか!! どうか!!」

 

土下座して懇願するガルマ。皇帝の四男の行動にブレンダンとミツルは顔を見合わせる。

 

(どうやらガルマ総督の行動は本物のようだな)

(これなら我が大英帝国にとって、使える人材になりそうですね)

 

「なりません!!」

 

急に扉が開き、一人の女性が応接室に乱入してくる。

 

「ガルマ様が死刑にされるのであれば、このイセリアもお供仕ります!!」

「・・・・すまないな、イギリスの大使殿。此方は私の秘書官にして、ニューアーク市長の娘にして、私の将来の妻イセリアだ」

「どうかお願いいたします!! ガルマ様を死刑にするのであれば、伴侶である私も!!」

「・・・・まあ、皇帝陛下がお認めにならぬ故、未だに結婚出来てはおらぬのだがな・・・」

 

優しく愛する女性の頭を撫でるガルマ。傍に控えるエイテスはハンカチをイセリアに差し出す。

 

「・・・・・イセリア様」

 

ブレンダン大使が彼女に話し掛ける。

 

「はい・・・」

「もし、ガルマ総督との結婚が叶い、命も救われる方法があるとしたら、如何しますか?」

「・・・・そんな都合の良い話があるのですか?」

「はい。それに、ガルマ総督の願いであるニューアーク市民並びに兵士や軍属の命も保証される唯一の策がございます。お聞きになりませんか?」

 

ガルマとイセリアは驚いた表情を浮かべる。ブレンダン大使はミツル秘書官に対して、例の書類を出すように促す。

 

「本国より、もしガルマ総督が我が国にとって、信用するに値する人物であると私が判断した場合提示するように言われている案になります」

 

ブレンダン大使とミツル秘書官は三人に大英帝国からの提案を提示する。そこには、

 

1.ニューアーク総督府は、グラ・バルカス帝国より独立し、新生グラ・バルカス帝国を建国すること

 

2.ニューアーク総督グラ・ガルマは、皇帝に即位し、ガルマ1世を名乗ること

 

3.ガルマ1世を首班とする新生グラ・バルカス帝国政府をニューアークに樹立すること

 

4.新生グラ・バルカス帝国政府は、ニューアーク市を除き第二文明圏全体に保有する植民地を全て放棄すること

 

5.イルネティア島をイルネティア王国へ、ニューアークを除く旧レイフォル・パガンダ王国領はレイフォル王国へ返還し、相互に国家承認すること

 

6.三か国はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国並びに日本国と軍事同盟並びに経済協定を締結すること

 

7.ニューアーク市は植民地から海外領土に昇格すること

 

8.1~7の見返りにグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は、新生グラ・バルカス帝国を唯一の正統政府であると承認し、グラ・バルカス帝国を名乗る武装勢力より領土を奪還することを支援し、必要な外交的仲介を行うこと

 

「わ、私に帝国を・・・・父や兄を裏切れと・・・?」

「まあ、そうなりますな。ですが、ガルマ様のお人柄でしたら、本土の者もある程度は従えられるのではありませんか?」

「・・・・おそらく、ドスル兄さんなら・・・」

 

グラ・バルカス帝国皇帝グラ・ルークスは、正室並びに側室との間で四人の男と一人の女をもうけていた。

 

長男:グラ・カバル(正室の子・皇太子)

 

次男:グラ・ドスル(側室の子・国防相)

 

三男:グラ・サロス(側室の子・元外交官・異世界転移前に暗殺)

 

四男:グラ・ガルマ(正室の子・ニューアーク総督)

 

長女:グラ・キリシア(側室の子・副総理兼内務相)

 

グラ・バルカス帝国では、正室の子が優先的に皇位を継承するとされており、ガルマはこの中では皇位継承順位第2位なのである。ただ、長男カバルと皇位を争うことを避けるために軍に送られた経緯がある。一方で次男ドスルは、ガルマのことを高く評価しており、

 

「アイツは俺が従うに値する立派な皇帝になる!!」

 

と、ガルマの味方であることで知られ、同時に兵士からの信望も厚い脳筋ゴリラである。帝都ラグナが核攻撃により壊滅して以降、数少ない国会議員の生き残りかつ最右翼で、

 

「優良人種であるグラ・バルカス帝国人こそが人類を救うのである!!」

 

と、有権者を煽りに煽りまくって国会議員になったレギン・ビザ率いるレギン内閣では国防相を務めている。三男サロスは異世界転移前に、敵対国の爆弾テロで死亡、長女キリシアはレギン内閣で副総理と内務相を務め、国内の反乱分子鎮圧に務めると共に、独自の軍を保有していた。ちなみにレギン・ビザは内閣発足後に武装親衛隊を創設。現在のグラ・バルカス帝国国内は、レギン・ビザ首相率いる武装親衛隊、グラ・ドスル率いる正規軍、グラ・キリシア率いる秘密警察(実質的には軍)の三つの派閥が存在していたのである。現在は結束しているが、なにかがあれば崩壊する脆弱な構造である。それをイギリスは知らず知らずに崩壊させようとしているのだが。

 

「・・・・貴国はどこまで知っているかは知らぬが、我が国には三つの派閥が出来ている。この内、私の味方になってくれる可能性が高いのはドスル兄さんの正規軍だけ。しかも、レギン内閣発足後は権限が縮小している正規軍だけだ」

「とはいっても、ガルマ様に味方する勢力があるのであれば、レイフォル解放もやりやすくなるでしょう。仮にガルマ様討伐の為に軍を差し向けたとしても、今度は本国が手薄になる。我が国はガルマ派を、新生グラ・バルカス帝国を支援する用意がございます」

「・・・・・だが、ニューアークの割譲を自由レイフォル軍は認めるのか? 彼らはニューアークでも活動し、時折自爆テロを起こし、罪のない市民を巻き添えにしているが・・・」

「彼らについては我々が説得します。もし言うことを聞かないのであれば、我が国は新生グラ・バルカス帝国と同盟し、自由レイフォル軍を討伐するのみです」

「使えるところまで使い倒して捨てるということか・・・中々に汚いな、貴国は」

「褒めても何も出ませんよ、ガルマ総督」

「・・・・まあ、良い。私としては、貴国の提案は非常に魅力的である。だが、私一人では決められぬ。ニューアーク市議会に図り、帝国からの独立の賛否を問わなくてはならぬし、本国のドスル兄さんとも連絡をしなくてはならぬ。早くて明日の回答になろう」

「ほう、市議会が残っているのですか・・・意外でしたな」

「現地の課題は現地人にしか分からぬ。現地の課題を吸い上げ、私のところに報告させ、必要な施策を提案し、市議会を通す。半ば形式的ではあるが、そうでもしないと現地人の不満を解消は出来ないし、課題も分からないのだ」

「自由レイフォル軍については我が国にお任せくだされ。よきように計らいます」

 

この日の会談はここで終了した。会談後、ガルマは幹部や市議会の主要会派の代表を緊急招集。イギリス側から秘密裏に提案された内容について審議した。各会派は、ニューアークの発展に寄与するのであれば反対しないとして、ガルマ総督に判断を一任した。ガルマはその場でイギリス側の提案受け入れを市議会側に通達。翌日の臨時議会で議案は全会一致で可決されることになる。また、ガルマはその後、プライベート回線で本国のドスル国防相と電話会談を実施。この中でガルマは、帝国を離反し、民の為に、平和の為に決起するとの意向を伝えた。同時に決起に加わって欲しいとも伝えた。これに対してドスル国防相は感激の余りに電話口で男泣き。

 

「俺は!! 俺は!! 俺はガルマが立派な皇帝になると信じていた!! このグラ・ドスルはガルマ1世に生涯ついていく!! 本国のことは任せろ!! レギン派やキリシア派はこの俺が蹴散らしてやる!!」

 

と、ガルマの側につくことを確約。同時に決起する日までは何事もなく過ごすことも確認した。この時の会話は偶然にも、キリシア傘下の秘密警察が機材の故障で盗聴出来ておらず、実際にガルマがニューアークで決起するまで気付くことは出来なかったという。また並行して行われた自由レイフォル軍への説得も無事完了。後に自由レイフォル軍を率いるヨシップ・ブロンズ・チート将軍とガルマ総督が直接会談し、両国の国境線が画定する。こうしてイギリスは、グラ・バルカス帝国との戦争終結に向けた糸口を掴んだ。この情報は日本政府にも伝えられ、ムーの巡視船で移動中のアキコや日本政府の代表らに伝え、イギリスの代表を同乗させる為にマギカライヒ共同体の港に緊急寄港することになるのである。

 

 

マギカライヒ共同体港湾都市ハンプルク

ハンプルク港

 

「予定にないマギカライヒ共同体に来たわね」

「パスポートあったっけ?」

「外交官用のがあるでしょ」

「ムーの巡視船の中に忘れて来ちゃったんだよね~」

「はあ~。まあ、私が何とかするわよ」

「それよりアキコ、イギリス側の代表が同乗するんだろ? 誰が来るんだ?」

「・・・・・嫌な予感しかしないんだけど・・・」

 

3日後のハンプルク港

 

「やあ、アキコにシン! 久しぶりだね!!」

「どうしてイギリスの代表がお前なのよ・・・ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン・・・・」

「ああ、嫌な予感ってそういうことかー」

「まあ、喜びなよアキコにシン。我が大英帝国はグラ・バルカス帝国への調略に成功したんだ。今は決起に向けて準備中さ!!」

「・・・まさかだけど、あっちの外交官との会談中に決起するとか、決起放送を見せつけるとかじゃないわよね?」

「大正解!! 流石はアキコ!! 僕が認めた天才だな!!」

「・・・核報復を見せつけるだけでも生きて帰れるか怪しいのに、更に地雷を踏んでいくのね・・・」

「なら、相手の外交官なんか最後に毒殺してしまえばよいだろう。君も知っているだろ? シエリアは我が大英帝国の臣民を処刑したことに対する罪の意識でまともに眠れていないとね!!」

「本当にあんたの国は他国にスパイを送るの好きよね・・・まあ、私もシエリアをゆっくり寝かせてあげようと準備しちゃったし、人のこと言えないというか・・・なんで用意しちゃったのかしらねえ・・・捨てようかな」

 

アキコは小さな小瓶を開け、中身を捨てようとする。

 

「ダメダメダメ!! せっかく用意したなら使わなきゃ損だよ!!」

「相変わらずこの貴族狂ってんなあ・・・というかなんで同窓会なんだ?」

「そりゃあ、敵対国への煽り担当だからね!!」

「「自分で言うのか・・・・」」

 

翌日、日英の外交官を乗せたムーの巡視船はレイフォリアに向けて出港する。この間、日英の策謀がグラ・バルカス帝国中を駆け回り、日英軍が着実に第二文明圏に近付く。

 

(続く)

(続く)

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